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2018年11月30日 金曜日
2018年11月29日 育毛剤ミノキシジルはやはり危険
テレビCMの影響もありすっかり有名になった「リアップ」の有効成分はミノキシジルです。濃度は5%が上限であり、これは「リアップx5」として販売されています。以前、ミノキシジル10-15%のものが米国で出回り、さらに個人輸入で世界中に販売され、FDAが警告をしたことを報告しました(医療ニュース「2012年1月30日アメリカ製の育毛剤で健康被害の可能性」)。
FDAによれば、ミノキシジルは内服でなく外用であったとしても、低血圧や動悸、皮膚障害といった全身性の副作用が生じる可能性があります。
さて、今回お伝えしなければならないのは、そのミノキシジルの内服を含むAGA薬により日本人が肝機能障害を発症した事象です。2018年10月30日付けで、厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課が発表した報告(タイトルは「国内未承認のいわゆる発毛薬の服用が原因と考えられる健康被害の発生について」)によれば、1日あたりフィナステリド1mgとミノキシジル5mgを3週間内服した40代の男性が肝機能障害を起こしました。
男性は服薬を中止することにより軽快しているそうです。また、この薬は男性が個人輸入したものではなく医療機関で医師が個人輸入したものだったそうです。
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フィナステリドも肝機能障害を起こすことがありますから、この肝機能障害の原因薬剤がミノキシジルと断定できるわけではないと思いますが、いずれにしても未承認のものを使用するときには充分すぎるほどの注意が必要でしょう。
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|2018年11月30日 金曜日
2018年11月30日 コーヒーで酒さ予防
患者数が多い割にはいまだに治療法が確立しておらず、メディアでも取り上げられることが少ない酒さ。アルコールと紫外線が悪化因子なのはおそらく間違いなく、他にもタバコ、生活習慣病、ピロリ菌などとの関係が指摘されています。その一方で、何をすれば良いという情報はあまりないのですが、今回コーヒーが酒さを予防するのではないか、という研究が公表されたので報告します。
医学誌『The Journal of the American Medical Dermatology (JAMA Dermatology)』2018年10月17日号(オンライン版)に掲載された「Association of Caffeine Intake and Caffeinated Coffee Consumption With Risk of Incident Rosacea In Women.」というタイトルの論文です。
この研究は、NHSⅡ(Nurses’ Health StudyⅡ)」と呼ばれる調査に協力した女性看護師82,737人が対象です。1991~2005年の間、コーヒー摂取と酒さの発症にどのような関係があったかが調べられています。同時に、お茶、ソーダ、チョコレートといった他のカフェインを含有する食品についても調べられています。
結果は以下のとおりです。
・調査期間中に4,945例が酒さを発症した。
・カフェイン摂取量と酒さのリスクは逆相関の関係にあった。つまり、コーヒーをたくさん飲めば飲むほど酒さが起こりにくいことがわかった。
・1日に4杯以上のコーヒーを飲めば、1か月で1杯未満の場合に比べ23%リスクが下がっていた(相対リスク0.77)。カフェインレスのコーヒーでは有意差が出なかった。
・お茶、ソーダ、チョコレートからカフェインを摂取しても酒さのリスクは下がらなかった。
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この研究だけで「酒さにはコーヒー!」と断定するのは時期尚早ですが、コーヒー好きには嬉しい結果です。ちょうどこのサイトを立ち上げた頃から、コーヒーについては肯定的な研究が続々と出てきています。
ただし、酒さについては「発症リスクの低下」が示唆されているだけであり「発症後の治療」になると言われているわけではありません。
参考:
医療ニュース
2015年10月6日 酒さの原因は生活習慣と遺伝
2015年11月28日 酒さは生活習慣病や心疾患のリスク
2017年5月11日 白ワインは女性の酒さのリスク
2017年6月2日 ピロリ菌除菌で酒さが大きく改善
2016年12月9日 コーヒー1日3杯以上で脳腫瘍のリスクが低下
2016年10月31日 認知症予防にはコーヒー?それとも緑茶?
2016年8月12日 加工肉はNGだがコーヒーはガンのリスクでない
2015年8月28日 コーヒーが悪性黒色腫を予防
はやりの病気
第22回(2005年12月)「癌・糖尿病・高血圧の予防にコーヒーを!」
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|2018年11月26日 月曜日
第183回(2018年11月) 誤解だらけのインフルエンザ~ゾフルーザは時期尚早~
私が早く開業をしたいと思った理由のひとつが「正しいことを伝えたい」ということです。これだけ情報化社会が発達しても、医学部で習う基本的なことが世間では誤解されていて、しかもテレビのパーソナリティや近所のおばちゃんの言っていることが正しいと信じ、医療者が言うことを信用しないひとが今も多数います。勤務医時代にこのことを不思議に感じた私は「医師の伝え方がまずいのではないか」と思うようになり、「ならば自分が今までにないやり方で正しい事を伝えようではないか」と考えたのです。
もちろん現代の医学は万能からは程遠く、分からないことがたくさんあり、また有効な治療法がない疾患もあります。基礎的な理論ですら、後になって間違っていたことが判った、ということもあります。ですから、医師の言っていることがいつも正しいということはありません。ただ、我々医師は分からないことが多数ある、という前提でいつも医学を考えています。
前置きが長くなりましたが、今回はインフルエンザの話です。太融寺町谷口医院がオープンしたのは2007年1月で、ちょうどインフルエンザが流行している時期でした。開業した最初の3ヶ月くらいはまだ今のように混雑しておらず、ある程度時間をとって話すことができました。そのため、罹患した患者さんにはそれなりに時間を確保して、インフルエンザの正しい知識を伝えることに努めました。
先に「医学は万能ではなく分からないことが多数ある」と述べましたが、インフルエンザについては、現在分かっていることもたくさんあります。その後新たに登場した薬のことも含めて、私が12年間言い続けていることでいまだに誤解が多いものをいくつか紹介したいと思います。
・抗インフルエンザ薬にはタミフル(一般名はオセルタミビル)などがある。服薬することにより少し(具体的には1日からせいぜい2日)治癒するまでの期間が短くなる。
・インフルエンザに罹患したからといって必ずしも抗インフルエンザ薬は必要ない。健常な成人であれば高熱と倦怠感で苦しめられていても数日間寝ていれば治る。
・インフルエンザに最も有効な対処法はワクチンであり、原則としてすべての人に推薦される(ただし妊娠中の女性には慎重に、という意見は2009年までは確かにありました)。
・インフルエンザのワクチンは接種しても感染する。目的は、①感染の可能性が低下する、に加え、②感染しても重症化が防げる、と、③他人へ感染させるリスクを下げる、であり、③が最も重要。
他には、インフルエンザの検査は必ずしも勧められない、インフルエンザの可能性があればアスピリンやボルタレンなどの鎮痛剤はNG(飲んでいいのはアセトアミノフェンのみ)、学生の場合は学校保健安全法により出席ができない(が、会社員は会社が決める)、飛行機には乗れない場合がある(航空会社が決める)、治癒証明書は不要(厚労省も指針を表明しています)、予防薬は例外を除けば使うべきでない、といったことも多くの患者さんに説明してきました。
それらをここですべて説明する余裕はありませんが、インフルエンザという疾患は他の病気に比べて「誤解」が非常に多いのは間違いありません。そして、今年は新薬の「ゾフルーザ」(一般名はバロキサビルマルボキシル)に伴う「新たな誤解」が早くも流布しています。実際、すでに診察室でも患者さんから誤った意見を聞いています。その誤解を解いていきましょう。
まず、そもそもなぜ人は誤解をするかというと、間違った情報が流れているからです。悪意のあるフェイクニュースでなくとも、きちんと検証されたわけではない情報が飛び交っている結果、誤解が誤解を生んでいるのです。ゾフルーザに伴う具体的な「誤解」を紹介しましょう。
【誤解1】ゾフルーザは従来の抗インフルエンザ薬(タミフル、イナビル、リレンザ、ラピアクタ)よりも、よく効いて早く治る
【誤解2】ゾフルーザの副作用は抗インフルエンザ薬のなかで最も少ない。他の薬より早く効いて副作用が最小なのだから、近いうちに他の抗インフルエンザ薬はなくなる。
【誤解3】ワクチンをうつよりも、インフルエンザが流行りだせばゾフルーザを1回飲む方がいい。
順にみていきましょう。【誤解1】については大手メディアでさえもそのように報じています。たしかに作用機序から考えて、従来の抗インフルエンザ薬に比べるとゾフルーザが早く効く可能性があり、そのような研究もあります。ですが、研究にはエビデンス(科学的確証)がなければなりません。ゾフルーザが市場に登場したのは2018年3月で、このときには信頼できるデータがありませんでした。他の抗インフルエンザ薬との比較に関する信ぴょう性の高い論文はようやく2018年9月に登場しました。
医学誌『New England Journal of Medicine』2018年9月6日号に「成人患者と10代患者を対象とした合併症のないインフルエンザに対するゾフルーザ」というタイトルの論文が掲載されました。『New England Journal of Medicine』は世界で最も信頼できる医学誌のひとつであり、エビデンスレベルの高いものしか掲載されません。この論文によれば、ゾフルーザにより症状を1日短くしますが、これはタミフルと同様です。
つまり、きちんと検証した結果、「ゾフルーザでもタミフルなど他の抗インフルエンザ薬でも治るまでの期間は変わらない」ことが判ったのです。ゾフルーザは1回飲むだけだから簡単という声もありますが、それならば1回吸うだけのイナビルと差がありません。ただし、同論文によれば、ウイルスが検出される期間はタミフルよりも2~3日短くなっています。これは他人への感染リスクを下げますからゾフルーザの大きな利点となります(しかし、この点を強調した一般のメディアによる報道を私はいまだに見ていません)。
次いで【誤解2】をみていきましょう。安全性については、たしかにこの論文で「有意差をもってタミフルよりも副作用が少なかった」とされています。ですが、安全性についてこの時点で断言するのは時期尚早です。なぜなら、基本的にこの研究も含めてこれまでゾフルーザは健常人を対象にした調査しかされていないからです。我々が知りたいのは、例えば抗がん剤を服用しているとか、腎機能が低下しているとか、ステロイドを飲んでいるとか、そういった人たちに対する副作用です。ですから、この時点でゾフルーザが安全と断言するのは危険です。
【誤解3】は論外です。このような飲み方を勧める医師は(おそらく)世界中に一人もいません。抗インフルエンザ薬の予防投与は例外的に認められていますが(参照:インフルエンザの薬の予防投与はできますか。)、ゾフルーザの予防投与は有効性・安全性が確立されていません。
予防にゾフルーザを用いるべきでないはっきりとした理由があります。そしてこの理由が、我々がゾフルーザを治療にも積極的に使用しない最大の理由のひとつであり、先述の論文が明らかにしました。それは「約1割にウイルスの遺伝子変異がみつかり、ウイルス排出期間が長引き治癒が遷延した」ということです。分かりやすく言えば「使用者の1割はゾフルーザを飲むことでゾフルーザが効かなくなり治るのに時間がかかる。さらに、その効きにくくなったウイルスが周囲にばらまかれることになり、いずれゾフルーザが無効なインフルエンザが蔓延する可能性がある」ということです。
つまり、我々医療者はゾフルーザに期待はしていますが、どうしても必要な症例に適応を絞ることを考えているのです。むやみに使うと、いざというときに効かないウイルスだらけになってしまっている可能性があるからです。
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|2018年11月15日 木曜日
2018年11月 サプリメントや健康食品はなぜ跋扈するのか
健診での肝機能障害や腎機能障害の原因がサプリメントだった…、最近、動悸や嘔気などが気になると思っていたらその原因が健康食品だった…、息切れの原因が通販で購入した漢方薬だった…、などといったことはまったく珍しいことではなく、太融寺町谷口医院(以下「谷口医院」)の患者さんのなかにもこういった被害に合う人がいます。
サプリメントや健康食品というのは、あらためて言うまでもなく効果のエビデンス(科学的確証)に乏しいものであり、一方で副作用の被害はそれなりに多いものですから、きちんと考えれば手を出すべきではありません。私は医学生の頃から、なんでこんなものに大金を払うのだろう、と患者さんから話を聞く度に疑問に思っていました。
たいていの患者さんは、(医療者でない)知人から聞いた、テレビのパーソナリティが言っていた、ネットに書いてあった、などと言います。「エビデンスはあるのですか」などと意地の悪い聞き方はしませんが、有効性はどれくらいあるかご存知ですか?と尋ねてもきちんと答えた人はいまだに一人もいません。興味深いことに、知的レベルの高い、というか理系の大学を卒業しているような人でさえ、きちんとした理論を持たずに服用しているのです。
なかには、薬が売れなくなると医療者や製薬会社が困るから医者はサプリメントを勧めない、などという「陰謀論」のようなことを言い出す人もいて驚かされます。今回は、「なぜサプリメントや健康食品に手を出すべきではないのか」についてまとめてみたいと思います。
まず、第一にサプリメントは危険すぎます。実際のデータもそれを裏付けています。東京都福祉保健局が公表している平成26年度「都民の健康と医療に関する実態と意識」(第2部第2章103ページ)によれば、健康食品を使用して体の不調を感じたことがある人は全体の4.2%にもなります。ここで注目したいのはこの4.2%は自覚症状に限ってということです。自覚症状がないまま生じている肝機能障害や腎機能障害は含まれていません。ですが、自覚症状の4.2%だけでも驚くべき数字ではないでしょうか。処方薬でも、もちろん例外は多数ありますが、4.2%もの自覚できる副作用が生じる薬というのはそう多くありません。
谷口医院で実際に生じた例を紹介しましょう。興味深いことに、サプリメントの被害には男女の特徴があります。これはおそらく谷口医院の患者層が比較的若いからだと思います。
男性の場合、圧倒的に多いのがプロテインによる腎機能障害です。プロテインを摂取している理由は筋肉増強のためで、多くの人が、実際に筋肉量が増えることを実感しています。害がなければ摂取してもかまわないのですが、けっこうな割合で腎機能が悪化している人がいます。この場合自覚症状はまったくなく、職場の健診や谷口医院での採血で発覚します。
腎機能障害がまだ起こっていなくても血中タンパク質の濃度が異常高値を示していることがあります。これは筋肉を増やす目的でプロテインを摂取しているものの、肝心のトレーニングが不充分でせっかく摂ったプロテインが筋肉に変わることなく血中に漂っていることを示しています。
筋トレをしている人の場合、クレアチンを摂取していることがしばしばあり、これも危険です。高いエビデンスはないもののプロテインと同様、クレアチンも筋肉量を増やすには有効だと言われています。しかし、腎臓に負担がかかるようで腎機能が悪化する人がいます。しかもクレアチンの場合、プロテインよりも一気に悪化することがあります(これを科学的に検証した論文を探してみたのですが見つかりませんでした)。
一方、女性で多いのがダイエット用のサプリメントで、たいていは海外製のものです。以前タイ製の「ホスピタルダイエット」「MDクリニックダイエット」などが危険であることをこのサイトで指摘しました。これらには、日本未承認のやせ薬シブトラミンや甲状腺ホルモンが含まれていましたから、動悸や嘔気が生じるのは当然です。最近はこれらの製品名は効かなくなりましたが、海外製のダイエット効果があるとされているサプリメントには似たような成分が入っている可能性が高いと言えるでしょう。
ビタミン剤なら大丈夫と思っている人がいますが、これも大きな誤解です。水溶性のビタミンはOKと言う人もいますがそうではありません(参照:医療ニュース2014年3月31日「ビタミンCやEの摂りすぎで膝を悪くする」。ビタミンでここ数年よく聞かれるのが「ビタミンDのサプリメントは積極的に摂らなければならないって聞いたんですが…」というものです。興味深いことに、この質問はなぜか高学歴の人から多く寄せられます。また、「冬は紫外線の量が少ないから冬だけ摂るべきですよね」と言われることもあります。結論を言えば通常の食事をしていれば必要ありません(注)。紫外線を100%カットしていてもバランスのとれた食生活をしている限りサプリメントは不要、というより危険性の方が大きいと考えるべきです。ただし、ビーガンと呼ばれる極端な菜食主義の人はこの限りではなく、ときにサプリメントの摂取を例外的に勧めることがあります。
ミネラルはビタミンよりも遥かに難しいと考えねばなりません。セレンやクロムなどの微量元素は通常の食生活から摂れない、と主張する人がいますが、たいていの日本人はこれらを調べても不足していません。にもかかわらずサプリメントとして摂取すれば過剰摂取につながるおそれがあります。男性の場合、特に注意が必要なのが「鉄」です。マルチミネラルには鉄が含まれているものが多くありますが、通常の食事をしている限り日本人の男性で鉄が不足することはまずありません。そして、鉄を過剰に摂取すると余った鉄が肝臓に沈着する可能性があります。女性の場合も、閉経後に鉄が含まれたサプリメントを摂るのはやめた方がいいでしょう。一方、閉経前の女性であれば、むしろ積極的に鉄のサプリメント(ただしマルチミネラルではなく鉄単独のもの)を推奨することがあります。医薬品の鉄剤は嘔気の副作用が起こりやすくサプリメントの方が使いやすい場合もあるのです。
ただし、サプリメントには有効成分のばらつきが多いことが指摘されています。この問題を回避するためには「GMP認定」された製品を選択するという方法があり(参照:日本健康食品規格協会(JIHFS)のウェブサイト)このマークが入っている製品を購入するのがいいでしょう。ですが、我々医療者はこの時点で疑問です。なぜなら「製品にばらつきがないのは当たり前じゃないの??」と感じるからです。当然のことですが、医薬品ならばらつきがある時点で承認されませんし、発売後にばらつきが発覚すれば直ちに販売中止になります。
ところで、なぜ昔は有用とされていたビタミンやミネラルのサプリメントが無効なのでしょう。ビタミンやミネラルが身体に必要なのは間違いありません。またバランスよく食事を摂取しなければこれらの要素が不足する恐れがあることも事実です。ですが、だからといって野菜や果物などからこれらの栄養素を取り出してカプセルに詰め込んで摂取しても効果がないどころか、有害になる場合もあるのです。有名なのは、βカロテン(カロチン)摂取で肺がんのリスク上昇(参考:医療ニュース2014年1月28日「やはりビタミン・ミネラルのサプリメントは利益なく有害」)やビタミンEの前立腺がんリスク(参考:医療ニュース2011年11月14日(月)「ビタミンEの発ガンリスク」)ですが、他にも多数あります。ビタミンやミネラルは食事から摂取して初めて有効だと考えるべきなのです。
ビタミンやミネラルのサプリメントに効果がないことはいくつものデータが示しています。詳しく知りたい方は国立研究開発法人「医薬基盤・健康・栄養研究所」の「「健康食品」の安全性・有効性情報」を参照するのがいいでしょう。少し専門的で難しい部分もありますが、副作用が出てからでは手遅れとなる可能性もありますからまずは知識の習得に努めるべきです。
もうひとつ、健康食品やサプリメントに手を出すべきでない理由を述べておきます。それは、医薬品との、あるいは他のサプリメントとの相互作用が未知だということです。薬と薬の相互作用(飲み合わせ)は患者さんが思っているよりも遥かに複雑ですが、ある程度のデータがありますから科学的な観点から検討することができます。一方、多くのサプリメントや健康食品にはそれらを検証したデータがなく未知の部分が多すぎるのです。サプリメントなどを複数(なかには10種以上も!)飲んでいる人がたまにいますが、相互作用について考えているとは到底思えません。
サプリメントや健康食品に有益性が”仮に”あったとしても、危険性を考慮するととても手を出せるものではありません。私なら、そのようなものを買うお金があるなら、新鮮な野菜や果物を中心とした食事に使います。
注:ただし、その後ビタミンDの基準摂取量が変更されたことにより多くに日本人が「ビタミンD不足」に陥りました。2005年では成人が1日に必要な基準量が5ug/日でしたが、2010年に5.5ug/日に変更され、さらに2020年には一気に8.5ug/日にまで引き上げられたのです。公益財団法人長寿科学振興財団によると、ビタミンDが不足している日本人は過半数を超えます。ちなみに、この変更を機に谷口医院内でスタッフの採血をしてみるとほぼ全員が基準値を下回っていました。以前は「ビタミンDは食事(と日光)からの摂取で充分」とされていましたが、現在は「多くの日本人はサプリメントからの摂取が必要」と考えなければなりません。
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