医療ニュース
2011年11月6日(日) 毎晩眠れない人は自殺リスクが4倍以上
不眠と自殺の関連が指摘されることがしばしばありますが(下記医療ニュースも参照ください)、これを裏付ける研究がノルウェーでおこなわれ、医学誌『SLEEP』2011年10月1日号に掲載されました(注)。
この研究はノルウェー科学技術大学(Norwegian University of Science and
Technology)によるものです。対象者は同国ヌール・トロンデラーグ(Nord-Trondelag)県在住の、1984年から1986年の時点で20歳以上であった約74,977人で、2004年12月31日までの約20年間にわたり追跡調査がおこなわれています。
対象者の調査開始時の平均年齢は49.6歳、うち男性は49%です。過去1ヶ月の不眠状況により4つのグループに分類されており、「毎晩(every night)」3%、「しばしば(often)」5%、「ときどき(sometimes)」31%、「なし」61%、となっています。
約20年間の追跡調査の結果、自殺者は合計188人で、「毎晩」不眠のある人は、不眠がまったくない人に比べると、自殺のリスクが4.3倍にもなることが判ったそうです。「しばしば」不眠のある人は2.7倍、「時々」不眠のある人は1.6倍となっており、不眠の程度が深刻になればなるほど、自殺のリスクが上昇しています。
睡眠薬については、自殺者の58%(109人)が服用しておらず、服用していたのは24%(46人)のみだったそうです。(残りの18%(33人)はデータが得られなかったそうです)
研究者は、今回の研究で導きだされた不眠と自殺の関連は50歳未満で顕著であったことを指摘しています。「高齢者の不眠症状は加齢によるものが多く日常生活に影響を与えないことが多いが、若年者では精神疾患の可能性がある」とコメントしています。
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不眠と自殺の関係は従来から指摘されてきたことですから、納得しやすい研究結果でしょう。この研究が重要な意味をもつのは、不眠があって自殺をした人のなかできちんと治療を受けていた(投薬を受けていた)人がわずか24%しかいなかった、ということです。
研究者が述べているように、若年者の不眠は自殺のリスクが高く放置すべきでない、ということを認識する必要があるでしょう。
尚、ノルウェーを含め「北欧は自殺者が多い」と考えている人がいますが、それは昔の話であり、現在はそれほど高いわけではないことを付記しておきたいと思います。2009年のデータではノルウェーの人口10万人あたりの自殺者数は11.9人(WHOのデータより)で、これは日本の半分以下です。
(谷口恭)
注:この論文のタイトルは「Sleeping Problems and Suicide in 75,000 Norwegian Adults:
A 20 Year Follow-up of the HUNT I Study」で、下記のURLで概要を読むことができます。
http://www.journalsleep.org/ViewAbstract.aspx?pid=28246
参考:
はやりの病気2010年10月号 「新しい睡眠薬の登場」
医療ニュース
2010年4月2日 「睡眠障害の自殺リスクは28倍」
2010年9月14日 「男性の睡眠不足は短命に・・・」
2008年6月30日 「睡眠不足はダイエットの強敵!」
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