医療ニュース
2013年6月29日 土曜日
2013年2月15日(金) 新種のコロナウイルス、世界10例目と11例目
2012年9月に重症化する新型コロナウイルスについて紹介しましたが(下記医療ニュース参照)、その後少しずつ報告数が増え、HPA(英国健康保護局)は2013年2月11日、世界10例目となるイギリス人の感染者について発表しました。
これまで確認されている第1例から第9例は、全員が中東での感染と考えられています。5人がサウジアラビア、2人がカタール、2人がヨルダンです。そして10例目となったイギリス人もサウジアラビアとパキスタンに滞在していたことが明らかとなっています。
そして2日後の2月13日、世界11例目となるイギリス人の症例がHPAより発表されました(注1)。この11例目の症例はこれまでの10例と異なり中東への渡航歴がないそうです。これまでの10例はヒトからの感染よりもむしろ動物からの感染が考えられており、コウモリの可能性が指摘されていました。
BBCの報道では、11例目のこの症例は父親からの感染が考えられるとのことです。報道でははっきりと述べられていませんが、どうも10例目が11例目の父親であるようなニュアンスです。しかし、同時に「ヒトからヒトへの感染のリスクは極めて低い」と述べられています。
中東への渡航・滞在には充分な注意が必要ですが、WHO(世界保健機関)は現在のところ、入国時の特別なスクリーニング検査や、渡航・貿易の制限は推奨していません。
***************
現時点では、外務省海外安全ホームページには、この感染症に対する情報が掲載されていないようです。
厚生労働省検疫所のサイトには、「2013年02月12日更新 新種のコロナウイルス感染症について」というタイトルで情報が載せられていますので、下記を参照してみてください。
http://www.forth.go.jp/topics/2013/02121053.html
ただし、厚労省も渡航を制限しているわけではありませんし、どのような対策をとるべきなのかについての言及はありません。現時点では感染者はまだ少数ですが、重症化しやすいのは間違いなく、世界11例のうち5例はすでに死亡しており、10例目のイギリス人も現在集中治療室に入院しています。
中東方面へ渡航する人は注意深く情報収集することが必要でしょう。
(谷口恭)
注1:BBCは「Health official- new coronavirus risk remains very low」というタイトルで報じています。下記のURLを参照ください。
http://www.bbc.co.uk/news/health-21447216
HPAは下記のURLで11例目について言及しています。
http://www.hpa.org.uk/NewsCentre/NationalPressReleases/2013PressReleases
/130213statementonlatestcoronaviruspatient/
参考:医療ニュース
2012年9月28日 「重症化する新型コロナウイルス」
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|2013年6月29日 土曜日
2013年2月15日(金) SFTSで新たに2人の死亡が確認
ダニで媒介する新しい感染症のSFTSで山口県の女性が2012年の秋に死亡していた、というニュースを先日お伝えしましたが(下記医療ニュース参照)、同じ時期に2人の男性が同じ感染症で死亡していたことが、2013年2月13日、厚生労働省から発表されました。
2人の男性は愛媛県と宮崎県に在住で、2人とも最近の海外渡航歴はなかったそうです。そして、奇妙なことに2人ともダニの刺し傷が見当たらなかったそうです。報道によりますと、宮崎県の男性は山に出かけることがあったそうです。愛媛県の例については報道からはダニに刺される状況にあったのかどうかは分かりません。
厚労省によりますと、全国の都道府県から同様の症状の事例報告がこれまでに9件あり、検査した4件のうち2件からこのウイルス(SFTSウイルス)が検出されています。同省では現在残り5件の検査を急いでいるそうです。
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宮崎県と愛媛県の症例から検出されたSFTSウイルスの遺伝子の塩基配列は山口県の女性のものと似ていたそうです。そして、これらは中国で報告されているSFTSウイルスのものとは異なっているそうです。
ということは、中国から輸入されたものではなく、日本に以前からあったものである可能性が強いと言えます。私は前回の医療ニュースで、中国から入ってきたウイルスが変異した可能性について言及しましたが、日本で発覚した3例がすべて酷似しており、かつ中国のものとは似ていない、となると、日本に以前からあったものと考えるべきでしょう。
しかし、これだけ重症化するウイルス感染が、なぜ今まで注目されなかったのでしょうか。それから、本当にダニが媒介しているのでしょうか。たしかにダニに刺されても気づかない人はいますが、それでも刺し傷は比較的簡単に見つかることが多いという印象が私にはあります。しかし、実はそうでなくて、刺されても痛くもなくて跡も残らない、というケースが実際にはよくあるのでしょうか。
依然謎につつまれたままの感染症です…。
(谷口恭)
参考:医療ニュース
2013年2月1日 「謎に包まれた新しいダニ媒介の感染症」
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|2013年6月29日 土曜日
2013年2月22日(金) 首からぶらさげる「ウイルス除去剤」でやけどの被害
すでにマスコミでも報道されていますが、首からぶらさげるタイプの「ウイルス除去剤」でやけど被害が相次いでいます。重症例も出ているようで、消費者庁が注意を促しています(注1)。
この製品は、消毒効果のある次亜塩素酸ナトリウムを含む錠剤の入ったパックを首からぶら下げて使うことで、ウイルスが除去できる、とされています。
皮膚科関連の学会に寄せられた報告によりますと、今月中旬までに17例の症例報告があり、そのうち、製品が確認できている11例の全てが、ダイトクコーポレーション社製の「ウイルスプロテクター」という製品だったそうです。
この製品はすでに国内で70万個が流通しており、厚生労働省が同社に自主回収を指導する予定だそうです。
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今年に入り、首からネームプレートのような奇妙なものをぶらさげている患者さんが増えたな、と思っていたらこれが「ウイルスプロテクター」でした。
このやけどは「化学熱傷」と呼ばれるもので、次亜塩素酸ナトリウムの錠剤が汗に触れたことで発症したのだと思われます。衣服の上から装着するだけであれば問題ないと思いますが、熱傷を負った人たちはおそらくこの製品をつけたまま寝てしまったのではないでしょうか。
化学熱傷の場合、気づいたときにはそれほどひどくなくても、時間がたってから皮膚の障害が進行することがあります。思い当たることがある人は、軽症であったとしても一度医療機関を受診すべきだと思います。
それから、問題になっている「ウイルスプロテクター」以外にも似たような製品が多数出回っているそうですので注意が必要です。
(谷口恭)
注1:消費者庁の注意勧告は下記のURLで閲覧することができます。
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|2013年6月29日 土曜日
2013年3月4日(月) タバコは美白を遠ざける
タバコが皮膚に悪影響を与えるということは以前から指摘されており、いくつかの皮膚疾患(特に掌踵膿疱症や尋常性乾癬など)の増悪因子になっていることには疑問をはさむ余地がありません。また、ヘビースモーカーの中高年女性の肌は老化が早いということは医療者からもしばしば指摘されます。しかし、皮膚の老化、ということに対して科学的に検証された研究はあまり見当たりません。
タバコを吸う女性は、吸わない女性に比べてメラニン産生量が増えて色が黒くなる…
このような研究結果が日本人の学者(岐阜大学のYuta Tamai教授)により発表され話題を呼んでいます。医学誌『Tobacco Control』2013年1月26日号(オンライン版)に掲載されています(注1)。
この研究の対象となったのは、2003年10月~2006年3月に岐阜県の総合病院に健康診断で受診した20~74歳の女性939人です。健診時に喫煙状況などのアンケートをおこない、メグザメーター(Mexameter)という器械を用いて皮膚のメラニンの量が測定されています。
その結果、喫煙者は、非喫煙者および喫煙経験者に比べてメラニンの量が有意に高いことが分かったそうです。1日当たりの喫煙本数、喫煙年数が多ければ多いほどメラニンの量も多いという結果になっています。
この結果は、サンスクリーン(日焼け止め)の使用、肌にいいとされているビタミンや野菜摂取の状況、また脂肪の摂取などの条件を調節しても変わらなかったそうです。
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メラニンを増やすのを防ぐために最も大切なのは、サンスクリーンをしっかりと塗布する、ということですが、タバコを吸っていると、吸わない人に比べてその効果が減少する、と理解すべきでしょう。
美容のために厳しいダイエットに耐える、しかしタバコがやめられない、という人がときどきいますが、順番は逆だと考えるべきです。このような研究が、禁煙する女性が増えることにつながれば、と思います。
(谷口恭)
注1:この論文のタイトルは、「Association of cigarette smoking with skin colour in Japanese women」で、下記のURLで概要を読むことができます。
http://tobaccocontrol.bmj.com/content/early/2013/01/25/tobaccocontrol-2012-
050524.abstract?sid=a59ddf87-261d-4f4b-8bd3-62ea71655034
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|2013年6月29日 土曜日
2013年3月12日 意外に多いかもしれないHMPV
いわゆる「風邪」のウイルスとして最も有名なのはインフルエンザウイルスでしょう。インフルエンザ以外ではアデノウイルスとRSウイルスあたりが最近は有名になってきていて、これらは保険診療で検査をおこなうことも場合によっては可能になりました。
これら以外ではSARSの原因ウイルスとして注目を集め、最近では中東で感染しときに重症化することのある新しい型が発見されたことで注目されつつあるコロナウイルスはある程度有名かもしれません。
しかし、それ以外の風邪の原因ウイルス、具体的には、ライノウイルス、エコーウイルス、パラインフルエンザウイルス、などはほとんど注目されていないのではないでしょうか。この理由として、これらウイルスに罹患して「風邪」をひいてもそれほど重症化しないこと、簡単な検査キットがないこと、特効薬がないこと、などが考えられます。
最近、「風邪」の病原体のひとつとして注目されつつあるウイルスがあります。そのウイルスの名前はhuman metapneumovirus(HMPV)で、発見されたのは2001年です。
医学誌「New England Journal of Medicine」2013年2月14日号(オンライン版)(注1)によりますと、米国の研究でこのウイルス(以下HMPV)が小児の入院や救急外来受診の一部の原因になっていることが判りました。
研究者は、2003年から2009年までの米国の3つの郡の病院からHMPVに関するデータを収集し分析しています。その結果、この期間に入院した小児3,490人の約6%、外来を受診した小児3,257人の約7%、救急外来を受診した小児3,001人の約7%でHMPVが検出されました。
HMPV感染で入院した小児は、元々喘息があるケースが多く、なかには酸素吸入を必要とし、集中治療室(ICU)での治療を要するケースもありました。しかし、喘息などの基礎疾患がなくても感染しにくいというわけではなく誰にでも感染するようです。
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HMPVによる急性上気道炎症状は数年前より日本でも話題になることが増えてきており、すでに簡易検査キットもあります。しかし、風邪で受診する患者さんのどの程度がHMPVによるものなのかは不明のままでした。日本とアメリカでは状況が異なっている可能性はありますが、このような研究は注目に値するでしょう。
HMPVの症状は、RSウイルスに似ていると言われています。つまり感冒症状のなかで咳が最も目立ちます。RSウイルスもHMPVも共に特効薬がなく対症療法しかできません。RSウイルスは入院した小児には保険で検査ができますが、HMPVは現在のところ、簡易検査キットがあるのにもかかわらず、どのような場合でも保険診療で調べることはできません。
今のところ、成人に感染してもたいした症状は出ないとされていますが、同じように言われていたRSウイルスが高齢者の施設で集団発生することが最近わかったように、今後成人の集団感染も起こる(すでに起こっている)かもしれません。
(谷口恭)
注1:この論文のタイトルは、「Burden of Human Metapneumovirus Infection in Young Children」で、下記のURLで概要を読むことができます。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1204630
参考:医療ニュース
2012年9月30日 「RSウイルス感染症に注意」
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|2013年6月29日 土曜日
2013年3月15日(金) 都道府県別の平均寿命、長野県が男女ともに1位
2013年2月28日、厚生労働省は5年に一度実施される国勢調査を解析した都道府県別の平均寿命を発表しました(注1)。
平均寿命が最も長いのは、男女とも長野県で、男性80.88歳、女性87.18歳です。男性は1990年から5回連続(25年間)で1位、女性はこれまでは沖縄がトップでしたから、初めての1位ということになります。
逆に最も短いのは男女ともに青森県で、男性77.28歳、女性85.34歳です。
2位以下をみてみると、男性は、滋賀県(80.58歳)、福井県(80.47歳)、熊本県(80.29歳)、神奈川県(80.25歳)となっています。女性は、2位が島根県(87.0歳)、沖縄(87.02歳)、熊本県(86.98歳)、新潟県(86.96歳)、と続きます。
全体でみると、ほぼすべての都道府県で(鳥取県の女性以外)、平均寿命が伸びています。
死因別のデータも発表されています(注2)。興味深いのは「老衰」での死亡が、静岡県が男女とも1位で、男性が4.57%、女性13.13%となっています。「自殺」は、男性は1位が秋田県で3.32%、2位が岩手県の3.28%、女性は1位が岩手県で1.57%、2位が秋田県の1.41%と、秋田・岩手で1位2位を占めていることになります。
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以前、国立がん研究センターがん対策情報センターが発表した都道府県別ガン死亡率について紹介しましたが(下記医療ニュース参照)、やはり長野県がダントツの1位、最下位は青森県でした。ガン死亡率と平均寿命が一致しているということは、やはりこの国の最大の死因はガンであり、長生きするためにはガン対策が不可欠ということになるかと思います。
しかし興味深いことは他にもあります。老衰での死亡は全国で男性2.81%、女性8.75%と男女に開きがあることは注目すべきでしょう。自殺は、全国で男性2.52%、女性が1.07%です。男性が自殺で死ぬ確率は老衰で死ぬのと同じくらいであり、実に40人に1人以上が自殺で命を絶っていることになります。つまり同じクラスでひとりくらいが自殺しているということになるわけです。
自殺は、岩手県と秋田県で男女とも1位2位を占めていますが、青森県も男性3位、女性8位とやはり多いようです。しかし同じ東北地方の宮城県では、男性は21位、女性はなんと44位!と「自殺の少ない県」となっています。しかも東日本大震災があったのにもかかわらず、です。これはなぜなのでしょうか。医学的な観点からだけでなく文化人類学的な考察が必要になるのかもしれません。
(谷口恭)
注1:詳しくは厚労省の下記のサイトを参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/tdfk10/dl/02.pdf
注2:死因別データは下記を参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/tdfk10/dl/05.pdf
参考:医療ニュース
2012年10月26日 「都道府県別ガン死亡率、青森が8年連続ワースト1」
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|2013年6月29日 土曜日
2013年3月29日(金) やはり減塩で死亡者が減少
2011年頃、塩分制限はおこなう必要がないとする論文がいくつか発表され世界中で話題となりました。このような研究結果が発表されたからといって、直ちに世界中の医師が塩分制限を撤回したかといえば、もちろんそのようなことはなく、おそらくほとんどの医師が従来通りの減塩の必要性を訴えていると思われます。
減塩をおこなえば今後10年間で米国人を50万人も救うことができる・・・
これは医学誌『Hypertension』2013年2月11日号(オンライン版)(注1)で発表された研究です。
この研究では、3種類の減塩のシナリオが設定され、コンピュータを用いて解析がおこなわれています。シナリオAは「今後10年間で40%の減塩を段階的におこなう」、シナリオBは「40%の減塩を直ちにおこない国民平均ナトリウム摂取を2,200mg/日(5.6g/日)(注2)とし10年間維持する」、シナリオCは「直ちに国民平均ナトリウム摂取を1,500mg/日(3.8g/日)とし10年間維持する」とされています。
解析の結果、どのシナリオを採用したとしても死亡者を大きく減らすことができることがわかりました。最も緩やかなシナリオAでさえ、その次の10年間で28万人から50万人もの命を救うことができるとされています。
****************
ちなみにアメリカ人の平均塩分摂取量は8.9g/日(ナトリウム3,500mg/日)とされています。日本人は2010年のデータで男性11.2g/日、女性9.9g/日です(厚労省の「国民健康・栄養調査」より)。
厚労省の「日本人の食事摂取基準」(2010年版)によれば、1日の目標量として、男性は9.0g/日、女性は7.5g/日とされています。この研究のシナリオにあるような、1日あたり5.6g/日や3.8g/日というのは相当困難であることがわかります。
最近は、減塩不要とする論文をほとんど見かけなくなり、そのようなことを主張する学者の声も聞きません。やはり塩分は従来から言われていたとおり減らしていくのがよさそうです。決して簡単ではありませんが・・・。
(谷口恭)
注1:この論文のタイトルは、「Mortality Benefits From US Population-wide Reduction in Sodium Consumption」で、下記のURLで概要を読むことができます。
http://hyper.ahajournals.org/content/61/3/564.abstract?sid=e3307020-398b-4547-ad52-f2628b84af2d
注2:塩分摂取量について、海外の論文では一般的にナトリウム量が使われますが、日本では食塩のグラム数で表されるのが普通です。「ナトリウム量(mg)x 2.54 ÷ 1,000 = 塩分(g)」が換算式となります。
参考
メディカルエッセイ:第104回(2011年9月) 「塩分制限が不要というのは本当か」
はやりの病気:第81回(2010年5月) 「慢性腎臓病と塩分制限」
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|2013年6月29日 土曜日
2013年4月1日(月) 自殺が多いのは、男性は公務員、女性は医療・福祉
2013年3月6日に厚労省が公表した「平成22年度 人口動態職業・産業別統計の概況」というものがあり、ここに産業別の死因のデータがあります。この調査は、平成22年4月1日から平成23年3月31日までの期間に死亡し届出がおこなわれたものが解析されています。尚、この調査は5年に一度おこなわれています。
勤労者の自殺が依然多いことがよく指摘されますが、この調査では産業別の自殺者の割合が算出されています(注1)。
女性で自殺が最も多い産業は「医療・福祉」で全死亡の11.4%に相当します。(医療・福祉に従事する全死亡者数が1,604人で、そのうち自殺が183人) 2位が「公務員」の9.9%です。
男性では、最も自殺の割合が高いのは公務員で16.6%です。(公務員の全死亡者数が2,012人で、そのうち自殺が333人) 2位が「複合サービス業」の14.3%(「複合サービス業」が何を指すのかについてはよく分かりません)、3位が「電気・ガス・熱供給・水道業」の11.1%です。「医療・福祉」は8.7%(217人)でこれは13位になります。
**************
ちなみに、前回の2005年度の調査では、「医療、福祉」関係者の死因が「自殺」だった割合は、女性が10.8%、男性が8.0%です。上記で述べたように、今回(2010年)は、女性、男性それぞれが11.4%、8.7%ですから、自殺で死亡する人の割合は男女とも増えているということになります。
この数字だけをみると、医療・福祉の現場では女性の方に自殺者が多いように感じてしまいますが、自殺者数でみると、女性183人、男性217人と男性の方が多くなっています。
就職が困難と言われるなか、女性は医療・福祉関連の職種を目指す人が増えています。最近では30代で看護学校に入学する人がまったく珍しくなくなっていますし、介護関連は40代からのチャレンジも少なくありません。また、新卒者の最も人気のある職種が公務員であるとする調査もあります。一方で、自殺が多いのがその「医療・福祉」と「公務員」というのは何やら皮肉な感じがします・・・。
(谷口恭)
注1:このデータは厚労省の下記のURLでみることができます。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/10jdss/dl/03.pdf
参考:医療ニュース
2013年1月31日「自殺者が3万人を切ったものの・・・」
2012年5月11日「20代女性の3人に1人は「自殺」を・・・
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|2013年6月29日 土曜日
2013年4月2日(火) 座りっぱなしの生活がガンや糖尿病のリスク
座っている時間の長い人が糖尿病や心疾患といった慢性疾患のリスクになるという情報は過去何度かお伝えしていますが(下記医療ニュースも参照ください)、新たに研究が発表されましたので報告いたします。
一日に座っている時間が長いほど、糖尿病や高血圧、心疾患、ガンなどに罹患しやすい・・・。
これは、医学誌『International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity』2013年2月8日(オンライン版)に掲載された論文(注1)によるものです。
この研究は、オーストラリアのニューサウスウェールズ州に在住する45~65歳の男性63,048人を対象とし、慢性疾患の有無と一日に座って過ごす時間との関係が調べられています。
結果は、座っている時間が1日4時間以下の人は、毎日4時間以上座って過ごす人に比べて、ガン、糖尿病、心疾患、高血圧などの慢性疾患を有する率が大幅に低い、というものです。特に糖尿病については、1日6時間以上座って過ごす人はリスクが大幅に増加するようです。
尚、対象者の運動の程度や所得、教育レベルなどを勘案しても結果に変わりはなかったようです。
**************
この研究で興味深いのは、「運動の有無にかかわらず座りっぱなしの生活が慢性疾患のリスクを上げる」、としていることです。座りっぱなしの時間が長い人、と聞くと、運動が嫌いで1日中テレビを見て、どちらかと言うと低所得者のイメージを持ってしまいますが、そのような人だけではなく、座る時間が長ければ他の条件に関わりなく生活習慣病やガンになりやすい、ということをこの研究は語っています。
座りっぱなしが健康に悪いというのは常識的に理解しやすいことですが、私個人の印象は、座る時間が長かったとしても定期的に運動している人は生活習慣病になりにくい、というものです。しかし、今回の論文もそうですし、過去に紹介した研究(下記医療ニュース参照)でも、「運動の有無に関係なく座りっぱなしがマズイ」としています。
今後は「テレビをみるときもインターネットをするときも立ったままで」が健康の秘訣となるかもしれません。さらに、「デスクワークをするときも車を運転するときも定期的にお尻を上げて空気椅子を」と言われるようになるかもしれません・・・。
(谷口恭)
注1:この論文のタイトルは、「Chronic disease and sitting time in middle-aged Australian males: findings from the
45 and Up Study」で、下記のURLで全文を読むことができます。
http://www.ijbnpa.org/content/10/1/20
参考:医療ニュース
2010年7月30日 「座っている時間が長い人は短命?」
2010年1月25日 「テレビの見すぎが寿命を縮める?」
2011年8月30日 「テレビの見過ぎで寿命が短く」
2011年1月14日 「2時間以上のテレビやパソコンは心臓病のリスク」
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|2013年6月29日 土曜日
2013年4月18日(木) コーヒーでも緑茶でも脳卒中のリスク低減
コーヒーが健康にいい、とする研究については過去何度もご紹介していますが、日本でも同様の研究結果が発表されましたのでお知らせいたします。
1日に1杯以上コーヒーを飲む人は脳卒中リスクが約20%低い…。
これは医学誌『Stroke』2013年3月14日号(オンライン版)で発表されたもので、国立循環器病研究センターの小久保喜弘医師による研究です(注1)。
この研究では、1990年代後半に東北から沖縄の9箇所に在住していた45~74歳の男女約82,369人が対象とされ、コーヒー摂取量と脳卒中との関連が調べられています。追跡期間は平均で13年間となり、期間中に3,425が脳出血、脳梗塞、くも膜下出血といった脳卒中を発症しています。解析の結果、1日1杯以上のコーヒーで脳卒中の発症リスクがおよそ20%減少することが判ったそうです。
この調査では緑茶と脳卒中との関係も調べられています。
結果は、1日に2~3杯緑茶を飲む人は、ほとんど飲まない人に比べ、脳卒中リスクが14%低く、4杯以上飲む人では20%低かった、というものです。
本当にコーヒーや緑茶の効果で脳卒中が減るのかどうかを確証させるため、研究では、年齢、性別、体重、喫煙の有無、飲酒、食事、運動などの因子も考慮されています。これらを考慮しても、コーヒー、お茶が有効であったと結論づけられています。尚、緑茶を飲んでいた人は、飲まない人に比べ運動をする比率が高いことも今回の調査で判ったそうです。
*************
コーヒーについては、脳卒中の他、生活習慣病やガンの予防にもなるという研究が相次ぐなか、緑茶については否定的なものが最近は多いような印象がありました。(下記医療ニュースも参照ください) 今回、このような結果が出たことは我々日本人にとっては朗報でしょう。
では、なぜコーヒーや緑茶で脳卒中のリスクが減るのでしょうか。ひとつには、血圧を下げ糖尿病を予防する効果があるから、と考えられるかと思います。また、コーヒーや緑茶をよく飲む人は日頃から健康に関心が高い、とは言えないでしょうか。緑茶をよく飲む人に運動する比率が高いということがそれを示唆しているように思えます。
(谷口恭)
注1:この論文のタイトルは、「The Impact of Green Tea and Coffee Consumption on the Reduced Risk
of Stroke Incidence in Japanese Population: The Japan Public Health
Center-Based Study Cohort」で、下記のURLで概要を読むことができます。
参考:
医療ニュース2013年1月8日「コーヒーで口腔ガン・咽頭ガンの死亡リスク低下」
医療ニュース2012年12月3日 「コーヒーも紅茶も生活習慣病に有効」
医療ニュース2012年10月1日 「コーヒーは消化管疾患と無関係」
医療ニュース2010年5月24日 「紅茶で大腸ガンのリスクが上昇?」
医療ニュース2010年11月4日「緑茶に乳ガンの予防効果なし」
医療ニュース2007年6月19日「緑茶をよく飲む人はカロリー過多!?」
はやりの病気第22回(2005年12月)「癌・糖尿病・高血圧の予防にコーヒーを!」
はやりの病気第30回(2006年4月)「コーヒー摂取で心筋梗塞!」
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