医療ニュース
2014年11月29日 土曜日
2014年11月29日 牛乳1日3杯で死亡リスクも骨折リスクも上昇
牛乳がタンパク質やカルシウムが豊富で栄養価にすぐれた食品であるのは間違いないのですが、以前から危険性を指摘する声があります。特に乳ガンや前立腺ガンのリスクを上昇させるという指摘は年々増えてきています。
しかし、日本も含めて世界中の多くの医師は骨粗鬆症の予防に牛乳を薦めており、発ガンのリスクを上昇させるという声があるのは事実ですが、取り過ぎなければ健康増進に寄与するものと考えられています。しかし、です・・・。
1日3杯の牛乳が全死亡リスクを2倍にし、骨折のリスクも上昇させ、さらにストレスを増悪させる・・・。
このような研究結果が発表され議論を呼んでいます。医学誌『British Medical Journal』2014年10月28日号(オンライン版)に論文(注1)が掲載されています。
この研究の対象者はウェーデン人の女性61,433人、男性45,339人です。女性は平均20.1年間の追跡調査がおこなわれ、その間に15,541人の死亡、17,252人の骨折が確認されています。男性は平均11.2年間の追跡調査がおこなわれ、10,112人の死亡、5,066人の骨折です。
男女とも牛乳をたくさん飲むほど死亡リスクが上昇するという結果になっていますが、その傾向は女性で顕著なようです。
牛乳を1日3杯以上(平均680g)飲む女性を1杯未満(平均60g)の女性と比べると、全死因の死亡リスクは1.93倍となったそうです。心筋梗塞など心血管疾患の死亡でみると1.90倍、ガンのリスクは1.44倍とされています。骨折については1.16倍です。
男性の場合は、1日3杯以上(平均830g)飲むと1杯未満(平均50g)の男性と比べると、全死亡リスクは1.10倍となったようです。
さらに意外なことに、ストレスの指標とされている尿中8-iso-PGF2αと血清IL-6についても牛乳摂取量が多いほど高い数値となっています。
興味深いことに、チーズやヨーグルトなどの発酵乳製品については死亡リスクも骨折のリスクも上昇させないという結果がでています。上昇させないどころか、女性では、逆に死亡も骨折もリスクが低くなっています。男性については関連性が認められていません。
ストレスについては、チーズでは関連性が認められなかったものの、ヨーグルトでは摂取量が多いほどストレスの指標は低下したそうです。
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以上をまとめると、
・牛乳はほどほどにしましょう
・乳製品を摂るのなら牛乳ではなくチーズやヨーグルトにしましょう
・ヨーグルト接種でストレス軽減ができるかもしれません
となるかと思います。
この研究は対象者の多い大規模研究ですから、それなりに信憑性が高いといえるでしょう。しかし、牛乳が栄養学的に優れているのもまた事実であり、いきなり牛乳をやめることは薦められません。
この論文をよく読んでみると、ハイリスクとされている「1日3杯以上」が女性で680g、男性が830gとされています。日本人の成人で毎日これだけ牛乳を飲んでいる人がどれだけいるでしょうか。牛乳を積極的に飲むべき小児や10代でも毎日これだけ飲んでいる人はそう多くないでしょう。
私自身の意見としては、他の健康に良いとされている食品と同様に、牛乳も度を超えない程度に摂取する分にはいいかと思います。研究結果を踏まえるとヨーグルトの方がいいかもしれません。ただし、日本のヨーグルト製品はたいてい糖が加えられていますから糖分の摂り過ぎに注意しなければなりません。また、チーズについては、元々塩分摂取量の多い日本人は摂り過ぎに注意する必要があるでしょう。
(谷口恭)
注1:この論文のタイトルは「Milk intake and risk of mortality and fractures in women and men: cohort studies」で、下記URLで全文を読むことができます。
http://www.bmj.com/content/349/bmj.g6015.full?sid=5d26e743-217d-4798-b31f-391359110b2d
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|2014年11月28日 金曜日
2014年11月28日 腰痛もちはギャンブル好き!?
脳の研究というのは非常に魅惑的な領域であり、大昔から多くの学者が学者生命をかけて脳機能の究明に取り組んできました。これまで多くの説が提唱され、いくつかは治療にも応用されるようになってきています。しかし、脳には依然未知のことも多く、すべてが解明できているわけではありません。
そんな脳の研究のなかで「側坐核」と呼ばれる部位がここ数年でクローズアップされてきています。側坐核とは脳の「前脳」と呼ばれる領域に位置しており、報酬、快感、嗜癖などに関与しているのではないかと言われています。
快感や嗜癖はいいとして、「報酬」という言葉は分かりにくいかもしれませんので補足しておきます。ここでいう「報酬」とは端的にいえばギャンブルのことと考えて差し支えありません。「報酬」への欲求が強くなりすぎると、その人にとって魅力的なもの(お金)を獲得するために大きなリスクをとってしまうのです。
今回紹介したい研究は「慢性の腰痛があれば、ギャンブルに依存してしまうかもしれない」というものです。医学誌『BMC Research Notes』2014年10月20日号(オンライン版)に掲載されています(注1)。
研究者らはまず側坐核について研究をおこないました。側坐核が身体のどの部分と関連しているかについて調べると、慢性腰痛がある人では側坐核の機能が変化していることが分かったそうです。
そこで研究者らは、慢性腰痛があるグループと、健康で腰痛のない対照グループを比較しました。ギャンブルを実践してもらい、fMRI(機能的MRI、通常のMRIに加え脳の血流を評価することができる検査)を用いて側坐核の状態を解析し、報酬行動との関連性を比較検討しています。
その結果、慢性腰痛があるグループでは、報酬獲得への感受性が有意に高い、つまりギャンブルにのめりこみやすいことが分かったそうです。
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この研究が興味深いのは、ギャンブル依存という精神的な病態と腰痛という身体的な病態が側坐核という共通項で関連づけられているということです。
もちろん腰痛には様々な要因があり、例えば腰椎椎間板ヘルニアによる腰痛の人がギャンブル好きとはいえないでしょう。しかしながら、画像検査をいくらおこなっても原因のよく分からない腰痛は非常に多く、最近では腰痛のほとんどが精神的な要因であろう、という考えもでてきています。もしかすると、こういう腰痛もちの人のいくらかは側坐核に問題があるのかもしれません。
この研究を臨床に応用するのは時期尚早です。先に側坐核に問題があり、その結果としてギャンブル依存や腰痛が生じるのか、腰痛が先にあり側坐核に影響を及ぼしその結果ギャンブル依存になっていくのか、あるいは元々ギャンブル依存があると側坐核が機能的に変性しその結果腰痛が生じるのか、そのあたりは分かりません。
ですが、重度のギャンブル依存の人がもし腰痛があるなら、先に腰痛の治療を試みるのは価値があるかもしれません。あるいはその逆に、原因不明の難治性の腰痛があるという人でギャンブル依存症があるなら、自助会や患者会などを利用して、ギャンブル依存の克服に努めるのはやってみてもいいかもしれません。
(谷口恭)
注1:この研究のタイトルは「Risky monetary behavior in chronic back pain is associated with altered modular connectivity of the nucleus accumbens」で、下記のURLで全文を読むことができます。
http://www.biomedcentral.com/1756-0500/7/739
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|2014年11月8日 土曜日
2014年11月8日 グレープフルーツでダイエット
すでに糖尿病がある人や、その予備群の人、あるいは血糖値は正常だけれどもダイエットをしているという患者さんから言われる言葉に「果物は糖分が多いので食べないようにしています」というものがあります。
また、医療従事者の中にも、果物の摂取が血糖コントロールに悪影響を与えることを懸念する声もあります。
しかし、果物の制限は不要という意見もありこれを実証した研究があります。医学誌『Nutrition Journal』2013年3月5日号(オンライン版)(注1)に掲載された論文によりますと、肥満があり糖尿病の診断がついている患者に対して、果物摂取を制限しても血糖値や体重減少がみられることはないようです。
この論文が正しいとすると、肥満があっても糖尿病があっても好きな果物をやめる必要はない、ということになるわけですが、さらに「グレープフルーツで血糖値改善+体重減少」という論文が出ましたので紹介したいと思います。
医学誌『PLOS one』2014年10月8日号(オンライン版)に掲載された論文(注2)でマウスにグレープフルーツを与えた実験が紹介されています。実験では12匹のマウスを2つのグループに分け、双方に高脂肪食を与えながら、一方のグループにはグレープフルーツジュースを、もう一方のグループには水を飲ませています。
100日後、グレープフルーツを与えたグループのマウスは、水のグループに比べ体重増加は18%低く、血糖値も13%低かったそうです。
研究者は、グレープフルーツに含まれるnaringin(ナリンギン)と呼ばれる成分に血糖値を下げる効果があることを確認したそうです。
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この研究はマウスを対象としたものでヒトでも同様の効果が得られるかどうかは判りませんし、食事療法の大原則として「同じものばかりを摂取するのはNG」です。間違ってもグレープフルーツジュースを1日1リットルというような日課を課してはいけません。
しかしながら、過剰な効果は期待しない方がいいとは思いますが、グレープフルーツが好きな人は積極的に摂取してもいいと思います。糖尿病(予備軍も含めて)のある人や体重を気にしている人たちのなかには、日頃から食事制限で辛い思いをしている人も少なくありません。グレープフルーツが好きな人はどんどん食べればいいと思います。
ところで、以前私はある患者さんから「あたしはマンゴーとドリアンが大好きなんですけど食べ過ぎると太りますか?」と質問されて答えに困ったことがあります。この患者さん(女性)は東南アジアが大好きで年に4~5回は短期旅行にでかけるそうです。
熟れたマンゴーやドリアンはたしかにかなり糖分が多そうで、グレープフルーツとは同じように考えられないかもしれません。このようないかにも糖分が多そうな果物の研究について知っている人がいれば教えてください。
(谷口恭)
注1:この論文のタイトルは「Effect of fruit restriction on glycemic control in patients with type 2 diabetes – a randomized trial」で下記のURLで全文を読むことができます。
http://www.nutritionj.com/content/12/1/29
注2:この論文のタイトルは「Consumption of Clarified Grapefruit Juice Ameliorates High-Fat Diet Induced Insulin Resistance and Weight Gain in Mice 」で下記のURLで全文を読むことができます。
http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0108408
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|2014年11月7日 金曜日
2014年11月7日 米国のA型肝炎流行は輸入ザクロが原因
このサイトの「はやりの病気」の第127回(2014年3月号)「A型肝炎に要注意、可能ならワクチンを」でお伝えしましたように、日本では今年(2014年)A型肝炎が流行しました。米国では2013年に複数の州でA型肝炎がアウトブレイクしたのですが、その感染経路が特定され医学誌『The Lancet Infectious Diseases』2014年9月4日号(オンライン版)(注1)に掲載されましたので紹介します。
2013年3月31日から8月12日に米国の10の州で合計165人がA型肝炎を発症しています。このうち153人(93%)がA店のBという商品(イチゴ、ラズベリー、ブルーベリー、チェリー、ザクロの実を含む冷凍ミックスベリー)を摂取していたことが判りました。合計69人(42%)が入院し、2人(1%)が劇症肝炎を発症し、そのうち1人は肝移植まで実施したそうです。幸いなことに死亡者はなかったようです。
A型肝炎を発症した人から採取した検体を用いて遺伝子解析をおこなった結果、トルコから輸入されたザクロが疑わしいことが判明しました。
A店は顧客カードに基づいて商品Bを購入した約25万人の顧客に電話で連絡し、Bを食べないように指導したそうです。さらにA店は、1万人を越える顧客のワクチン代金を支払っています。
尚、アメリカでは2006年より生後12~23ヶ月の小児全員にA型肝炎ウイルスのワクチン接種をしており、小児での感染者はゼロだったようです。
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この論文を読んで私が驚いたのは、A店及び行政の対応です。25万人に電話連絡し謝罪するのも大変だと思いますし、1万人以上のワクチン代金を負担したということに驚きました。また、暴露後(商品Bを食べた後)2週間以内の人にワクチンと免疫グロブリンを速やかに投与した州や地域の保健局の対応も見事です。
同じことが日本で起こったとき、果たして今回のアメリカと同様の対応ができるでしょうか。
A型肝炎ウイルスが混入したザクロを輸出したトルコがけしからん!と感じる人、あるいは、輸入時に検疫をすべき、と考える人もいるかもしれません。しかし、A型肝炎ウイルスというのは、日本や欧米を除いた地域ではいくらでもありますから、私自身の考えをいえば、国に頼るのではなく対策は個人でおこなうべきです。
日本でのA型肝炎の発症の原因で最も多いのは生ガキの摂取です。次いで多いのは海外(特にアジア)で屋台などの現地料理を食べての感染です。タイの大洪水以降、A型肝炎ウイルスのワクチン接種希望者が増えていますが、無関心の人も依然少なくありません。
ワクチン後進国のこの日本で、米国のようにA型肝炎ウイルスのワクチンが定期接種に組み入れられるのは現時点では絶望的だと私は思っています。ならば自分の身は自分で守るしかありません。
劇症肝炎を起こしたアメリカ人は肝移植で救われたようですが、日本ではアメリカほどスムースに肝移植がおこなえるわけではありません。生ガキを食べたい人(ただし生ガキはノロウイルスのリスクもあることをお忘れなく)、海外(特にアジア方面)に行く人は、自分の身を守るためにワクチン接種を検討すべきです。
(谷口恭)
参考:はやりの病気第127回(2014年3月号)「A型肝炎に要注意、可能ならワクチンを」
注1:この論文のタイトルは「Outbreak of hepatitis A in the USA associated with frozen pomegranate arils imported from Turkey: an epidemiological case study」で、下記のURLで概要を読むことができます。
http://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099%2814%2970883-7/abstract
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|2014年10月29日 水曜日
2014年10月29日 糖尿病新薬「SGLT2阻害薬」服用で5人が死亡
今年(2014年)になり、糖尿病の新しい薬「SGLT2阻害薬」が次々と発売になり、現在6つの製品(スーグラ、フォシーガ、ルセフィ、デベルザ、アプルウェイ、カナグル(9月3日発売))が発売されています。さらに、今年中にもう1種類「エンパグリフロジン」という一般名のものが発売になる予定です。わずか1年で同じ機序の薬が7種類、それも合計で15もの製薬会社が発売するという過去に例をみない事態となっています。これは、それだけSGLT2阻害薬が大きなマーケットになっているということです。
新しい薬が発売になるときは、しばらくの間は副作用に注意しなければならないのですが、医療ニュース2014年7月3日「糖尿病新薬「SGLT2阻害薬」の副作用」でお伝えしたように2014年6月13日の時点で脳梗塞3例を含む重篤な副作用が報告されています。
その後の副作用の情報が『日経メディカル』2014年10月17日号(オンライン版)でまとめられているので、ここで簡単に報告したいと思います。同誌によりますと、これまでで合計5人の死亡例が報告されています。
スーグラ服用者で1人、フォシーガが3人、デベルザ/アプルウエィで1人です。(デベルザとアプルウェイは同じもので、一般名は「トホグリフロジン」です)
いずれのケースも、これらSGLT2阻害薬の服用と死亡との因果関係は断定はできません。合計投与患者数は明らかでなく、医療機関が必ずしも届出をおこなっているとも限らず、正確な死亡発現頻度は不明です。また、どのSGLT2阻害薬でリスクが高いかといった比較ができるわけでもありません。
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合計5人の死亡は、SGLT2阻害薬との因果関係は断定はできませんし、仮にSGLT2阻害薬が原因だとしてもそのメカニズムは明らかにされていません。しかしながら、以前お知らせしましたように脳梗塞が3例発症したことと合わせて考えると、急激な脱水が起こったことが原因である可能性があります。
SGLT2阻害薬は、血中の”不要な”糖を尿と一緒に排出する薬です。ということは、糖と一緒に血中に”必要な”水分も排出してしまう可能性があります。実際、糖と一緒にナトリウムの排出が増えることが分かっており、ナトリウムの排出が増えると水分の排出も増えるのです。
ここからいえることは、SGLT2阻害薬を内服するときは水分摂取に気をつけよう、ということになります。しかし、糖尿病のせいで尿量が多いために日頃から積極的に水分を摂取しているという人も多いわけで、そのような人たちに「さらに水分を・・・」というのは大変かもしれません。
どうしてもSGLT2阻害薬が必要な人は、そのあたりに注意して服用を続けなければなりませんが、果たして、「どうしてもSGLT2阻害薬が必要な人」はそんなに多いのでしょうか。古くから使われている安くて安全な薬もあるわけです。
わずか1年で同じ機序の薬が7種類、それも合計で15もの製薬会社が発売するという事態が私には異様に感じられます・・・。
(谷口恭)
参考:
医療ニュース2014年7月31日「糖尿病新薬「SGLT2阻害薬」の副作用」
はやりの病気第125回(2014年1月)「糖尿病治療の変遷」
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|2014年10月27日 月曜日
2014年10月27日 歩く速度が遅いのは認知症のリスク
認知症のリスクにはいろんなことが言われていて、生活習慣病や喫煙はその最たるものです。その逆に、認知症のリスクを下げる方法には絶対的なものはありませんが、運動がリスク低下につながるとした報告はいくつかあります。
では、運動不足はどうかというと、直感的には運動不足は認知症のリスクにつながりそうです。今回は「運動不足」ではなく「歩行時の速度」ですが、認知症のリスクについて興味深い研究が発表されましたので紹介したいと思います。米国Yeshiva University(イェシーバ大学)のJoe Verghese氏らがおこなった研究が医学誌『Neurology』2014年8月19日号(オンライン版)に掲載されました(注1)。
研究者らは、まず「運動認知リスク症候群」(motoric cognitive risk syndrome, 以下MCR)という概念に注目しています。この概念は、まだ日本の教科書などには登場していませんが、近年少しずつ注目されるようになってきており、定義としては「遅い歩行速度と軽度の認知異常がある状態」となると思います。
今回の研究の対象者は、認知症になっていない60歳以上の男女26,802人です。過去におこなわれた疫学データを分析し、MCRと認知症の関係が調べられています。
研究開始時点で全体の9.7%がすでにMCRと呼べる状態になっていたそうです。高齢になる程有病率は高くなったものの男女差はなかったようです。また、興味深いことに高学歴者にMCRは少なかったそうです。
次いで、最長で12年間にわたる対象者の追跡調査がおこなわれました。その結果、研究開始時点でMCRの診断がついていた人は、そうでなかった人に比べて認知症の発症率が約2倍であることが判ったそうです。
MCRの診断で歩行速度が「遅い」とされるのは、時速3.5キロメートル以下だそうです。
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この研究が興味深いのは、認知症の決定的なリスクが分かりにくいなかで「歩く速度」という客観的な観察がしやすい事象に注目していることです。認知症の初期というのは、本人からも家族からもなかなかわかりづらいものであり、自他が気付いたときにはすでに進行していて薬開始のタイミングが遅れた・・・、ということがよくあります。
ただ、MCRは、認知症が起こり始めているから歩行速度が遅くなるのか、歩行速度が遅くなることで認知症のリスクが上がるのかは現時点の研究では判定できません。前者であれば予防にはつながりませんが、後者であればもしかすると日頃から歩行速度を速くするように意識することで認知症のリスクが低減できるかもしれません。
歩行速度を速くすれば、生活習慣病の予防にもなりますし、適正体重の維持にもつながります。逆に、交際を開始しだしたばかりのカップルのデートやウィンドウショッピングを除けば、歩行速度を遅くしていいことはあまりなさそうです。
ならば通勤時の歩行速度を速くして、仲睦まじいカップルは速歩きを心がけたウォーキング・デートを考えてみてはどうでしょうか。
(谷口恭)
参考:
メディカルエッセイ第141回(2014年10月)「速く歩いてゆっくり食べる(前編)」
医療ニュース(2010年4月14日)「歩くのが速い女性は脳卒中を起こしにくい」
注1:この論文のタイトルは「Motoric cognitive risk syndrome Multicountry prevalence and dementia risk」で下記URLで概要を読むことができます。
http://www.neurology.org/content/83/8/718.short?sid=06e461c3-cb03-48d0-b1e0-ee5d0684c385
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|2014年10月17日 金曜日
2014年10月17日 AB型は認知症のリスクが上昇
すでに一般の雑誌などでも取り上げられているようですが、血液型がAB型の人は認知症のリスクが上昇する、という研究が話題になっています。医学誌『Neurology』2014年9月30日号(オンライン版)にこの論文(注1)が掲載されています。
研究では、45歳以上のアメリカ人の被験者約3万人を対象として記憶力・思考力の検査を実施し、3.4年後に再検査を行っています。被験者のうち、認知機能障害(cognitive impairment)があると診断された495人と、スコアが正常であった587人の対照者を比較し、血液型の違いが調べられています。
その結果、血液型がAB型の人は、思考能力の低下が起きる比率がO型の人よりも82%高かったそうです。AB型は米国人口の約4%を占めるそうです。(ちなみに、米国は相対的にAB型の人が少なく、日本では全人口の10%がAB型と言われています)
この研究で研究者らは、第Ⅷ因子にも注目しています。第Ⅷ因子というのは血液凝固に関連する物質で、これが遺伝的に体内でつくられないのが血友病です。血友病の人は無治療でいるとが出血が止まらなくなりますから、定期的に注射で第Ⅷ因子を補わなければなりません。
AB型→第Ⅷ因子高値→血液凝固が亢進→認知機能障害、と研究者らは考えたようですが、結果としてはAB型と第Ⅷ因子高値の相関はそれほど高くなく、AB型で第Ⅷ因子高値による認知機能障害が起こったと推測されるのは18%のみだったようです。
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AB型の人はこのような報告を聞くといい気持ちがしないでしょうが、今回の研究だけでAB型は認知症の絶対的なリスクとまで言い切れません。(この研究に影響を受けて、AB型の子どもを避けるためにA型とB型のカップルが出産を諦める、などというのはあまりにも馬鹿げています)
この研究で認知機能障害がみられた被験者は、喫煙率が高く、高血圧・糖尿病・心疾患・高コレステロール血症などを有する比率も高かったようです。
今のところ、認知症を確実に予防できる方法というものは確立されていませんが、基本的な生活習慣病の予防をしていくのが最も現実的な対処法と考えるべきでしょう。尚、私は生活習慣病を防ぐための「10個の習慣」を推薦しています。興味のある方は下記コラムを参照ください。
(谷口恭)
参照:メディカルエッセイ第129回(2013年10月)「危険な「座りっぱなし」」
注1:この論文のタイトルは「ABO blood type, factor VIII, and incident cognitive impairment in the REGARDS cohort」で、下記URLで概要を読むことができます。
http://www.neurology.org/content/83/14/1271.abstract?sid=008bc994-e140-4fe4-896d-b51a15892c57
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|2014年10月6日 月曜日
2014年10月6日 東京のカレー屋で腸チフスの集団感染
2014年9月に東京で最も話題になった感染症といえばなんといってもデング熱であり、その他の感染症はほとんど注目されなかったと思います。デング熱以外に、どうしても看過できない感染症の報告が東京都千代田区でありましたので、遅くなりましたがここでお伝えしておきたいと思います。
その「どうしても看過できない感染症」とは腸チフスです。
2014年9月10日、東京都は、東京都千代田区麹町のカレー屋「D」で食事をした9~40歳の男女合計8人が下痢や発熱などの食中毒症状を訴え、そのうち6人から腸チフス菌が検出されたことを発表しました。今回の腸チフスの報告がなぜ見逃せないかというと、海外から帰国した直後の腸チフスの報告はしばしばありますが、今回のように国内での感染、しかも集団食中毒というのは最近ではなかったからです。(少なくとも厚労省で統計をとりだした2000年以降での報告はありません)
東京都によりますと、症状を訴えた8人は、2014年8月8日前後に「D」が調理した食事や弁当を食べたようです。重症化した6人が入院しましたが全員が治癒したそうです。「D」は9月6日から営業を自粛し9月15日から再開しています(注1)。
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一般に、腸チフスは衛生状態が良くない地域に発生する感染症で、日本でも戦前から戦後しばらくの間はそれなりに感染者がいましたが、環境衛生の改善で、国内での感染はほぼなくなりました。今も年間100例程度の報告はありますが、これらはほぼすべて海外で感染したケースです。特にインド、パキスタンなど南アジアでの感染が目立ち、(なぜか)東南アジアではあまりありません。
今回はカレー屋での発症ですから、南アジアから輸入した食材に含まれていた可能性が高いと考えられます。腸チフスはヒトからヒトへの感染はありませんし、デング熱のように他の生物が媒介することもなく、食べ物以外からの感染はほとんどありませんから慌てる必要はないと思います。
ただし、南アジア料理が普及するにつれ、このような事例は今後増えていくかもしれません。腸チフス菌に効果のある抗菌薬はたくさんありますから、耐性菌に悩まされる心配は(今のところ)ありません。ただ、他の細菌感染に比べて抗菌薬を比較的長期間使用しなければならないことが多く、診断がつけば入院になるのが普通です。
腸チフスの診断がつくのはときに遅れることがあるのですが、その理由のひとつは、必ずしも下痢が伴わないということです。むしろ便秘になることも多く、発熱や頭痛に皮疹が現れることもあり、患者さんからみれば、下痢も嘔吐もないことから食中毒は考えないのです。また、アジア帰りで、蚊に刺されたエピソードがあったりすると、医療者の方も先にデング熱やチクングニヤを疑ってしまいます。
腸チフスにはワクチンがありますが日本で認可されている製品はありません。腸チフスとよく似た感染症にパラチフスと呼ばれるものがあり、症状は腸チフスと似ておりやはり抗菌薬で治療します。ただしパラチフスにはワクチンはなく、腸チフスのワクチンを接種していてもパラチフスには無効です。
ちなみに、よく似た名前の感染症に「発疹チフス」というものがありますが、これはリケッチア属に属する細菌感染で、腸チフスやパラチフスの原因菌とはまったく異なり、治療法も違います(有効な抗菌薬のタイプが異なります)。では、なぜ似たような名前がついているのかというと症状(発熱、皮疹)が似ているからです。
さらにややこしいことに、腸チフス、パラチフスは英語ではそれぞれTyphoid Fever, Paratyphoid Feverというのですが、腸チフス菌、パラチフス菌を英語ではSalmonella Typhi、Salmonella Paratyphi Aと呼びます。つまり、これら2つの菌はサルモネラ属に属する、つまりサルモネラ菌と同じ仲間なのです。
このあたりがややこしくて、私は医学生の頃、覚えるのに苦労しました・・・。
注1:カレー屋「D」はその後閉店したようです
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|2014年9月29日 月曜日
2014年9月29日 世界の自殺者、ガイアナ、北朝鮮、韓国がトップ3
長い間日本は自殺大国と呼ばれてきました。1998年に年間の自殺者が初めて3万人を超え、警察庁の統計(注1)によると、その後2011年まで14年間連続で年間3万人以上の自殺者が続きました。2012年、2013年はいずれも3万人を下回っていますが、それでも依然、日本は自殺大国と感じている人が多いのではないでしょうか。
WHOによる世界の自殺者数の報告によりますと(注2)、2012年の日本の自殺者は人口10万人あたり18.5人です。これは決して少なくない数字ですが、世界にはもっと大勢の自殺者をうみだしている国もあり、日本は18位になります。
1位から20位を並べてみると(かっこの中の数字は人口10万人あたりの自殺者数)、ガイアナ(44.2)、北朝鮮(38.5)、韓国(28.9)、スリランカ(28.8)、リトアニア(28.2)、スリナム(27.8)、モザンビーク(27.4)、ネパール(24.9)、タンザニア(24.9)、カザフスタン(23.8)、ブルンジ(23.1)、インド(21.1)、南スーダン(19.8)、トルクメニスタン(19.6)、ロシア(19.5)、ウガンダ(19.5)、ハンガリー(19.1)、日本(18.5)、ベラルーシ(18.3)、ジンバブエ(18.1)となります。
地域でまとめてみると、南米2国(ガイアナ、スリナム)、東アジア3国(北朝鮮、韓国、日本)、南アジア3国(スリランカ、ネパール、インド)、旧ソ連5国(リトアニア、カザフスタン、トルクメニスタン、ロシア、ベラルーシ)、アフリカ6国(モザンビーク、タンザニア、ブルンジ、南スーダン、ウガンダ、ジンバブエ)、東ヨーロッパ1国(ハンガリー)となります。
自殺者が少ない(トップ20に入っていない)地域は、ハンガリー(及びリトアニア)を除くヨーロッパ諸国と北米とオセアニア、中東、そして東南アジアということになります。
自殺者が少ない地域はおおむね先進諸国に多いようですが、東南アジアに少ないことにも注目すべきでしょう。また、かつては自殺が多いと言われていた北欧諸国は相対的には多いとはいえません。
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マスコミの報道をみていると、「日本は先進国で〇番目」という表現をよくおこないますが、私はこのような報道の仕方に疑問を感じています。例えば読売新聞は2014年9月5日のオンライン版で「韓国1位の自殺者割合、日本は4位…高所得国で」というタイトルでこのWHOの報告を紹介し、日本を、韓国、リトアニア、ロシアに次いで4番目に自殺者数の多い国としています。
読売新聞がハンガリーを高所得国に入れないのはなぜでしょうか。1人あたりのGDPをみてみると、リトアニアが16,529ドル、ハンガリーが19,449ドルで、リトアニアを高所得国とするならハンガリーも入れなければならないことになります。もっとも、この数字はwikipediaに記載されたものですから私のこの意見も信憑性はありません。私が言いたいのは、ハンガリーを高所得国に加えるべき、ということではなく、高所得とそうでない国を分けて自殺者を論じることにどれだけの意味があるのかが疑問、ということです。
さて、自殺の国際比較というのは日本では内閣府自殺対策推進室がときどき発表していますし、先進国だけのものならOECDも公表しています。今回のWHOの発表がおそらく一番新しいものと思われますが(ただしWHOのサイトには更新した日付が記載されていません)、私の知る限り、これまでのどのデータでもガイアナを1位としたものはありませんでした。
ガイアナはカリブ海に面する南米の国で、以前はガイアナではなく「ギアナ」と呼ばれていたはずです。今でもあのあたりの高地は「ギアナ高地」と呼ばれており、テーブルマウンテンと呼ばれる台形状の切り立った山は観光地として有名です。6位にランクされているスリナムはガイアナの東に位置しています。
南米のラテン系の民族は自殺から最もほど遠い、と言われることがありますが、これはすでに過去のことなのでしょうか。もっとも、この2国を除けば南米だけでなく中米も含めて自殺者数はさほど多くありません。北米も相対的には多いとはいえません。では、なぜガイアナ、スリナムの2国のみ突出して自殺者が多いのでしょうか。私には皆目見当がつきませんが、この理由は調べる価値があるのではないかと思います。
自殺する理由は人それぞれでしょうが、地域に偏りがあるということは何らかの文化的・社会的な背景があるはずです。貧困や社会格差、社会保障制度、医療へのアクセス、地域社会ネットワークの充実度など様々な要因があり、これらの分析はかなり複雑になるとは思いますが、自殺学を研究している人たちに是非頑張ってもらいたいと思います。
我々のように日々患者さんをみている医療者にとって、患者さんが自殺するということは何としても避けたいのですが、残念ながらなかにはそのような選択をする患者さんがいます。医療者による自殺のリスクを図る検査の研究や自殺を減らす食事などの研究も増えてきていますが実用化には至っていません。少しでも自殺を防ぐために、医療以外の観点からの自殺に対する考察に私は期待しています。
(谷口恭)
注1:警察庁の自殺統計に基づく自殺者数の推移等は下記のURLで閲覧できます。
http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/toukei/pdf/saishin.pdf
注2:WHOのこのデータは下記URLで閲覧できます。
http://apps.who.int/gho/data/node.main.MHSUICIDE?lang=en
参考:
メディカルエッセイ
第27回(2005年11月)「なぜ日本人の自殺率は高いのか①」
第28回(2005年12月)「なぜ日本人の自殺率は高いのか②」
第29回(2005年12月)「なぜ日本人の自殺率は高いのか③(最終回)」
医療ニュース
2014年9月2日「血液検査でわかる自殺のリスク」
2013年11月11日「自殺のリスクが低くなる食事とは」
2013年1月31日「自殺者が3万人を切ったものの・・・」
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|2014年9月5日 金曜日
2014年9月5日 デング熱騒ぎで報道されない2つの重要なこと
連日マスコミで報道されているように、現在代々木公園付近でデング熱に感染した症例があいついでいるようです。厚生労働省に よると、2014年9月4日までに12都道府県で合計59人が確認されており、いずれも最近の海外渡航歴はなく代々木公園付近での感染が疑われているようです。
また、2014年9月4日、東京都は代々木公園内で採集した蚊からデング熱ウイルスが検出されたことを発表し、同日午後2時から公園の大半を閉鎖しました。
では公園閉鎖で充分かと言えば、蚊は風にも流されますから、デング熱ウイルスを保持した蚊が代々木公園の外にいる可能性も充分にあります。(私の率直な感想を言えば、まさか公園が閉鎖されるとは思ってもみませんでした)
さて、このようなことはマスコミでも報道されていますから、このサイトでとりたててお伝えする必要はないのですが、マスコミが報道しないことで周知されなければならない2つのことをここで述べたいと思います。
1つめは、代々木公園以外で感染する可能性のある場所についてです。
そもそもなぜ空港から離れた代々木公園でデング熱が発生したのかというと、代々木公園にいた日本の蚊がデング熱を持っている人を刺したときに血液と一緒にデング熱ウイルスも吸い込み、それを別の人を刺したときに感染させたから、と考えられています。
では、デング熱を持っていた人は誰なのかというと、もちろん海外から帰国した日本人の可能性もありますが、代々木公園という場所に今一度注目してみましょう。代々木公園は毎週のように様々なイベントがおこなわれており、外国人が中心となるものも少なくありません。
ここからの私のコメントは物議を醸すことになるかもしれませんが、大切なことなので誤解を恐れずに言いたいと思います。代々木公園では8月2日と3日に「アセアンフェスティバル2014」が、8月16日と17日には「カリブ中南米フェスティバル」が開催されています。アジアもカリブ海も共にデング熱の流行地域です。つまり、これらのフェスティバルの参加目的で来日した外国人が持ち込んだ可能性があるということです。
ここで私が主張したいのはデング熱を持ち込んだ”犯人”を探せ、ということではもちろんありません。アジアや中南米の人たちを排斥せよ、と言っているわけでももちろんありません。そうではなくて、アジアや中南米から日本にやってくる人のなかには、自身も気付いていないけれどデング熱ウイルスを持っている可能性がある、ということを言いたいのです。デング熱は軽症もあれば不顕性感染(感染しても無症状)の場合もあります。
日本でこのようなかたちでデング熱の流行がおこった以上は、代々木公園に行かなくてもアジアや中南米の人たちが集まる場所に行くときは「蚊対策」をしっかりしましょう、ということが、私が主張したい「マスコミが報道しない重要なこと」の1つめです。
デング熱の予防については過去にこのサイトで取り上げていますし、マスコミも報じていますが、基本的なことは長袖長ズボンと、DEETと呼ばれる虫除けスプレー・クリームです。ただしDEETは日本製のものは有効成分の濃度が不十分と指摘されることがあります。(ちなみに私はアジアに渡航する際、到着日に現地のコンビニでDEETを購入します) DEETはけっこうな割合でかぶれる人がいます。そういう人にはシトロネラと呼ばれるアロマがおすすめですが、何度も塗り直す必要があります。
さて、デング熱でもうひとつの「マスコミが報道しない重要なこと」は、デング熱の可能性があれば(つまり原因不明の熱が出現すれば)市販の鎮痛薬を安易に飲まない、ということです。絶対に避けるべきなのは、サリチル酸系の鎮痛剤で、薬局で買えるものの代表は「バファリン」です。(製薬会社の方はどうか「営業妨害」と思わないでください)
また、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)も注意が必要です。例えば「イブプロフェン」と呼ばれる鎮痛剤を含む「イブ」や「リングルアイビー」は避けるべきでしょう。
もしもデング熱ウイルスに感染しているときに、サリチル酸系の鎮痛薬やイブプロフェンなどのNSAIDsを内服すると、場合によっては全身から出血が起こり、アシドーシスという血液中に酸が異常に蓄積する危険な状態になることがあります。
では何を飲めばいいのか、ということですが、高熱があればデング熱かどうかにかかわりなく医療機関を受診すべきです。クリニックに行くほど高熱でもないし、倦怠感もたいしたことがない、けどデング熱が心配、という場合は何を飲めばいいかというと、アセトアミノフェンを選択するのが賢明です。代表的な市販のアセトアミノフェンは日本では「タイレノール」です。(念のために断っておくと私はタイレノールを販売しているジョンソン・エンド・ジョンソンと何の利害関係もありません)
アセトアミノフェンは、まったく危険性がないとは言いませんが、世界中で新生児から高齢者まで広く使用されている解熱鎮痛剤で、原因不明の発熱のときにも用いることができます。(ちなみに私は海外渡航時には常にアセトアミノフェンを持参し、切れたときは現地の薬局で購入しています)
繰り返しになりますが、アジアや中南米から渡航した人が集まる場所ではそこに蚊がいればデング熱のリスクが上がるということ、感染を疑ったときは鎮痛剤の選択に注意しなければならないということ、この2つはしっかりと覚えておくべきだと私は思います。
(谷口恭)
参考:
はやりの病気第126回(2014年2月)「デング熱は日本で流行するか」
医療ニュース2014年8月29日「デング熱の国内感染が確実」
メディカルエッセイ第97回(2011年2月)「鎮痛剤を上手に使う方法」
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