医療ニュース

2013年7月24日 水曜日

2009年6月1日(月) 日本の出生率は3年連続上昇

 2008年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むと推定される子供の数)が1.35~1.37程度となり、3年連続で上昇したことが分かりました。(報道は6月1日の日経新聞)

 出生率が上昇した原因として、①うるう年の効果、②出産期の女性の数が減ったこと、③2007年までの好景気の影響、が考えられます。

 ただ、少子化の流れは続いており、総人口自体も減少傾向にあります。

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 合計特殊出生率の正確な数字は、今月中には厚生労働省が正式に発表する予定です。

 一般的には合計特殊出生率が2.08を下回ると総人口が減少に向かうとされていますから、3年連続で上昇したといっても、喜んではいられません。

 参考までに、WHO(世界保健機関)の5月21日の発表(2009年版世界保健統計)によりますと、合計特殊出生率が最も高かったのがニジェール(西アフリカの内陸国)の7.2人、2位はアフガニスタンの7.1人です。

 一方、最も低いのは韓国の1.2人で、ベラルーシ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、チェコ、ポーランド、スロバキアなども同じく1.2人と発表されています。

参考:医療ニュース
2007年2月24日「出生率が大幅回復へ!」
2008年6月6日「出生率が2年連続上昇」

(谷口恭)

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2013年7月24日 水曜日

2009年6月5日(金) 結局よく分からないタミフルの異常行動

 タミフル服用で異常行動が起こるのか起こらないのか・・・

 このサイトで過去何度も取り上げてきましたが依然釈然としません。6月4日の日経新聞によりますと、厚生労働省の作業部会は、3日、「服薬しなくても異常行動は発生しており、明確な関係は認められない」との報告をまとめたとのことです。

 しかし、その一方で、「タミフルが異常行動の危険を高める可能性を完全には否定できない」としており、タミフルの10代患者への処方制限は継続すべきだとの結論もだしています。

 同省の研究班が、2006年から2007年に全国約7000の医療機関でインフルエンザと診断された18歳未満の患者約1万人を分析したところ、服用と異常行動に統計上意味のある関連はなかったとのことです。また、2008年から2009年の流行期に生死にかかわる重大な異常行動が179件報告されていますが、服用した患者と服用していない患者はいずれも約4割でこちらも差はありません。

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 新型インフルエンザの発生後、厚生労働省は「新型の危険性を考慮した上で10代でも使用できる」との見解を示しています。

 我々医師の立場からすると、もっと明確な処方の基準を提示してもらいたいと思います。太融寺町谷口医院では、当分の間、インフルエンザに対してはタミフルではなくリレンザを中心に処方する予定です。

(谷口恭)

参考:医療ニュース
2009年4月22日「タミフルの異常行動は「否定できず」
2008年8月4日「波紋を呼んでいるタミフル調査結果」
2008年7月14日「タミフルは異常行動に関係なし」

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2013年7月24日 水曜日

2009年6月5日(金) 人口自然減は過去最大に

 厚生労働省が6月3日、人口動態統計を公表しました。同統計によりますと、2008年の人口の自然増減数(出生数から死亡数を引いた数字)はマイナス51,317人で、前年(2007年)のマイナス18,516人を大きく下回り、過去最大となっています。

 出生数は、1,091,150人で、2007年から1,332人増えていますが、死亡数は1,142,467人(前年比34,133人増)となり、1947年以降で最多となっています。

 死因の最多はガンで342,849人と28年連続の1位です。2位は心筋梗塞などの心疾患で181,822人、3位は脳卒中などの脳血管疾患で126,944人となっています。

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 先日、概数をお伝えした合計特殊出生率は1.37人と発表されています。県別でみると、上位から、沖縄(1.78)、宮崎(1.60)、鹿児島(1.59)、熊本(1.58)と九州が占めています。低い方からみれば、東京(1.09)、北海道(1.20)、京都(1.22)、奈良(1.22)となっています。

 人口動態統計では、自殺者数も公表されています。自殺者数は30,197人で、昨年に続き3万人を超えています。(自殺者数は警察庁と厚生労働省では集計の基準が異なります)

(谷口恭) 

参考:医療ニュース
2009年6月1日「日本の出生率は3年連続上昇」
2009年5月29日「今年の自殺、すでに11,000人超え」

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2013年7月24日 水曜日

2009年6月8日(月) 日本脳炎新ワクチン、勧奨中止は継続

 副作用の恐れから従来の日本脳炎ワクチンが使いにくくなっていたなかで、新しいワクチンがようやく承認されたというニュース(下記参照)は以前お伝えしましたが、依然「勧奨中止」が継続されることになりました。

 新ワクチンによる予防接種は6月2日から始まっています。日本脳炎は夏に流行しますからタイミングとしてはちょうどいいといえるでしょう。4年ぶりの再開というかたちとなります。当初は30万人分が製造され、生後6ヶ月から7歳半までの未接種者のなかで希望者を対象とすることになっています。

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 「勧奨中止」の措置が継続されるという点が気になります。厚生労働省はこの理由として「副作用のリスクが皆無ではない」としています。しかし、そもそも従来のワクチンが勧奨中止となったのは副作用が発生したからであり、新しいワクチンも副作用の可能性があり勧奨中止となるならば、いったいどこがどう違うの?と疑問に思ってしまいます。

 ワクチンの副作用は完全にはゼロにできませんが、従来のワクチンと新しいワクチンのリスクがどのように違うのかについては何らかの説明がほしいように思います。

 しかし、ワクチンのリスクが強調されすぎてしまい、日本脳炎ウイルスの危険性が軽視されるようなことがあってはなりません。

(谷口恭)

参考:
はやりの病気 第63回 「日本脳炎を忘れないで!」
医療ニュース 2009年2月27日「日本脳炎の新ワクチンがついに承認」

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2013年7月24日 水曜日

2009年6月11日(木) 職場のストレスで「心の病」が過去最多

 職場でのストレスが原因でうつ病などの精神疾患になり、2008年度に労災認定を受けた人は269人・・・。

 これは6月8日に厚生労働省が発表した報告です。2007年は268人で過去最多でしたから、最多を更新したことになります。

 このうち、過労自殺(未遂も含む)は66人で、こちらは2007年度より15人減少していますが、依然高い水準を維持しており喜んではいられません。

 精神疾患で労災認定を受けた人を年代別でみてみると、最多が30代の74人、20代は70人、40代は69人で、20~40代で全体の約8割を占めることになります。

 職種でみてみると、SE(システムエンジニア)や医師などの「専門的・技術的職業」が69人で最多で、工場で働く労働者など「生産工程・労務作業者」が51人、「事務」45人と続きます。

 精神疾患を理由とした労災申請者数は927人で、こちらは前年度比25人減となっています。

 また、過労が原因として労災認定されたのは377人で、前年度比15人の減少です。過労死は前年度比16人増!の158人で、これは2002年度の160人に次いで多い数字となります。申請者数は889人で、前年度比42人減です。

 労災認定された377人のうち、長時間労働が主因とされたのは361人です。厚生労働省では、1ヶ月間の時間外労働が80時間以上のケースを「過労死ライン」として認定基準にしていますが、100時間以上が207人にものぼり、さらに160時間以上も24人となっています。

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 精神疾患が理由の労災申請も、過労が原因の労災申請も前年度比減となっています。これは実態を反映しているのでしょうか。それとも、過酷な労働を強いられているのに申請できない人が大勢いることを示しているのでしょうか・・・。

(谷口恭) 
 
参考:医療ニュース
2008年5月26日「過労自殺は過去最悪、精神疾患は3割増」

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2013年7月24日 水曜日

2009年6月11日(木) やはり長生きするのは太り気味か…

 成人後に太ると長生きし、やせると早死にする!、という従来の概念をくつがえすような研究が発表されたことを以前お伝えしました。(下記医療ニュース参照)

 その結果を裏付けるような別の研究が厚生労働省より発表され話題を呼んでいます。(報道は6月10日の読売新聞)

 この調査は、宮城県内の40歳以上の住民約5万人を対象とし、12年間健康状態などを調べています。過去の体格も調べ、体の太さの指標となるBMI(下記注)ごとに40歳時点の平均余命を分析した結果、普通体重(BMIが18.5以上25未満)が男性39.94年、女性47.97年なのに対し、太り気味(同25以上30未満)は男性が41.64年、女性が48.05年と長命という結果がでています。しかし、さらに太って「肥満」(同30以上)に分類された人は男性が39.41年、女性が46.02年と、普通体重の人よりわずかに短い数字となっています。

 一方、やせた人(BMI18.5未満)は男性34.54年、女性41.79年にとどまっています。この調査では、病気でやせている例などを統計から排除しても傾向は変わっていません。

 これらをまとめると、「やせた人」は「太り気味の人」より6~7歳も早く死ぬという結果になります。

 この研究では医療費についても言及されています。「肥満の人」が40歳以降にかかる医療費の総額は、男性が平均1521万円、女性が同1860万円で、どちらも「やせた人」の1.3倍かかっていたことになります。

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 「やせた人」の医療費がかからないのは、早く死ぬからでしょうか。それにしても、この調査結果は衝撃的です。

 最も長生きする「太り気味」ではBMIが25~30とされています。仮に身長170cmの男性がいたとしてBMIが25~30ということは、体重が72.25~86.7kgとなります。身長160cmの女性であれば、体重が64kg~76.8kgということになります。このような体型の男女を想像したときに、やはり常識的には「もっとやせましょうよ」ということになるのではないでしょうか。

 太融寺町谷口医院にも「減量しましょうね」と毎回のように助言している患者さんがたくさんいます。その患者さん達に対して、これから私は何と言えばいいのでしょうか・・・。

注:BMIはBody Mass Indexの略で、体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割って算出します。例えば、体重88キログラム、身長2メートルの人であれば、88÷2の2乗=88÷4=22となります。

(谷口恭) 

参考:医療ニュース 
2009年4月30日「太った方が長生きする!?」

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2013年7月24日 水曜日

2009年6月20日(土) 日本のHIV、増加傾向は変わらず

 6月17日、厚生労働省のエイズ動向委員会は、2008年に新たに報告されたHIV感染者とエイズ発症者の確定値を公表しました。(速報値公表時のニュースは下記参照)

 HIV感染者は1,126人(2007年は1,082人)、エイズ発症者は431人(2007年は418人)で、ともに過去最多を更新しています。さらに、6年連続で過去最多を更新していることになります。

 2008年末までの国内感染者累計は10,552人、発症者累計は4,899人となります。

 同委員会は、同日、今年(2009年)1月から3月までの国内で新たに報告された数値も公表しています。報告によりますと、新たにHIVに感染した人は249人(これは過去8番目となります)、エイズ発症者は124人でこれは過去2番目に多い数字です。

 エイズ発症者の内訳をみてみると、同性間の性的接触が61人で最多、異性間の性的接触は39人となっています。年代では30代が51人、40代が30人といずれも前年同期より増加しています。

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 最近の傾向として、感染や発症が確認されている人の年齢が上がってきています。50代で新規に感染が判るケースも増えており、検査の対象者を増やすことも検討すべきでしょう。

(谷口恭)

参考:医療ニュース 
2009年2月24日「日本のHIV・AIDS、6年連続で過去最多」

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2013年7月24日 水曜日

2009年6月25日(木) 謎の食中毒が増加

 食後数時間で下痢や嘔吐をきたすものの、原因物質(病原体)が特定できない食中毒がここ数年間で増加しているようです。

 この謎の食中毒はこれまでのところ、首都圏や瀬戸内海沿岸、北陸地方などで確認されており、地域の保健所は「(原因が分からないので)再発防止策の取りようがない」と対応に苦慮しているようです。(報道は6月22日の読売新聞)

 この「謎の食中毒」をまとめてみましょう。

 まず、主症状が下痢や嘔吐で、発熱や発疹などは出現しないようです。2つめに、食後、発症までに平均4~5時間程度だそうです。これは、一般の微生物による食中毒に比べると発症時間が短いと言えます。3つめに、この食中毒は軽症であり回復も早いようです。

 これまで、保健所などが残飯や吐しゃ物を検査しても原因となる微生物や毒素は検出されておらず、未知の病原体の可能性を検討しなければならないかもしれません。

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 症状が軽いために実際には届出をしていない人も少なくないでしょう。

 現在は、すっかり有名になった下痢・嘔吐をきたすノロウイルスは昨年(2008年)の食中毒の原因病原体で最多でした。しかし、ノロウイルスの検査方法が確立し統計に加えられるようになったのは1997年からです。では、ノロウイルスは1997年以前にはなかったのかというとそんなことはありません。

 ということは、最近流行している「謎の食中毒」も、数年後には誰もが知っている感染症となっているかもしれません。

(谷口恭)

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2013年7月24日 水曜日

2009年6月25日(木) 和歌山で野兎病感染

 2008年7月、和歌山県内で初めての野兎病(やとびょう)の感染が確認されています。

 和歌山県古座川町在住の60代の女性がダニにかまれ感染し、最初に診療にあたった診療所で採取した血液の検査から野兎病が発覚したようです。(報道は6月20日の毎日新聞)

 女性は抗生物質の注射などで翌日には快方に向かったそうです。

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 野兎病は、病気の名前から想像できるようにノウサギから感染します。以前の日本にはウサギを食べる習慣がありましたから、ウサギの血液に触れることによって感染することが多かったのです。北海道、東北、関東地方での報告が多いようです。

 しかし、ノウサギを食べる人は現在ではほとんどいませんから、最近では、野兎病に罹患する人はあまり多くありません。(私も診察したことがありません)

 感染経路はノウサギの血液などに直接接触する以外にも、今回の報道にあるようにダニに刺されることによる感染が考えられます。つまり、ダニが野兎病の病原体(野兎病菌)を吸血することで体内に取り込み、ヒトに刺すときにその菌をヒトの体内に注入しているというわけです。

 しかし、以前(戦後あたりの時代)の野兎病が多かった時代ですら、和歌山での報告はなかったわけで、野兎病自体が減少しているこの時代に和歌山で発見されたということは注目に値します。

 つまり、野兎病菌を保有しているダニが全国的に増殖している可能性があるのではないか、私はそう感じています。以前からこのサイトで何度か取り上げているようにダニに刺されることには注意を払わなければなりません。ライム病、日本紅斑熱、恙虫病、これらはいずれもダニに刺されることが原因になります。

参考:
医療ニュース 2008年5月19日「日本紅斑熱に注意」
医療ニュース 2008年8月7日「宮崎の女性がダニに刺されて死亡」

(谷口恭)

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2013年7月24日 水曜日

2009年6月29日(月) 大阪、20代男性が結核で死亡

 大阪市中央区の飲食店でアルバイトをしていた20代後半の男性が結核で死亡し、同僚や友人ら20~30代の男女9人も感染していることが発覚しました。

 これは6月25日に大阪市が公表した情報で、各マスコミが報じています。

 現在のところ、飲食店の客への感染は確認されていないようです。

 大阪市保健所によりますと、死亡した男性は一人暮らしで、2004年頃からその飲食店の厨房で勤務を開始したそうです。昨年(2008年)の9月以降、たびたび体調を崩し、12月には勤務ができなくなるほど容態が悪化し退職となったとのことです。2009年2月、救急搬送された病院で結核と診断され治療を開始されましたが搬送13日後に死亡しています。

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 今のところ、死亡した男性の同僚らで感染が発覚した9人は症状がないそうです。

 結核は決して過去の病気ではありません。若い人にもみつかることがときどきあります。長引く咳、継続する倦怠感や疲労感、夜間の発熱や寝汗、・・・、気になることがあれば結核を疑ってみるべきかもしれません。

参考:
はやりの病気 第68回(2009年4月)「結核、大丈夫ですか?」

(谷口恭)

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