医療ニュース

2021年10月24日 日曜日

2021年10月24日 離乳食「スプーンフルワン」は安全か

 数か月前から、乳児の保護者の方たちから繰り返し受けている質問があります。それは「スプーンフルワンで食物アレルギーが予防できるのか」というものです。

 まずは離乳食として販売されているこの製品について概要をみてみましょう。

・スイス拠点の世界最大の食品会社ネスレ(Nestle)が開発し世界中で販売している

・食物アレルギーのアレルゲン(原因食品)となりうる16種(鶏卵、牛乳、小麦、ピーナッツ、くるみ、ピーカン、アーモンド、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、ピスタチオ、ゴマ、大豆、エビ、鱈、鮭、オーツ麦) を含む離乳食

・英語のウェブサイトには、「食物アレルギーの予防になる」という内容の記載があり、小児科医が「昔の考えは間違っていた」「アレルゲンになりうる食品は早く摂取開始すべきだ」といったコメントをしている

・日本のウェブサイトにそのような「効用」を謳った記載はない

 英語のサイトでは「食物アレルギーの予防になる」とされている一方で、日本のサイトでは触れられていません。では、スプーンフルワンは食物アレルギーの予防になるのでしょうか。

 英語のサイトに書かれているように、以前は「アレルゲンとなる可能性のあるものはできるだけ摂取を遅らせる方がいい」と考えられていました。ところが、現在はこの考えが否定されており、英語のサイトに登場している白人の小児科医が言っているように「早く食べる方がアレルギーになりにくい」のは事実です。これについては、2015年の医療ニュース「ピーナッツアレルギー予防のコンセンサス」で紹介しました。

 ですから、英語のサイトが言っていることは間違いではありません。

 ところが、2021年10月11日、日本アレルギー学会は、日本小児アレルギー学会、日本小児臨床アレルギー学会、日本外来小児科学会、食物アレルギー研究会の各団体と連名で「乳幼児用のミックス離乳食(Spoonfulone スプーンフルワン)に関する注意喚起」を発表し、「スプーンフルワンの日本語のサイトには食物アレルギー予防の記載がない」ことを強調しています。

 この理由は主に2つあります。1つは、「スプーンフルワンを摂取することにより、含まれている16種のアレルギーを発症させる可能性がある」ということ、もう1つは、「スプーンフルワンを摂取できるかどうかを事前に知る方法がない」ということです。

 では、結局のところ、スプーンフルワンは食物アレルギーの予防に有効なのでしょうか。

 この答えは「そのお子さんによる」としか言いようがありません。食物アレルギーの予防として推薦できることも多いのですが、アトピー性皮膚炎を含む湿疹がある場合、気管支喘息がある場合、すでに食物アレルギーの疑いがある場合などは控えた方がいい場合もあります。そして、やっかいなのは血液検査などで簡単に摂取可能かどうかが分かるわけではない、ということです。

 このあたりに食物アレルギーの難しさがあります。

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

2021年10月3日 日曜日

2021年10月3日 新型コロナのChoosing Wisely

 以前から太融寺町谷口医院では繰り返しその重要性を訴えているChoosing Wisely。一言で言えば「ムダな医療」をなくそう、ということで、新型コロナウイルス(以下、単に「コロナ」)に関しても考えていかねばなりません。

 医学誌「nature medicine」2021年7月5日号に「コロナのChoosing Wisely:患者と医師の10のエビデンスに基づいた推奨 (Choosing Wisely for COVID-19: ten evidence-based recommendations for patients and physicians)」というタイトルの論文が掲載されました。この論文で、コロナのChoosing Wisely10か条が発表されました。最初の5か条は一般市民向け、後半の5か条は医師向けのものです。

<一般市民向け>
#1 公共の場では常に顔面にフィットしたマスクを適切に着用する

#2  屋内での混雑は避ける

#3 コロナを疑う症状があれば検査を受け、症状が軽度でも自己隔離をする

#4  呼吸困難や酸素飽和度が92%以下になった場合は医療機関を受診する

#5  順番が来ればできるだけ早くワクチンを受ける。過去にコロナにかかっていても受ける。

<医師向け>

#6  効果のない(あるいは効果があることが実証されていない)薬を使わない。具体的には、ファビピラビル(アビガン)、イベルメクチン(抗寄生虫薬)、アジスロマイシン(ジスロマック)、ドキシサイクリン(ビブラマイシン)、オセルタミビル(タミフル)、ロピナビル・リトナビル(抗HIV薬)、ヒドロキシクロロキン(抗マラリア薬)、イトリズマブ(日本未発売の乾癬治療薬)、ベバシズマブ(アバスチン)、インターフェロン-α2b、フルボキサミン(抗うつ薬)、回復者の血漿、ハーブ製剤などは使うべきでない

#7 レムデシビルやトシリズマブ(アクテムラ)を使用するときは適用を見極める

#8  ステロイド薬は低酸素血症がある場合にのみ慎重に使用する。使用時には血糖値をモニタし、正常範囲を維持する

#9 治療方針を決定する目的以外でCTの撮影や血液検査をルーチンで行わない

#10 コロナ流行中にもコロナ以外の重症な疾患を見過ごさない

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 当然といえば当然のことばかりです。無駄な検査や治療はいつも控えることを考えねばなりません。

 ワクチンが普及した今、「スパイク蛋白の抗体(S抗体)の検査をむやみやたらにおこなわない」という一文を入れたいと個人的には思っています。

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

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