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2024年12月12日 木曜日
2024年12月12日 砂糖はうつ病のリスク
最近発表されたメタ解析(これまでに発表された論文で質の高いものだけを集めて総合的に解析しなおした研究)で「砂糖摂取がうつ病のリスク」であることは間違いなさそうです。
そのメタ解析が発表された論文は医学誌「Frontiers in Nutrition」2024年10月16日号に掲載された「砂糖摂取とうつ病および不安症のリスクとの関連:系統的レビューとメタ解析(Association of sugar consumption with risk of depression and anxiety: a systematic review and meta-analysis)」です。
これまでに発表された合計40の研究が解析され、対象者は1,212,107例になります。砂糖摂取でうつ病のリスクが21%増加していました。一方、不安症のリスクとの関連については「11%増加する」となりましたが、こちらは統計学的に有意な結果ではありませんでした。
尚、うつ病のリスクは男性よりも女性で高いことも明らかとなりました。
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なぜ、砂糖摂取でうつ病のリスクが上昇するのかについてはこの論文からは分かりません。おそらく血糖値の急激な上昇(最近よく「血糖値スパイク」と呼ばれるものです)に続いて生じる下落が原因のひとつではないかと推測されます。
いずれにしても「甘いもの」が好きな人は今一度おやつの摂り方を見直した方がいいかもしれません。
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|2024年12月10日 火曜日
2024年12月 人間は結局「利己的な生き物」なのか
2024年の米国大統領選挙でトランプ氏が勝利すると予想していた日本人はどれだけいるでしょう。たしかに事前の世論調査では「トランプ氏が有利」とするものもあったようですが、「なんだかんだ言っても最終的にはおかしな人物を大統領に選ぶような国ではないだろう。まともな人も多いんだから」と思っていた人が多かったのではないでしょうか。
トランプ氏の悪行はここで言うまでもありませんが、大衆を煽り議会を占拠させ死人まで出しているわけですし、ポルノ女優との不倫の口止め料支払いを事業記録に虚偽記載してニューヨーク市民からなる陪審団から有罪と判断されたわけですし(日本なら「ポルノ女優との不倫」だけで国のトップになることはないでしょう)、34件の州法違反で重罪人となり、複数の刑事裁判で被告人となっている人物が、政府最高峰の職責につくなどとは到底理解できません。私がトランプ氏を金輪際許せないのは、2017年のコラム「私が医師を目指した理由と許せない行為」で述べたように、障害者のものまねをしてこきおろしたからです。米国人はどうかしてしまったのでしょうか。こんな人物を国の代表にしていいはずがありません。
私と付き合いのある友人知人でトランプ氏を応援していた人は一人もいませんし、谷口医院を受診している米国人を含む外国人全員が(大統領選挙の話ができた患者さんだけですが)「トランプ氏を支持しない」と話していました。トランプ氏が勝利したせいでうつ状態になったという米国人すらいます。
(尚、「トランプ氏を支持する人を見たことがない」ということを私のメルマガに書いたところ、ある読者から「反ワクチン派はトランプ支持らしい」という話を教えてもらいました。まさか、新型コロナワクチンに反対する人全員がトランプ氏支持というわけではないでしょうが、「反ワクチン派はトランプ派」は興味深い現象です)
「兵庫県庁内部告発文書問題」で職員を自殺に追い込んだとされ県議会による不信任決議が可決され9月30日に知事を失職した斎藤元彦氏が、11月17日の選挙で勝利し、再び兵庫県知事に返り咲きました。
11月24日におこなわれたルーマニアの大統領選挙では、政党や組織に所属せず、本格的な選挙運動をおこなったこともなく、プーチンを「祖国を愛する男」と称賛し、「NATOから脱退すべきだ」と主張しているCalin Georgescu氏が第1位として決選投票に進みました。
選挙で誰に投票するかは各自が決めればいいことですし、その理由はどのようなものであってもかまいません。例えば、単に「ルックスがいい」とか「故郷が同じ」とか、そういった理由で投票しても誰からも文句を言われる筋合いはありません。投票の理由を問われることはなく、選挙とはそのようなものだからです。
ですが、制度上はそうであったとしても、そういう理由で投票したとは言わない方がいいでしょうし、「なぜその人物に投票したのか」と問われればもっともらしい回答を用意しておくのが普通でしょう。そして、トランプ氏、斉藤氏、Georgescu氏に投票した人たちも、そういう理由は用意しているでしょう。例えば「真に国民のことを考えているのはトランプ氏だ」とか「斉藤氏なら、停滞したこの地域を復活させることができる」などです。
しかしながら、彼(女)らの本音はどうでしょう。米国には「Hidden (secret) Trump Supporeters(隠れトランプ派)」が少なくなかったとする報道があります。「トランプ氏を支持している」と表立って言うことは控え、こっそりとトランプ氏に投票する人たちのことです。彼(女)らはなぜ堂々とトランプ氏を支持すると言えないのか。支持する理由が「公共のため」「社会のため」ではなく、「自分勝手なもの」「自分にとって都合がいいもの」「個人的ルサンチマンを晴らすもの」などだからではないでしょうか。
例えば世の中は平等であるべきなのは自明ですが、試験でいい点をとってハイクラスの生活へと進む非白人や女性が許せない白人の低学歴男子は、いくら社会にとって正しいことを主張しようが(というより主張すればするほど)民主党やハリス氏を嫌うようになるのではないでしょうか。すでに米国に居住しているヒスパニック系の人たちは、道徳的には同胞を歓迎しなければならないはずですが、移民に反対するトランプ氏が勝利すれば”既得権”を守ることができます。
斉藤氏の場合、当初は「県民局長がパワハラの被害に遭ってその苦痛で自ら命を絶った。その責任は斉藤知事にある」というニュアンスで報道されていましたが、その後「実はパワハラなどなかったのでは?」という疑惑が浮上してきました。一部の報道によると、「自殺した県民局長は管理職という立場を利用して複数の女子職員と不倫を重ね、それを自身のパソコンに『不倫日記』として記録していた。それが県にバレそうになり自殺した」とされています。ここから、「自殺した県民局長は自身の不祥事を隠すために斉藤知事をスケープゴートにした。斉藤知事の本当の姿は死んだ県民局長も支持していた前知事(井戸敏三氏)の愚行を正すために現れたヒーローだ!」とする声が上がり始めました。
これは”物語”としては面白いといえます。なにしろ全会一致で不信任決議が可決され、絶体絶命の窮地に追い込まれた斉藤知事の”真実”がギリギリのところで明らかとなり、形勢が逆転し、最後には勝利を手にしたわけですから、このまま1本の映画にもできそうです。こういう”物語”にワクワクして、それに加担することで正義感に陶酔して斉藤知事に票を入れた若者も少なくなかったのではないでしょか。
トランプ氏、斉藤氏、Georgescu氏の「勝利」に貢献したのはいずれもSNS(特にX)だと言われています。私は「ツイッター」なるものが登場したとき、興味を持てず、こんなものはすぐに廃れるだろうと思っていました。なぜなら、人の思いや考えをわずか140文字で表すことなどできるはずがないと考えたからです。140文字しかないということは、例えて言えば、スポーツ新聞の見出しとリードだけを読んで物事を判断するようなものです。
新聞の社説は(特に日本の新聞は)たいてい面白くありませんが、それでも「他者の意見を聞く」ということに関しては参考になります。日本の各新聞の一面にあるコラム(朝日新聞なら「天声人語」)はときにシニカルな内容で読み応えがあることもありますが、その話題の全貌や書き手の正確な意図を知るには文章量が少なすぎます。それでも文字数は600字程度、つまりツィッターの4倍以上はあるわけです。
しかし、私の感性とは異なり、実際にはX(旧ツイッター)は流行の域を超え、もはや世界の人たちの「日常」と化しています。ということは、私の方が変わり者であり、世のマジョリティの人たちはXを代表とするSNSで情報収集し、それに影響を受け、そして自分自身もSNSを用いて自分の意見を拡散させているのです。
では、世の中の人々は果たして短いメッセージによる情報取集でじゅうぶんだと考えているのでしょうか。そう考え、むしろ短い方が分かりやすくて便利だと感じている人が多いのかもしれません。短いメッセージはどうしてもストレートなものにならざるを得ません。大勢の注意を惹く必要がありますから表現は過激になり、さらにそれは加速していきます。他人を批判するにしても、従来ならその前提を述べ、相手の言い分を要約し、なぜそれに同意できないかを理論整然と述べなければならないはずですが、そのようなプロセスを省略し、過激な言葉で本音だけを羅列するようになったのです。
その結果、各自の本心が露わになり、人と人との対立がよりはっきりしました。自分の主張を婉曲せずにストレートに堂々と主張し、反論がくればより過激な言葉でこけおろす。一方、自身の承認欲求を満たすために、自慢としか思えない写真や文字を披露するのです。「自分のステイタスを上げ、他人を蹴落とす」、これが人間の素の欲求なのかもしれません。
投票する人たちは、国や地域社会のことよりも、自分の欲求が満たされるか否か、誰が勝利すれば自分の嫌いなやつらを蹴落とせるか、そのような視点で行動しているような気がしてなりません。
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