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2023年3月19日 日曜日
第235回(2023年3月) 温泉好きの長引く咳はレジオネラ
2023年2月24日、筑紫野市の「二日市温泉 大丸別荘」を訪れた人が体調不良を訴え医療機関を受診、レジオネラ症と診断されていたことが発表されました。原因はその旅館の浴槽から検出されたレジオネラ菌であることが判明しました。
レジオネラというのは肺炎で有名なのですが、通常の肺炎と異なる点がいくつかあり、感染しても放っておいてもいいことがある一方で、「死に至る病」となることもあります。筑紫野市の温泉事件でいろんなことが報道されましたが、必ずしも正確に伝わっていないようなので、ここでまとめておきたいと思います。
このような出来事はあってはならないことではありますが、そうは言ってもそんなに珍しいケースではなくひとつの典型的な発症パターンです。よって、自分自身や家族の感染を防ぐためにもこの事件を振り返っておきましょう。
・保健所による旅館の検査が2022年8月と11月に実施されて.いた。この旅館の浴槽からは基準値の3,700倍に相当する量のレジオネラ菌が検出されていた
・福岡県の条例では週に一度以上の湯の入れ替えが義務付けられているが、この旅館では少なくとも2019年以降、年に2回しか入れ替えをしていなかった
・旅館は「常に源泉からお湯を入れながら循環させる仕組みなので大丈夫だと思っていた」と釈明した
なぜ保健所の検査でレジオネラ菌が検出されていたのにもかかわらず、旅館は処理をしなかったのでしょうか。旅館が保健所の指導を無視したか、保健所がしっかりとした指導をしていなかったかのどちらかでしょう。
常識的には「この旅館からはレジオネラ菌が検出されました。この病原体はときに死に至る病を引き起こします。条例どおりの対処法で充分ですからきちんとしてください」と言われれば旅館はそれを守るのではないでしょうか。保健所の指導を無視するとは考えにくく、だから保健所がきちんと対処方法を伝えてなかった、つまり保健所の怠慢なのかな、と思われますが、実際のところは分かりませんからこれ以上の詮索はやめておきます。
重要なのはそういった「不潔な温泉の見分け方」です。保健所がきちんと検査をしているか、とか、旅館は保健所の指示を守っているか、といったことは宿泊客には分かりません。ですが、「レジオネラ菌がいるかもしれない温泉や浴場」は推測することができます。
床やタイルに「ぬめり」があれば要注意、と考えるのです。「ぬめり」の正体は微生物が作り出すぬめっとした(slimyな)膜のようなものです。キッチンのシンクの「ぬめり」が代表です。この「ぬめり」をバイオフィルムと呼びます。
キッチンのシンクにできるバイオフィルムを作り出しているのは細菌なのですが、温泉や浴槽でバイオフィルムが存在していれば、細菌だけでなく「粘菌」と呼ばれる微生物が原因のことがあります。粘菌よりも「アメーバ」という言葉の方が有名かもしれません。そして、レジオネラ菌はこの粘菌(≒アメーバ)の体内に棲息します。
レジオネラという細菌は「蒸し暑い環境」が大好きです。50度でも数時間生存することができ、20度以下では増殖できません。35度くらいが至適温度と言われています。よって、温泉や浴場はレジオネラ菌にとってうってつけの場所なのです。
温泉や浴場というのは蒸気(エアロゾル)が蔓延しています。当然その蒸気のなかにはレジオネラを含む粘菌も浮遊しているわけです。これをヒトが吸い込んで、肺胞まで到達すると感染が成立します。そしてヒトの肺胞で増殖したレジオネラ菌は全身を巡ります。結果、下痢、嘔気・嘔吐、腹痛などの消化器症状、さらに頭痛や痙攣、重症化すれば意識症状などの神経症状も起こり得ます。このため、レジオネラ肺炎という言い方の方が人口に膾炙しているかもしれませんが、「レジオネラ病」と呼ぶ方が正確です。
もちろん、レジオネラ菌を含む蒸気を吸い込んだとしても誰に対しても感染が成立するわけではなく、また感染が起こったとしても全員が発症するわけではありません。当然、無症状で治癒することもあるでしょうし、また軽症で終わることもよくあります。
この「レジオネラ菌に感染して風邪症状が出たけれどすぐに治った」というケースを「ポンティアック病(Pontiac fever)」と呼びます。こちらは軽症ですから、そもそも発症しても全員が医療機関を受診するわけではありません。仮に受診したとしても治療は不要です。これはレジオネラ菌が検出されても、です。
しかし、ポンティアック病の診断確定(=レジオネラ菌検出)には重要な意味があります。それは、その地域でこれから(あるいはすでに)レジオネラ病が発症する(している)可能性があるからです。つまり、ポンティアック病の診断がついてその人が旅館に宿泊していたとすれば、その旅館の宿泊客の健康調査をすることでレジオネラ病の早期発見ができる可能性があるのです。尚、レジオネラ菌の検査は尿検査でおこないます。精度は高く、喀痰のPCRよりも遥かに実用的です。
ポンティアック病の名前の由来はミシガン州のポンティアックという地名(デトロイトの近く)で発見されたことによります。1968年のことでした。ちなみに、本稿を執筆するにあたり、ポンティアックの場所を確認するためにGoogle Mapに「Pontiac」と入力すると、米国だけでも10カ所くらい表示されました。ポンティアック病の発症の地はデトロイトの近くです。
レジオネラ病で知っておきたい特徴はまだあります。通常、感染症の肺炎というのはヒトからヒトにうつりますが、レジオネラの場合、感染源は蒸気(エアロゾル)の吸入ですから、ヒトからヒトに感染することはありません。ですから、ときに死に至る病となる重要な感染症ではありますが、隔離は必要ありません。
一般の人からみてレジオネラを予防するには「温泉や旅館に行くときはぬめり(slim)がないかに注意する」となりますが、では、温泉や旅館の側からみればどのような対策を立てればいいのでしょうか。
温泉や浴槽でレジオネラが発症する、つまりバイオフィルムができるのは、通常の家庭用の浴槽と異なり、「循環式浴槽」だからです。この循環式浴槽が清潔にされていなければ、粘菌が増殖し、その粘菌の体内でレジオネラ菌が増殖するというわけです。そこに熱が加わり、その粘菌がエアロゾルとなって空気中を浮遊すると、それを吸い込んだ人がレジオネラ症を発症するのです。
件の筑紫野の旅館は「循環式だからレジオネラ菌も流される。だから清潔」と考えていたようですが、バイオフィルムのせいで長時間浴槽に粘菌と一緒にこびりついているのです。ですから、循環式浴槽だからこそ清潔にすべきだ、と考えなければなりません。その対策については、厚労省がわかりやすいマニュアルを公開してくれています。その名もズバリ「循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアルについて」です。このマニュアルには「連日使用型循環式浴槽では、1週間に1回以上定期的に完全換水し、浴槽を消毒・清掃すること」と書かれています。
最後に医療者からの視点で大切なことを書いておきましょう。レジオネラは通常の肺炎でよく使われるペニシリン系やセフェム系の抗菌薬が一切効きません。ということは、「診断をつける」ことがものすごく大切になります。尿検査で簡単に分かると述べましたが、肺炎の症状がある患者さん全員にレジオネラを調べるのは現実的ではありません。医師は肺炎症状を呈している患者さんを診て、真っ先にレジオネラを疑うわけではないのです。ですから、心当たりのある人は「温泉に行きました」と医師に伝えてください。
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|2023年3月12日 日曜日
2023年3月13日 日焼け止めを使ってはいけない7つの地域
コロナはすでに終った、と考える人が増え、海外旅行に行く人が急激に増加しています。過去1ヶ月の谷口医院の状況を紹介しておくと、ビジネス、観光、留学を除く目的で、つまり単なるレジャーで海外旅行に行く人の行先で多いのが米国とタイです。そして、この2国に共通する大変重要な注意事項があります。それは「サンスクリーン(日焼け止め)を使えない」です。
解説しましょう。過去の医療ニュース「日焼け止めが禁止されてもサプリメントはNG」で紹介したように、ハワイでは紫外線吸収剤を含むサンスクリーンの使用が全面的に禁じられました。この話を患者さんにすると、「私のは大丈夫です」とよく言われるのですが、調べてみると紫外線吸収剤が入っているサンスクリーンだった、ということがよくあります。
「私が使っているのは敏感肌用だから問題ないだろう」と考えてしまうのでしょう。しかし薬局や化粧品屋などで販売されているサンスクリーンの多くには紫外線吸収剤が含まれています。「敏感肌用」「低刺激」などと謳っているものにも含まれていることはよくあります。
医療機関では大昔から、敏感肌の人には「紫外線吸収剤が含まれていない(つまり、紫外線散乱剤だけでつくられた)サンスクリーンを使いましょう」と言い続けています。
その理由は「皮膚を守るため」です。紫外線吸収剤は伸びがよく、色合いもきれいで塗りやすいのですが、敏感肌にはトラブルになることがあるのです。敏感肌でない人にとっては使いやすいわけですから紫外線吸収剤入りのサンスクリーンを使いたくなります。実際、2020年まではそれでOKでした。
ですが、2021年1月1日から事情は変わりました。まずはハワイ(オアフだけとの情報もあります)で紫外線吸収剤を含むサンスクリーンの使用が禁止され、もしも使って見つかれば罰金はなんと千ドル。その人にもよるでしょうが、ハワイ滞在中の遊行費がすべて消え去るほどの額でしょう。
日本で当たり前のように使用しているサンスクリーンが使えないというこのルールに驚いた人も少なくないと思いますが、もっと驚かされるのがタイです。
タイでは2021年の8月からoxybenzone、octinoxate、4-methylbenzylidene camphor、butylparabenの4つの成分(日本製の多くのサンスクリーンに含まれています)のいずれかを含むサンスクリーンの使用が禁止され、罰金はなんと10万バーツ(約35万円)! ハワイより高いのです。タイでは物価が上昇し、円が下がったといっても、LCCを使えば4万円以下で往復できますし、宿泊は1泊3千円も出せばホットシャワー付きのゲストハウスに泊まれます。そのタイで罰金10万バーツには驚きます。
尚、メディアの報道によると、タイより先にサンスクリーンを禁止していた地域として、ハワイ以外にパラオとボネールがあります。サンスクリーン関連のサイトによれば、2021年11月現在でサンスクリーンが禁止されているのは、ハワイ、タイ、パラオ、ボネール島、ヴァージン諸島、キーウェスト(フロリダ)、メキシコのエコツーリズム保護区(Ecotourism reserves in Mexico)の7つです。
これからはこの7つの地域だけでなく、世界のどこに行っても「サンスクリーンは紫外線散乱剤のみ」が常識になるかもしれません。
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このニュースをまとめているときに初めて知ったのですが、タイのピピ島のマヤビーチ(英語では「Maya Bay」が一般的な表現)が2018年から2022年まで閉鎖されていたそうです。2022年の再開後も、再び閉鎖、その後再びオープン、といった経緯があったようです。
マヤビーチは映画「ザ・ビーチ」のロケで使われたことで有名で世界中から多数の観光客が集まります。その際、サンスクリーンが使用されすぎてサンゴ礁が破壊されたそうです。
ちなみに、ピピ島(英語表記はPhi Phi Island)はプーケットからフェリーで行けますが、個人的にはプーケット県よりもクラビ県に滞在することを勧めます。クラビの方が観光業界が進出しきっていなくて自然とタイの文化が楽しめるからです。物価もプーケットよりも安いです。
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|2023年3月11日 土曜日
2023年3月 閉院でなく「移転」は可能か?~続編~
前回のマンスリーレポートでお伝えしたように、「完全閉院」を決め、1月4日にそれを公表したところ、あまりにも多くの患者さんから「それは困ります」と言われ、涙を流され、「やめないでください」と強く訴えかけられるにつれ、私の心は揺らいでいきました。もう一度、物件を探して新たな土地での新規開業を考えるようになりました。
といっても、これまでの経験から判断して適当な物件がそう簡単に見つかるとは思えません。なにしろ、1年半前に新たな地を探し始めたその当時から去年の年末まで、たくさんのビルから「コロナを診るなら貸せない」と言われ続けてきたのです。首尾よく「貸せますよ」と言われても、高い階なら入居すべきではありません。
貸主のリスク意識が高くなかったとしても、我々はビル内での感染を防がねばなりません。発熱の患者さんがエレベータに乗って、クリニックが入居している高いフロアに到着するまでに途中の階で止まり他人が乗ってくればリスクが生まれます。よって、クリニックの物件は高くても4階(現在の谷口医院は4階で、エレベータの中で咳をするおそれがある患者さんには階段を利用してもらっています)、できれば3階以下で探すべきです。
同じフロアに事業所がいくつもあり、トイレが共用という場合も嫌がられます。あるビルからは、露骨に「患者に共用トイレを使わさんといてくれ」と言われました。こんなビルを借りればトラブルが生じるのは目に見えています。
1階にテナント募集が出ていて、上の階は一般のマンションという物件もいくつかあったのですが、新型コロナウイルスが重症化したり、別の感染性・致死率が高い感染症が蔓延したりすれば、住人から何を言われるか分かりません。
そうすると残る選択肢は、#1医療モールに入居する、#2ビル一棟まるごと借りる、#3ビル一棟まるごと買う、#4土地を買って建物を建てる、#5比較的小さいビルで入居者全員の理解がある、の5つのなかから考えることになります。
#3、#4はかなり高くつきますが、この2ヶ月の「やめないでください」という多くの患者さんからの声を聞き、私は、残りの人生を現在診ている患者さんたちに捧げる覚悟を決めました。よって、全財産をなげうって、さらに可能な限りの借り入れをすればなんとかなると考えています。
偶然にも、そのような決心をした直後、不動産業を営むある患者さんから「近くに売り物件が出ました!」と早朝に電話がかかってきました。地図で場所を確かめると、立地条件は申し分なく、広さも手ごろです。ワンフロアの面積は狭いですが5階まで使えば充分な広さです。値段はけっこうな額ですが、生涯を賭すると腹をくくるなら契約できない金額ではないでしょう。
その患者さんは仕事が早く、「すぐにでも見に来てください」と言います。偶然にも翌日は当院が休診の木曜日。これは運命かもしれません。期待に胸を膨らませ、「明日行きます!」と即答しました。そして物件を見に行きました。予想よりもきれいで申し分ありません。1階は「発熱外来専用」にできそう。地下にはレントゲンを置いて……、とビジョンが目に浮かびます。クリニックとして充分使えます。
ところが、この物件には”落とし穴”がありました。「検査済証」がないのです。不動産の検査済証とは、その建築物が建築基準関係の規定に違反していないことを証明する書類のことで、これがなければ医療機関を開業できない、という法律があるわけではないのですが、関係者の話によれば「医療機関が検査済証がない物件を使うのは不適切」だそうで、結局この話はなくなりました。
この一戸建て物件の話をもらう少し前、1年半前に断られた医療モールに性懲りもなくもう一度お願いしてみました。1年半前のその当時も、医療モール自体は「歓迎します」と言ってくれていたのですが、モールに入っている一部の医療機関が「反対」しているとのことで、当院は拒否されたのです。
反対の理由は「当院がそこに入ると競合するから」だそうです。当院としては、患者数を増やすつもりはありませんし、まして、今そこに通っている患者さんを「奪おう」などとは毛頭思っていません。というより、谷口医院は2007年のオープン時から「他で診てもらえなかった人」を中心に診ています。宣伝なども一切したことがありません。そもそも医療機関は営利団体でなく、サービス業のように「顧客確保」などは一切考えません。少なくとも私自身は谷口医院での過去16年間、「できるだけ医療機関に来なくていいように」という視点から治療をしてきました。
そして、1年半が経過した今、やはり入居しているクリニックが反対しているという理由で断られてしまいました。もしも、私が逆の立場なら、「そうか。谷口医院は1年半探してどこも見つからず閉院しかないのか。ならば、うちに入ってもらえばいいではないか」と考えますが、こういうものの見方自体が甘いようです。
詳細は省略しますが、1年半にわたり物件を探してよく分かったことのひとつが、医療モールでなくても「近くに医療機関がくると患者を奪われるからという理由で嫌がる医師」がそれなりにいることです。私なら近くに医療機関ができれば、何科のクリニックであっても「協力できる」と考え歓迎するのですが……。
以前、ある医師とこの話をしたとき、「では、あなたはあなたと同じ総合診療のクリニックが近くにできてもいいのですか?」と尋ねられたことがあります。もちろん私の答えは「歓迎する」です。そもそも世間は絶対的な医師不足です。2020年は「発熱がありコロナかもしれないのにどこも診てくれない」、2021年は「コロナ後遺症なのにどこも診てくれない」、2022年は「ワクチンで後遺症がでたのにどこも診てくれない」という患者さんがどれだけいたか……。
医療者のなかには「すでに医師は過剰、クリニックも過剰」と考える者がいますが、実際は「いいかかりつけ医が見つからずに困っている」という人はものすごくたくさんいます。「そういう人の力になりたい」といえば格好をつけたような表現に聞こえますが、私はそういう思いに抗うことができず、大学病院に籍を置きながら2007年に開業に踏み切りました。当時は医師になってまだ5年目の終わりごろでしたから、開業するには随分と早い段階でした。ですが、「どこに行っていいか分からない」「どこを受診してもイヤな思いしかなかった」という人の力になりたいという思いが私を支配して離れないのです。
その思いをはっきりと感じたのが、研修医1年目の夏、タイのエイズホスピスにボランティアに行ったときでした。HIV陽性というだけで医療機関から受診拒否されて行き場をなくした人たちをみていると、「こんなこと絶対に許してはいけない!」という強い気持ちが心底から湧いてきました。その後も私のこの思いは変わっておらず、「医療機関から拒否された」「医師から見放された」という人たちを(おせっかいかもしれませんが)どうしても放っておけないのです。
さて、現時点の最新情報。まだ、新しい移転先は決まっておらず、今も新しい物件を見に行っている段階ですが、「ここならやっていけるだろう」というところがチラホラ見つかっています。「どこからどうみても完璧」というところはないのですが、それでも「充分にクリニックとしてオープンできるだろう」、という物件は複数見つかりました。
もちろん契約するまでは安心できません。2006年のコラム「天国から地獄へ」で述べたように、太融寺町谷口医院の場所を見つける前に、西区北堀江の四ツ橋筋に面した申し分のない物件をみつけ、ビルのオーナーと仮契約書まで交わしていたのに、最終的に入れなかったというとても苦い経験があります。このときも、そのビルの別のフロアに入っている医療機関から反対されて、その医師が「谷口の入居を許すな!」とビルのオーナーを説き伏せて仮契約書が破棄されてしまったのです。
なぜ、医師は他人をこんなにも拒否するのでしょう。競合するからという理由で(私は「競合」ではなく「協力」を考えているのに)他の医師が近くで診療することを拒否し、コロナが流行れば発熱患者の診察を拒否し、後遺症もワクチン後遺症も診ないという医師があまりにも多いこの現実……。「医師はすでに過剰で患者を集める工夫をしなければならない」と考えている医師がいう「患者」とは「その医師にとって都合のいい患者」に他なりません。
なんとか新しい開業場所をみつけ、これまでの診療を続けていくつもりです。次回のマンスリーレポートでは具体的なお知らせをしたいと考えています。メルマガではその都度最新情報をお伝えしていきます。
しかし、それまでに振動による針刺し事故を起こしてしまえば一巻の終わりです。本日も耐えられない大きな振動が生じたため、数分間診察の中断を余儀なくされました。なんとか、6月末までは針刺し事故を起こさないようにするために、署名へのご協力をお願い致します。
尚、大勢の方から質問をいただいている「振動問題の真犯人は誰か?」については今も分かりません。「谷口医院を追い出したいと考えるビルがボクシングジムを家賃無料で入居させ振動を起こさせている」と考える人が少なくないのですが、その確証はありません。「今も1階ホールの表札にジムの名前が入っていない。谷口医院が出て行けばジムもすぐに撤退するからだ。これが証拠だ」という意見がありますが、これだけでは証拠としては少し弱いように思えます。
また、「第三者がビルとジムの双方に大金を払って振動を起こさせている」という説については、容疑者もその動機も皆目見当がつきません。谷口医院に、あるいは私に、そこまで恨みを持った人間や組織の存在は考えにくいのです。
しかし、真相は依然不明なものの、当院のスタッフのみならず患者さんからも蛇蝎のごとく嫌われ続けながら振動による嫌がらせを一向にやめないこのボクシングジムに相当の「理由」があるのは間違いないでしょう。
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|2023年3月5日 日曜日
2023年3月6日 昼寝はうつ病のリスク因子
2007年の谷口医院の開院以来、「睡眠」の相談は数えきれないくらいに聞いています。「寝付けない」「途中で目覚めてしまう」「睡眠時間は長いが熟睡できない」といった狭義の不眠の悩み以外にも、「いくら寝ても寝足りない」「日中すぐに寝てしまう」なども少なくありません。数年前からは「精神科で処方された睡眠薬をやめたい」という訴えが目立ちます。
様々な睡眠の悩みのなかで「昼寝」についての相談も少なくありません。ただ、昼寝についてはよく分かっていないことが多く、私自身も通り一辺倒に回答しているわけではありません。ある患者さんには昼寝を推奨し、また別の患者さんには昼寝をしないよう助言することもあります。ですが、長時間の昼寝は原則として「やめる」ように話をしています。今回紹介する研究はその私の方針を裏付けることになるかもしれません。
昼寝はうつ病のリスク因子である……
医学誌「Frontiers in Psychology」2022年12月15日号に掲載された論文「昼寝とうつ病のリスク:観察研究のメタ分析(Daytime naps and depression risk: A meta-analysis of observational studies)」はそのように結論づけています。
この研究はこれまで発表された論文を改めて検討し解析しなおす「メタ分析」によっておこなわれています。2022年2月までに発表された良質の研究9件をピックアップし、合計649,111人を対象として解析を加えました。
結果、昼寝をする人は、しない人に比べて抑うつ症状をきたすリスクが15%高いことが分かりました。
************
この研究が少し残念なのは、昼寝の時間でリスクがどれだけ変わるかが分からないことです。
谷口医院の経験でいえば、短い時間の昼寝、例えば「5~10分程度の昼寝」であれば健康に寄与していることが多く、うつ病のリスクが上昇するなどとは思えません。その逆に、この短時間睡眠で再び集中力が生まれてきます、運転中どうしようもなく眠くなったときに路肩に車を止めて5分眠ればすっきりしたという経験がある人も多いでしょう。
では昼間に1時間寝るという人はどうでしょうか。1時間以上昼寝をする人はたいてい生活が乱れてきます。特に、一日中家にいる人がこういう昼寝をするとどんどん体調が悪化して、この論文が示すとおり抑うつ状態が進行します。
例外があることは認めますが、ほとんどの人は「朝早く起きて昼寝は最小限(5~10分)とする」が理想だと思います。夜中に仕事をしている人の場合も、「起きる時刻を一定にする」が基本であり、好きなときに眠る、というライフスタイルではやがて心身が病んでいきます。
調子が悪くならない「例外」としては、「3時間睡眠を1日2回とる」「2時間睡眠を3回とる」などの方法でうまくいっている人がいます。こういう睡眠パターンの方が生活のパフォーマンスが上がるという人もいます。それは否定しませんがやはり例外的だと思います。
また自称「ショートスリーパー」の人もたくさんみてきましたが、そのうちに心身が疲労してくる人がほとんどです。「睡眠は〇時間が理想」というのは人によって異なりますが、谷口医院の患者さんを大勢みてきて「ほとんどの日本人は6~7.5時間くらいが適しているのではないか」と感じています。
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