医療ニュース
2013年8月3日 土曜日
2008年5月19日(月) 日本紅斑熱に注意
ダニなどの虫刺されでクリニックを受診する患者さんは少なくありませんが、虫刺されに発熱が伴うと要注意です。ダニに寄生するウイルスや細菌が人間の体内に侵入した可能性があるからです。
近年、日本紅斑熱と呼ばれる、ダニに刺された後、皮疹と発熱がでてくる感染症が増えています。
日本紅斑熱は1984年に徳島県で初めて確認され、1999年に保健所への届出が必要な感染症に指定されました。2007年は全国で前年の2倍で過去最高の98件の届出がなされています。
この日本紅斑熱が和歌山県で増えているようで、2007年までに38人が確認されているそうです。なぜか海岸から10キロ以内の地域に集中しており、なかには死亡例もあるといいます。(報道は5月3日の毎日新聞)
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ダニが媒介する感染症は、日本紅斑熱の他にも、恙虫(ツツガムシ)病や、ライム病などもあります。虫刺されに加えて、発熱、倦怠感などが出現したときは、迷わずに医療機関を受診するようにしましょう。
(谷口恭)
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|2013年8月2日 金曜日
8/2 メンソール系のタバコが規制される可能性
2013年7月23日、FDA(米国食品医薬品局)は、メンソール系のタバコは非メンソール系のタバコに比べて依存性が高いことを報告し、将来的には販売中止も視野に入れた規制をおこなうことを検討すると発表しました(注1)。
FDAによれば、ミントの香りのするメンソール系のタバコには爽快感・清涼感があり、非メンソール系のタバコに比べるとタバコの不快感が減少するそうです。そして、非メンソール系のタバコに比べて、依存性がより強くなることを指摘しています。
FDAによれば、現在米国では死因の約5分の1がタバコによるもので、全喫煙者の3分の1に相当する2,000万人以上がメンソール系のタバコを吸っているそうです。若者だけに限れば4割以上がメンソール系だそうです。人種別のデータでは、アフリカ系の喫煙者の85.6%、他の人種では、ヒスパニック系37.7%、アジア系33.3%、白人26.9%がメンソール系のタバコを吸っているそうです。
FDAは、今後意見募集をおこない、将来的には販売の規制を検討するようです。
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以前別のところ(下記コラム参照)で述べましたが、私自身はおよそ20年間メンソール系のタバコの愛好家でした。周囲が次々と禁煙に成功していくなかで、私は何十回と禁煙失敗を繰り返し自己嫌悪に陥るほどでした。そんななか、メンソール系のタバコは禁煙しにくいという論文をみつけ(下記コラムの注釈で紹介しています)、長年の自分の経験と合致していることを実感しました。
おそらくメンソール系のタバコが非メンソール系のものより依存性が高いことはこれから次々と実証されていくでしょう。依存性が高いのであれば、現在FDAが検討しているように規制(もしくは販売中止)を検討すべきです。(ちなみに、私は、禁煙して5年以上が経過しますが、今でもメンソール系タバコの”さわやかな夏”を連想させるあの<清涼感>がときどき脳内によみがえり無性に吸いたくなることがあります)
しかし、私を含めてメンソール系の元愛煙者で禁煙に成功している人もいくらでもいます。もしもあなたがメンソール系に依存しているなら、時間がかかったとしても必ず断ち切れますから諦めないで禁煙に取り組みましょう。
(谷口恭)
注1:FDAのニュースリリースのタイトルは「FDA invites public input on menthol in cigarettes」で、下記のURLで読むことができます。
http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm361966.htm
参考:はやりの病気
第66回(2009年2月)「メンソールの幻想と私の禁煙」
第32回(2006年5月)「そろそろ本格的な禁煙を!① 」
第33回(2006年6月)「そろそろ本格的な禁煙を!② 」
第34回(2006年6月)「そろそろ本格的な禁煙を!③(最終回)」
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|2013年7月31日 水曜日
2013年7月31日 ω3系脂肪酸で前立腺ガンのリスクが4割上昇
EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)を代表とするω3系の脂肪酸は大変身体によく、特に心筋梗塞などの心疾患のリスクを減らす、ということは随分前から指摘されています。ω3系脂肪酸は魚油に豊富に含まれており、魚をよく食べる地中海沿岸諸国で心疾患が少ないことはよく知られています。
そこで、EPAやDHAを食事だけでなく薬やサプリメントとして摂取しようと考える人も多く、この傾向は国内市場でも加速しています。この詳細については2013年3月のメディカルエッセイ「不飽和脂肪酸をめぐる混乱」で述べました。
しかし、ω3系の脂肪酸を取っていればそれで充分なのか、と言えばそういうわけではなく、最近は否定的な研究、つまり積極的にサプリメントなどからこれらを摂取しても心疾患が減るわけではない、とする研究もでてきています。これについても上記コラムで紹介しています。そして、そのコラムで、「ただし、サプリメントなどからではなく、食事から積極的にω3系脂肪酸を摂取することは推奨されるべき」、と述べました。
私がこのコラムを書いたとき、ω3系脂肪酸の有害性についての報告はほとんど見たことがありませんでした。しかし、最近、有害性についての報告が、それもガンのリスクを大幅に上昇させるという報告がありました。
ω3系脂肪酸の濃度が高い男性では前立腺ガンの発症リスクが43%も高い。さらに悪性度の高い前立腺癌を発症するリスクは71%も高い・・・
医学誌『Journal of National Cancer Institute』2013年7月10日号(オンライン版)に掲載された論文(注1)にこのようなことが述べられています。
この研究は、米国オハイオ州のオハイオ州立大学総合ガンセンター(Ohio State University Comprehensive Cancer Center)のTheodore M. Brasky氏らによっておこなわれています。ある調査に参加した35,000人以上の男性のなかから前立腺ガンの診断がついている834人と無作為に抽出した1,393人の血中のω3系脂肪酸の濃度が調べられています。
その結果、先に述べたように、ω3系脂肪酸の濃度が高ければ前立腺ガンのリスクが4割以上も上昇し、しかも悪性度の高いタイプのガンでよりリスクが上がるという、衝撃的な結論が導かれたのです。
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過剰な期待は禁物であるとしても、これまでω3系脂肪酸が健康上のリスクになるとは考えられていませんでした。しかも、興味深いことに、この研究では血中のω3系脂肪酸を測定していますから、それがサプリメントで摂取されたのか食品から摂取されたのかの区別がつきません。
これがサプリメント摂取群にのみ発ガンリスクが上昇した、という結果なら受け止めやすいのですが、食品から摂ってもリスクが上昇するというのなら、将来的には「今後我々は何を食べるべきか」について見直しが必要になるかもしれません。
しかし現時点では、なぜω3系脂肪酸摂取で前立腺ガンのリスクが上がるのかを説明する理論はなく、この研究結果が普遍的なものであると結論づけることはできません。もしもこの説が正しいなら、魚類をよく食べる地中海沿岸諸国や、日本でも前立腺ガンが多くなければなりません。しかし、少なくとも日本で言えば、前立腺ガンはそれほど多くなく、最近になって増えてきているのは、むしろ伝統的な魚料理ではなく肉をよく食べるようになったからではないかと言われているほどです。
今回の研究結果を受けて魚を食べない、などとは考えるべきでなく、これまで通りバランスのとれた食事を心がけるべきでしょう。
(谷口恭)
注1 この論文のタイトルは、「Plasma Phospholipid Fatty Acids and Prostate Cancer Risk in the SELECT Trial」で、下記のURLで概要を読むことができます。
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|2013年7月30日 火曜日
2008年5月22日(木) 乳癌の家系は前立腺癌のリスク
乳癌の多い家系に生まれた男性は、前立腺癌の発症リスクが高い・・・
オーストラリアなどの研究チームがこのような発表をおこないました。(報道は5月20日の共同通信)
家族性乳癌には「BRCA2」という遺伝子の変異が関与していることはこれまでも分かっていましたが、この「BRCA2」の変異が前立腺癌のリスクであることが新たに分かり、乳癌と前立腺癌の関連が明らかになったというわけです。
研究チームは、「乳癌の多い家系に生まれた男性は前立腺癌の検査をすべき。BRCA2遺伝子変異による乳癌を克服した女性は、兄弟や息子に注意を呼び掛けてほしい」と述べています。
********
すべての乳癌が「BRCA2」の変異によるわけではありませんが、乳癌家系の男性は前立腺癌の検査を受けてみるのがいいかもしれません。
前立腺癌は簡単な血液検査で分かる場合があります。
「癌が血液検査で発見できる」と考えている人がいますが、実際には血液検査(腫瘍マーカー)で癌が早期発見できるわけではありません。人間ドックなどで、健康な人が腫瘍マーカーを調べることがあるようですが、これはあまりおすすめできません。
ただ、前立腺癌は例外的に腫瘍マーカーの測定が有効な場合があります。
尚、乳癌の早期発見には、年に一度程度のマンモグラフィー、もしくは乳腺のエコーが有効です。(すてらめいとクリニックではこれらの検査をおこなっておらず、希望者には然るべき医療機関を紹介しています)
(谷口恭)
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|2013年7月30日 火曜日
2008年5月22日(木) またもやHIV感染者が過去最多
厚生労働省のエイズ動向委員会は5月20日、2007年の新規HIV感染者が1,082人、新規エイズ患者(HIV感染がわかった時点でエイズを発症していた人)が418人で、ともに年間過去最多を更新したことを発表しました。
感染者と患者の合計は1,500人になり、前年比142人の増加となります。2月発表の速報値では1,448人でしたから、これより52人が増えたことになります。
1日当たりの発生数は4.1人で、初めて4人台になっています。
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すてらめいとクリニックでもHIV感染が新たに判ることはそう珍しくありませんし、HIV陽性でごく普通に日常生活をしている人が、「風邪を引いた」、「湿疹がでた」、などの理由で受診されることも少なくありません。
初診の患者さんに、「これまでに何か病気をしたことがありますか」と質問して、「私はHIV陽性です」と答える方が”普通に”おられます。
まったく珍しくなくなったHIV・・・。気になる方は早めに受診しましょう。
(谷口恭)
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|2013年7月30日 火曜日
2008年5月22日(木) 妊娠時のストレスが子供のアレルギーに
強いストレスにさらされた妊婦の子供は、ぜんそくなどのアレルギー症状を起こしやすくなる・・・
これは、最近カナダで開催された米国胸部学会で、米国ハーバード大学の研究チームが発表した報告です。(報道は5月20日の日経新聞)
妊娠中のストレスが胎児に悪影響を与えることは、これまでも動物実験では指摘されていましたが、人間でも同様のことが検証されたのは初めてのことです。
研究チームは、新生児387人を対象に、へその緒に含まれるアレルギーの原因抗体のレベルを分析しています。同時に、妊娠中の母親のストレスの強さや、家庭でダニなどのアレルゲンに接している度合いを調査しています。
その結果、強いストレスにさらされた母親は、アレルゲンが少ない環境でも、子供の抗体レベルが高くなる傾向にあることが判りました。
研究者のひとりは、次のようにコメントしています。
「ストレスは免疫システムにアレルゲンと同様の影響を及ぼす”社会的汚染物質”だ」
**********
ストレス=”社会的汚染物質”。たしかにそうでしょう。
けれども、ストレスを減らすことはそんなに簡単ではありません。誰もストレスを貯めたいと思って貯めているわけではないのです。
現実的な観点から言えるのは、「周囲が妊婦のストレスに気づかなければならない」ということだと思います。
(谷口恭)
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|2013年7月30日 火曜日
2008年5月22日(木) 後期高齢者が人口の1割
10人に1人が後期高齢者(75歳以上)・・・。
今月決定された2008年版の高齢社会白書で述べられています。
2007年10月の時点で、後期高齢者は1,270万人となり、総人口に占める割合は9.9%にものぼっています。(前年比0.4ポイントの上昇)
また、白書の試算では2055年には後期高齢者が26.5%に達するとされています。
高齢化率(人口に占める65歳以上の割合)をみると、現在の21.5%から2055年には40.5%まで上昇すると試算されています。
これは、「世界のどの国も経験したことのない高齢社会」であり、65歳以上の高齢者を支える現役世代(15歳から64歳)は、2005年では3.3人ですが、2055年には1.3人となります。
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高齢者の方に働き続けてもらうことも大切でしょうが、それ以前に若い世代がもっと働かなくてはならなくなるでしょう。「ニート」や「引きこもり」などと言っている場合ではない時代に入りつつあるように思えます・・・。
(谷口恭)
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|2013年7月30日 火曜日
2008年5月26日(月) 過労自殺は過去最悪、精神疾患は3割増
2007年度に過労や職場のストレスが原因でうつ病などの精神疾患にかかり自殺(未遂を含む)した人が前年度を15人上回る81人にのぼり、2年連続で過去最悪になっていることが厚生労働省の調査で明らかとなりました。(報道は5月24日の日経新聞)
また、自殺を含む精神疾患の認定者は268人で、これは前年比3割増しです。
申請数をみてみると、2007年度の精神疾患の労災申請は前年度比16.2%増の952人となっています。一方、脳・心臓疾患の申請は前年比0.7%減の931人で、調査開始以来、初めて過労による精神疾患の申請が、脳・心臓疾患を上回ったことになります。
精神疾患の労災認定者を年齢別にみると、30代が100人でトップです。以下、20代が66人、40代が61人と続きます。
業種別では、「製造業」が59人で最多となっています。また、職種は医師やエンジニアなど「専門的・技術的職業従事者」が精神疾患にかかるケースが目立っています。
認定された人のなかで、1ヶ月の平均残業時間が80時間以上だった人が111人です。一方、20時間未満も72人いましたが、厚生労働省は、「長時間労働だけでなく職場のいじめや過剰なノルマなどで精神疾患になるケースも出ている」と指摘しています。
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すてらめいとクリニックを受診する「職場のストレスが原因で元気がない人」も、男性の場合は30代が多いといえます。(女性は20代に多いような印象があります)
こういうケースはときに周囲の理解に乏しいことがあります。「最近、何かおかしい・・・」と感じるようなことがあれば、医療機関の受診を考えてみてもいいかもしれません。
(谷口恭)
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|2013年7月30日 火曜日
2008年5月26日(月) 禁煙薬で意識消失!
日本では「チャンピックス」という名称で販売されている禁煙補助薬の服用後に、視覚障害やけいれん、意識消失といった副作用が、米国で相次いで報告されていることがわかりました。
これを発表したのは米国の民間団体「安全な薬物治療のための研究所」で、発表は5月21日におこなわれています。(報道は5月22日の共同通信)
同団体はFDAに報告された副作用情報を分析し、意識消失・障害による事故や転倒が173件、視覚障害が148件、深刻なけいれんが86件など、全部で1000件以上あったことを公表しました。
この報告を受けて、米国連邦航空局(FAA)は、「航空機の操縦士にはこの薬の使用を禁止する」との発表をおこなっています。
チャンピックスは日本では今月に発売になったばかりです。
**************
すてらめいとクリニックでも、今月からチャンピックスの取り扱いを開始していましたが、実際にはまだ一例も処方していません。(チャンピックスを希望する患者さんも何名かいましたが、まずは歴史のあるニコチンパッチの方から開始してもらっています)
通常、薬を処方するときには重大な副作用について説明をおこないますが、今後チャンピックスを希望される方には、このニュースについても話すようにする予定です。
(谷口恭)
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|2013年7月30日 火曜日
2008年6月1日(日) タバコと酒のコンビネーションが肺がんのリスク
日本酒換算で1日2合以上飲む喫煙者は、時々たしなむ程度の喫煙者に比べ、肺がんを発症するリスクが1.7倍も高い。しかし、非喫煙者では飲酒と肺がんの関連性はない・・・
これは、5月30日に厚生労働省が発表した報告です。(報道は5月30日の毎日新聞)
研究班は、岩手県など10府県に住む40~69歳の健康な男性約46,000人を対象に調査しています。飲酒量を、①ほとんど飲まない、②時々(月に1-3回)、③日本酒で1日1合未満、④1日1-2合、⑤1日2-3合、⑥1日3合以上、の6グループに分類し、2004年までの約14年間追跡しています。
その結果、喫煙者では、⑤の1日2-3合飲むグループと、⑥の3合以上のグループは、②の時々のグループに比べ、肺がん発生率がともに1.7倍高いことが分かりました。
この理由について、研究班は、アルコール分解酵素がたばこの煙に含まれる発がん物質の働きを活発化することなどが原因と考えているようです。
この研究でもうひとつ興味深いのが、①の飲まないグループも、②の時々のグループに比べて肺がん発生率が1.6倍高いという結果がでていることです。これについて、研究班は、「(①の人たちは)もともと肺がんリスクが高く、飲めなくなっていた人が含まれていた」とみているようです。
*********
尚、日本酒1合は、ビールなら大瓶1本、ワインならグラス2杯に相当します。
タバコを吸う人は、酒の量を減らすのではなく、禁煙を試みるべきでしょう。
(谷口恭)
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