医療ニュース

2013年7月7日 日曜日

2011年10月31日(月) 過去最大規模の研究で携帯電話と脳腫瘍に関連なし?

 2011年5月31日、WHO(世界保健機関)は、携帯電話の使用は発ガン性があるかもしれない(possibly carcinogenic)との見解を公表しました。(下記医療ニュースを参照ください)
 
 このWHOの見解は、これまでの「携帯電話に発ガン性はない」と言われていた言説をくつがえす、いわばショッキングなものだったわけですが、このWHOの見解を否定する研究がデンマークの研究者により発表されました。論文は医学誌『British Medical Journal』2011年10月20号(オンライン版)に掲載されています(注)。
 
 この研究はデンマークの約36万人を対象者としています。対象者の条件は1925年以降にデンマークで生まれ、1990年の時点で生存していた30歳以上のデンマーク人です。対象者を1990年から2007年まで追跡調査し、携帯電話の使用と脳腫瘍発症との関連が分析されています。
 
 その結果、脳腫瘍を発症したのは、男性5,111人(携帯電話加入者714人、未加入者4,397人)、女性5,618人(加入者132人、未加入者5,486人)で、統計学的に携帯電話の使用と脳腫瘍の発症に関して関連性は認められなかったそうです。WHOの発表で最も問題視されていた神経膠腫という脳腫瘍という腫瘍については特に綿密に調べられていますが、やはり関連性はなかったそうです。
 
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 WHOが「発ガン性があるかもしれない」という発表をおこなった研究の対象者は約13,000人で、今回のデンマークの研究の対象者は約36万人ですから、数字だけを比較すれば、たしかにデンマークの研究の方が高い信憑性を有しているように思われます。
 
 しかし、この結果をもって「発ガン性なし」としてしまっていいのでしょうか。このデンマークの研究結果を踏まえたWHOの見解を聞きたいところです。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Use of mobile phones and risk of brain tumours: update of Danish
cohort study」で、下記のURLで全文を読むことができます。
 
http://www.bmj.com/content/343/bmj.d6387.full?sid=37885ddb-a456-4c41-8407-82446d092ca6

参考:医療ニュース
2011年6月3日 「WHOが携帯電話の危険性を公表」
2010年7月12日 「寝る前の携帯電話はNG」
2010年5月31日 「携帯電話で発ガン性は一応認められず・・・」
2010年1月23日 「携帯電話がアルツハイマーを予防?」

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2013年7月7日 日曜日

2011年11月6日(日) 毎晩眠れない人は自殺リスクが4倍以上

 不眠と自殺の関連が指摘されることがしばしばありますが(下記医療ニュースも参照ください)、これを裏付ける研究がノルウェーでおこなわれ、医学誌『SLEEP』2011年10月1日号に掲載されました(注)。
 
 この研究はノルウェー科学技術大学(Norwegian University of Science and
Technology)によるものです。対象者は同国ヌール・トロンデラーグ(Nord-Trondelag)県在住の、1984年から1986年の時点で20歳以上であった約74,977人で、2004年12月31日までの約20年間にわたり追跡調査がおこなわれています。
 
 対象者の調査開始時の平均年齢は49.6歳、うち男性は49%です。過去1ヶ月の不眠状況により4つのグループに分類されており、「毎晩(every night)」3%、「しばしば(often)」5%、「ときどき(sometimes)」31%、「なし」61%、となっています。
 
 約20年間の追跡調査の結果、自殺者は合計188人で、「毎晩」不眠のある人は、不眠がまったくない人に比べると、自殺のリスクが4.3倍にもなることが判ったそうです。「しばしば」不眠のある人は2.7倍、「時々」不眠のある人は1.6倍となっており、不眠の程度が深刻になればなるほど、自殺のリスクが上昇しています。
 
 睡眠薬については、自殺者の58%(109人)が服用しておらず、服用していたのは24%(46人)のみだったそうです。(残りの18%(33人)はデータが得られなかったそうです)
 
 研究者は、今回の研究で導きだされた不眠と自殺の関連は50歳未満で顕著であったことを指摘しています。「高齢者の不眠症状は加齢によるものが多く日常生活に影響を与えないことが多いが、若年者では精神疾患の可能性がある」とコメントしています。
 
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 不眠と自殺の関係は従来から指摘されてきたことですから、納得しやすい研究結果でしょう。この研究が重要な意味をもつのは、不眠があって自殺をした人のなかできちんと治療を受けていた(投薬を受けていた)人がわずか24%しかいなかった、ということです。
 
 研究者が述べているように、若年者の不眠は自殺のリスクが高く放置すべきでない、ということを認識する必要があるでしょう。

 尚、ノルウェーを含め「北欧は自殺者が多い」と考えている人がいますが、それは昔の話であり、現在はそれほど高いわけではないことを付記しておきたいと思います。2009年のデータではノルウェーの人口10万人あたりの自殺者数は11.9人(WHOのデータより)で、これは日本の半分以下です。
 
(谷口恭)

注:この論文のタイトルは「Sleeping Problems and Suicide in 75,000 Norwegian Adults:
A 20 Year Follow-up of the HUNT I Study」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://www.journalsleep.org/ViewAbstract.aspx?pid=28246

参考:
はやりの病気2010年10月号 「新しい睡眠薬の登場」

医療ニュース
2010年4月2日 「睡眠障害の自殺リスクは28倍」
2010年9月14日 「男性の睡眠不足は短命に・・・」
2008年6月30日 「睡眠不足はダイエットの強敵!」

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2013年7月6日 土曜日

7/6 カネボウなどの化粧品の一部で白斑のトラブル

 2013年7月4日、厚生労働省医薬食品局安全対策課及び消費者庁は、カネボウなど一部の化粧品メーカーが販売している化粧品で皮膚のトラブルが生じ、メーカーが自主回収を開始したことを発表しました(注1)。

 問題となった化粧品は、(株)カネボウ化粧品、(株)リサージ、(株)エキップの3社から発売されている一部の製品(化粧水や乳液など)で、合計8つのブランド、54の製品が該当するそうです(注2)。問題の成分はロドデノール(4-(4-ヒドロキシフェニル)-2ブタノール)というもので、カネボウによれば、ロドデノールにはシミやソバカスを防ぐ効果があるそうです。 

 2013年5月、該当のスキンケア製品を使って被害を受けた利用者がいるとの報告が医療機関からカネボウに寄せられ、調査の結果、ロドデノールによる「白斑症」であることが判明し、これまでに同様の症例が合計39例報告されているそうです。

 報道によりますと、これらのスキンケア商品は現在約25万人が使用し、約45万個が家庭などにあるとみられています。自主回収される化粧品の年間売上高は国内で約50億円、海外でも台湾やタイなどを中心に約10億円の売り上げがあるそうです。

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 カネボウによれば、ロドデノールは2008年から2013年4月にかけて全国の百貨店や量販店で販売され、累計で436万個が出荷されているそうです。具体的なブランドをみてみると「ブランシール」や「トワニー」などカネボウ定番のものもあり、今後被害者が増えていくのではないでしょうか。

 一般に、「白斑症」というのは皮膚疾患のなかでは治りにくく治療に苦労します。現時点では情報がありませんが、どのような人に起こりやすいのか、該当するスキンケア製品の使用を中止するだけで症状は改善するのか、中止だけで改善しないのであれば治療はどのようにすべきなのか、などの情報に今後注目していく必要があるでしょう。

(谷口恭)

注1:厚生労働省、消費者庁のホームページに詳細が掲載されています。

厚生労働省のホームページ
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000035xv0.html

消費者庁のホームページ(白斑症が生じた写真が掲載されています)
http://www.caa.go.jp/safety/pdf/130704kouhyou_1.pdf

注2:3つのメーカーはホームページで詳細を掲載しています。尚、参考までに、(株)リサージはカネボウの系列会社です。

(株)カネボウ化粧品のホームページ
http://www.kanebo-cosmetics.co.jp/information/

(株)リサージのホームページ
http://www.lissage.jp/information/

(株)エキップのホームページ
http://www.eqp.co.jp/info130704.html

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2013年7月3日 水曜日

7/3 長時間1回と短時間3回、有効なウォーキングはどちら?

 減量のために歩きましょう、血糖値を下げるために歩きましょう、毎日何度もこのようなセリフを我々医療者は口にしているのですが、ここでしばしば問題になるのが、長時間しっかり歩くのがいいのか、短時間でも繰り返し歩くのがいいのか、ということです。

 以前は、少なくとも減量するには長時間歩かなければならない、と言われていたのですが、最近は短時間の繰り返しでもOKとする考えもでてきています。大規模な調査でこの点を検証した研究というのはあまりないと思うのですが、血糖値改善に関する研究結果が発表されましたので紹介したいと思います(注1)。

 この研究の対象者は、ワシントンD.C.在住の60歳以上の男女で、空腹時血糖値が105~125mg/dLと、軽度の糖尿病もしくは糖尿病予備軍に該当する合計10人です。この10人に、毎日同じ時間に食事をとってもらい、トレッドミルを使って下記の3つのパターンでウォーキングをおこなってもらっています。食事は8時、12時、6時の3回で、いずれも食事時間は30分間とされています。

①毎食後15分間のウォーキング(食後30分後に開始)
②午前中の45分間のウォーキング(10時45分に開始)
③夕方の45分間のウォーキング(16時30分に開始)

 血糖値改善の評価をするために、まず24時間の平均血糖値が調べられています。上記①②③について、血糖値が有意に改善したのが、①と②で、③では運動していない日と比べて血糖値低下が認められなかったようです。

 昼食後および夕食後3時間の平均血糖値も検証されています。昼食後3時間では、①②③のすべてのパターンで有意な血糖改善効果は認められていませんが、夕食後3時間では、①でのみ有意な血糖改善効果が確認されたようです。

 この結果を受けて、研究者は、毎食後短時間のウォーキングが血糖値改善に有効である、と結論づけています。

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 研究の対象者はわずか10人ですが、この手の研究をおこなうのは大変ですから、貴重な研究報告だと思います。

 特に、どうせ時間が取れないからムリ、運動は苦手だからムリ、膝が痛いから長時間歩けない、などと言っている人には朗報でしょう。この研究によれば、毎食後15分ですから、食後の気分転換にちょっとした散歩にでかけるだけで血糖値改善が期待できるというわけです。

 長時間のウォーキングやさらにハードな運動も可能であれば日常生活に取り入れるべきと考えている人も多いと思いますが、日々の短時間の運動が有効であることを認識するのも重要なことです。つまり、ハードな運動をたまにしているから健康と考えるのは短絡的であり、この研究結果が示しているように、日々のちょっとした運動こそが血糖値のコントロールに有効であり、おそらく体重や中性脂肪など他の健康リスクについても同じことがいえるのではないかと思います。

 ただし、この研究の対象者は、60歳以上の軽度の糖尿病もしくは予備軍で、ターゲットを血糖値改善に置いています。例えば、若い人で血糖値改善というよりも減量を考えているという人は、日々のちょっとした運動に加えてもう少しハードなものを取り入れる方がいいかもしれません。

参考:医療ニュース
2010年11月4日「週に10km程度の歩行が認知障害を予防」

注1:この論文は医学誌『Diabetes Care』2013年6月13日号(オンライン版)に掲載されています。タイトルは、「Three 15-min Bouts of Moderate Postmeal Walking Significantly Improves 24-h Glycemic Control in Older People at Risk for Impaired Glucose Tolerance」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://care.diabetesjournals.org/content/early/2013/06/03/dc13-0084.abstract?sid=3ed9cef2-a2a4-49c8-8d46-add3047b80b7

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2013年7月2日 火曜日

2012年10月26日(金) 都道府県別ガン死亡率、青森が8年連続ワースト1

 2012年10月9日、国立がん研究センターがん対策情報センターが、2011年の都道府県別のガンによる75歳未満年齢調整死亡率を発表しました(注1)。死亡率が最も高かったのが青森県で、人口10万人あたり97.7人とされています。青森は、2004年以来8年連続ワースト1ということになります。

 逆に、最も死亡率が低いのは長野県で、人口10万人あたり69.4人とされています。長野県は、この調査が始まった1995年から不動の1位、しかも2位と大きく差を開けての1位を17年間”独走”しています。

 死亡率が高いのは、青森が1位、2位が和歌山、3位が佐賀です。死亡率が低いのは長野が1位で、2位が岡山、3位が香川です。

 「年齢調整死亡率」というのは、人口構成などの異なる地域間で比較しやすいように調整した死亡率のことを言います。高齢者が多い都道府県では当然ガン死亡者も増えます。年齢調整死亡率では、年齢分布の影響を取り除くことができるというわけです。さらにこの調査は「75歳未満」に限定していますが、これは高齢による死亡の影響を取り除くことを目的としています。

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 注1のURLから都道府県別の年次推移の折れ線グラフをみてみると、この17年間を通しての注目すべきことがいくつかあります。

 まず1つめに、全国的にこの17年間でガン死亡率が大きく減少しているということです。一部の県ではガンが増えている、といったようなことはなく、どの地域も程度の差はありますが減少傾向にあります。

 次に、長野県が17年間2位を大きく離して1位を独走しているということです。我々は長野県から学ぶべきことがたくさんありあそうです。

 最近8年間でみるとワースト1は青森ですが、それまでは大阪が1位で、大阪は2003年までは2位に大きく差をつけてワースト1位、しかしそれ以降は減少傾向にあり2011年は6位となっています。大阪が大きく減少したのは、HCV(C型肝炎ウイルス)が原因の肝臓ガンが減少したからではないかと私はみていますが、他にも要因があるでしょう。

 地域の比較を詳しくおこなうことによって、ガンを防ぐ秘訣のようなものが見つかるかもしれません。

(谷口恭)

注1:詳しくは、国立がん研究センターがん対策情報センターの下記のURLを参照ください。
 
http://ganjoho.jp/public/statistics/pub/statistics03_01.html

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2013年7月2日 火曜日

2012年6月30日(土) カルシウムのサプリで心筋梗塞のリスクが2倍

 日本人の多くがカルシウム不足と言われており、そのためカルシウムをサプリメントで摂取している人は少なくありません。しかし、

 カルシウムのサプリメントを摂取すると心筋梗塞になるリスクが2倍になる・・・

と、このような研究結果がスイスのチューリッヒ大学社会予防医学研究所の調査により導かれ、医学誌『Heart』(オンライン版)2012年5月23日で発表されました(注1)。

 この論文では、「European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition study(ヨーロッパの癌と栄養に関する前向き研究)(注2)」という大規模研究の対象となったドイツ・ハイデルベルク在住の約24,000人(1994~1998年の調査開始時点で35~64歳)のデータが分析されています。食事の内容、ビタミンやミネラルのサプリメントを摂取しているかどうかを確認し、平均11年間の追跡がおこなわれました。その間に、心筋梗塞354例、脳卒中260例、それ以外の心血管系の原因による死亡267例が発生しているそうです。

 食事から摂取するカルシウムが中程度(1日820mg)のグループは、摂取が少ない人よりも心筋梗塞リスクが低いという結果がでており、女性の方がこの傾向が顕著となっています。しかし、摂取量が1,100mgを超えるとリスク低下は認められていません。

 問題はここからです。

 カルシウムのサプリメントを摂取している人は、まったくサプリメントを摂っていない人に比べると、心筋梗塞のリスクが1.86倍になり、さらにカルシウムのサプリメントだけ(おそらく他のサプリメントは摂らずに、という意味だと思います)を摂取している人では、2.39倍にもなる、と導かれています。

 尚、この研究ではカルシウムと脳卒中のリスクも調べられていますが、こちらは相関関係がなかったそうです。

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 日本のような高齢化社会では、骨粗しょう症のリスクを下げるためにカルシウム摂取の重要性がよく指摘されます。まず、この研究で最も大切なことは、「カルシウムが必要なことは変わらないわけで、摂取方法は食事からにすべきであって、サプリメントはまずい」ということです。

 このサイトで何度か指摘していますが、ここ数年間はサプリメントに関する研究結果はほとんどが否定的なものです。摂取して何も変わらない、であればいいのですが、摂取すると病気のリスクが高まる、とされるものが目立ちます。(下記「医療ニュース」も参照ください)

 けれども、サプリメント好きな人は意外に多く、診察室で患者さんからよく質問を受けます。「どうしても何かサプリを摂りたい」という患者さんがいて、私にはこの心理がよくわからないのですが、どうしても、という人には、「それなら厚労省のデータで不足しているとされているカルシウムのサプリメントを考えてみればどうでしょう」、と返答してきました。

 しかし、これからはそんなことは言っていられないでしょう。我々はサプリメントに対する認識を「摂取しても効果がないもの」から「摂取すれば危険なもの」と変えるべきかもしれません(注3)

注1:この論文のタイトルは、「Associations of dietary calcium intake and calcium supplementation
with myocardial infarction and stroke risk and overall cardiovascular mortality in the Heidelberg
cohort of the European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition study (EPIC-Heidelberg)」で、下記のURLで概要(abstract)を読むことができます。

http://heart.bmj.com/content/98/12/920.abstract

注2:「前向き研究」というのは、分かりやすく言えば、対象者をあらかじめ決めておいて、その後どのような病気になるかを追跡していく調査のことです。これに対して「後向き研究」というのは、病気になった人を集めて、過去にどのような食生活をしていたか、喫煙や飲酒はどうだったか、などを聞き取って調べる調査のことです。一般的には「前向き研究」の方がより正確とされています。

注3:ビタミンやミネラル、その他健康食品の有効性を検証したサイトとしては、国立健康・栄養研究所の下記のものがおすすめです。

「 健康食品 」の安全性・有効性情報

参考:医療ニュース
2011年8月26日 「ビタミン剤で発ガンのリスク上昇」
2011年5月6日 「カルシウムサプリメントが女性に危険かも・・・」
2012年3月13日 「ビタミンE過剰摂取で骨粗しょう症に」

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2013年7月2日 火曜日

2012年8月1日(水) 喫煙者率、2011年も過去最低だが・・・

 JT(日本たばこ産業)は毎年「全国たばこ喫煙者率調査」をおこなっています。今年は全国の成人男女約32,000人を対象に5月に実施されました。回答を得たのは19,897人からで回収率は62%ということになります。以下の結果が7月30日に発表されました(注1)。

 男女合計21.1%(前年から0.6ポイント低下)
 男性のみ32.7%(前年から1.0ポイント低下)
 女性のみ10.4%(前年から0.2ポイント低下)

 JTは、高齢化の進行、健康意識の高まり、2010年10月に実施されたタバコ税増税などが喫煙者率減少の要因とみているようです(注1)。

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 JTはいくつかの理由で喫煙者率が減少したことを強調したいようですが、今回の低下率は0.6ポイントですから、2010年から2011年の低下率が2.2ポイント(下記医療ニュース参照)だったことを考えると低下率は鈍くなっていることがわかります。

 結果の解釈については「過去最低になって良かった」ではなく、「禁煙を試みる人が減り喫煙者の減少率が鈍くなり好ましくない状態」とみるべきではないか、と私は考えています。

注1:JTのウェブサイトで詳しく紹介されています。下記URLを参照ください。

http://www.jti.co.jp/investors/press_releases/2012/0730_01.html

参考:医療ニュース
2011年10月15日 「喫煙者率が男女とも過去最低に」
2010年8月16日 「喫煙率、男性は過去最低、女性は再び増加」

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2013年7月2日 火曜日

2012年1月6日(金) いろんな「風邪」が大流行

 昨年(2011年)からマイコプラズマ、RSウイルスなどによる「風邪」が大流行していますが(下記医療ニュース参照)、インフルエンザも加わり、その勢いはまったくおとろえていないようです。

 12月12日から18日までの都道府県別の統計をみてみると、インフルエンザは宮城が最多で、愛知、三重、岡山、愛媛と続いています。マイコプラズマは、埼玉が最多で、沖縄、宮城、愛知、青森と続き、RSウイルスは、北海道、愛知、大阪、兵庫、静岡の順です。いずれの感染症も全国的に高い数字にあるといえます。

 このなかで、昨年末あたりからじわじわと増えだしていたインフルエンザが目立った増加をしています。2011年12月16日には、厚生労働省が正式にインフルエンザが「流行入り」したことを発表し、12月19~25日には、その前週の1.7倍にも報告数が増えています(注)。

 また、今年はいわゆる「おなかの風邪」も流行しており、なかでもノロウイルスによる胃腸炎が目立っています。12月30日の毎日新聞によりますと、今年は生でよく食べられている岩ガキが原因とみられる食中毒が多く、厚生労働省は「異例の事態」とみているそうです。

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 咳や咽頭痛が主症状の風邪(いわゆる上気道炎)であっても、おなかの風邪であっても手洗いとうがいが予防の基本です。おなかの風邪は、カキが問題となっているケースが多いようですから、少なくとも流行中は、生食はできるだけ避けた方がいいかと思われます。

(谷口恭)

注:インフルエンザについては厚労省の下記のサイトが参考になります。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/dl/houdou20111216-01.pdf

参考:
トップページ: インフルエンザ
医療ニュース2011年10月28日 「マイコプラズマ肺炎も過去最多、しかも・・・」

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2013年7月2日 火曜日

2012年1月20日(金) プロペシアで男性不妊症の可能性

 男性型脱毛症(AGA)の治療薬としてすっかり定着しているプロペシアに、副作用として男性不妊症が起こりうることを製造及び販売元(MSD)が2012年1月16日付で発表しました。

 改訂された添付文書には、副作用として、「男性不妊症・精液の質低下(精子濃度減少、無精子症、精子運動性低下、精子形態異常等)」と記載されています。頻度は「不明」とされています。

 これに対する注釈として、「本剤の投与中止後に、精液の質が正常化又は改善されたとの報告がある」と記載されています。

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 プロペシアは男性ホルモンの生成に関与する5αリダクターゼという酵素の働きを抑制することから、以前からこのような副作用の可能性があるのではないかと言われていましたが、メーカーはこれまで否定していました。今回の添付文書の改訂で、一転してその可能性を認めたということになります。

 当院にもプロペシアを処方している患者さんは大勢おられます。緊急性がないために電話連絡などはいたしませんが、次回処方時にあらためてこの副作用について相談したいと考えています。

 尚、プロペシアの他の副作用としては、「リビドーの低下(性欲の低下)」が1~5%におこるとされています。また、1%未満で「勃起機能不全」もあるとされています。

(谷口恭)

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2013年7月2日 火曜日

2012年1月30日(月) アメリカ製の育毛剤で健康被害の可能性

 AGA(男性型脱毛症)の治療として、現在のガイドラインで推奨されているのは「プロペシア」と「リアップx5」だけですが、それら以外のものを使用している人も少なくありません。
 
 AGAの治療に対する需要は多く、そのため危険性の伴うものも出回ることがあります。FDA(米食品医薬品局)は2012年1月20日の「安全性情報」で、Perfect Image Solutions社が販売する育毛剤などの回収および破棄を発表しました。
 
 回収及び破棄に指定されているのは下記の5つです。

Men’s Minoxidil 15% Azelaic 5% Hair regrowth topical, 60mL
Men’s Minoxidil 10% Azelaic 5% Hair regrowth topical, 60mL
Men’s Minoxidil 5% Azelaic 5% Hair regrowth topical, 60mL
Women’s Minoxidil 3% Azelaic 5% Hair regrowth topical, 60mL
Hair regrowth shampoo enhanced with Ketoconazole and salicylic acid, 180mL

 FDAの承認を受けていないこれらの製品は、米国内だけでなく、インターネットを通じて全世界で流通しているそうです。

 FDAによりますと、「15%,10%のミノキシジルに関する安全性は確認されていない」として、内服でなく外用の場合であっても、低血圧や動悸、皮膚障害といった全身性の副作用が生じる可能性があるそうです。
 
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 上記5つの製品をみると、4つはAzelaic(アゼライン酸)が使用されていますから、これが問題なのかもしれないと感じられますが、FDAは高濃度のミノキシジルの方を問題視しているようです。たしかに日本製の「リアップx5」も皮膚障害の副作用はときどき聞くことがあります。
 
 ケトコナゾールは、海外ではAGAの治療として使われることがあるようですが、毛髪の色素脱失や髪質の変化、皮膚障害の可能性がFDAに指摘されています。

 今月はプロペシアの副作用も発表されました。AGAの治療については慎重に考えるべきでしょう。

(谷口恭)

参考:医療ニュース 2012年1月20日 「プロペシアで男性不妊症の可能性」

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