医療ニュース
2015年4月3日 ようやく日本も麻疹(はしか)排除認定
長い間「麻疹(はしか)の輸出国」と揶揄されていた我が国も、ようやくWHO(世界保健機関)から排除の認定を受けました。WHOが2015年3月27日に正式に発表しています(注1)。厚生労働省はこれを受け、同日に国内に発表しました(注2)。
WHOの発表によると、今回アジアで麻疹排除を認定されたのは、日本、ブルネイ、カンボジアの三国で、いずれの国でもワクチン接種が適切に実施されたことが排除に至った理由であるということが述べられています。
厚労省の発表では、日本由来の麻疹ウイルスは2010年5月を最後に、それ以降は検出されていないそうです。それ以降に発症した例はすべて海外から日本に持ち込まれたケースだったようです。
*****************
ちなみに韓国ではすでに2006年に排除認定を受けています。その翌年の2007年に日本で流行し、アメリカやカナダに日本人が持ち込んだ例が立て続けに報告され、「日本は大丈夫なのか・・・」と世界中から心配されましたが、ようやく日本も感染症後進国から少し抜けられそうになってきました。
豊かなブルネイはともかく、カンボジアに行ったことのある人なら、カンボジアの医療レベルと日本が同じ、とされるのに違和感を覚えることでしょう。もちろん、医療全体でみたときには日本とカンボジアが同レベルというわけではありません。しかし、感染症、とりわけ感染症の(治療ではなく)予防に関していえば、同じレベルと言わざるを得ません。
では、日本の麻疹対策はこれで充分かと言えばそういうわけではありません。日本人の成人の麻疹抗体を測定すると陰性の人が少なくない、というか太融寺町谷口医院の例でいえば、20代後半から30代でみれば抗体ができている人の方が少数派なのです。ということは、日本にやってきた外国人(たとえば中国やフィリピンではまだ排除が認定されていません)が日本で蔓延させる、という可能性は充分にあります。
以前も述べましたが、日本では「麻疹にかかったようなもの」という慣用句があり、これは麻疹が単なる風邪のような一過性の軽い疾患のような意味で使われています。しかし麻疹は実際には死亡例もありますし、重篤な後遺症を残す脳炎につながることもあります。
まだワクチンを接種していない人、抗体形成の確認をしていない人は早めに確認しておいた方がいいでしょう。
注1:WHOのこの発表は下記URLで読むことができます。
http://www.wpro.who.int/mediacentre/releases/2015/20150327/en/
注2:厚生労働省のこの発表は下記URLで読むことができます。
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10906000-Kenkoukyoku-Kekkakukansenshouka/img-327100220.pdf
参考:
トップページ:「風疹・麻疹(はしか)」
医療ニュース2014年3月3日「麻疹(はしか)が増加中」
はやりの病気
第46回(2007年6月)「はしかの予防接種率はなぜ低いのか」
第119回(2013年7月)「VPDを再考する」
最近のブログ記事
- 2024年11月22日 アメリカンフットボール経験者の3分の1以上がCTEを自覚、そして自殺
- 2024年11月17日 「座りっぱなし」をやめて立ってもメリットはわずか
- 2024年10月24日 ピロリ菌は酒さだけでなくざ瘡(ニキビ)の原因かも
- 2024年10月11日 幼少期に「貧しい地域に住む」か「引っ越し」がうつ病のリスク
- 2024年9月19日 忍耐力が強い人は長生きする
- 2024年9月8日 糖質摂取で認知症のリスクが増加
- 2024年8月29日 エムポックスよりも東部ウマ脳炎に警戒を
- 2024年8月4日 いびきをかけば認知症のリスクが低下?
- 2024年7月15日 感謝の気持ちで死亡リスク低下
- 2024年6月30日 マルチビタミンで死亡率上昇?
月別アーカイブ
- 2024年11月 (2)
- 2024年10月 (2)
- 2024年9月 (4)
- 2024年8月 (1)
- 2024年6月 (2)
- 2024年5月 (2)
- 2024年4月 (2)
- 2024年3月 (2)
- 2024年2月 (3)
- 2024年1月 (1)
- 2023年12月 (2)
- 2023年11月 (2)
- 2023年10月 (2)
- 2023年9月 (2)
- 2023年8月 (1)
- 2023年7月 (3)
- 2023年6月 (2)
- 2023年5月 (2)
- 2023年4月 (2)
- 2023年3月 (2)
- 2023年2月 (2)
- 2023年1月 (2)
- 2022年12月 (2)
- 2022年11月 (2)
- 2022年10月 (2)
- 2022年9月 (2)
- 2022年8月 (2)
- 2022年7月 (2)
- 2022年6月 (2)
- 2022年5月 (2)
- 2022年4月 (2)
- 2022年3月 (2)
- 2022年2月 (2)
- 2022年1月 (2)
- 2021年12月 (2)
- 2021年11月 (2)
- 2021年10月 (2)
- 2021年9月 (2)
- 2021年8月 (2)
- 2021年7月 (2)
- 2021年6月 (2)
- 2021年5月 (2)
- 2021年4月 (4)
- 2021年3月 (2)
- 2021年1月 (2)
- 2020年12月 (3)
- 2020年11月 (3)
- 2020年9月 (2)
- 2020年8月 (2)
- 2020年7月 (1)
- 2020年1月 (2)
- 2019年12月 (2)
- 2019年11月 (2)
- 2019年10月 (2)
- 2019年9月 (2)
- 2019年8月 (2)
- 2019年7月 (2)
- 2019年6月 (2)
- 2019年5月 (2)
- 2019年4月 (2)
- 2019年3月 (2)
- 2019年2月 (2)
- 2019年1月 (2)
- 2018年12月 (2)
- 2018年11月 (2)
- 2018年10月 (1)
- 2018年9月 (2)
- 2018年8月 (1)
- 2018年7月 (2)
- 2018年6月 (2)
- 2018年5月 (4)
- 2018年4月 (3)
- 2018年3月 (4)
- 2018年2月 (5)
- 2018年1月 (3)
- 2017年12月 (2)
- 2017年11月 (2)
- 2017年10月 (4)
- 2017年9月 (4)
- 2017年8月 (4)
- 2017年7月 (4)
- 2017年6月 (4)
- 2017年5月 (4)
- 2017年4月 (4)
- 2017年3月 (4)
- 2017年2月 (1)
- 2017年1月 (4)
- 2016年12月 (4)
- 2016年11月 (5)
- 2016年10月 (3)
- 2016年9月 (5)
- 2016年8月 (3)
- 2016年7月 (4)
- 2016年6月 (4)
- 2016年5月 (4)
- 2016年4月 (4)
- 2016年3月 (5)
- 2016年2月 (3)
- 2016年1月 (4)
- 2015年12月 (4)
- 2015年11月 (4)
- 2015年10月 (4)
- 2015年9月 (4)
- 2015年8月 (4)
- 2015年7月 (4)
- 2015年6月 (4)
- 2015年5月 (4)
- 2015年4月 (4)
- 2015年3月 (4)
- 2015年2月 (4)
- 2015年1月 (4)
- 2014年12月 (4)
- 2014年11月 (4)
- 2014年10月 (4)
- 2014年9月 (4)
- 2014年8月 (4)
- 2014年7月 (4)
- 2014年6月 (4)
- 2014年5月 (4)
- 2014年4月 (4)
- 2014年3月 (4)
- 2014年2月 (4)
- 2014年1月 (4)
- 2013年12月 (3)
- 2013年11月 (4)
- 2013年10月 (4)
- 2013年9月 (4)
- 2013年8月 (172)
- 2013年7月 (408)
- 2013年6月 (84)