医療ニュース
2015年3月30日 月曜日
2015年3月30日 変わってきたピーナッツアレルギーの予防
ピーナッツアレルギーはときに重症化することが知られています。(私の知る限り)日本で死亡した例はありませんが、海外(特に西欧)ではときに死亡例が報告されています。また、過去10年で西欧では発症者が2倍になったとの報告もあります。
ピーナッツアレルギーの特徴として、増加していることと重症化すること以外では、小児期での発症が多いこと、卵やミルクなどのアレルギーとは異なり生涯にわたり継続することが多いこと、成人してからさらに悪化することがしばしばあること、ピーナッツだけでなく、アーモンド、クルミ、カシューナッツ、ピスタチオなど他のナッツ類に対してもアレルギーが起こりやすくなること、などがあげられます。
一方ではナッツ類は健康上極めて優れた食品であることが近年頻繁に指摘されるようになり、地中海料理が健康にいい理由のひとつにナッツ類がたくさん用いられることがあげられています。ナッツを積極的に摂取している人は長生きするという報告もあります(注1)。
積極的に食べれば健康に寄与して長生きできる、しかしアレルギーがあり重症化することもある、と聞かされれば、なんとしてもアレルギーを予防したい、と考えたくなります。
実際、子供へのピーナッツアレルギーを避けるために妊娠中にはナッツ類の摂取を避けるべきと言われた時代もありました。現在ではこれは否定されています。
医学誌『JAMA Pediatrics』2014年2月号(オンライン版)に掲載された論文(注2)によりますと、妊娠中の母親がナッツ類を多量に食べると、(母親自身がアレルギーでなければ)、生まれる子はナッツアレルギーになる確率が低いことが分かったそうです。
さらに興味深い研究が最近発表されました。医学誌『NEJM(The New England Journal of Medicine)』2015年2月26日号(オンライン版)に掲載された論文(注3)によりますと、早期にピーナッツに曝露される(早い段階でピーナッツを食べ始める)方が、ピーナッツアレルギーになりにくいことが判ったというのです。
この研究の対象者は、重症の湿疹か卵アレルギーのいずれか、または両方を有する640例の乳児(生後4ヵ月以上11ヵ月未満)です。対象者を2つのグループに分けて、一方はピーナッツを摂取してもらい、もう一方のグループではピーナッツを回避してもらっています。
60ヶ月が経過した時点で調べてみると、ピーナッツを摂取していたグループの方がアレルギー発症が有意に低下していたそうです。(回避していたグループの発症率は13.7%、摂取していたグループでは1.9%)
アレルギーが発症するかどうかはピーナッツエキスを皮膚に注射する方法で調べられています。小児の食物アレルギーについては、血液検査はあくまでも参考ですが、ピーナッツを回避していたグループでは特異的IgE抗体が上昇しており、摂取していたグループではIgG4抗体の上昇が認められたそうです。
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ピーナッツアレルギーはどのようにして成立するのでしょうか。すべての医師が認めているわけではありませんが、私はイギリスの免疫学者Gideon Lack氏が提唱している「食物アレルギーの機序についての二通りのアレルゲン曝露」で説明できると考えています。
この説は過去にも紹介しましたが(注4)、わかりやすく言えば、「アレルギーが成立するのはそれを食べるからではなく、それが皮膚の微小な傷などから体内に侵入するから」とするものです。つまり、ピーナッツを食べるのが問題なのではなく(むしろ食べることで「免疫寛容」ができアレルギーになりにくくなる)、ピーナッツが皮膚から侵入することで免疫システムがピーナッツを「敵」とみなす、というものです(注5)。
この説が正しいとするなら、例えば口の周りに湿疹がある赤ちゃんにピーナッツバターを食べさせるときなどには充分に注意しなければなりません。また、特に冬場の乾燥シーズンなどにはしっかりと保湿をしておくことで皮膚のバリア機能を保つ必要があります。その一方で、普通に食べさせることには問題がないというわけです。
この研究でもうひとつ興味深いことは血液検査のIgE抗体とIgG抗体です。アレルギーがあればIgE抗体が上昇するがIgG(4)抗体はアレルギーがない場合で上昇した、ということです。以前指摘しましたが(注6)、食物のIgG抗体を測定し「遅延型食物アレルギー」などと称した意味のないことを言われて苦しんでいる人が少なくありません。IgG抗体が食物アレルギーに無関係であることはこの研究からも伺えます。
注1 詳しくは下記医療ニュースを参照ください。
医療ニュース2014年1月6日「ナッツを毎日食べると健康で長生き」
注2:この論文のタイトルは「Prospective Study of Peripregnancy Consumption of Peanuts or Tree Nuts by Mothers and the Risk of Peanut or Tree Nut Allergy in Their Offspring」で、下記URLで全文を読むことができます。
http://archpedi.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1793699&resultClick=3
注3:この論文のタイトルは「Randomized Trial of Peanut Consumption in Infants at Risk for Peanut Allergy」で、下記URLで全文を読むことができます。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1414850
注4:下記コラムを参照ください。
メディカルエッセイ第136回(2014年5月)「免疫学の新しい理論」
注5:詳しくは『The Journal of Allergy and Clinical Immunology』という医学誌に掲載された論文を参照ください。タイトルは「Epidemiologic risks for food allergy」で、下記のURLで全文を読むことができます。この論文は大変有名なものです。
http://www.jacionline.org/article/S0091-6749%2808%2900778-1/fulltext
注6:下記医療ニュースを参照ください。
医療ニュース2014年12月25日「「遅延型食物アレルギー」に騙されないで!」
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|2015年3月20日 金曜日
2015年3月20日 海外旅行でいったいどこに行けばいいのか
2015年3月18日、チュニジアの首都チュニスにて、国民議会議事堂と国立博物館が武装集団により襲撃され、複数の観光客を人質に立てこもる事件が発生しました。3月20日時点で日本人3名の死亡が確認されています。
この事件との関係は明らかではないものの、チュニジアではISIL(イスラム国)に外国人戦闘員として参加した後に帰還している者がいることが確認されています。そしてこのような帰還者がテロを起こすことが懸念されています。
今回の事件を受けて、外務省は次のような注意喚起を発表しています(注1)。
・チュニジアの他、サウジアラビア、ヨルダン、モロッコ等のアラブ諸国についてもISILに参加した戦闘員が帰還している。
・欧米諸国も例外ではなく、フランス、イギリス、ドイツ、オーストラリア、ベルギー、オランダ等からISILに参加した外国人戦闘員が帰還している。
・テロの標的となりやすい場所(政府・軍・警察関係施設、公共交通機関、観光施設、デパートや市場など不特定多数が集まる場所)を訪れる際には、周囲の状況に注意を払うこと。
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この注意喚起を読んで「では注意しよう」と素直に思える人はどれくらいいるでしょうか。アラブ諸国はともかく、ヨーロッパやオーストラリアに旅行に行って、公共交通機関を使わずに、観光施設を訪れず、デパートや市場に行ってはいけない、と言われれば、では旅行先で何をすればいいのでしょうか。
とはいえ、私は外務省のこの注意勧告を批判したいわけではありません。国家としてこのような注意を促すのは当然でしょう。それだけISILが異常な集団であるということです。
太融寺町谷口医院の患者さんは、仕事、観光、ボランティア、留学などで海外に行かれる人が多く、そのための英文診断書作成やワクチン接種、マラリア予防薬や高山病予防薬の処方を日々おこなっています。私がすべての患者さんに注意しているのは、「海外では自分の身は自分で守らなければならない」ということです。
海外で何かあったときに外務省は頼りになりません。海外に渡航するときは、自分の行動に責任をとりリスクのある行為は慎まなければなりません。冤罪で逮捕されたときですら外務省は何もしません(注2)。
海外では助けてくれない外務省ですが、今回の発表はその通りです。今後世界史の教科書の多くのページにISILのことが書かれるかもしれない。私はそのように考えています。
注1:詳しくは外務省の下記ページを参照ください。
http://www2.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo.asp?infocode=2015C075
注2:詳しくは下記コラムを参照ください。
GINAと共に第99回(2014年9月)「薬物密輸の罠と罪」
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|2015年3月13日 金曜日
2015年3月13日 最大のストレスは「お金がないこと」
米国心理学会(American Psychological Association, APA)という学会があります。2015年2月4日、この学会が「Stress in America: Paying With Our Health」(日本語にすると、「アメリカのストレス~健康の代償~」くらいになるでしょうか)というタイトルのレポートを発表しました(注1)。
このレポートで最も興味深いのは、米国人の最大のストレス要因を「お金」としていることです。
レポートは、2014年8月に3,068人の米国人を対象におこなわれた調査に基づいています。調査の結果、ストレス源の第1位が「金銭上の悩み」で64%、2位以下は、仕事(60%)、家族への責任(47%)、健康問題(46%)と続きます。
金銭のストレスを強く感じているのは男性よりも女性に多く、年齢では50歳未満に多いようです。
このレポートでは、低所得者と高所得者の比較もおこなわれています。年収5万ドル(約600万円)以上を高所得者、以下を低所得者とすると、低所得者の方がストレスを強く感じていることがわかったそうです。同じ調査は2007年にもおこなわれており、このときは所得による差はなかったそうです。
精神的支えがない人とある人の比較もおこなわれています。過去1年でストレスが増大したと答えたのは精神的支えがない人では43%、支えのある人では26%となっています。
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お金がないのがストレスになるのは当然といえば当然で、格差が開いていくとさらに深刻になるでしょう。このレポートでは病気との関連性についてはあまり触れられていませんが、ストレスがいろんな疾患のリスクになるのは周知の事実であり、最近では低所得者の寿命が短いことも指摘されています。
ということは「お金がないこと」は二重の意味で健康に悪影響であるといえます。つまり、お金がないこと自体が生活習慣病などの罹患率を高め、またお金がないことによるストレスから多くの疾患のリスクを高めるのです。
このレポートを読んで、私は数年前にタイのある施設で知り合った日本人男性のことを思い出しました。
その男性は日本でリストラに合い、新しい仕事が見つからずに生活が困窮し、不眠と抑うつ感が出現し知人のすすめで精神科クリニックを受診したそうです。医師からは「うつ病」と診断され、何種類もの薬を処方してもらったものの何一つ効果はなかったそうです。
そこで、お金がかからずに住み込みでボランティアができるこのタイの施設にやってきたそうです。ボランティアに専念している時間は、気分は悪くないものの、将来のことを考えると憂鬱な気分が消えないそうです。この男性が興味深いことを言っていました。
「一生食べていける大金をもらえるか、安定した仕事に就けるなら、僕のうつ病はすぐに治ります。世の中のうつ病の大半は単にお金がないことが原因なんですよ・・・」
極論ではありますが、この男性の気持ちが分からなくはありません。お金がないことで病気が増えて医療費がかさむなら、初めからお金の不安を抱かせないような政策をとる、例えば生活保護を充実させる、というのはひとつの考えとして吟味すべきかもしれません。
「お金がない」ということとストレス、さらにいくつかの疾患との関連性については、私自身これからも考えていきたいと思います。
(谷口恭)
注1:このレポートは下記URLで全文が読めます。
http://www.apa.org/news/press/releases/stress/2014/stress-report.pdf
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|2015年3月6日 金曜日
2015年3月6日 Twitterでの表現が心疾患のリスクを予測
心筋梗塞などの虚血性心疾患のリスクとして「A型気質」がしばしば指摘されます。「A型気質」というのは性格のことで、血液型のA型とはまったく関係ありません。Active(活動的)、Aggressive(攻撃的)、Ambitious(野心的)、Angry(怒りっぽい)といった性格で、「頑張り屋で積極的。いわゆる”やり手”で出世するタイプ」です。さらに「真面目で努力家」とも言えると思います(注1)。
ときに、他人を蹴落としてまで出世を目指す、といったような否定的な感じで語られることもありますが、総じて言えばA型気質は悪くないキャラクターと認識されていると思います。辛いことがあってもそれを口にせず努力で解決する、といったイメージもあります。
ところが、A型気質とはある意味で正反対の性格が心疾患のリスクになる、という研究が発表されました。
Twitter上の言葉が否定的な人は心疾患死亡率が高い・・・
医学誌『Psychological science』2015年1月20日号(オンライン版)にこのような報告がされています(注2)。
この論文のポイントをまとめると次のようになります。
まず、Twitter上の表現が、否定的な社会関係や、離別(原文はdisengagement、おそらく嫌いな人と関係を絶つ、という感じの意味だと思います)、また否定的な感情、特に怒りを露わにしたものであれば、そういった言葉を使う人は心疾患による死亡率が高いそうです。
さらに驚くべきことに、Twitter上の表現による心血管系疾患死亡予測リスクは、一般的な人口統計学的因子(人種による差異など)、社会経済的因子(収入や職業による差異など)、そして、健康リスク因子(喫煙・糖尿病・高血圧症・肥満など)よりも正確だという結果がでたそうです。
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この研究が正しいなら、従来のリスク評価を根底から見直さなければならなくなります。私が日頃患者さんをみている印象として、何事にも否定的なコメントを述べる人は、あまり健康的でないイメージがありますが、かといって心疾患になりやすいとか、死亡しやすい、といったような印象はありません。
また、喫煙や糖尿病よりもTwitterでの否定的な表現の方が高リスクとは到底考えられません。もしも今回の研究が普遍的なものなら、健康診断のときは血液検査や血圧測定よりも、過去1ヶ月間のTwitterでの発言をチェックすることの方が重要ということになります。(それが事実なら、健診の費用も安くなり望ましいことですが・・・)
この研究を正しいとしてしまうには時期尚早であり、今後のさらなる研究を待つべきだと私は思います。
とはいえ、日頃からTwitterで否定的なコメント、特に怒りの感情を並べている人は、心疾患の一般的なリスク、つまり、喫煙、肥満などには注意すべきでしょう。
(谷口恭)
注1 以前、A型気質は心疾患だけでなく、AGA(男性型脱毛症)にもなりやすいのではないかという私の仮説を述べたことがあります。興味のある方は下記を参照ください。
医療ニュース2013年5月13日「男性型脱毛症(AGA)は心筋梗塞のリスク」
注2 この論文のタイトルは「Psychological Language on Twitter Predicts County-Level Heart Disease Mortality」で、下記URLで概要を読むことができます。
http://pss.sagepub.com/content/26/2/159.abstract
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|2015年2月28日 土曜日
2015年2月28日 温泉で痛みがとれてぐっすり睡眠
湯治(とうじ)という言葉があります。温泉地に長期間滞在し、温泉につかることで持病を治す、という治療法です。最近はそれほどおこなわれていないとは思いますが、今も一部の温泉ではリウマチなどの慢性疾患の患者さんが訪れるといった話をときどき聞きます。
ただ、こういった治療法は疾患ガイドラインに記載されているわけではありませんし、必ずしも効果が実証されているとは言い難く、標準的な治療とは呼べません。また、通常湯治では長期間の滞在が必要になりますから多くの人にとって現実的ではないでしょう。
しかし、小規模ながら温泉が様々な疾患に有効とする研究もあり、湯治のように温泉地に何ヶ月にもわたり滞在しなくても、今は交通手段も発達していますから、短い期間の温泉入浴が健康に寄与するなら考えてみたいものです。
12日間の温泉治療プログラムで、健康な高齢者の疼痛、気分状態、睡眠、抑うつ状態が有意に改善・・・
このような研究結果が医学誌『Psychogeriatrics』2014年12月16日号(オンライン版)に掲載されました(注1)。この医学誌のサブタイトルは「The Official Journal of the Japanese Psychogeriatric Society」で、日本語にすると「日本の老年精神医学会の公式な医学誌」となりますから、対象とされたのは日本の温泉かと思いましたが、スペインの温泉地での研究でした。
スペイン人の高齢者52名(男性23名、女性29名)を対象とし、12日間の温泉治療プログラムに参加してもらい、疼痛(pain)、気分(mood state)、睡眠(sleep)、抑うつ状態(depression)の改善度が評価されています。
その結果、温泉療法により、全員のすべての症状が改善したそうです。男女差もあったようです。疼痛については男性の方が改善度が高く、抑うつ状態については女性の方が高かったようです。
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この研究は規模がさほど大きくなく、症状の評価は主観によるものであり、科学的確証度(エビデンスレベル)が高いとは言えないかもしれません。しかし、参加した52人の全員の気分が良くなり、痛みがとれ、ぐっすり眠れるようになっているわけで、一方では、この治療による「副作用」は一切ありません。(入浴場で転倒するといったリスクはあるかもしれませんが)
温泉は世界中にあるといえばありますが、温泉地の数、質、衛生度、旅館の心地よさ、周囲の風景、食事、お酒、と、どの観点からみてもおそらく日本が世界一でしょう。日本の次は台湾でしょうか。(今回の研究の舞台となったスペインを含め南欧の温泉も有名なようですが私は詳しくありません・・・)
湯治とまでいかなくても、ぐっすり眠り気分を良好にし、身体の痛みを和らげるために温泉地に長期滞在する、あるいはリタイア後の人生を温泉地で過ごす、という高齢者が今後増えてくるのではないでしょうか。太融寺町谷口医院は旅行医学をおこなっている関係で、リタイア後の海外移住の相談をされる患者さんがときどきいますが、案外、海外よりも日本の温泉地の方が快適に過ごせるかもしれません。
(谷口恭)
注1:この論文のタイトルは、「Effect of a 12-day balneotherapy programme on pain, mood, sleep, and depression in healthy elderly people」で、下記URLで概要を読むことができます。
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/psyg.12068/abstract
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|2015年2月27日 金曜日
2015年2月27日 プラセボは「高価な」方が有効
「プラセボ」または「プラシーボ」という言葉はかなり有名だと思います。日本語では「偽薬」つまり、本当は薬でないのだけれど患者さんに薬と偽って処方する薬のことです。不思議なことにこのようなものでも効くときは効きます。(プラセボは英語ではplaceboで、これを無理にカタカナにすると、プラシーボ(シにアクセント)ですが、なぜか日本語の文章では「プラセボ」とされることが多いので、このサイトでもプラシーボではなくプラセボと表記することにします)
同じプラセボでも「高価な薬剤」と言えば高い効果が得られる・・・。
医学誌『Neurology』2015年1月28日号(オンライン版)にこのような研究結果が報告されています(注1)。研究内容は以下の通りです。
研究の対象とされたのは中等度のパーキンソン病の12名の患者です。2つのグループにわけて、一方には「1回あたり100ドル(約12,000円)の新しい薬」と伝え、もう一方には「1回あたり1,500ドル(約180,000円)の新しい薬」と伝え、同じように注射をしています。両方とも注射の中身は単なる生理食塩水です。
その結果、どちらのプラセボも症状改善に有効であり、高価なプラセボは安価なプラセボよりも高い効果が得られた、ことが分かったようです。
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なんだか倫理的に問題のありそうな研究に思えなくもないですが、その後被験者にはその注射がプラセボであったことを伝えたそうです。被験者のなかに、「高価な薬剤だからといって期待はしていなかった」と答えた人が4人いたそうで、この4人では偽薬の効果はあまり出ていなかったようです。
プラセボを上手く使いこなせるのが一流の医者、と昔どこかで聞いたことがありますが、私自身はまだまだその域に達しておらず、とてもそのような芸当はできません。ただ、なんとなくではありますが、医師としての経験が長くなるにつれてプラセボ効果は間違いなくある、というのが実感できるようになってきました。
そういう意味で、私自身は、例えばサプリメントの相談をされたときには「効果が実証できていないだけでなく有害性の報告もありますよ」というような説明をすることが多いのですが、すでに気に入って飲んでいる人には「そのまま続けてもいいのでは」と助言することも少なくありません。
(谷口恭)
注1:この論文のタイトルは「Placebo effect of medication cost in Parkinson disease」で、下記URLで概要を読むことができます。
http://www.neurology.org/content/early/2015/01/28/WNL.0000000000001282.short
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|2015年2月6日 金曜日
2015年2月6日 男性の喫煙は痛風を抑制
私は元喫煙者ですが、現在の立場は「すべての人が禁煙すべき」というものです。自分が喫煙していた頃は、禁煙推進者から「タバコには何のメリットもない」と言われると、「わずか5分間でリラックスできることと、喫煙所で友達ができることは明らかなメリットだ!」と反論していたのですが、医師になってからはこのようなことも言わなくなりました。
喫煙が身体にも精神にも有害だとする研究が相次ぎ、誰もが禁煙すべきというのは自明でしょう。しかし科学は公平でなければならず、盲目的になってはいけません。喫煙が身体に良いという研究があれば伏せてはいけないのです。
男性の喫煙は痛風の発症を抑制する・・・
この意外な結論が導かれた研究が医学誌『Rheumatology』2015年1月号(オンライン版)に掲載されました(注1)。
この研究は、研究開始時に痛風をおこしたことがなかった米国人の男性2,279人と女性2,785人を対象とし、1948年~2002年となんと最長54年間もの追跡データを解析しています。この間に痛風を発症したのは合計399人(男性249人、女性150人)です。発症者を喫煙者と非喫煙者に分けて発症率を分析したところ、全体(男女合算)では、喫煙者の発症リスクは非喫煙者の0.76倍と、なんとタバコを吸うことにより24%もリスクが低減されるという結果がでたのです。
これを男女別々で分析すると、男性ではリスクが0.68倍、女性では0.92倍と、女性よりも男性で有意にリスク低下があることが判ったのです。
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この研究に影響を受けて痛風発作を起こしたことがある人が喫煙を開始する、などということはあってはならないことであり、この論文の執筆者も喫煙をすすめているわけでは決してありません。
しかし、禁煙を開始した人が、その後尿酸値が高くなり痛風発作を起こすリスクがあるというふうには考えるべきでしょう。禁煙を開始するとほとんどの人は食欲が亢進し、一時的ではありますが体重が増えます。すると高血圧、高血糖、高脂血症という生活習慣病のリスクが上昇します。尿酸値も上がるのであれば、禁煙後の健診は非常に大切になってきます。もちろん一時的にこれらの数値が上昇したとしても、禁煙をおこなうことで生活習慣病のリスクが大きく下がることが最も重要なことです。
尚、なぜ喫煙で痛風が抑えられるかというメカニズムについては、プリン体から尿酸が生成されるときに必要となる「キサンチンオキシダーゼ」という酵素が、喫煙により不活化されるからではないかと考えられます。
(谷口恭)
注1:この論文のタイトルは「Cigarette smoking is associated with a reduction in the risk of incident gout: results from the Framingham Heart Study original cohort」で、下記のURLで概要を読むことができます。
http://rheumatology.oxfordjournals.org/content/54/1/91.abstract?sid=5c8d98e7-c04e-4eec-b3a8-002a2714ffe2
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|2015年2月2日 月曜日
2015年2月2日 寝る前のスマホやタブレットはNG
ここ数年、産業医学関連のトピックスで最も大きなもののひとつが「ブルーライトによる睡眠障害」です。具体的に言えば、スマートフォン(以下「スマホ」)やiPADなどのタブレットが放つブルーライトが目を疲労させ睡眠を妨げているという問題です。それを証明するような研究も出てきており、今回はそれを紹介したいのですが、まずは「ブルーライト」のおさらいからしておきましょう。
ブルーライトの定義は「波長が380~495nm(ナノメートル)の青色光」となります。そう言われても、物理が苦手な人などはピンとこないかもしれません。ここでは、すべての光線には「波長」というものがあること、光線は「紫外線」「可視光線」「赤外線」の3つに分類できること、「紫外線」はその波長が最も短いものということの3つを押さえておきましょう。そして、紫外線が身体に有害であるということは聞いたことがあると思います。
ブルーライトは可視光線のなかで最も波長が短い、つまり紫外線に最も近いという特徴があります。紫外線に最も近いわけですから可視光線のなかでは最も人体に悪影響を与えることになるのです。
最近は「ブルーライト」という単語を一般のマスコミなどでも聞く機会が増えてきています。これはLEDの普及によるところが多く、スマホやタブレットに使用されることにより、至近距離でブルーライトに暴露されることが増えているからです。
スマホやタブレットなどの電子書籍で読書をすると紙の書籍に比べ睡眠や生活リズムに悪影響を与える・・・
これは医学誌『Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)』2015年1月27日号(オンライン版)(注1)に掲載された研究結果です。
米国ボストンのBrigham and Women’s Hospitalの研究者の研究で、研究の対象者は男女各6人の成人12人(平均年齢24.92歳)です。彼(女)らに就寝前に紙の書籍または電子書籍を読んでもらい、睡眠や生活リズムにどの程度の違いが生じるかを分析しています。
その結果、電子書籍を読むと、紙の書籍に比べて、入眠までの時間が延長し、熟眠が妨げられ、また起床時にすっきり目覚められなくなるという結果が出たようです。
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この研究は対象者が少ないですから、これだけでブルーライトの危険性を論じることはできないかもしれませんが、電子書籍を寝る前に読むと、紙の本と比べると眠りにつきにくい、という経験をされた人も少なくないのではないでしょうか。
最近は企業などでパソコンやiPADのブルーライト対策を実施することが推奨されています。スマホやタブレットは自宅で(プライベートで)用いるでしょうから、各自が対策を立てるべきです。幸いなことに(少々値段は高いですが)ブルーライトカットのフィルムが販売されていますから使用を検討してもいいでしょう。
ちなみにiPAD用のブルーライトカットのフィルムは私自身も使用しています。フィルムを貼ると全体の色が少し黄色っぽくなりますが文字を読むのに不都合はありません。ただ、私自身は寝る前に本を読むと、それがiPADであっても紙の書籍であっても以前からすぐに睡魔に襲われていましたから、差は感じられませんが・・・。
(谷口恭)
注1:この論文のタイトルは「Evening use of light-emitting eReaders negatively affects sleep, circadian timing, and next-morning alertness」で、下記URLで全文(PDF)を読むことができます。
http://www.pnas.org/content/112/4/1232.full.pdf+html?sid=907ea559-844f-4e03-ad99-1eca5924c568
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|2015年1月31日 土曜日
2015年1月31日 やはりアジア人は太るべきでない
数年前から、少し肥満気味の方が長生きする、ということが指摘されています。最近私が患者さんから教えてもらった言葉に「ちょいメタボ」というものがあります。その患者さんによると、なんでも「ちょいメタボ」が最も健康であるようなことを言う専門家(?)がいるそうです。(尚、「ちょいメタボ」は「ちょいメタ」と呼ぶこともあるそうです)
たしかに海外では以前から肥満のグループの方が普通の体重よりも長生きするというデータがあることが指摘されていますし、日本でも、例えば約44,000人を対象とした東北大学の研究でもBMI25~30(注1)のグループが最も長生きした、というデータがあります。
しかしこのようなデータには「落とし穴」があります。それは数字だけを見ていても分かりません。実際に多くの患者さんをみて初めて分かることがあるのです。その「落とし穴」とは、多くの日本人にとってBMI25を越えると、肝機能障害や高血圧、高脂血症、糖尿病が増える、という事実です。つまりBMIが25~30が統計上長生きするのが事実だとしても、「健康」には生きていない人が少なくないということです。
では、なぜBMIが25~30の肥満傾向にあるグループの方が平均寿命が長くなるのでしょうか。それはこの程度の肥満であれば薬を使うことによって生活習慣病の合併症を防ぐことができるからではないか、と私は考えています。また、このグループの人たちは定期的に医療機関に通院している人が多く、例えばガンなどが早期発見されやすい、ということもあるかもしれません。
しかし人間は単に長生きすればそれでいいというわけではありません。やはり「健康に長生き」すべきです。私の印象で言えば「健康で長生き」している人は肥満のグループではなく「適正体重」の人たちです。また、これも私の印象ですが、特に90歳以上で健康な人たちのほとんどは適正体重であり、肥満者はめったにいません。
先に述べたように、私が日頃みている患者さんでいうと、ちょうどBMIが25を越えたあたりで一気に肝機能障害、高血圧、高脂血症、糖尿病などが増え出します。これらは生活習慣以外に「遺伝」で決まっている面もあり、日本人はこれら生活習慣病などに罹患しやすい遺伝子を持っていると言われています。
それを裏付けるような発表が米国糖尿病学会(American Diabetes Association)(以下ADA)から2014年12月23日に発表されました(注2)。
ADAは糖尿病のスクリーニング検査を推奨するBMI値を従来は25としていました。しかし、今回の発表で「アジア系アメリカ人」の住民については23に設定しなおしたのです。これは、多くのアジア系米国人が一般的なアメリカ人に比べると、BMIが低くても糖尿病を発症していることを示すデータがあるからです。
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この発表では「アジア系アメリカ人(Asian Americans)」のきちんとした定義が述べられておらず、どの程度アジア人の遺伝子が入った人かはわかりません。また、この発表では「アジア系アメリカ人」と「アジア人」の比較については言及されていません。しかし、常識的に考えて、低いBMIでも糖尿病になりやすいのは、アジア人>アジア系アメリカ人>一般的なアメリカ人、となるはずです。
ということは、やはり我々日本人は欧米人よりも糖尿病には気をつけるべきであり、「ちょいメタボが長生き」などと呑気なことを言うべきではありません。
おそらく「ちょいメタボが長生き」と主張する人たちは、公衆衛生学的な観点からしかみておらず、実際の患者さんを診ていないのでしょう。こういう人たちも、BMIが25程度で(2型)糖尿病がすでに進行してしまい、白内障や腎機能障害をおこしてしまっている患者さんを何人か診察すれば、「ちょいメタボが長生き」などという無責任な説をすぐに撤回するに違いない、と私は思います。
(谷口恭)
注1:BMIはBody Mass Indexの略で、体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割って算出します。例えば、体重88キログラム、身長2メートルの人であれば、88÷2の2乗=88÷4=22となります。
注2:ADAのこの発表のタイトルは「American Diabetes Association Releases Position Statement on New BMI Screening Cut Points for Diabetes in Asian Americans」で、下記URLで全文を読むことができます。
http://www.diabetes.org/newsroom/press-releases/2014/american-diabetes-association-releases-position-statement-on-new-bmi-screening-cut-points-for-diabetes-in-asian-americans.html
参考:医療ニュース
2012年8月27日「太っているだけなら早死にしない?」
2009年10月13日「「太りすぎ」が長生き?」
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|2015年1月30日 金曜日
2015年1月30日 妊娠中のアセトアミノフェンの是非は?
過去にこのサイトでお伝えしましたように(注1)、妊娠中のアセトアミノフェン使用が産まれてくる子どものADHD(注意欠陥・多動性障害)のリスクになるのではないか、との報告があります。
鎮痛剤には複数の種類がありますが、アセトアミノフェンはそのなかで最も安全性が高いとされているものであり、伝統的に最も頻繁に使われています。今後アセトアミノフェンがもしも妊娠中に使えなくなると、痛みのコントロールが大変困難になります。
2015年1月9日、FDA(アメリカ食品医薬品局)は妊娠中の鎮痛薬使用のリスクについての見解を発表(注2)しましたので、ここで簡単に紹介しておきます。
まず、妊娠中の痛みを放っておくリスクですが、FDAは「激しい痛みが持続すると、抑うつ状態や不安感、高血圧をひきおこすことがある」としています。これらは胎児に悪影響を与える可能性がありますから、妊娠中の激しい痛みは取り除くべき、ということになります。
FDAは鎮痛剤を3つのグループにわけて検討しています。1つはオピオイド(麻薬に近いもの)、2つめはNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)と呼ばれる鎮痛剤で、日本で有名なものをあげれば、ロキソニン、ボルタレンなどです。薬局で売っている薬ではイブ、ナロンエース、リングルアイビーなどが相当します。そして3つめがアセトアミノフェンです。
まず1つめのオピオイドですが、これは日本では妊婦さんに使用されることはほとんどないと思います。FDAは胎児に「神経管欠損」と呼ばれる先天異常が起こるリスクを指摘しています。
次にNSAIDsについてですが、FDAは確定的ではないものの、「流産」のリスクがある、としています。日本でもほとんどのNSAIDsは、薬局で売っているものも含めて妊娠中は飲んではいけないとされています。
問題のアセトアミノフェンについては、以前の医療ニュース(注1)で紹介した研究についても言及しています。FDAの見解としては、この研究をどのように解釈するかは困難であることを指摘し、現時点では妊娠中のアセトアミノフェン使用と産まれてくる子どものADHDとの関連性を示す確定的な確証(エビデンス)はない、としています。
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FDAも述べているように、妊娠中に耐えがたい持続する痛みが生じれば取り除くべきです。しかし、いくら飲んでも安心という薬はなく、リスクの少ない薬を必要最低限使用するということになります。
日本での妊娠中の使用については「おくすり110番」のサイトがうまくまとめられています(注3)。このサイトによると、やはりアセトアミノフェンが最も安全とされています。オーストラリア基準では唯一「A」が付けられています。
妊娠中にどうしても鎮痛剤が必要なときはやはりアセトアミノフェンの使用を考えるべきでしょう。しかし、痛みがでればアセトアミノフェン、と考える前に注意点を2つ紹介しておきたいと思います。
1つめは、痛みの予防をきちんとおこなうことです。特に頭痛の場合は、ストレスを避けて「同じ時間に起きて同じ時間に寝る」ということを心がけるだけでかなり防げる人もいます。
もうひとつは、同じ妊娠でも妊娠20週以降でアセトアミノフェンのリスクが上昇するという見方があります。つまり、20週以降は特に予防に注意すべきである、ということです。
(谷口恭)
注1:下記医療ニュースを参照ください。
医療ニュース2014年4月4日「妊娠中のアセトアミノフェンがADHDを招く?」
注2:FDAは「FDA has reviewed possible risks of pain medicine use during pregnancy」というタイトルでレポートしています。下記URLで全文を読むことができます。
http://www.fda.gov/downloads/drugs/drugsafety/ucm429119.pdf
注3:下記URLを参照ください。尚「おくすり110番」は鎮痛剤以外の薬についても妊娠中の使用の危険性をまとめており参考になります。
http://www.okusuri110.com/kinki/ninpukin/ninpukin_04-010.html
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