医療ニュース

2009年4月30日(木) 太った方が長生きする!?

 成人後に太ると長生きし、やせると早死にする!

 このような従来の常識をくつがえすような研究結果が厚生労働省研究班によって発表され話題を呼んでいます。この研究は、全国(10都府県)の40から69歳の男女約88,000人を平均で13年間追跡調査することによって実施されています。

 対象者は、20歳の時から体重が、①5キロ以上減少、②5キロ以上増加、③変わらない(体重増減が5キロ未満)の3グループに分類され、死亡との関連が調べられています。
 
 調査期間中に合計6,494人が死亡しています。このうち、5キロ以上体重が減少した人は体重が変わらない人に比べ、男性で1.44倍、女性で1.33倍死亡率が高くなっています。
 
 その逆に、5キロ以上体重が増加した男性は、体重が変わらない人に比べ、死亡率が0.89倍と低くなっています。女性では有意な差がみられません。また、体重が10キロ以上増加した人でみても、男女ともに死亡率に大きな変化は認められません。

 これらの意外な結果に対し、この研究に携わった研究者は、「成人後に5から10キロ程度太るのは自然な現象。肥満の危険性が強調されることが多いが、体重減少も重視しないといけない」、とコメントしています。(報道は4月23日の読売新聞)

 尚、この研究は、ガンや循環器疾患などの病気、ダイエットによる激やせなどによる影響を除いた上でおこなわれています。

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 日本人の死因のトップである悪性腫瘍は体重が減少することが多いですし、糖尿病も悪化すればやせてきます。ですから、私がこの記事を初めて読んだときには、「やせるから早死にする」ではなく、「ガンや糖尿病になったからやせた」のだろうと感じました。ところが、よく調べてみると、上に述べているように、この研究ではそういった病気の影響は取り除かれています。

 にわかには信じがたいこの研究は、従来の定説をひっくりかえすことになります。この研究者は「成人後5から10キロ太るのが自然な現象」と言いますが、これだけ太れば、メタボリックシンドロームの診断基準である男性85センチ、女性90センチというウエストラインを超えてしまう人が少なくないと思われます。(もっとも、このウエストラインの基準には異論を唱える学者が多いのですが・・・)

 男性の場合、体重が変わらない場合よりも5キロ以上増えた方が、むしろ死亡率が下がるという結果にも驚かされます。私はこれまで患者さんに「だいたい20歳ごろの体重がその人にとってのベスト体重だと言われていますよ」と話すことが多かったのですが、これも”誤り”ということになってしまいます。

 今後患者さんにどのように生活指導をしていくべきなのか、医師として本当に悩まされます・・・。

(谷口恭)

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