医療ニュース

2010年11月4日(木) 50代の大量喫煙はアルツハイマーのリスク

 50~60歳までに1日2箱以上の喫煙をしていた人では非喫煙者に比べ、アルツハイマー病など認知症のリスクが2倍以上に上昇する・・・

 これは医学誌『Archives of Internal Medicine』2010年10月25日号に掲載された論文(注)で発表されたデータです。

 この研究は、フィンランドのクオピオ大学病院(Kuopio University Hospital)によりおこなわれ、対象者は、米カリフォルニア北部の医療プログラム会員で、1978~85年の調査に参加した21,123人です。参加当時の年齢は50~60歳です。

 追跡調査の結果、対象者の平均年齢が71.6歳に達した時点で、全体の25.4%に当たる5,367例が認知症と診断されています。5,367例中アルツハイマー病は1,136例、脳血管性の認知症は416例だったそうです。

 これらを喫煙の量で分析した結果、1日に2箱以上喫煙した場合、認知症になるリスクは2倍以上になっていたことがわかったそうです。尚、以前喫煙して現在は吸っていない人や、1日半箱以下の喫煙では、リスクの上昇は認められなかったそうです。

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 私が医学生の頃は、「タバコはアルツハイマーを予防するのではないか」と言われていました。ニコチン性アセチルコリン受容体がニコチン摂取で活性化しドパミン神経系に作用するから、というのがその理屈だったと思いますが、おそらく今ではこのようなことを主張する人はほとんどいないでしょう。

 タバコは、脳血管系疾患、循環器疾患、呼吸器系疾患、各種ガン、などだけでなく神経系にも悪影響を与えることを裏付けた研究だと言えるでしょう。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Heavy Smoking in Midlife and Long-term Risk of Alzheimer Disease and Vascular Dementia」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://archinte.ama-assn.org/cgi/content/abstract/archinternmed.2010.393v1?maxtoshow=&hits=10&RESULTFORMAT=&fulltext=Minna+Rusanen&searchid=1&FIRSTINDEX=0&resourcetype=HWCI

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