医療ニュース

2018年7月30日 月曜日

2018年7月30日 ハワイの日焼け止め禁止の続報~多くの日本製も禁止に~

 医療ニュース2018年5月25日「日焼け止めが禁止されてもサプリメントはNG」でお伝えしたように、2021年1月1日よりハワイのビーチで一部の成分を含むサンスクリーン(日焼け止め)が禁止されることになります。

 その医療ニュースで、私は「日本人はさほど心配ない。なぜなら太融寺町谷口医院(以下「谷口医院」)では紫外線吸収剤が含まれているサンスクリーンは勧めていないから」と述べました。

 しかし一部の読者から「それは谷口医院の患者のことであり、紫外線吸収剤が含まれているサンスクリーンが一般的ではないのか」という指摘があり、たしかにその通りですので、今回はその点を補足しておきます。

 まず、ハワイ州が問題にしているサンスクリーンの成分は次の2つです。

・オキシベンゾン(oxybenzone)
・オクティノクセイト(octinoxate)=メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(Ethylhexyl methoxycinnamate)

 メトキシケイヒ酸エチルヘキシルは、日本のサンスクリーンで最も高頻度に用いられている紫外線吸収剤のひとつです。

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 これまで谷口医院では(サンスクリーンの相談をされる人のほとんどが肌が弱いということもあり)、サンスクリーンと言えば「紫外線吸収剤が含まれていないもの」を推奨してきました。ですが、上記読者の指摘にあるように、実際に市場に出回っているもの、積極的なCMがおこなわれているものは、ほとんどが紫外線吸収剤が含まれています。そして、その大半がハワイのビーチで禁止されることになる成分が含まれているというわけです。

 今のところ、ハワイのビーチ以外ではこのような禁止措置が取られるという情報は(私の知る限り)ありませんが、今後世界中で同じムーブメントが起こるかもしれません。肌がさほど弱くないという人も、今のうちに紫外線吸収剤を含まず紫外線散乱剤だけでできているサンスクリーンに変更した方がいいかもしれません。

 尚、上記医療ニュースでお伝えしたように「サンスクリーンに置き換わる錠剤やカプセルはない」ことをここで繰り返しておきます。

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

2018年7月19日 木曜日

2018年7月19日 すし詰めバスで22歳女性が脳梗塞

 深部静脈血栓症、DVT、ロングフライト血栓症、旅行者血栓症、エコノミークラス症候群、基本的にはこれらは同じ疾患を示しています。このなかで最も人口に膾炙しているのは「エコノミークラス症候群」だと思います。実際には、ビジネスクラスに座っていても発症しますし、例えば震災などで避難所に同じ姿勢でいたり、軽自動車のなかで眠ったりすればおこりますから、「エコノミークラス」という表現は適切ではないのですが、今も他の表現はなかなか社会に浸透していません。ここでは「深部静脈血栓症」で通します。

 今回紹介したい事例(”事故”と呼べるかも)も飛行機ではなくバスのなかで起こりました。

 2017年(何月かは不詳)、カンボジアからバンコクのすし詰め状態のバス(cramped bus)に14時間乗っていた22歳のスコットランド人の女性が脳梗塞を起こしました。最近(2018年5月)になって、海外のいくつかのメディアが報道しています(注1)。報道では、足にできた血の塊が原因で(つまり深部静脈血栓症が原因で)脳梗塞を発症したとされています。

 女性は左半身が麻痺しましたが、母国でのリハビリの結果、ほぼ完全に回復し5kmのマラソンにも出場したそうです。

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 この報道には疑問があります。メディアは医学系または科学系のものではなく、(どちらかというと)三面記事を中心に扱った媒体であるため仕方がありませんが、深部静脈血栓症が脳梗塞につながるわけではありません。下腿の静脈内にできた血の塊は肺の血管を閉塞して「肺梗塞」を起こすことはありますが、脳の血管をつまらせることは通常はありません。それが起こるのは心臓の壁に穴があいているときで、報道ではその可能性を指摘しているのですが、心臓に穴があいている疾患をもっているのならマラソンは危険です。

 ただ、すし詰めバスに14時間もいれば、容易に脱水状態になることが予想されます。それで、例えば(私の推測ですが)低用量ピルなど血栓を起こしやすい薬を飲んでいたとすれば脳梗塞が起こってもおかしくありません。

 また、この女性は血栓症のリスクとされている肥満や喫煙はなく、アルコールを飲んでいたわけでもないようですが、記事にはこの女性のコメントとして「my drink had maybe been spiked or I had eaten something dodgy」とあります。「飲み物に何か入れられた、あるいは何か危ないものを食べた」という意味ですからいわゆる「危険薬物」を摂取していたのかもしれません。

 いずれにしてもこういった旅行プランでは、深部静脈血栓症(さらには肺梗塞も)のリスクも脳梗塞のリスクもあります。(特に若い人は)正確な知識を身につけて身を守らねばなりません。

注:下記を参照ください。

http://www.samuitimes.com/british-woman-suffered-stroke-after-spending-14-hours-on-cramped-bus-in-thailand/

https://www.mirror.co.uk/news/uk-news/young-woman-left-paralysed-stroke-12587230

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

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