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2023年5月28日 日曜日
2023年5月28日 「常に夜勤」はアルツハイマー病のリスクが2倍以上
夜勤やシフト勤務が認知症のリスクになると言う研究は最近「夜勤もシフト勤務も認知症のリスク」でお伝えしたばかりですが、今回も似たような研究を紹介したいと思います。
医学誌「Journal of Neurology」2023年4月6日号に掲載された論文「夜勤とすべての認知症およびアルツハイマー病のリスクとの関連性:英国バイオバンク参加者245,570人を対象とした縦断研究(The association of night shift work with the risk of all-cause dementia and Alzheimer’s disease: a longitudinal study of 245,570 UK Biobank participants)」をまとめていきます。
研究の対象者は英国のデータベース(UK Biobank)に登録されている245,570人、追跡期間の平均は13.1年です。夜勤とすべての原因による認知症およびアルツハイマー病の発症との関連性が調べられています。結果は次の通りです。
・すべての原因による認知症を発症したのは1,248人。アルツハイマー病発症者は474人
・すべての認知症の発症リスクは、常に夜勤をしている人が最も高い(リスクは1.465倍)。
・不規則なシフト勤務者のすべての認知症のリスクは1.197倍
・アルツハイマー病の発症リスクは、常に夜勤をしていれば2.031倍にもなる
・常に夜勤勤務をしている人は、AD-GRS(Alzheimer’s disease genetic risk score/アルツハイマー病遺伝的リスクスコア)が高、中、低のいずれであっても、アルツハイマー病のリスクが高くなる
************
今回も対象者が多い大規模研究です。もはや夜勤が認知症のリスクとなるのは自明といっていいでしょう。
遺伝的リスクが低くても高くてもアルツハイマー病を発症するリスクが上がるわけですから、リスクが高い人(ApoE遺伝子をε4で持つ人)は早い段階で夜勤中止を検討すべきでしょう。
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|2023年5月22日 月曜日
第237回(2023年5月) 麻疹(はしか)とこれからの発熱外来
麻疹(はしか)が流行しつつあります。麻疹そのものについての情報提供はこれまで、このサイトおよび他のサイトに私が書いたものもありますので(下記の毎日新聞「医療プレミア」の麻疹に関するコラムはすべて無料で読めます)、興味のある方にはそちらをご覧いただくとして、ここでは今後「麻疹かもしれない」と思ったときにどのように医療機関を受診すべきかについて述べていきたいと思います。
まず、「麻疹の再感染及びワクチン接種後の感染」について話をしておきましょう。
先日(2023年5月17日)、テレビ朝日の「ABEMA Prime」の出演依頼を受けて麻疹に対する話をしました。生放送ということで、どのような質問をされるのか不安があって、さらに、リハーサルなし、それどころか私自身が出演者と面識がないどころか、失礼ながら私がテレビを見ないこともあって、キャスターやパネリストがどのようなキャラクターの方々なのかもまるで分からない状態で番組がスタートしました。
しかも、私の出演はオンラインですからスタジオの”空気”が読めません。生放送で場違いなことや、空気が読めない発言をすれば大変なことになります。番組の「台本」のようなものを開始直前に受け取ったのですが、それをすべて読み終わらないうちに番組が始まってしまいました(下記URLで1週間はオンデマンドで診られるそうです)。
興味深いことに、そして非常に幸いなことに、キャスターの益若つばささんが冒頭で私にとってとてもありがたいコメントをしてくれました。益若さんは最近帯状疱疹に罹患されたそうです。そのときに「子供の頃に水痘(みずぼうそう)にかかったことがリスクと言われた。麻疹もそうなのかどうかが心配です」といったことを発言してくれたのです。しかも番組の途中で、再度その疑問を取り上げてくれました。
これは多くの人が知りたいことであり、医師の立場からみれば「極めて良い質問」です。そして、この答えは「麻疹の再感染はない」です。益若さんが苦しまれた帯状疱疹はたしかに過去の水痘ウイルスの感染が原因です。ですが、麻疹の場合は感染して治癒すれば強力な「抗体」ができて二度と感染することはありません。
その番組で私は「個人的な意見だが麻疹のパンデミックは起こらない」と述べました。その理由は2つあります。1つは2006年に麻疹ワクチンは2回接種が定期化されたために現在の18歳未満のひとたちはしっかりとした抗体があるから。そしてもう1つは現在55歳(あるいは60歳)以上の人たちの大半は感染しているために自然の抗体ができているからです。
通常、パンデミックが起こって多数の犠牲者が起こる感染症は免疫能が不十分な小児と高齢者を襲います。ところが麻疹の場合は、この2つのグループが強固の免疫で守られていますからパンデミックの心配はないのです。
では、ワクチンを2回接種した場合はどうでしょう。この場合はなかなか100%感染しないとは言えません。ワクチンを2回接種したのにも関わらず感染してしまう可能性はあります。ただし、ワクチンを2回接種していれば重症化することは(ほぼ)ありません。高熱が出ず、皮疹もごくわずかの軽症で済むのです。これを「修飾麻疹」と呼びます。
本稿執筆時点で2023年4月から5月にかけて麻疹を発症した事例が4例報告されています。1例目はインドで感染した茨城県の30代男性、2例目と3例目は1例目の男性と同じ新幹線の車両に乗車していた30代女性と40代男性。そして4例目が神戸の事例で、1例目の男性が神戸に移動していたことからこの男性から感染したものとみられています。これら4例のうち神戸の事例については公表されていないので詳細が分かりませんが、他の3例についてはいずれもワクチン未接種(または接種歴不詳)とされています。
茨城と東京の3例はいずれも入院しているようでおそらく軽症ではないのでしょう(4例目の神戸の事例は詳細不詳)。ということは、やはり麻疹対策での最重要事項はワクチンということになります。つまり、高齢者は既感染で、18歳未満は2回のワクチン接種で免疫を得ているわけですから「20~50代のワクチン追加接種」がパンデミックを回避するための最大のポイントになります。
もしもあなたがワクチン未接種または1回接種のみだったとして、麻疹かもしれない発熱が出たときはどうすればいいでしょうか。麻疹は「皮疹」が有名ですが、これは後半に出ます。もう少し正確に言うと、麻疹の発熱は「二相性」といっていったんは解熱します。そのときに口の中に白い斑点(これを「コプリック斑」と呼びます)ができ、その直後に2回目の発熱が起こり、このときに全身に皮疹が出現します。
1回目の発熱時ですでにかなりの倦怠感が伴います。この時点では麻疹よりは新型コロナ、またはインフルエンザが疑われることもあるでしょう。つまり、皮疹があろうがなかろうが、高熱と倦怠感があれば、医療機関の発熱外来を受診するしかないわけです。過去3年で私は何十回と繰り返して訴えてきたように「発熱外来」のあるかかりつけ医を見つけておくのがものすごく大切です。
では、軽症の場合はどうでしょうか。これも何度もお伝えしているように「新型コロナであろうがインフルエンザであろうが、重症化リスクのない人の場合は医療機関受診はそもそも不要」です。何もしなくてもそのうち治るからです。もっともこれは受診してはいけないという意味ではありません。場合によってはオンライン診療も含めて受診を検討すべきでしょう。
では軽症の麻疹を疑ったときにはどうすればいいのでしょうか。例えば、微熱と(特にかゆくない)皮疹が出た場合、我々はほぼ全例で麻疹を鑑別に加えます。そして、麻疹の疑いがあればどうするか。答えは「隔離」です。場合によっては軽症でも保健所と相談して入院先を探すこともありますし、入院できない場合は他人と接することのないよう自己隔離してもらいます。
なぜ、麻疹に感染すると隔離されなければならないのか。もちろん他人への感染リスクを下げるためですが、それならばインフルエンザや新型コロナと同じと思われるかもしれません。ですが、違うのです。新型コロナやインフルエンザよりも麻疹の方が他人への感染リスクを下げることがずっと重要なのです。
2016年にインドネシアで麻疹に感染した30代の日本人男性は現地で重症化し、意識をなくし人工呼吸器の装着を余儀なくされました。帰国後はリハビリを開始しましたが、後遺症が残ったと報告されています。風疹と異なり、麻疹は妊娠中の女性が感染しても母子感染はありませんが、赤ちゃんのみならず母体の命が危険に晒されます。つまり、ワクチン未接種(または1回接種のみ)の人たちがそれなりに多い現状に鑑みると、他人への感染は可能な限り避けなければならないのです。
麻疹の潜伏期間は10~12日程度あります。この間にも他人に感染させる可能性があります。発症後も、軽症であれば行動を控えない人もいるでしょう。一般的に麻疹に感染すると発症から完全治癒まで2~3週間はかかります。こんなにも自己隔離することはできない、と考える人もいるでしょう。ですが、成人が麻疹に感染したときのリスクを甘くみてはいけません。実際、4月から5月に感染した人たちは入院しているわけです。
日本には「はしかにでもかかったようなもの」という慣用句があり、これは一過性の発熱のみ、つまり「軽症」であることを示しているわけですが、成人に感染した場合のことを考えるとこの慣用句は必ずしも適切ではないのです。
参考:
マンスリーレポート
2016年9月 麻疹騒動から考える、かかりつけ医を持たないリスク
医療ニュース
2017年5月29日 ワクチン1回では不十分~後遺症も残る麻疹脳炎~
2016年8月31日 麻疹とマスギャザリング
「医療プレミア」
2022年12月19日 麻疹 「世界の全地域で差し迫った脅威」とWHOが訴えるわけ
2019年9月22日 人ごとでないフィリピン「ワクチン不信」と麻疹急増
2017年6月4日 本当に「大丈夫」?渡航前ワクチンの選び方
2016年4月3日 SSPE 恐ろしい「はしかのような」病から学ぶこと
2016年3月27日 麻疹感染者を増加させた「捏造論文」の罪
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|2023年5月7日 日曜日
2023年5月7日 ペットを飼ってもストレスは減らない?
谷口医院の患者さんのなかにはペット好きが少なくありません。なかにはネコを20匹以上買っているとか、毎月の給料の大半をイヌとネコのエサ代や砂代に費やしているという人もいます。
それだけの手間とお金をかけても精神的なストレスが緩和され、幸せ感を自覚できるのであればやはりペットと過ごす暮らしは理想だと言えるでしょう。ですが、最近、そうではなくてペットでストレスが減るわけではない、という意外な報告がありました。
医学誌「Plos One」2023年4月26日号に掲載された論文「新型コロナウイルス流行中の飼い主とペットとの関係、ストレス、孤独の変化、及びメンタルヘルスに対するペット所有の影響:縦断調査(Temporal patterns of owner-pet relationship, stress, and loneliness during the COVID-19 pandemic, and the effect of pet ownership on mental health: A longitudinal survey)」を紹介します。
研究の対象者は新型コロナウイルス流行前(2020年2月)とロックダウン中(2020年4月~6月)の感情を振り返りました。2020年9月と2021年を通して四半期ごとに追跡調査が実施され、約4,200人以上の回答が分析されました。
結果、ネコとイヌの飼い主は新型コロナウイルス流行期間を通してペットとの絆が着実に深まっていると感じていました。 家でより多くの時間を過ごし、他者から隔離されていることが、ペットとの関係が強化されたと考えられます。
ところが、です。メンタルヘルスに対するペットの影響は期待に反するものでした。ペットがストレスと孤独を和らげると予想されましたが、ペットを飼っている人は、飼っていない人に比べて、同じ程度の孤独を自覚しており、時にはより高いストレスレベルを自覚していることがあったのです。
ただし、ペットを飼うことにより、ロマンティックな関係(恋愛)に関連する孤独感が緩和されることを示唆する結果が得られました。
また、ペットを飼っていない人はストレスの量が少なく、猫を飼っている人は最もストレスが多いことが分かりました。ロックダウン中に獣医を受診したり、日々のケアにお金がかかったりすることは、ペット所有者のストレスの一因となった可能性が示唆されました。
************
まとめなおすと、「ペットが必要な人は元々ストレスが多い」、「ペットの必要性を感じていない人は元々ストレスが少ない」と言えるかもしれません。
論文が示すように、ペットを買えば、そのペットを受診させる必要もあり、エサ代や砂代でそれなりの出費を覚悟せねばならず「責任」がでてきます。これが新たなストレスになる場合があるのでしょう。
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|2023年5月7日 日曜日
2023年5月 「幸せ」がお金で決まらないとすれば何が重要なのか
前回のマンスリーレポート「「幸せはお金で買える」という衝撃の結末」では、従来言われていたように「ある程度の年収があればそれ以上の収入増加は幸せ増大につながらない」という説を覆し、「年収は高ければ高いほど幸せで、幸せ度が上がらない人には不幸な原因がある」という結果を導いた衝撃的な研究を紹介しました。
その研究は学術的には重要なのでしょうが、私はどうしてもその結論に納得できません。では「お金だけではない」とすれば、幸せは何で決まるのでしょうか。これまでこのサイトで取り上げてきた研究も踏まえて改めて考えてみましょう。
幸せについて本サイトで初めて触れたのは2006年8月、太融寺町谷口医院はまだ存在せず、私が大学病院で勤務していた頃でした。コラムのタイトルは「世界一幸せな国 」。2つの研究を紹介しました。
1つは、英国のNPO、NEF (The New Economic Foundation)が、世界178か国を対象とした「幸せ度数」のランキング、もうひとつはやはり英国のレスター大学が「生活満足度」を基にした「幸せの世界地図」で、こちらも対象は世界178か国です。結果は次のようになります。
NEFのランキング:1位バヌアツ、2位コロンビア、3位コスタリカ
レスター大学のランキング:1位デンマーク、2位スイス、3位オーストリア
尚、NEFのサイトを改めてみてみると、2006年から2020年のトータルランキングが掲載されていて、1位から3位は、コスタリカ、バヌアツ、コロンビアとされています。つまり、14年間が経過しても上位3国は変わらないことになります。
バヌアツ、コロンビア、コスタリカの一人あたりの実質GDP(GDP(PPP) per capita)は、Worldmeterによると、それぞれ3,215、14,503、17,110USドルです。ちなみに日本は42,067ドルです。そして、第1位はカタールで128,647ドルです。カタールは、すべての国民の平均年収が1500万円(4人家族なら世帯収入が6千万円)もあるのです。では、大金持ちのカタール人はなぜ幸せランキングの上位にこないのでしょうか。カタールはNEFのランキングではなんと152か国中152位、つまり最下位です。
前回のコラムで紹介したように、ノーベル経済学受賞者が「収入は多ければ多いほど幸せ」と言っているところに、私が「それはおかしい!」と言ったところで誰も耳を傾けないでしょう。ですが、NEFの幸せランキングが正しいとすれば、なぜ世界一の金持ち国家のランキングが世界一不幸とされているのでしょう。
他の「幸せランキング」も見てみましょう。国連が運営する非営利団体「Sustainable Development Solutions Network」が2023年3月20日、「世界幸せレポート(World Happiness Report 2023)」というものを発表しました。結果、幸せな国家第1位に選ばれたのはフィンランドで、これで6年連続第1位となります。
OECDの「Better Life Index」というものもあって、こちらでもフィンランドが第1位です。
谷口医院の患者さんにはなぜか「フィンランド好き」が少なくありません。特にアカデミックな環境にいる人、例えば大学院生、高校教師、医療者などからは絶大な人気があり、実際に長期留学で同国に赴く人も目立ちます。この国のどこに魅力があるのでしょうか。
フィンランドで有名なものといえば、誰もが思いつくのがオーロラ、サウナ、サンタクロースあたりでしょうか。食事はどうでしょう。私が谷口医院の患者さんらから聞いた話では、フィンランドの食事はそんなによくありません。トナカイの肉もそんなに美味しくないと聞きますし、もしも日本人の口に合うのなら巷にはフィンランド料理屋があってもよさそうですが見たことがありません。ある患者さんはフィンランド滞在中、ずっとチョコレートで栄養を摂っていたと言っていました。
「ヒュッゲ」とはデンマーク由来の言葉だそうですが、フィンランドを含む北欧ではお馴染みの習慣だと聞きます。日本語には訳しにくいものの「ほっこり」「ほのぼの」「しっぽり」「まったり」などが近いようです。おそらく、暖炉のある大きな部屋で家族のメンバーが集まってホットチョコレートでも飲みながらのんびり過ごすようなイメージだと思います。
ということは一人当たりのGDPが46,344USドル(日本より少し高いくらい)で、自然がきれいとはいえ長くて厳しい冬に耐えねばならず、食事がたいして美味しくない(失礼!)、けれど家族団らんのほっこりした時空間(ヒュッゲ)を楽しめるからフィンランドは世界一幸せな国と考えるべきなのでしょうか。もちろん世界第一位の結果となったのは、福祉制度や環境対策が適切に取られている、教育体制が充実している、医療機関にアクセスしやすい、などの理由があるからですが、ヒュッゲなしではフィンランドの幸福は語れないのではないでしょうか。
もうひとつ興味深いデータを紹介しましょう。英国の慈善団体CAF(Charities Aid Foundation)が「World Giving Index」という人助けや寄付のランキングを公表しています。
こちらの2021年のランキングをみると、第1位はインドネシアです。世界で最も他人にやさしい(困っている人がいれば助ける、寄付をするなど)国はインドネシアだというわけです。そして、このランキングで最も興味深いのは「最下位の国」です。調査対象国全114か国で最下位の国、つまり「他人に最も冷たい国」は我が国日本です。
作家の橘玲氏は著書『幸福の「資本」論――あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」』で興味深い提言をされています。幸せを決めるファクターは、「(手持ちの)お金」「(金を稼げる)能力」「友達や恋人」であるとし、これらをそれぞれ「金融資本」「人的資本」「社会資本」と呼んでいます。
この説が興味深いのは、例えば「金融資本+人的資本=ソロリッチ」(友達・恋人のいない医師など専門職に多い)、「人的資本+社会資本=リア充」(一流企業の若いビジネスパーソンなど)など8つのタイプに分類していることです。ちなみに、金融資本、人的資本、社会資本のすべてがすろった「超充」はめったにないそうです。
結局のところ、何に幸せを感じるのかは人それぞれであり、お金だけがあれば幸せという人も(たぶん)おらず、お金が無くても愛だけがあればいいというのもまた(たぶん)きれいごとであり、環境保全、社会福祉、助け合い、寄付、(ヒュッゲなど)家族とほっこりできる時間なども誰にとってもそれなりには必要であり、それらのバランスと程度によるというのが現実ではないでしょうか。
最後に私自身の「幸せの基準」を紹介しておきましょう。私が重視しているのは「将来のビジョンが描けるか」です。例えば、今宝くじで3千万円が当たったとしてもいつまでたってもまともな仕事ができる見通しが立たず友達もいないのなら幸せではありません。他方、まだ見習いの身だけれど今からあと3年かけて技術と知識を習得し誰にも負けない仕事をするというビジョンがあり、支えてくれる友人がいれば幸せです。身体にハンディキャップがあるけれど、作業所で安定した仕事があって信頼しあっているパートナーがいて、貧しいながらもときどき寄付をするような生活がこれからも続きそうなら幸せ度は高いと言えます。
ということは、今幸せ感の自覚がないのであれば、将来、例えば10年後はどんな生活をしていたいかを思い描き、それを実現するためには3年後は何をしていればいいか、1年後は、3か月後は、……、と考えるようにすれば「幸せへのステップ」が自ずと見えてくるはずです。
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