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2013年7月9日 火曜日

2011年6月25日(土) リンゴ病が過去10年で最多

 今年(2011年)はリンゴ病が4年ぶりに増加していることを以前(2011年2月)にお知らせしましたが(下記「医療ニュース」参照)、その後も増加傾向にあり、6月6~12日の週の報告数は、2000年以降の同時期で最多となっていることが国立感染症研究所感染症情報センターにより発表されました。これまで過去10年で最も多かったのは2007年でしたが、この週に関しては2007年を超えているというわけです。

 リンゴ病(正式名称は「伝染性紅斑」)は、4~6年周期で流行を繰り返すと言われており、流行の年には年明けから7月上旬くらいまで感染者が増加します。

 都道府県別のデータをみると、宮崎が最も多く、群馬、山梨、埼玉、栃木と続いています。

 リンゴ病の原因ウイルスは、ヒトパルボウイルスB19と呼ばれるものです。感染してから10~20日後に、小児であれば、ほっぺたに赤い発疹が出現し、続いて手や足に網目状の赤い発疹が現れます。小児の場合はほとんどが重症化せずにすぐに治りますが、成人の場合は強い関節痛や高熱などが生じることがあります。また、妊婦さんが感染すると、流産を起こすことがあります。

 このため国立感染症研究所感染症情報センターは、「保育園や幼稚園、小学校などで流行している場合には、妊婦の施設内への立ち入りを制限することを考慮すべきだ」とコメントしています。

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 リンゴ病が成人に感染した場合、特徴的なほっぺたの紅斑がでないことがありますし、上下肢の紅斑も典型的なものにならないこともあります。さらに、パルボウイルスB19の抗体検査は保険診療では妊婦さんにしか認められておらず、妊娠していない女性や男性の診断をつけるのは(検査ができないため)非常に困難です。(妊婦さんには絶対に感染させてはいけない感染症ですから、少なくとも妊婦さんと接することがあるリンゴ病が疑われる症例については保険診療で検査できるようにすべき、と私は以前から考えていますが、今のところ改善される様子はありません・・・)

 国立感染症研究所感染症情報センターが言うように、妊婦さんが幼稚園や保育園などに出入りするときは充分に注意しなければなりません。「2番目の子供を妊娠中のお母さんが幼稚園に子供を迎えにいったときに感染・・・」というケースがありうるからです。

(谷口恭)

参考:医療ニュース2011年2月21日「リンゴ病がアウトブレイク!」

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2013年7月9日 火曜日

2011年7月10日(日) 手足口病がアウトブレイク

 リンゴ病がアウトブレイクしているという情報はすでにお伝えしましたが、今年は手足口病も流行しており過去10年で発症者最多となっています。しかも重症例の報告も相次いでいます。

 国立感染症研究所の発表によりますと、6月13日から19日までの1週間の小児科定点医療機関(全国に約3千ヶ所あります)当たりの患者報告数は2.60で、前の週の1.68を大きく上回っています。過去10年間の同時期で最も多かったは2001年の1.89ですから、今年は過去10年間で最も流行の年、ということになります。

 地域ごとにみてみると、報告最多が佐賀で、以下、福岡、島根、岡山、香川、熊本と続き、西日本で顕著であることが分かります。

 患者数急増には拍車がかかっているようで、7月7日には京都市で流行警報が発令されています。同市では、1995年以来16年ぶりの大流行だそうです。

 今年の手足口病は例年と異なる重要な点が2つあります。

 1つは、成人にも発症例が多いということです。手足口病といえば、子供の手足と口に発疹ができ喉が痛くなる夏風邪のひとつ、というのが多くの人のイメージだと思いますが、今年は20代の成人にも多発しています。

 もうひとつは、重症例が多いというものです。皮疹も手と足だけでなく、殿部(おしり)や前腕、顔面などに広範囲に広がる症例も報告されています。さらに、爪の変形や、ひどい場合は爪が脱落する例の報告もあるそうです。

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 手足口病が重症化すると、稀ではありますが、髄膜炎や心筋炎を起こすこともあり、こうなると命にかかわります。

 手足口病の原因ウイルスは複数あり、日本ではコクサッキーA16とエンテ
ロウイルス71の2つが多いとされていますが、今年はコクサッキーA6が多く報告されているようです。しかし、原因となるウイルスが特定できたところで、そのウイルスを退治する方法があるわけではなく、治療は解熱剤や点滴といった対症療法が中心となります。

 手足口病は、咳やくしゃみ、もしくは便を介して比較的簡単に感染します。潜伏期間は2~7日程度で、多くは1週間程度で治りますが、今年は感染予防対策を例年にも増してしっかりとおこなう必要があります。

(谷口恭)

参考:医療ニュース2011年6月25日 「リンゴ病が過去10年で最多」

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2013年7月9日 火曜日

2011年7月10日(日) アレロックとアレグラに副作用の報告

 すでにマスコミでも報道されていますが、抗アレルギー薬のアレロックとアレグラに副作用の注意勧告がおこなわれています。

 アレロック(一般名はオロパタジン)は、劇症肝炎による死亡例が2例報告されています。1例は、高血圧を患っていた90代の男性、もう1例はホルモン剤を内服していた40代の女性です。

 アレグラ(一般名はフェキソフェナジン塩酸塩)は、無顆粒球症,白血球減少,好中球減少が報告されています。

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 肝炎は、劇症肝炎にまで進行すれば、黄疸や黄色の尿などが出現しますが、その前に全身倦怠感が生じますから、アレロックを内服していて、疲れやすい・だるい、といった症状がある人は早めに主治医を受診すべきでしょう。ただ、アレロックの発売元である協和発酵キリン社によれば、アレロックの年間使用者数は4,438,000人もいるそうですから、頻度としては高いわけではありません。

 アレグラの副作用の、無顆粒球症・白血球減少・好中球減少は、いずれも症状が出るとすれば、風邪を引きやすくなったり、喉の痛みがとれなかったり、といった感染症の徴候です。どれくらいの頻度で出現するのかは不明ですが、気になる人はやはり主治医に相談しましょう。

 太融寺町谷口医院の患者さんのなかにも、アレロック、アレグラとも使用している人は少なくありません。患者さんひとりひとりに対しては、次回受診されるときにお話させていただきたいと考えています。

(谷口恭)

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2013年7月9日 火曜日

2011年7月26日(火) 身長が低いと脳卒中になりやすい

 身長が低いほど、脳卒中のリスクが高い・・・

 国立がん研究センターが、このような研究発表をおこない議論を呼んでいます。(注)

 この調査は、岩手、秋田、長野、沖縄の4つの地域の住民約15,000人(40~59歳)を対象とし、1990年から2005年まで追跡調査がおこなわれています。研究開始時に測定した身長に基づき、対象者を4つのグループに分類し、脳卒中の発症リスクとの関連が調べられています。約16年間の追跡期間中に合計565人が脳卒中を発症しています。

 調査結果によれば、脳卒中(脳出血・脳梗塞の双方を含みます)は、身長が低いほどリスクが高いという結果になっています。4つのグループのうち、最も身長が低いグループのリスクは、最も高いグループの1.6倍にもなるそうです。

 今回の研究結果について、研究者は、低身長のグループでは、身体活動量が少なく、肥満や高脂血症、喫煙、飲酒量が多いなどの特徴があったことを指摘しています。さらに、身長は、教育レベルや職業など社会経済要因(socioeconomic indicators)の影響を受けるということが述べられています。

 同様の報告は海外にもあるそうです。また、欧米の研究では、身長が低いほど虚血性心疾患に罹患しやすいというものがありますが、今回の日本人の研究では虚血性心疾患と身長との関連は認められなかったそうです。

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 身長が低い、ということに対してはどうすることもできないわけで、この点が、喫煙や食生活、運動などとの関連を調べた研究とは異なり、この研究結果を知ったからといって行動を変えるべきことはないかもしれません。

 しかし、論文のなかで、「身長が低い人は、身体活動量が少なく、肥満や高脂血症、喫煙、飲酒量が多い」という記載があり、身長が低い人で思い当たることがあるという人は行動の見直しをした方がいいかもしれません。

 もうひとつ気になるのが、低身長と教育レベルや職業との関連性が述べられていることです。このようなことは本当にあるのでしょうか。低身長は教育レベルが低い、などということが言われだすと、背の低い人に対する不当な偏見が蔓延してしまうのではないかと心配になります。

(谷口恭)

 
注1 この研究の詳細については、国立がん研究センターのサイトで読むことができます。下記URLを参照ください。
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/2775.html

また、さらに詳しく知りたい方は、医学誌『European Journal of Epidemiology
European Journal of Epidemiology』に掲載されている「Adult height and the risk of cardiovascular disease among middle aged men and women in Japan 」というタイトルの論文を参照ください。下記URLで全文を読むことができます。
http://www.springerlink.com/content/0303×67514537713/fulltext.pdf

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2013年7月9日 火曜日

2011年7月29日(金) 手足口病の勢い止まらず

 先日、今年は手足口病が10年で過去最多の流行をみせているという情報をお伝えしましたが(下記医療ニュース参照)、その勢いはさらに増加しており、記録のある1982年以降では感染者が過去最多を記録しています。

 国立感染症研究所の報告によりますと、全国の小児科定点の報告は定点あたり9.7となり、この数字が過去最多となるそうです。先月(6月)の時点では、感染者の報告は西日本に集中していましたが、現在では首都圏や東北地方にまで流行が蔓延しているようです。

 大阪府立公衆衛生研究所は「受診医療機関によっては,成人の手足口病患者の診断が困難な可能性がある」と指摘し、成人の流行状況の把握が重要であることを発表しています(注)。

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 今年の手足口病の特徴で重要なのは、①成人にも発症する、②重症化するケースが多い、の2つです。皮疹も手・足・口に限定されず、耳、膝、腹部などにも強い痛みを伴う水泡が出現するケースが報告されています。

 大阪府立公衆衛生研究所が言うように、成人での感染を迅速に把握することが重要になってきます。これは新たな感染を防ぐためです。しかし、感染が発覚したとしても手足口病には特効薬があるわけではありませんから、治療は安静と対症療法(熱を下げるなど)のみとなります。

 当分の間は、年齢を問わず、うがい・手洗いをしっかりとおこなう必要がありそうです。

(谷口恭)

注:大阪府立公衆衛生研究所の報告については下記URLで読むことができます。
http://idsc.nih.go.jp/iasr/rapid/pr3786.html

参考:医療ニュース
2011年7月10日 「手足口病がアウトブレイク」

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2013年7月9日 火曜日

2011年8月1日(月) 女性の寿命は5年ぶりに短く、男性は過去最高

 年々記録を更新している日本人の平均寿命ですが、昨年(2010年)は、女性では5年ぶりに短くなったようです。7月27日に厚生労働省が公表しています。

 同省によりますと、平均寿命が短くなった理由として「2010年は猛暑で体力が弱った高齢者が多くなくなったためではないか」と分析されているようです。尚、2005年に平均寿命が短くなったのはインフルエンザの大流行によるものとされています。

 数字を詳しくみてみると、2010年の日本人女性の平均寿命は86.39歳で、2009年の86.44歳から0.05歳短くなっています。2008年は86.05歳、2007年は85.99歳です。男性は、79.64歳でこちらは5年連続で過去最高を更新しています。2009年は79.59歳、2008年は79.29歳、2007年は79.19歳です。

 死因についてみていくと、三大死因(ガン、心疾患、脳卒中)で死亡する確率は男性53.97%、女性50.8%で、ほぼ半分を占めていることになります。2010年の特記すべき事項としては、熱中症があげられます。熱中症で死亡した人は過去最多の1,718人(女性は798人)にもなり、そのうち約8割が65歳以上だったそうです。2009年と比べると、心疾患や肺炎などの病気で死亡するケースも夏場を中心に大きく増加し、このことも平均寿命を縮める方向に影響したとみられています。

 しかし、女性の平均寿命が短くなったとはいえ、それでも26年連続で世界一を維持しています。2位は香港(85.9歳)、3位はフランス(84.8歳)です。男性は2009年の5位から4位に上がっています。1位は香港(80.0歳)、2位はスイス(79.8歳)、3位はイスラエル(79.7歳)となっています。

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 平均寿命を別の角度からみてみましょう。「75歳まで生きる割合」を考えたとき、男性72.1%、女性86.5%となります。「95歳まで生きる割合」でみると、男性8.0%、女性23.0%となります。女性のおよそ4人に1人が95歳まで生きる、と聞くと改めて人類がかつて経験したことのない高齢化社会が到来していることを認識させられます。

 私がこの報道を聞いて意外に感じたのが、猛暑のせいで心疾患や肺炎が夏に増えた、ということです。私の勤務医の頃の経験から、こういった疾患は冬に多いという印象があったからです。高齢者の方や高齢者と一緒にお住まいの方は、”節電”をほどほどにして快適な環境に気を配るべきでしょう。

(谷口恭)

参考:医療ニュース
2010年7月28日 「日本人の寿命がさらにさらに長く」  
2009年7月18日 「日本人の寿命がさらに長く」
2008年8月4日 「長寿記録更新!女性は23年連続世界一」

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2013年7月9日 火曜日

2011年8月5日(金) 黄砂で脳梗塞のリスクが上昇

 黄砂の被害というと喘息やアレルギー性鼻炎、結膜炎、皮膚炎などが多いことはよく知られていますが、脳梗塞のリスク上昇にもなるという見解が、7月31日に京都で開催された日本脳卒中学会で報告されたようです。(報道は7月31日の日経新聞)

 この調査は九州大学と国立環境研究所の研究グループによっておこなわれています。1999年6月~2009年3月に、福岡県の7つの病院に脳梗塞で運ばれた救急患者6,352人について調べられています。気象庁のデータから、黄砂の飛来した日と救急患者の関係を調べたところ、脳梗塞の急患は、黄砂が飛んでいない時期に比べ、前3日間に黄砂が観測されていると7.5%増えていたそうです。

 脳の太い血管が詰まって言語障害や手足のマヒを招く重症型に限ってみれば、発症リスクが1.5倍にもなるそうです。さらに、飲酒があれば2.5倍、喫煙があれば2倍にもなるそうです。

 なぜ黄砂で脳梗塞が起こるのでしょうか。研究チームは次のように考えています。

 黄砂には直径4マイクロメートル(4/1000ミリメートル)ほどの微粒子が多く含まれ、肺の奥にまで入り込みます。黄砂に含まれる汚染物質や微生物によって過剰な免疫反応が起こり、肺の奥の血管の内側についた脂肪の塊(かたまり)がはがれ、この塊が脳の血管に飛んでいって詰まらせて脳梗塞となるというストーリーです。

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 黄砂は中国大陸からとんできます。今年のゴールデンウィーク前後には西日本全域で大量の黄砂に見舞われ、太融寺町谷口医院にも連休明けには黄砂が原因と思われる、咳・鼻炎・結膜炎・皮膚炎の患者さんが急増しました。6月に入り黄砂の飛散が落ち着くと、自然にこのような症例は減っていきました。

 私の印象で言えば、花粉による咳や鼻炎症状に比べると、黄砂が原因のものは症状が強く、薬もあまり効きません。最も有効な対処法は、強い薬を使うのではなく、物理的に黄砂を遮断することです。つまり、窓を開けない、ゴーグルやマスクをできる限り利用する、できるだけ外出は控える、などです。

 太融寺町谷口医院の患者さんのなかには九州出身の人が(なぜか)多いのですが、彼(女)らに話を聞くと、大阪の黄砂は九州(特に福岡市と北九州市)に比べると「はるかにまし」と言います。

 ということは、九州北部に居住するということが、アレルギー疾患だけでなく脳卒中のリスクになる、ということになるかもしれません。ちなみに、海外には「黄砂は心筋梗塞のリスクになる」という報告もあります。

 心筋梗塞や脳梗塞は命に直結する疾患ですし、脳梗塞は助かったとしてもその後長年にわたり寝たきりの生活を強いられたり、話せない・食べられないなどの後遺症を残したりすることがあります。

 中国大陸からの黄砂対策について、今後しっかりとした議論を重ねていくべきでしょう。

(谷口恭)

参考:黄砂情報は気象庁のウェブサイトで見ることができます。下記URLを参照ください。

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2013年7月9日 火曜日

2011年8月9日(火) 身長が高いとガンになりやすい

 先日は「身長が低いと脳卒中になりやすい」という研究を紹介しましたが、今度は身長の高い人が気になる研究です。「身長が高いとガンになりやすい」というもので、イギリスの研究者によるものです。医学誌『Lancet Oncology』の2011年7月21日号(オンライン版)に掲載されています(下記注参照)。

 この研究では、1996~2001年に英国で実施された「Million Women Study」というデータが分析されています。約130万人の対象となった中年女性は、一部の皮膚ガンを除く他のガンにかかったことがないということが条件になっており、さらに研究開始時に乳癌スクリーニング検査が実施されています。対象者の追跡は平均9年間おこなわれています。対象者は身長によって、低いグループから高いグループまで合計6つのグループに分けられています。

 その結果、身長の高い女性は、多くのガンのリスクが有意に高く、身長が増えるにつれてそのリスクが増加していたそうです。さらに、過去の身長に関する10件の研究について再検討した結果、ヨーロッパ、北米、アジア、オーストラリアなどの集団でも同様の関連性が認められたそうです。

 なぜ身長が高いとガンのリスクが上昇するのかの説明として、研究者は、身長の高い人は成長関連ホルモンのレベルが高く、それがガンのリスクの増大につながっている可能性を指摘しています。
 
 しかし、研究者らは、同時に、「背が伸びないように努力したり、長身の人が追加のガン検診を受けたりする必要はない」と述べています。さらに、「身長に関わらず、禁煙し、適正体重を維持し、推奨されるガン検診を受けることによってガンのリスクを軽減できることに変わりはない」と付記しています。

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 私が今回の研究で気になるのは、(上には述べませんでしたが)身長が高い女性ほどアルコール摂取量が多く、子どもの数が少なく、肥満・喫煙の比率が低く、裕福で活動的である傾向があったとされていることです。

 先日紹介しました「身長が低いと脳卒中になりやすい」という研究では、低身長のグループは、身体活動量が少なく、肥満や高脂血症、喫煙、飲酒量が多いなどの特徴があったと報告されています。さらに、低身長と教育レベルや職業との関連性も指摘されています。

 これらを合わせて考えると、身長の低い人には肥満と喫煙が多く、身長の高い人が社会的に裕福ということになってしまいます。果たしてそんなことがあるのでしょうか。

 今回のイギリスの調査は女性を対象としたものです。今後男性も含めたさらなる研究を待ちたいと思います。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Height and cancer incidence in the Million Women Study:
prospective cohort, and meta-analysis of prospective studies of height and total cancer risk」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS1470-2045%2811%2970154-1/abstract

参考:医療ニュース2011年7月26日「身長が低いと脳卒中になりやすい」

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2013年7月7日 日曜日

2011年8月26日(金) ビタミン剤で発ガンのリスク上昇

 ビタミン剤を飲むとガンのリスクが上昇する・・・

 8月25日、このような意外な調査結果が国立がん研究センターから発表されました。(報道は同日の共同通信、日経新聞など) この研究は、1990年~2006年、40~69歳の男女約63,000人を対象とし、調査はアンケート方式でおこなわれています。調査期間にガンに罹患した人は4,501人だったそうです。

 週に1日以上、1年間以上ビタミン剤を摂取した経験のある人は、まったく摂取したことがない人に比べて発ガンのリスクが17%も高かった、という結果がでています。ただし、サプリメントの作用と発がんとの因果関係は明らかにはなっていません。

 この調査ではガン以外に、心筋梗塞などの循環器疾患についても調べられています。男性ではビタミン剤摂取に差は出なかったものの、女性では摂取している人はしていない人の6割程度にリスクが低下した、という結果がでています。

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 ビタミン剤を飲んでいる人で発ガンのリスクが上昇するのは、ビタミン剤のせいではなく、元々不健康な人がビタミン剤を飲んでいるからではないか、という意見があるようですが、それならば、なぜ循環器疾患のリスクが下がるのかを説明できません。

 やはり、未知のメカニズムで、ビタミン剤がガンのリスクになっている可能性がある、と考えるべきでしょう。異論があるものの、βカロチンやビタミンEが肺ガンのリスクを上昇させるという報告もありますし、さらなる研究を待ちたいところです。

 最も重要なことは、ビタミンは食事から積極的に摂るべき、ということです。日々の食事をおろそかにして安易にビタミン剤に頼ろうとすると痛いしっぺ返しを受けるかもしれない、と考えるべきでしょう。

(谷口恭)

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2013年7月7日 日曜日

2011年8月29日(月) タバコの危険性は男性より女性

 タバコを吸う女性が心臓発作を起こすリスクは25%高く、肺ガンのリスクは2倍・・・。

 これはアメリカでおこなわれたいくつかの研究をまとめたもので、医学誌『Lancet』2011年8月11日号(オンライン版)に掲載されています(注)。

 この調査では、喫煙者と非喫煙者の心疾患リスクを検討した過去研究のデータを収集し、メタアナリシスと呼ばれる分析方法を用いてすべてのデータを検討し直しています。対象者は合計3,912,809人で、そのうち心疾患を有していたのが約67,000人となっています。男女差を検討すると、喫煙する女性は男性に比べて心臓発作を起こすリスクが25%高いことが判明したそうです。女性の喫煙期間が1年延長するごとに、同じ期間喫煙する男性に比べてリスクが2%増大するという結果もでたそうです。

 また、喫煙女性では肺ガンによる死亡リスクが男性の2倍にもなることも明らかになったそうです。

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 同じタバコでも女性の方が不利・・・、と言われると不平等のような気もしますが、大規模調査でこれだけはっきりとした結果がでているのですから、男女間の生理学的な差異が原因となっていると考えるべきでしょう。

 もちろんこの結果は、男性は喫煙してもOK、というものではありません。ここ数年間は世界規模で禁煙運動が盛んになり、その反動からか、愛煙家の権利を奪うな、という意見も散見されますが、私自身としては医師としても元愛煙家としても、すべての人に禁煙をすすめたい、と考えています。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Cigarette smoking as a risk factor for coronary heart disease in women
compared with men: a systematic review and meta-analysis of prospective cohort studies」で下記のURLで概要を読むことができます。

http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2811%2960781-2/abstract

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