医療ニュース

2013年7月2日 火曜日

2012年11月3日(土) マルチビタミン摂取でわずかながらもガン減少

 最近のビタミン剤に関する研究は、有害性の報告が多く、身体に良いとされるものはほとんど目にしないのですが、マルチビタミンの有益性についての報告がありましたのでお知らせいたします。

 医学誌『JAMA』2012年10月17日号に掲載された論文(注1)によりますと、男性がマルチビタミンを摂取した場合、わずかではあるもののガンのリスクが低下するそうです。

 この研究は米国ハーバード大学の研究者J. Michael Gaziano氏らによっておこなわれています。米国の男性医師を対象とした「the Physician’s Health Study(PHS)Ⅱ」と命名された対照試験(RCT)の解析がおこなわれています。

 この調査では、50歳以上の男性医師14,641人(平均年齢は64.3歳)が登録され、7,317人が毎日マルチビタミンを服用し、7,324人がプラセボ(偽薬)を内服しています。1997~2011年の期間に合計2,669例のガンが確認されています。そのうち約半数の1,373例は前立腺ガンだそうです。

 分析の結果、ガン発症率(1年当たり、人口1,000人に対し何人発症するか)は、マルチビタミン摂取群で17.0、プラセボ群で18.3でした。これを統計学的に解析すると、マルチビタミン群でのリスク低下がわずかに認められることになるそうです。しかし前立腺ガンと大腸ガンでは有意なリスク低下は認められなかったそうです。

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 この結果をどうみるか、ですが、発症率が17.0と18.3ではそれほど大差があるようには思えません。この研究はアメリカのものですが、日本にはビタミン剤で発ガンリスク上昇とする研究もあります(下記医療ニュース参照)。

 確実にいえることは、ガンを予防したいならサプリメントよりもまずは生活習慣の見直しをすべき、ということです。

(谷口恭)

注1:この論文のタイトルは、「Multivitamins in the Prevention of Cancer in Men The Physicians’ Health
Study II Randomized Controlled Trial」で、下記のURLで全文を読むことができます。

http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1380451

 
参考:医療ニュース
2011年11月14日 「ビタミンEの発ガンリスク」  
2011年8月26日 「ビタミン剤で発ガンのリスク上昇」

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2013年7月2日 火曜日

2012年11月5日(月) 喫煙で8~10年寿命が短く

 喫煙を続ければ心筋梗塞や脳梗塞などの脳血管障害や各種ガンにかかりやすくなる、というのは常識であり、当然寿命が短くなることも想像できますが、では、日本人がタバコを吸い続ければどれだけ寿命が短くなるのか、という問題を科学的に実証した研究はこれまであまりありませんでした。

 20歳までに喫煙を開始して禁煙しなかったとき、男性なら8年、女性なら10年の寿命が短縮する・・・

 これは公益財団法人放射線影響研究所のR.Sakata氏らの研究結果で、医学誌『British Medical Journal』2012年10月25日号(オンライン版)に論文が掲載されています(注1)

 調査の対象となったのは、1945年以前に生まれた広島・長崎の市民男性27,311人と、女性40,662人で、1963~1992年の間、郵送および診療所での問診で喫煙状況が調べられています。2008年までの死亡が分析されており、平均追跡年数は22.9年となっています。

 解析の結果、1920~45年に生まれ、20歳までに喫煙を開始してやめなかった場合、全死亡率は、男性で2.21倍、女性では2.61倍にも上っています。

 男性喫煙者の70歳での生存率は72%であり、男性非喫煙者の78歳の生存率が72%であり、これらから、8年間の寿命の差がある、とこの研究では述べられています。

 女性の場合、喫煙者の70歳での生存率が79%で、非喫煙者の生存率が79%になるのは80歳であり、10年の差がある、ということになります。

 気になるのは、今から禁煙しても遅いのでは?、ということですが、論文によりますと、35歳までに喫煙をやめていた場合、死亡率の比は1.02となり、リスクが消失しています。35~44歳でやめていた場合も1.22とリスクは大きく低減しています。

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 放射線影響研究所というのは、原爆放射線の健康への影響について調査する日米共同の研究機関です。公益法人として発足したのは1975年ですが、前身は米国学士院が1947年に設立した原爆傷害調査委員会です。ガンや死亡率、喫煙に関する正確なデータが豊富にありますから、そのデータから分析されたこの結果は注目に値するでしょう。

 この研究は単純に「死亡」のことが調べられています。おそらく「健康に生きているか」という観点からみれば、8~10年よりもさらに大きな差が開くことでしょう。

 私の印象では、ここ2~3年で一気に禁煙する人が増えているような感じがします。特に医師や看護師などは少し前まで喫煙率の高い職業と言われていましたが、私の周囲でいえば喫煙する医療者がほとんどいなくなりました。いきすぎた禁煙ブームに不快感を示したり、愛煙家の権利を守ろうとしたりする喫煙者の動きもありますが、今回の放射線影響研究所の研究結果をよく考えてあらためて禁煙を試みてはいかがでしょうか。

(谷口恭)

注1:この論文のタイトルは、「Impact of smoking on mortality and life expectancy in Japanese smokers:
a prospective cohort study」で、下記のURLで全文を読むことができます。

http://www.bmj.com/content/345/bmj.e7093

参考:医療ニュース
2010年10月1日 「受動喫煙で毎年6,800人が死亡」
2008年12月15日 「女性の喫煙は14.5年も短命に」
2008年2月12日 「タバコで年間800万人が死亡」
2007年8月4日 「タバコで余命が3.5年短縮」

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2013年7月2日 火曜日

2012年11月26日(月) 糖尿病人口、日本は世界9位

 去る11月14日は「世界糖尿病デイ」でした。参加された方もおられると思いますが、この日は日本全国でブルーライトアップがおこなわれました。世界糖尿病デイは2006年に制定され(注1)、毎年国内外の多くのイベント会場でブルーライトアップがおこなわれています。

 この世界糖尿病デイに合わせて、IDF(国際糖尿病連合、International Diabetes
Federation)は、世界の糖尿病人口に関する疫学データを公表しました(注2)。

 IDFによりますと、2012年の20~79歳の世界の糖尿病人口は3億7,100万人にのぼり、医療費は4,710億ドル(約38兆円)にもなるそうです。

 IDFは、世界の糖尿病罹患者の半数が診断を受けていないことが問題であると指摘しています。特にアフリカでは診断されていない人が81%にもなるそうです。糖尿病が原因で死亡するのは世界中で480万人にのぼり、その半数が60歳以下で死亡すると推定されています。

 国ごとの糖尿病罹患者数と有病率(人口に占める糖尿病患者数)のトップ10は以下の通りです(いずれも20~79歳)。

罹患者数(単位:百万人)
 1位 中国 92.3
 2位 インド 63.0
 3位 アメリカ 24.1
 4位 ブラジル 13.4
 5位 ロシア 12.7
 6位 メキシコ 10.6
 7位 インドネシア 7.6
 8位 エジプト 7.5
 9位 日本 7.1
 10位 パキスタン 6.6

有病率(%)
 1位 ミクロネシア連邦 30.1
 2位 ナウル共和国 30.1
 3位 マーシャル諸島共和国 27.1
 4位 キリバス共和国 25.5
 5位 ツバル 24.8
 6位 クウエート 23.9
 7位 サウジアラビア 23.4
 8位 カタール 23.3
 9位 バーレーン 22.4
 10位 バヌアツ共和国 22.0

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 罹患者数のトップテンをみると、人口の多い国ばかりでこれは納得しやすいといえるでしょう。トップテンのなかでは、エジプトとメキシコが日本より人口が少なくて罹患者は多い国で、残りはすべて日本よりも人口が多い国です。

 興味深いのは有病率の方です。1位から5位と10位が太平洋に浮かぶ小さな国々で、6位から9位が中東の国々です。(ちなみに日本の有病率は5.12%です) これらの国々では人口の3~4人に1人が糖尿病ということになります。

 太平洋の島国が糖尿病大国と言われると違和感を覚える人が多いのではないでしょうか。こういった国々では、小麦色に日焼けしたスリムな男女が幸せそうに暮らしている・・・、というイメージが私にはあったのですが、これはステレオタイプ的な幻想なのでしょうか・・・。

 特に、バヌアツ共和国は、2006年にイギリスの環境保護団体であるFriends of the Earthが公表した「地球幸福度指数(The Happy Planet Index)」第1位で、「地球上で最も幸せな国」として世界中から注目を浴びた国です。その国が糖尿病大国だったとは・・・。

 ちなみに糖尿病とは何の関係もありませんが、有病率1位から4位の、ミクロネシア、ナウル、マーシャル諸島、キリバスは、いずれも太平洋戦争のときに日本軍が上陸しています。

(谷口恭)

注1:世界糖尿病デイの11月14日はインスリンを発見したフレデリック・バンティングの誕生日です。バンティングは1921年にインスリンを発見しました。

注2:詳しくは下記URLを参照ください。
http://www.idf.org/sites/default/files/5E_IDFAtlasPoster_2012_EN.pdf

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2013年7月2日 火曜日

2012年11月27日(火) エナジードリンクに注意を

 米国FDA(米国食品医薬品局)がいわゆる「エナジードリンク(energy drink)」に対する注意勧告をおこないました(注1)。

 エナジードリンクとは、カフェインやタウリンなどの成分を多量に含み、「パフォーマンス向上」、「集中力アップ」などとPRしているドリンク剤のことです。今回FDAが調査をおこない有害事象が報告されているのは「5-Hour Energy」という製品が多いようです。(注1の報告書の後半の表を参照ください)

 有害事象としては、気分不良、体重減少、嘔気などが多いようですが、なかには死亡例もあるようです。

 今回の調査は「有害事象」を調べたものであり「副作用」を調べたわけではありません(注2)。つまり、不快な症状の原因や死亡の原因が5-Hour Energyと断定されるわけではありません。5-Hour Energy服用からどれくらいたってから症状が出現したのかが分からなければ、摂取した5-Hour Energyの量も分からないということです。実際、FDAはこのレポートで「これら有害事象と商品摂取との因果関係は明らかでない」と述べています。

 しかし、それでもこのようなレポートが正式に公表されたわけですから、エナジードリンクを摂取する際には充分注意をする必要があるでしょう。

 尚、エナジードリンクについては、米国小児科学会(American Academy of Pediatrics、AAP)が2011年に「多量のカフェインが含まれているため小児の摂取は危険」との声明を発表しています。

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 FDAのレポートでは、「5-Hour Energy」以外の製品として「Monster」「Rockstar」も取り上げられています。

 私はこれらの製品名を聞いたことがなかったので、調べてみると、「Monster」「Rockstar」は日本で発売されていることが分かりました。また、「5-Hour Energy」も個人輸入で簡単に手に入るようです。

 ちなみに私は「エナジードリンク」と聞いて、まず頭に浮かんだのが「Red Bull」です。Red Bullはおそらくタイが発祥だったと思います。タイでは随分と前から頻繁にみかけますが、最近では日本のコンビニでも売られているようです。このRed Bullでも被害が出ているのかに興味があったためにいくつかの報道を調べてみました。

 2012年11月15日のNew York Times(注3)は、今回のFDAの注意勧告に関する記事を取り上げていてRed Bullについても言及しています。同紙によりますと、Red Bullは、米国ではエナジードリンクではなく清涼飲料水(beverage)の扱いとなり、今回のFDAの調査の範疇には入れられていないそうです。(だからといって安全と断定できるわけではありません)

 有害事象が報告されFDAが注意勧告をしている以上、エナジードリンクが好きな人は今後も安全に関する情報に注意する必要があるでしょう。しかし、副作用があるかもしれないというリスクを抱えてでも摂取すべきほどの効果が期待できるものなのでしょうか。ちなみに私はRed Bullをタイで初めてみた年に何度か試してみましたが、その後は一度も飲んでいません・・・。

(谷口恭)

注1:この注意勧告に関するレポートは下記URLで閲覧することができます。

http://www.fda.gov/downloads/AboutFDA/CentersOffices/OfficeofFoods/CFSAN/CFSANFOIAElectronicReadingRoom/UCM328270.pdf

注2:言葉の意味を補足しておきます。「有害事象」とは因果関係に関係なく起こりうる事象をいいます。例えば、極端な例を挙げれば、てんかんを持っている人が薬を飲み忘れていて、5-Hour Energyを飲んだ後にてんかん発作が起こったようなとき、原因は薬の飲み忘れと考えられますが、この場合も5–Hour Energyの「有害事象」とされます。一方、「副作用」は5-Hour Energyを飲んだことが原因で生じた好ましくない事象のことをいいます。

注3:New York Timesのこの記事は下記のURLで閲覧できます。

http://www.nytimes.com/2012/11/16/business/scrutiny-of-energy-drinks-grows.html?_r=0

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2013年7月2日 火曜日

2012年12月1日(土) 年末年始はノロウイルスとインフルエンザに要注意

 ノロウイルスによる感染性胃腸炎がはやっています。国立感染症研究所の報告によりますと、11月12~18日の1週間での1医療機関あたりのノロウイルス感染症の罹患者は11.39人とされており、これはここ10年間では最も流行した2006年に次ぐ勢いとなります。

 地域別のデータをみてみると現時点では宮崎県や大阪府など西日本に多いようです。太融寺町谷口医院でも11月中旬からノロウイルスが原因と思われる嘔吐・下痢の症状の患者さんが相次いでいます。

 同所の報告によれば、年齢は0~5歳が大半とされていますが、これは届出されているのが小児中心であるためにこのような結果になるのであり、実際は統計に上がってこない成人の感染はかなり多数あるはずです。ノロウイルスは例年12月に急増しますからこれからの予防対策が重要になります。

 インフルエンザも不気味な動きをみせています。今年は沖縄で早くから流行していましたが、それ以外の地域では大きな流行はありませんでした。それが11月中旬より、九州全域、島根、和歌山、新潟、さらに宮城や岩手といった東北地方まで集団感染の報告が上がってきています。ここまでくれば東京や大阪などの大都市での流行はカウントダウンに入ったとみるべきでしょう。

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 予防については、インフルエンザのみをターゲットにするなら、ワクチンを接種しておき(今からではちょっと遅いかもしれませんが)、ジェルタイプの携帯用アルコールなどで手指を消毒することとうがいを心がければいいでしょう。
 
 しかしノロウイルスはアルコールで死滅しませんから、流水下でしっかりと手洗いする必要があります。感染力は強く、食べ物からの感染のみならず人から人への感染も簡単に起こします。ワクチンもありません。

 月並みな言い方ですが、うがい・手洗いをしっかりとおこない年末年始を乗り切りましょう。

(谷口恭)

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2013年7月2日 火曜日

2012年12月3日(月) コーヒーも紅茶も生活習慣病に有効

 コーヒーがいくつかのガンや糖尿病などの予防効果があるという研究についてこのサイトで何度かお伝えしてきましたが、医学誌『Journal of Epidemiology』2012年10月6日号(オンライン版)(注1)に日本の研究者による論文が掲載されましたので紹介しておきます。
 
 この研究は、J-MICCと命名された調査に参加した日本人554人が対象とされており、コーヒーと緑茶とメタボリック・シンドロームとの関連が解析されています。

 その結果は、「コーヒーをよく飲む人ほどメタボリック・シンドロームにかかりにくい」というものだったそうです。もう少し細かくみてみると、コーヒーをたくさん飲む人ほど中性脂肪(トリグリセライド)の値が低くなり、血圧上昇や腹囲増加をきたさない、となっています。また、適量のコーヒー(1日1.5~3杯)で高血糖を防ぐことができる、という結果もでているようです。
 
 興味深いことに、緑茶ではこのような相関関係が一切なかったようです。

 紅茶の研究も紹介しておきましょう。医学誌『BMJ Open』2012年11月8日号(オンライン版)(注2)に、スイスの研究者Ariel Beresniak氏の論文が掲載されました。
 
 この研究は、世界50ヶ国の2009年の紅茶の消費量と、呼吸器疾患、感染症、ガン、心血管疾患、及び糖尿病との関連が調べられています。

 解析の結果、紅茶の消費量が多い国ほど糖尿病の罹患率が少ないことがわかったようです。しかし、先に述べた糖尿病以外の疾患については紅茶消費量との関連性は認められなかったそうです。
 
 この論文によりますと、国民1人当たりの年間の紅茶消費量が最も多いのがアイルランドで2.1576kg、2位がイギリスの1.8137kg、3位がトルコの1.6631kgです。逆に、紅茶を最も飲まない国は韓国で0.0007kg、2位がブラジルの0.001kg、3位が中国の0.0011kgです。
 
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 サプリメントや健康食品の生活習慣病に対する有効性がほとんど検証されないのに対して、従来から多くの人々に愛用されているコーヒーや紅茶が有効というのは興味深いと言えるでしょう。
 
 しかし、一般的に健康によいとされている緑茶に生活習慣病の予防効果がなかった、というのもまた興味深い結果です。

 私は紅茶をほとんど飲まないので消費量をキログラムで示されてもよくわからないのですが、仮に紅茶1杯が2グラムとすれば、平均的なアイルランド人は1日に約3杯(2157.6グラム÷2グラム÷365日=2.9556)飲んでいることになります。
 
 同様の計算をおこなうと、紅茶を最も飲まない国、韓国では平均的な韓国人は3年に1杯しか紅茶を飲まない(0.0007kg=0.7グラム、0.7グラム÷2グラム=0.35杯/年、0.35杯/年x3年=1.05杯)ことになり、医学的ではなく文化的な観点から私にとってはこちらの方が興味深い気がします。
 
 ちなみに、これも医学には関係のない話ですが、紅茶の英語名は一般的にはblack teaで、この論文でもblack teaとされています。紅茶を辞書でみるとred teaという記載がある場合がありますが、私はred teaと話している外国人をみたことがありません。ただしblack teaと言うこともそれほど多くないと思います。西洋人が紅茶のことを指すときは単にteaというのが普通です。日本人が機内などで紅茶を頼むときはteaと言うと、緑茶かな、と思われますから、black teaもしくはEnglish teaと言うのがいいと思います。
 
(谷口恭)

注1:この論文のタイトルは、「Inverse Correlation Between Coffee Consumption and Prevalence of
Metabolic Syndrome: Baseline Survey of the Japan Multi-Institutional Collaborative Cohort
(J-MICC) Study in Tokushima, Japan」で、下記のURLで全文を読めます。
 
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jea/advpub/0/advpub_JE20120053/_pdf   

注2:この論文のタイトルは、「Relationships between black tea consumption and key health indicators in the world:
an ecological study」で、下記のURLで全文を読むことができます。
 
http://bmjopen.bmj.com/content/2/6/e000648.full?sid=12e3a4cd-50cb-4af7-91fe-f7f68a68d8ac
 
参考:
医療ニュース
2012年10月1日 「コーヒーは消化管疾患と無関係」
2010年5月24日 「紅茶で大腸ガンのリスクが上昇?」
はやりの病気第22回(2005年12月) 「癌・糖尿病・高血圧の予防にコーヒーを!」  
はやりの病気第30回(2006年4月) 「コーヒー摂取で心筋梗塞!」

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2013年7月2日 火曜日

2012年12月28日(金) 筋力が低いと早死にのリスクに

 10代のときに筋力が弱いと早死にのリスクになる・・・

 これは、スウェーデンのカロリンスカ(Karolinska)研究所のFinn Rasmussen氏らの研究結果で、医学誌『British Medical Journal』2012年11月20日号(オンライン版)に掲載されています(注1)。
 
 この研究では、16~19歳のスウェーデン人の男性1,142,599人が対象とされ、24年間追跡されています。研究開始時に筋力テストが実施され、早死に(早期死亡)の定義は「55歳前の死亡」とされています。24年の追跡期間中に全体の2.29%にあたる26,145人が死亡しています。

 死因で最も多かったのが「自殺」で22.3%、「ガン」14.9%、「心血管疾患」7.8%と続きます。

 筋力別の数字をみてみると、全死亡者では、最も筋力の低いグループは1年間で10万人あたり122.3人、最も筋力の高いグループでは86.9人となっています。心血管疾患による死亡率でみると、それぞれ9.5人、5.6人、自殺による死亡率ではそれぞれ24.6人、16.9人とされています。
 
 筋力が高かったグループでは、血圧やBMIに関係なく(注2)、早期死亡のリスクが20~35%低く、自殺による早期死亡のリスクも20~30%低かったようです。また、統合失調症や気分障害といった精神疾患の診断を受ける可能性は15~65%低かったそうです。
 
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 この研究から、「若い頃に筋力が高い(強い)人は死亡リスクが少なくなる」、ということは言えると思います。しかし、「筋力が高いことが原因で死亡リスクが減る」とか「筋力が低いことが原因で早死にしやすくなる」、とまでは言えないと思います。
 
 つまり、若い頃にしっかりと筋肉がついている、ということは、定期的にスポーツをしており、規則正しい生活を心がけていて、健康に関心を持っている可能性が強いわけで、そのような人たちが長生きするのは当然といえば当然だからです。
 
 この研究を読んで次に知りたいと思ったのは、女性ではどうなのか、ということと、(病気などで)10代の頃には筋力がさほどなかったけれど成人になってから、あるいは中年期になってから体を鍛えて筋肉をつけた場合はどうなるのか、という点で、これらは将来の研究に期待したいと思います。
 
 現時点で確実に言えることは、性別や年齢に関係なく、運動習慣があり、ある程度の筋肉量を維持することが(身体的にも精神的にも)健康で長生きするのに有利である、ということだと思います。
 

(谷口恭)

注1:この論文のタイトルは、「Muscular strength in male adolescents and premature death:
cohort study of one million participants」で、下記のURLで全文を読むことができます。
 
http://www.bmj.com/content/345/bmj.e7279

注2:10代の頃に血圧が高い場合や、BMI(Body Mass Index)が高い場合(要するに肥満があるとき)に早期死亡するリスクがあることはこれまでの研究からあきらかとなっています。

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2013年7月2日 火曜日

2012年12月29日(土) プロペシアの性機能低下と発ガンリスク

 男性型脱毛症(AGA)治療薬のプロペシアを長期で内服すると、性欲低下(リビドー減退)や勃起不全などの副作用が起こるということがしばしば指摘されます。

 たしかに一定の割合でこういった副作用を訴える人がいます。私の印象で言えば、10人に1人いるかどうか、という感じです。プロペシアの添付文書には、リビドー減退は「1~5%未満」、勃起機能不全や射精障害は「1%未満」とされています。
 
 プロペシア(一般名はフィナステリド)の性欲低下に関する研究で興味深いものが報告されたので紹介したいと思います。

 医学誌『BJU International』2012年11月16日号(オンライン版)に掲載された論文(注1)によりますと、プロペシアを内服している右利きの男性は、性機能は影響されないか低下がおこることがあるのに対し、左利きの男性は、影響されないか性機能の改善があるそうなのです。
 
 左利きの男性はAGAも性機能も共に改善する、ということが事実であれば世界中の左利きの男性にとって朗報でしょう。

 ただし、この研究は対象者がわずか33人のルーマニア人男性で、調査期間は4週間だけです。この研究は「パイロットスタディ」として行われただけであり、本格的な調査は先の話です。
 
 もうひとつ、プロペシアの副作用を報告しておきたいと思います。

 通常、プロペシアは1日1回1錠内服します。1錠は1mgです(日本では0.2mgというものもありますがあまり処方されていないそうです(注2))。通常の5倍に相当する5mgを内服したときにどのような副作用が出現するかという研究が海外でおこなわれました。
 
 結果は、5mgを7年間内服したグループはプラセボ(偽薬)を同期間内服したグループに比べ、高悪性度前立腺ガンの発現率が1.7倍高くなったそうです。(5mg投与群が1.8%、プラセボ投与群が1.1%とされています)
 
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 本文でも述べたように、左利きなら性機能改善、と断定するには時期尚早かと思います。左利きの人は過剰な期待をしない方がいいでしょう。

 後半で述べた前立腺ガンのリスクについては、今までも可能性を指摘されていましたがメーカーは否定してきました。それが一転して添付文書に記載されたわけですが、通常の5倍量での調査ですし、相対リスクが1.7ですから、通常の1mgを1日1回であればあまり気にしなくてもいいのではないかと思われます。しかし、AGAというのは本来「病気」ではありませんから、わずかでもリスクがあるならあえて飲む必要もないのではないか、とも思われます。
 
 私がプロペシア処方に慎重になるのは、(wifeの)妊娠・出産を検討されている人に対してです。下記医療ニュースも参照ください。

(谷口恭)

注1:この論文のタイトルは、「A pilot study on the sexual side effects of finasteride as related to
hand preference for men undergoing treatment of male pattern baldness」で、下記のURLで概要を読むことができます。
 
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1464-410X.2012.11580.x/abstract

注2:太融寺町谷口医院でもプロペシアは1mgのみで、現在0.2mgの処方はおこなっていません。

参考:医療ニュース2012年1月20日 「プロペシアで男性不妊症の可能性」

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2013年7月2日 火曜日

6/30 皮膚の老化は「日焼け止め」で防ぎましょう

 紫外線が皮膚のいくつかのガンの原因になるというのは次第に知られてきていると思います。また、化粧品業界などでは「効果的な日焼け止め対策が皮膚の老化を防ぎます」などという表現を使い、我々医療者の実感としても、きちんと紫外線対策をしている人の皮膚は若く見える、という印象があります。しかし皮膚の老化を長期間に渡り調査した研究というのはそう多くはありません。

 日焼け止めを毎日使うと皮膚の老化が24%抑制できる・・・
 しかしβカロテンのサプリメントを摂取しても老化は防げない・・・

 これは、オーストラリアのクイーンズランド州ナンブア(Nambour)に在住の55歳未満の男女約900人を対象とした研究結果で、医学誌『Annals of Internal Medicine』2013年6月4日号(オンライン版)(注1)に発表されています。調査期間は1992年から1996年で、調査では日焼け止めの使用の他にβカロテンのサプリメントの効果も調べられています。

 対象者は次の4つのグループにわけられて解析がおこなわれています。

①日焼け止め毎日使用+βカロテン30mg摂取
②日焼け止め毎日使用+βカロテン摂取せず
③日焼け止め毎日使用せず+βカロテン30mg摂取
④日焼け止め毎日使用せず+βカロテン摂取せず

 皮膚の老化をどのようにして評価しているかというと、対象者の左手背に薄いシリコンシートを貼り付けて剥し、表皮の凹凸やしわの型がついたそのシートを解析したようです。

 日焼け止めを毎日使用していたグループでは皮膚の老化が1.18倍となり、日焼け止めを毎日使っていないグループでは老化が1.54倍で、日焼け止めを毎日使うことによって皮膚の老化が抑制できるという結果となっています。これを統計学的に解析すると「皮膚の老化を24%抑制できる」となるようです。

 一方、βカロテン摂取では有意差がでていません。摂取したグループとしていないグループで、それぞれ老化が1.31倍、1.38倍ですから、いずれの皮膚も老化が進行していることになります。

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 ナンブア(Nambour)という都市を地図(Google MAP)で調べてみると、州都のブリスベンの北およそ100kmに位置し、南緯は26度で、海にも近く、いかにも暑そうな(しかし魅力的な)地域です。また(インターネットで調べた即席の情報ですが)それほど都市機能が集中しておらず自然を満喫できるような地域のようです。つまり住民の多くは紫外線を日常的に浴びている地域であり、こういった研究にはうってつけの場所といえるでしょう。

 この文章を書くのに「sunscreen」を「日焼け止め」としました。最近は「サンスクリーン」という言葉が少しずつ浸透してきており、皮膚科関連の学会などでは「サンスクリーン」と表現されるのが一般的です。しかし、日々診察室で「サンスクリーン」と言っても患者さんに伝わらないことが多く、まだまだ「日焼け止め」という言葉の方が一般的なのだと思います。

 しかしsunscreenは、日焼けを止めることのみを目的としているわけではありません。この研究にあるように、まさに「老化を防ぐ」ためのものです。したがって、日本でも特に4月から9月頃の紫外線が強くなるシーズンには誰もがサンスクリーンを使用すべきと私は考えています。

 それから、この研究にあるように安易にサプリメントに頼らないことも重要です。サプリメント以外にも「シミに効く薬をください」などと言われることも多く、そういった薬がないわけではありませんが、一番大切なのは日頃の紫外線対策であることは言うまでもありません。

(谷口恭)

注1:この論文のタイトルは、「Sunscreen and Prevention of Skin Aging: A Randomized Trial」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://annals.org/article.aspx?articleid=1691733#Abstract

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2013年7月1日 月曜日

2011年11月14日(月) ビタミンEの発ガンリスク

 ビタミンE摂取は前立腺ガンの発症リスクを上昇させる・・・

 これは医学誌『JAMA』2011年10月12日号で発表された論文の趣旨です(注)。ビタミンEには抗酸化作用があることから、ガンの予防になるのではないか、と言われていた時代もありましたから、長年摂取していたという人にはショッキングな研究かもしれません。
 
 この研究が開始されたのは2001年で、研究途中の2009年の時点で「ビタミンE摂取(及び発ガン抑制に期待されていたセレン摂取)で前立腺ガン発症のリスクを減少しない」ということがすでに確認されていました。今回発表されたのは、ビタミンEは前立腺ガンの発症リスクを下げないどころか、逆に前立腺ガンになりやすくなる、という結果についてです。
 
 この研究を少し詳しく紹介すると、対象者は、調査開始時点で前立腺ガンになっていなかった米国、カナダ、プエルトリコ在住の男性35,533人です。対象者は4つのグループに分けられています。①ビタミンEを摂取するグループ(8,737人)、②セレンを摂取するグループ(8,752人)、③ビタミンEとセレンの両方を摂取するグループ(8,702人)、④両方とも摂取しないグループ(8,696人)の4つです。対象者は、2011年7月5日まで追跡調査がおこなわれ、前立腺ガンの発症率について比較されています。追跡期間は7~12年です。
 
 その結果、追跡期間中に前立腺ガンを発症したのは、①のグループで620人、②、③、④はそれぞれ575人、555人、529人でした。これらを統計学的に分析すると、ビタミンEを摂取すると前立腺ガンの発症リスクが上昇する、という結果が出たというわけです。尚、セレン単独摂取やセレン+ビタミンE摂取では、ガンの予防効果はもちろんありませんが、統計学的にガンのリスクが上昇するとまではいえなかったようです。
 
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 ビタミンEの発ガンリスクと言えば肺ガンが有名です。2008年3月に医学誌『American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine』で、サプリメントでのビタミンE摂取量が1日100mg増加するごとに、肺ガンのリスクが7%上昇するという結果がでました。
 
 また、肺ガンのリスクと言えば、ビタミンE以外にベータカロチンのサプリメントが有名です。ベータカロチンは、元々は大腸ガンの予防になるのではないかと期待されていたのですが、大腸ガンを予防しないどころか肺ガンのリスクを高めることが分かり、これが発表された頃からサプリメントの有害性や効能がないことが次々に指摘されだしたような印象があります。米国ガン協会(American Cancer Society)も「ガン予防のためのビタミン剤のサプリメントは推奨しない」、としています。
 
 ただし、誤解のないように付記しておくと、ビタミン剤のサプリメントが有害(もしくはガンの予防に無効)なのであって、ビタミンEやベータカロチンが豊富に含まれている食品を積極的に摂取すること自体はガンの予防に効果があり推奨されています。結局は常識的な話になってしまうのですが、「栄養のあるものをバランスよく食べましょう」ということに尽きるというわけです。
 
(谷口恭)

注:この論文のタイトルは「Vitamin E and the Risk of Prostate Cancer」で、下記のURLで概要を読むことができます。
http://jama.ama-assn.org/content/306/14/1549.abstract?sid=b60d5330-ce80-445f-9a52-
3420ddea32c2

 
参考:医療ニュース
2011年8月26日 「ビタミン剤で発ガンのリスク上昇」

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

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