医療ニュース
2024年8月4日 いびきをかけば認知症のリスクが低下?
意外な研究結果です。一般には「ない方がいい」とされているいびきが「あれば認知症のリスクが低下する」というのです。
医学誌「Sleep」2024年6月29日号に掲載された「いびきと認知症のリスク:前向きコホートおよびメンデルランダム研究(Snoring and risk of dementia: a prospective cohort and Mendelian randomization study)」です。
研究の対象は英国のデータベース(UK Biobank)に登録された451,250人で、自己申告によるいびきの有無と認知症との関係が調べられました。フォローアップ期間が中央値で13.6年で、その間に8,325人が認知症を発症しました。
結果、驚くべきことに、いびきをかく人は認知症全体のリスクを7%、アルツハイマー病のリスクを9%低下させることが分かったのです。特に、高齢者とApoEε4をホモで持つ人(遺伝的にアルツハイマー病のリスクが最も高い人)でその傾向が強いことも分かりました。
メンデルランダム研究という方法で解析すると、アルツハイマー病は体重と関係がある(やせている方が発症しやすい)ことが分かりました。
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この研究には注意が必要です。一般に体重は重いほどいびきをかきやすくなります。そして、一般にアルツハイマー病では体重が減ってきます。ということは、いびきをかくから認知症のリスクが低いのではなく、認知症になったから体重が減って、その結果いびきが少ない、ということなのかもしれません。
つまり、若い頃からいびきをかく人が認知症のリスクが低いのではなく、高齢者でいびきが少ないということは体重が減ってきている可能性があり、その体重減少が認知症によるものかもしれないわけです。
そもそもいびきを伴う閉塞性睡眠時無呼吸症候群は認知症のリスクになることは明らかです。つまり、いびきをかく人は認知症のリスクが少ないと喜ぶのではなく、そのいびきが閉塞性睡眠時無呼吸症候群のサインではないかという点に注意しなければなりません。
ただし、すべてのいびきが閉塞性睡眠時無呼吸症候群と関係があるわけではありません。いくら音が大きくてもそのいびきが規則的であればまず心配いりません。他方、音が小さくても不規則ないびきや呼吸停止があるようなきちんと検査をすべきです。最近は、保険診療で簡単に夜間の計測ができるようになりましたし(当院でも実施しています)、(AppleWatchやAura ringなどの)ウェアラブルデバイスで睡眠の状態を調べることもできます。
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