医療ニュース

2025年12月14日 胃薬PPIは高血圧のリスクにもなる

 他の医師からは絶賛され、極めて多くの人が内服していて、しかも効果を実感しているのだけれど、私が以前から危険性を主張しているのがいわゆる「PPI」(=プロトンポンプインヒビター)と呼ばれる胃薬です。本サイトではこれまでも、PPIが認知症、脳梗塞、骨粗しょう症、糖尿病、腸炎、新型コロナウイルスなどのリスクになるとする研究について紹介してきました。今回は、そのPPIが高血圧のリスクにもなるという論文を紹介します。

 論文は医学誌「BMJ Open」2025年11月27日号に掲載された「PPIと高血圧の関連性:VigiBaseを用いた記述的および不均衡性解析(Association between exposure to proton pump inhibitors and hypertension: a descriptive and disproportionality analysis of VigiBase)」です。

 結論は「ランソプラゾール以外のPPIは高血圧を発症するリスクがあり、服薬量が多ければ多いほどリスクが高い」となります。研究の方法はデータベースの解析です。論文著者らはWHOの薬物関連のデータベース「VigiBase」を用いてPPI使用と高血圧の関連性を調べました。具体的な数値は以下の通りです。

・PPIが原因となったと考えられる高血圧は26,587人

・オメプラゾール、エソメプラゾール、ラベプラゾール、pantoprazole(日本未発売)、dexlansoprazole(日本未発売)は高血圧のリスクとなっていた

・ランソプラゾールのみは高血圧との関連がなかった

・PPIの薬剤服用量が多いほど、また服薬期間が長いほど高血圧のリスクが上昇していた

・ただし、これらは統計学的有意性は認められなかった

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 過去に繰り返し述べているように、他院から当院にうつってくる患者さんでPPIを内服している人にこういったリスクの説明をした上で他の胃薬に変更してもらうことがあります。ほとんどの場合、その変更した薬で胃症状のコントロールができています。一部には再びPPIに戻さざるを得ない事例もありますが少数です。

医療ニュース
2020年10月31日 胃薬PPIは糖尿病のリスクにもなる
2020年8月6日 胃薬PPIは新型コロナのリスクになる
2019年12月28日 やはり胃薬PPIは認知症のリスクを増やすのか
2017年1月25日 胃薬PPIは細菌性腸炎のリスクも上げる
2016年8月29日 胃薬PPIが血管の老化を早める可能性
2016年12月8日 胃薬PPI大量使用は脳梗塞のリスク
2018年4月6日 胃薬PPIは短期使用でも骨粗しょう症のリスクに
2017年4月28日 胃薬PPIは認知症患者の肺炎のリスク
2017年1月23日 胃薬PPIは精子の数を減らす
2017年11月15日 ピロリ菌除菌後の胃薬PPI使用で胃がんリスク上昇

はやりの病気
第151回(2016年3月) 認知症のリスクになると言われる3種の薬

 

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