医療ニュース

2013年7月2日 火曜日

2012年11月27日(火) エナジードリンクに注意を

 米国FDA(米国食品医薬品局)がいわゆる「エナジードリンク(energy drink)」に対する注意勧告をおこないました(注1)。

 エナジードリンクとは、カフェインやタウリンなどの成分を多量に含み、「パフォーマンス向上」、「集中力アップ」などとPRしているドリンク剤のことです。今回FDAが調査をおこない有害事象が報告されているのは「5-Hour Energy」という製品が多いようです。(注1の報告書の後半の表を参照ください)

 有害事象としては、気分不良、体重減少、嘔気などが多いようですが、なかには死亡例もあるようです。

 今回の調査は「有害事象」を調べたものであり「副作用」を調べたわけではありません(注2)。つまり、不快な症状の原因や死亡の原因が5-Hour Energyと断定されるわけではありません。5-Hour Energy服用からどれくらいたってから症状が出現したのかが分からなければ、摂取した5-Hour Energyの量も分からないということです。実際、FDAはこのレポートで「これら有害事象と商品摂取との因果関係は明らかでない」と述べています。

 しかし、それでもこのようなレポートが正式に公表されたわけですから、エナジードリンクを摂取する際には充分注意をする必要があるでしょう。

 尚、エナジードリンクについては、米国小児科学会(American Academy of Pediatrics、AAP)が2011年に「多量のカフェインが含まれているため小児の摂取は危険」との声明を発表しています。

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 FDAのレポートでは、「5-Hour Energy」以外の製品として「Monster」「Rockstar」も取り上げられています。

 私はこれらの製品名を聞いたことがなかったので、調べてみると、「Monster」「Rockstar」は日本で発売されていることが分かりました。また、「5-Hour Energy」も個人輸入で簡単に手に入るようです。

 ちなみに私は「エナジードリンク」と聞いて、まず頭に浮かんだのが「Red Bull」です。Red Bullはおそらくタイが発祥だったと思います。タイでは随分と前から頻繁にみかけますが、最近では日本のコンビニでも売られているようです。このRed Bullでも被害が出ているのかに興味があったためにいくつかの報道を調べてみました。

 2012年11月15日のNew York Times(注3)は、今回のFDAの注意勧告に関する記事を取り上げていてRed Bullについても言及しています。同紙によりますと、Red Bullは、米国ではエナジードリンクではなく清涼飲料水(beverage)の扱いとなり、今回のFDAの調査の範疇には入れられていないそうです。(だからといって安全と断定できるわけではありません)

 有害事象が報告されFDAが注意勧告をしている以上、エナジードリンクが好きな人は今後も安全に関する情報に注意する必要があるでしょう。しかし、副作用があるかもしれないというリスクを抱えてでも摂取すべきほどの効果が期待できるものなのでしょうか。ちなみに私はRed Bullをタイで初めてみた年に何度か試してみましたが、その後は一度も飲んでいません・・・。

(谷口恭)

注1:この注意勧告に関するレポートは下記URLで閲覧することができます。

http://www.fda.gov/downloads/AboutFDA/CentersOffices/OfficeofFoods/CFSAN/CFSANFOIAElectronicReadingRoom/UCM328270.pdf

注2:言葉の意味を補足しておきます。「有害事象」とは因果関係に関係なく起こりうる事象をいいます。例えば、極端な例を挙げれば、てんかんを持っている人が薬を飲み忘れていて、5-Hour Energyを飲んだ後にてんかん発作が起こったようなとき、原因は薬の飲み忘れと考えられますが、この場合も5–Hour Energyの「有害事象」とされます。一方、「副作用」は5-Hour Energyを飲んだことが原因で生じた好ましくない事象のことをいいます。

注3:New York Timesのこの記事は下記のURLで閲覧できます。

http://www.nytimes.com/2012/11/16/business/scrutiny-of-energy-drinks-grows.html?_r=0

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2013年7月2日 火曜日

2012年12月1日(土) 年末年始はノロウイルスとインフルエンザに要注意

 ノロウイルスによる感染性胃腸炎がはやっています。国立感染症研究所の報告によりますと、11月12~18日の1週間での1医療機関あたりのノロウイルス感染症の罹患者は11.39人とされており、これはここ10年間では最も流行した2006年に次ぐ勢いとなります。

 地域別のデータをみてみると現時点では宮崎県や大阪府など西日本に多いようです。太融寺町谷口医院でも11月中旬からノロウイルスが原因と思われる嘔吐・下痢の症状の患者さんが相次いでいます。

 同所の報告によれば、年齢は0~5歳が大半とされていますが、これは届出されているのが小児中心であるためにこのような結果になるのであり、実際は統計に上がってこない成人の感染はかなり多数あるはずです。ノロウイルスは例年12月に急増しますからこれからの予防対策が重要になります。

 インフルエンザも不気味な動きをみせています。今年は沖縄で早くから流行していましたが、それ以外の地域では大きな流行はありませんでした。それが11月中旬より、九州全域、島根、和歌山、新潟、さらに宮城や岩手といった東北地方まで集団感染の報告が上がってきています。ここまでくれば東京や大阪などの大都市での流行はカウントダウンに入ったとみるべきでしょう。

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 予防については、インフルエンザのみをターゲットにするなら、ワクチンを接種しておき(今からではちょっと遅いかもしれませんが)、ジェルタイプの携帯用アルコールなどで手指を消毒することとうがいを心がければいいでしょう。
 
 しかしノロウイルスはアルコールで死滅しませんから、流水下でしっかりと手洗いする必要があります。感染力は強く、食べ物からの感染のみならず人から人への感染も簡単に起こします。ワクチンもありません。

 月並みな言い方ですが、うがい・手洗いをしっかりとおこない年末年始を乗り切りましょう。

(谷口恭)

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2013年7月2日 火曜日

2012年12月3日(月) コーヒーも紅茶も生活習慣病に有効

 コーヒーがいくつかのガンや糖尿病などの予防効果があるという研究についてこのサイトで何度かお伝えしてきましたが、医学誌『Journal of Epidemiology』2012年10月6日号(オンライン版)(注1)に日本の研究者による論文が掲載されましたので紹介しておきます。
 
 この研究は、J-MICCと命名された調査に参加した日本人554人が対象とされており、コーヒーと緑茶とメタボリック・シンドロームとの関連が解析されています。

 その結果は、「コーヒーをよく飲む人ほどメタボリック・シンドロームにかかりにくい」というものだったそうです。もう少し細かくみてみると、コーヒーをたくさん飲む人ほど中性脂肪(トリグリセライド)の値が低くなり、血圧上昇や腹囲増加をきたさない、となっています。また、適量のコーヒー(1日1.5~3杯)で高血糖を防ぐことができる、という結果もでているようです。
 
 興味深いことに、緑茶ではこのような相関関係が一切なかったようです。

 紅茶の研究も紹介しておきましょう。医学誌『BMJ Open』2012年11月8日号(オンライン版)(注2)に、スイスの研究者Ariel Beresniak氏の論文が掲載されました。
 
 この研究は、世界50ヶ国の2009年の紅茶の消費量と、呼吸器疾患、感染症、ガン、心血管疾患、及び糖尿病との関連が調べられています。

 解析の結果、紅茶の消費量が多い国ほど糖尿病の罹患率が少ないことがわかったようです。しかし、先に述べた糖尿病以外の疾患については紅茶消費量との関連性は認められなかったそうです。
 
 この論文によりますと、国民1人当たりの年間の紅茶消費量が最も多いのがアイルランドで2.1576kg、2位がイギリスの1.8137kg、3位がトルコの1.6631kgです。逆に、紅茶を最も飲まない国は韓国で0.0007kg、2位がブラジルの0.001kg、3位が中国の0.0011kgです。
 
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 サプリメントや健康食品の生活習慣病に対する有効性がほとんど検証されないのに対して、従来から多くの人々に愛用されているコーヒーや紅茶が有効というのは興味深いと言えるでしょう。
 
 しかし、一般的に健康によいとされている緑茶に生活習慣病の予防効果がなかった、というのもまた興味深い結果です。

 私は紅茶をほとんど飲まないので消費量をキログラムで示されてもよくわからないのですが、仮に紅茶1杯が2グラムとすれば、平均的なアイルランド人は1日に約3杯(2157.6グラム÷2グラム÷365日=2.9556)飲んでいることになります。
 
 同様の計算をおこなうと、紅茶を最も飲まない国、韓国では平均的な韓国人は3年に1杯しか紅茶を飲まない(0.0007kg=0.7グラム、0.7グラム÷2グラム=0.35杯/年、0.35杯/年x3年=1.05杯)ことになり、医学的ではなく文化的な観点から私にとってはこちらの方が興味深い気がします。
 
 ちなみに、これも医学には関係のない話ですが、紅茶の英語名は一般的にはblack teaで、この論文でもblack teaとされています。紅茶を辞書でみるとred teaという記載がある場合がありますが、私はred teaと話している外国人をみたことがありません。ただしblack teaと言うこともそれほど多くないと思います。西洋人が紅茶のことを指すときは単にteaというのが普通です。日本人が機内などで紅茶を頼むときはteaと言うと、緑茶かな、と思われますから、black teaもしくはEnglish teaと言うのがいいと思います。
 
(谷口恭)

注1:この論文のタイトルは、「Inverse Correlation Between Coffee Consumption and Prevalence of
Metabolic Syndrome: Baseline Survey of the Japan Multi-Institutional Collaborative Cohort
(J-MICC) Study in Tokushima, Japan」で、下記のURLで全文を読めます。
 
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jea/advpub/0/advpub_JE20120053/_pdf   

注2:この論文のタイトルは、「Relationships between black tea consumption and key health indicators in the world:
an ecological study」で、下記のURLで全文を読むことができます。
 
http://bmjopen.bmj.com/content/2/6/e000648.full?sid=12e3a4cd-50cb-4af7-91fe-f7f68a68d8ac
 
参考:
医療ニュース
2012年10月1日 「コーヒーは消化管疾患と無関係」
2010年5月24日 「紅茶で大腸ガンのリスクが上昇?」
はやりの病気第22回(2005年12月) 「癌・糖尿病・高血圧の予防にコーヒーを!」  
はやりの病気第30回(2006年4月) 「コーヒー摂取で心筋梗塞!」

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2013年7月2日 火曜日

2012年12月28日(金) 筋力が低いと早死にのリスクに

 10代のときに筋力が弱いと早死にのリスクになる・・・

 これは、スウェーデンのカロリンスカ(Karolinska)研究所のFinn Rasmussen氏らの研究結果で、医学誌『British Medical Journal』2012年11月20日号(オンライン版)に掲載されています(注1)。
 
 この研究では、16~19歳のスウェーデン人の男性1,142,599人が対象とされ、24年間追跡されています。研究開始時に筋力テストが実施され、早死に(早期死亡)の定義は「55歳前の死亡」とされています。24年の追跡期間中に全体の2.29%にあたる26,145人が死亡しています。

 死因で最も多かったのが「自殺」で22.3%、「ガン」14.9%、「心血管疾患」7.8%と続きます。

 筋力別の数字をみてみると、全死亡者では、最も筋力の低いグループは1年間で10万人あたり122.3人、最も筋力の高いグループでは86.9人となっています。心血管疾患による死亡率でみると、それぞれ9.5人、5.6人、自殺による死亡率ではそれぞれ24.6人、16.9人とされています。
 
 筋力が高かったグループでは、血圧やBMIに関係なく(注2)、早期死亡のリスクが20~35%低く、自殺による早期死亡のリスクも20~30%低かったようです。また、統合失調症や気分障害といった精神疾患の診断を受ける可能性は15~65%低かったそうです。
 
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 この研究から、「若い頃に筋力が高い(強い)人は死亡リスクが少なくなる」、ということは言えると思います。しかし、「筋力が高いことが原因で死亡リスクが減る」とか「筋力が低いことが原因で早死にしやすくなる」、とまでは言えないと思います。
 
 つまり、若い頃にしっかりと筋肉がついている、ということは、定期的にスポーツをしており、規則正しい生活を心がけていて、健康に関心を持っている可能性が強いわけで、そのような人たちが長生きするのは当然といえば当然だからです。
 
 この研究を読んで次に知りたいと思ったのは、女性ではどうなのか、ということと、(病気などで)10代の頃には筋力がさほどなかったけれど成人になってから、あるいは中年期になってから体を鍛えて筋肉をつけた場合はどうなるのか、という点で、これらは将来の研究に期待したいと思います。
 
 現時点で確実に言えることは、性別や年齢に関係なく、運動習慣があり、ある程度の筋肉量を維持することが(身体的にも精神的にも)健康で長生きするのに有利である、ということだと思います。
 

(谷口恭)

注1:この論文のタイトルは、「Muscular strength in male adolescents and premature death:
cohort study of one million participants」で、下記のURLで全文を読むことができます。
 
http://www.bmj.com/content/345/bmj.e7279

注2:10代の頃に血圧が高い場合や、BMI(Body Mass Index)が高い場合(要するに肥満があるとき)に早期死亡するリスクがあることはこれまでの研究からあきらかとなっています。

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2013年7月2日 火曜日

2012年12月29日(土) プロペシアの性機能低下と発ガンリスク

 男性型脱毛症(AGA)治療薬のプロペシアを長期で内服すると、性欲低下(リビドー減退)や勃起不全などの副作用が起こるということがしばしば指摘されます。

 たしかに一定の割合でこういった副作用を訴える人がいます。私の印象で言えば、10人に1人いるかどうか、という感じです。プロペシアの添付文書には、リビドー減退は「1~5%未満」、勃起機能不全や射精障害は「1%未満」とされています。
 
 プロペシア(一般名はフィナステリド)の性欲低下に関する研究で興味深いものが報告されたので紹介したいと思います。

 医学誌『BJU International』2012年11月16日号(オンライン版)に掲載された論文(注1)によりますと、プロペシアを内服している右利きの男性は、性機能は影響されないか低下がおこることがあるのに対し、左利きの男性は、影響されないか性機能の改善があるそうなのです。
 
 左利きの男性はAGAも性機能も共に改善する、ということが事実であれば世界中の左利きの男性にとって朗報でしょう。

 ただし、この研究は対象者がわずか33人のルーマニア人男性で、調査期間は4週間だけです。この研究は「パイロットスタディ」として行われただけであり、本格的な調査は先の話です。
 
 もうひとつ、プロペシアの副作用を報告しておきたいと思います。

 通常、プロペシアは1日1回1錠内服します。1錠は1mgです(日本では0.2mgというものもありますがあまり処方されていないそうです(注2))。通常の5倍に相当する5mgを内服したときにどのような副作用が出現するかという研究が海外でおこなわれました。
 
 結果は、5mgを7年間内服したグループはプラセボ(偽薬)を同期間内服したグループに比べ、高悪性度前立腺ガンの発現率が1.7倍高くなったそうです。(5mg投与群が1.8%、プラセボ投与群が1.1%とされています)
 
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 本文でも述べたように、左利きなら性機能改善、と断定するには時期尚早かと思います。左利きの人は過剰な期待をしない方がいいでしょう。

 後半で述べた前立腺ガンのリスクについては、今までも可能性を指摘されていましたがメーカーは否定してきました。それが一転して添付文書に記載されたわけですが、通常の5倍量での調査ですし、相対リスクが1.7ですから、通常の1mgを1日1回であればあまり気にしなくてもいいのではないかと思われます。しかし、AGAというのは本来「病気」ではありませんから、わずかでもリスクがあるならあえて飲む必要もないのではないか、とも思われます。
 
 私がプロペシア処方に慎重になるのは、(wifeの)妊娠・出産を検討されている人に対してです。下記医療ニュースも参照ください。

(谷口恭)

注1:この論文のタイトルは、「A pilot study on the sexual side effects of finasteride as related to
hand preference for men undergoing treatment of male pattern baldness」で、下記のURLで概要を読むことができます。
 
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1464-410X.2012.11580.x/abstract

注2:太融寺町谷口医院でもプロペシアは1mgのみで、現在0.2mgの処方はおこなっていません。

参考:医療ニュース2012年1月20日 「プロペシアで男性不妊症の可能性」

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2013年7月2日 火曜日

6/30 皮膚の老化は「日焼け止め」で防ぎましょう

 紫外線が皮膚のいくつかのガンの原因になるというのは次第に知られてきていると思います。また、化粧品業界などでは「効果的な日焼け止め対策が皮膚の老化を防ぎます」などという表現を使い、我々医療者の実感としても、きちんと紫外線対策をしている人の皮膚は若く見える、という印象があります。しかし皮膚の老化を長期間に渡り調査した研究というのはそう多くはありません。

 日焼け止めを毎日使うと皮膚の老化が24%抑制できる・・・
 しかしβカロテンのサプリメントを摂取しても老化は防げない・・・

 これは、オーストラリアのクイーンズランド州ナンブア(Nambour)に在住の55歳未満の男女約900人を対象とした研究結果で、医学誌『Annals of Internal Medicine』2013年6月4日号(オンライン版)(注1)に発表されています。調査期間は1992年から1996年で、調査では日焼け止めの使用の他にβカロテンのサプリメントの効果も調べられています。

 対象者は次の4つのグループにわけられて解析がおこなわれています。

①日焼け止め毎日使用+βカロテン30mg摂取
②日焼け止め毎日使用+βカロテン摂取せず
③日焼け止め毎日使用せず+βカロテン30mg摂取
④日焼け止め毎日使用せず+βカロテン摂取せず

 皮膚の老化をどのようにして評価しているかというと、対象者の左手背に薄いシリコンシートを貼り付けて剥し、表皮の凹凸やしわの型がついたそのシートを解析したようです。

 日焼け止めを毎日使用していたグループでは皮膚の老化が1.18倍となり、日焼け止めを毎日使っていないグループでは老化が1.54倍で、日焼け止めを毎日使うことによって皮膚の老化が抑制できるという結果となっています。これを統計学的に解析すると「皮膚の老化を24%抑制できる」となるようです。

 一方、βカロテン摂取では有意差がでていません。摂取したグループとしていないグループで、それぞれ老化が1.31倍、1.38倍ですから、いずれの皮膚も老化が進行していることになります。

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 ナンブア(Nambour)という都市を地図(Google MAP)で調べてみると、州都のブリスベンの北およそ100kmに位置し、南緯は26度で、海にも近く、いかにも暑そうな(しかし魅力的な)地域です。また(インターネットで調べた即席の情報ですが)それほど都市機能が集中しておらず自然を満喫できるような地域のようです。つまり住民の多くは紫外線を日常的に浴びている地域であり、こういった研究にはうってつけの場所といえるでしょう。

 この文章を書くのに「sunscreen」を「日焼け止め」としました。最近は「サンスクリーン」という言葉が少しずつ浸透してきており、皮膚科関連の学会などでは「サンスクリーン」と表現されるのが一般的です。しかし、日々診察室で「サンスクリーン」と言っても患者さんに伝わらないことが多く、まだまだ「日焼け止め」という言葉の方が一般的なのだと思います。

 しかしsunscreenは、日焼けを止めることのみを目的としているわけではありません。この研究にあるように、まさに「老化を防ぐ」ためのものです。したがって、日本でも特に4月から9月頃の紫外線が強くなるシーズンには誰もがサンスクリーンを使用すべきと私は考えています。

 それから、この研究にあるように安易にサプリメントに頼らないことも重要です。サプリメント以外にも「シミに効く薬をください」などと言われることも多く、そういった薬がないわけではありませんが、一番大切なのは日頃の紫外線対策であることは言うまでもありません。

(谷口恭)

注1:この論文のタイトルは、「Sunscreen and Prevention of Skin Aging: A Randomized Trial」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://annals.org/article.aspx?articleid=1691733#Abstract

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2013年7月1日 月曜日

2011年11月14日(月) ビタミンEの発ガンリスク

 ビタミンE摂取は前立腺ガンの発症リスクを上昇させる・・・

 これは医学誌『JAMA』2011年10月12日号で発表された論文の趣旨です(注)。ビタミンEには抗酸化作用があることから、ガンの予防になるのではないか、と言われていた時代もありましたから、長年摂取していたという人にはショッキングな研究かもしれません。
 
 この研究が開始されたのは2001年で、研究途中の2009年の時点で「ビタミンE摂取(及び発ガン抑制に期待されていたセレン摂取)で前立腺ガン発症のリスクを減少しない」ということがすでに確認されていました。今回発表されたのは、ビタミンEは前立腺ガンの発症リスクを下げないどころか、逆に前立腺ガンになりやすくなる、という結果についてです。
 
 この研究を少し詳しく紹介すると、対象者は、調査開始時点で前立腺ガンになっていなかった米国、カナダ、プエルトリコ在住の男性35,533人です。対象者は4つのグループに分けられています。①ビタミンEを摂取するグループ(8,737人)、②セレンを摂取するグループ(8,752人)、③ビタミンEとセレンの両方を摂取するグループ(8,702人)、④両方とも摂取しないグループ(8,696人)の4つです。対象者は、2011年7月5日まで追跡調査がおこなわれ、前立腺ガンの発症率について比較されています。追跡期間は7~12年です。
 
 その結果、追跡期間中に前立腺ガンを発症したのは、①のグループで620人、②、③、④はそれぞれ575人、555人、529人でした。これらを統計学的に分析すると、ビタミンEを摂取すると前立腺ガンの発症リスクが上昇する、という結果が出たというわけです。尚、セレン単独摂取やセレン+ビタミンE摂取では、ガンの予防効果はもちろんありませんが、統計学的にガンのリスクが上昇するとまではいえなかったようです。
 
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 ビタミンEの発ガンリスクと言えば肺ガンが有名です。2008年3月に医学誌『American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine』で、サプリメントでのビタミンE摂取量が1日100mg増加するごとに、肺ガンのリスクが7%上昇するという結果がでました。
 
 また、肺ガンのリスクと言えば、ビタミンE以外にベータカロチンのサプリメントが有名です。ベータカロチンは、元々は大腸ガンの予防になるのではないかと期待されていたのですが、大腸ガンを予防しないどころか肺ガンのリスクを高めることが分かり、これが発表された頃からサプリメントの有害性や効能がないことが次々に指摘されだしたような印象があります。米国ガン協会(American Cancer Society)も「ガン予防のためのビタミン剤のサプリメントは推奨しない」、としています。
 
 ただし、誤解のないように付記しておくと、ビタミン剤のサプリメントが有害(もしくはガンの予防に無効)なのであって、ビタミンEやベータカロチンが豊富に含まれている食品を積極的に摂取すること自体はガンの予防に効果があり推奨されています。結局は常識的な話になってしまうのですが、「栄養のあるものをバランスよく食べましょう」ということに尽きるというわけです。
 
(谷口恭)

注:この論文のタイトルは「Vitamin E and the Risk of Prostate Cancer」で、下記のURLで概要を読むことができます。
http://jama.ama-assn.org/content/306/14/1549.abstract?sid=b60d5330-ce80-445f-9a52-
3420ddea32c2

 
参考:医療ニュース
2011年8月26日 「ビタミン剤で発ガンのリスク上昇」

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2013年7月1日 月曜日

2011年11月16日(水) 「茶のしずく石鹸」で66人が重症

 過去に何度かお伝えしてきました「茶のしずく石鹸」による小麦アレルギーに関して新たな発表がありました。

 2011年11月14日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会は、2011年10月17日までに株式会社悠香から報告のあったアレルギー反応を起こした症例が471人にのぼり、そのうち66人は救急搬送や入院が必要な重篤な症例で、一時意識不明に陥った例もあったそうです。
 
 しかし、これは株式会社悠香が現時点で把握している件数であり、実際にアレルギー反応を起こした人はこの何倍にもなるのではないかとみられています。

 以前お伝えしたように、このアレルギーの原因物質は「加水分解コムギ」ではありますが、すべての加水分解コムギで反応がでるのではなく、アレルギー反応を起こすのは「グルパール19S」と命名された物質であることがわかっています。グルパール19Sを含む石鹸は株式会社悠香の「茶のしずく石鹸」を入れて合計18種類あります。そのすべてを下記に紹介いたします。
 
薬用 悠香の石鹸(茶のしずく石鹸)   株式会社悠香
薬用フェイスソープP(茶のしずく石鹸)   株式会社フェニックス
アルケー   ヴィーヴィック化粧品株式会社
梅の花 化粧石鹸   株式会社フェニックス
FY石鹸   株式会社 ピカソ美化学研究所
AU サボンクリア   株式会社シー・ビー・エィ
LVJ フェイシャルソープ   株式会社 東洋新薬
花蜜精はちみつクレンジングソープ   株式会社フェニックス
蔵人純米ソープ   ヴィーヴィック化粧品株式会社
クルクベラ サボンクリア   株式会社シー・ビー・エィ
クレンジングソープPF   株式会社フェニックス
化粧石鹸LH   日成興産株式会社
 (旧 日本メドック株式会社)
化粧石けんAB   株式会社フェニックス
化粧石けんHEP   株式会社フェニックス
化粧石けんHN   株式会社フェニックス
化粧石けんKI-5   株式会社フェニックス
化粧石ケンOB   株式会社フェニックス
化粧石けんSD   株式会社フェニックス

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 これら石鹸によって小麦アレルギーが誘発されたことを証明するには、グルパール19Sの検査試薬を皮膚に少量刺入して反応をみる検査(プリックテストと言います)をおこなう必要があります。(現在当院では実施していません) ただし、血液検査でもある程度推測することが可能ですから、疑いのある人はかかりつけ医に相談してみるべきでしょう。
 
(谷口恭)

参考:
はやりの病気第94回(2011年6月) 「小麦依存性運動誘発性アナフィラキシー」
トップページ: アレルギーの検査
医療ニュース:
2011年5月21日 「「茶のしずく石鹸」が自主回収」
2010年10月20日 「小麦入り化粧品、特に”お茶石鹸”に注意」

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2013年7月1日 月曜日

2011年12月4日(日) ビールもワインと同じように心血管リスクが低下

 ビール党には朗報かもしれません。

 ワイン(特に赤ワイン)は適度に飲めば心筋梗塞などの心血管疾患のリスクを減らすことがよく知られています(注1)。「最も健康にいいお酒はワイン」のように語られることが多いように思われますが、ビールにもワインと同様の効果があるとの研究結果が医学誌『European Journal of Epidemiology』2011年11月11日号(オンライン版)(注2)で報告され話題を呼んでいます。
 
 この研究はイタリアの研究者によっておこなわれています。2011年3月までに欧米諸国やオーストラリアでおこなわれたアルコールと心血管リスクに関する合計18の研究を総合的に解析(メタ解析)しています。アルコールは、ビール、ワイン、蒸留酒(注3)に分けて検討されています。
 
 その結果、ワインは度を過ぎると心血管リスクが上昇しますが、適度であればリスクが低下していました。具体的には、1日あたり21グラム(グラスで1杯程度)の飲酒量で最もリスクが低下し、72グラム以上(グラス3~4杯以上)でリスク低下はなくなります。ビールでは、1日あたり43グラム(大瓶1本くらい)が最も心血管リスクが低下し、55グラム(大瓶1.3本くらい)でリスク低下がなくなります。
 
 要するに、少量から中等量であれば、ビールはワインと同じように心血管疾患のリスクが低下することが判ったということであり、ビールを含むお酒は少量なら身体にいいと言われることはこれまでにもあったけれども、今回のきちんとした研究でビールの効果が実証された、というわけです。
 
 しかし、蒸留酒ではそのような結果が出なかったようです。

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 ビール党には嬉しい研究結果に思われるかもしれませんが、私の周りのビール党や、太融寺町谷口医院に通院しているビール好きな人達の多くは大瓶1本ではすみません。なかには毎日2リットル以上を”日課”にしているという人もいます。そのような飲み方を続ければ心血管リスクを高めるということにはいくら注意してもしすぎることはないでしょう。また、一部には、少量のビールでも健康に有害であるとする研究結果があることも覚えておくべきでしょう。(下記医療ニュースも参照ください)
 
(谷口恭)
 
注1 フランス人は飽和脂肪酸が豊富に含まれる食事(要するにあぶらっこい肉料理)をよく食べるのにもかかわらず、虚血性心疾患にかかりにくいことが以前から指摘されており(これは「フレンチ・パラドックス」と呼ばれています)、この原因が赤ワインにあるとされています。
 
注2 この論文のタイトルは、「Wine, beer or spirit drinking in relation to fatal and non-fatal cardiovascular events: a meta-analysis」で、下記のURLで概要を読むことができます。
 
http://www.springerlink.com/content/8pu6001584m35146/

注3:蒸留酒とは、穀物などを発酵させて作った醸造酒を蒸留させてアルコール濃度を高めたお酒のことでスピリッツとも呼ばれます。この研究では、ウイスキー、ジン、ラム、テキーラ、ウォッカ、ブランデーなどを指していると思われますが、分類としては焼酎(泡盛含む)も蒸留酒に含まれます。
 
参考:医療ニュース
2011年10月26日「女性は中年期の適量の飲酒で高齢期が健康に
2011年9月10日 「適度な飲酒がアルツハイマーを予防」
2010年8月23日「飲酒が関節リウマチに有効?」
2010年5月21日「飲酒によりリンパ系腫瘍のリスクが低減」
2010年4月8日 「適度な飲酒は女性の体重増加を抑制」
2009年12月28日「ビール週7本で乳癌のリスク急増」
2011年4月18日「ビール中ジョッキ1杯で発ガンリスクが上昇・・・」

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2013年7月1日 月曜日

2011年12月5日(月) 白血病のデマにご用心

 最近、ネット上の掲示板、ツイッター、ブログ等で、「白血病患者急増 医学界で高まる不安」というタイトルで、とんでもないデマが広がっているようです。以下に内容をそのまま引用します。
 
 各都道府県の国公立医師会病院の統計によると、今年の4月から10月にかけて、「白血病」と診断された患者数が、昨年の約7倍にのぼったことが21日に判明した。これを受けて、日本医師会会長原中勝征は、原発事故との因果関係は不明として、原因が判明次第発表するとした。
 
 白血病と診断された患者の約60%以上が急性白血病で、統計をとりはじめた1978年以来、このような比率は例が無いという。

 また、患者の約80%が東北・関東地方で、福島県が最も多く、次に茨城、栃木、東京の順に多かった。

 もちろんこのような事実は一切ありません。しかし、このデマを正しい情報と信じてしまっている人も少なくないようで、日本医師会はこの情報が誤りであることを正式に表明しなければならなくなりました(注)。
 
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 医師会は国公立ではありませんから、医療関係者であれば、「国公立医師会病院」という言葉を見た瞬間にガセネタであることが分かりますが、放射線被害に対する様々な噂があるなかで一般の人がこのような報道まがいのものを見ると信じてしまうかもしれません。
 
 このデマを流した人は軽い気持ちのイタズラでおこなったのでしょうが、結果として大勢の人たちが不安に苛まれ、被災地の人たちを傷つけることになっています。デマを流す罪は決して小さくありません。
 
(谷口恭)

注:日本医師会はホームページ上で見解を表明しています。下記のURLを参照ください。

http://www.med.or.jp/people/info/people_info/000614.html

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

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