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2013年7月15日 月曜日

2010年5月21日(金) 飲酒によりリンパ系腫瘍のリスクが低減

 酒は百薬の長。そう言われる割には、アルコールに関する報告は有害とするものが圧倒的に多いように感じます。しかし、アルコールによって病気のリスクが、それも悪性腫瘍のリスクが低下するという研究結果が発表されました。

 厚生労働省の研究班は、5月10日、「飲酒によってリンパ系腫瘍のリスクが低くなる可能性が示された」と発表しました。

 この研究は、1990年と1993年に岩手県二戸、秋田県横手、茨城県水戸、新潟県柏崎、長野県佐久、大阪府吹田、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県中部・宮古の10保健所管内に住んでいた40~69歳の男女約96,000人を、2006年まで追跡調査し、飲酒と悪性リンパ腫(以下ML)及び形質細胞性骨髄腫(以下PCM)の発生率との関係を調べています。平均追跡期間13.6年の間に、 MLが257人、PCMが89人確認されています。

 調査開始時のアンケートをもとに、お酒を「飲まない(月に1回未満)」、「時々飲む(月に1~3回)」、「毎週飲む(週あたりのエタノール換算量1~149グラム)」「毎週飲む(同150~299グラム)」、「毎週飲む(同300グラム以上)」に分け、その後のMLとPCMの発生率を比較しています。(エタノール換算量については下記参照ください)

 MLとPCMを合わせたリンパ系腫瘍発生のリスクは「時々飲む」に比べると、「毎週飲む」のアルコール摂取量が多いグループで低くなっています。MLとPCMに分けた場合は、統計学的に有意ではないものの、どちらもリスクは、「時々飲む」と比べ、アルコール摂取量が多いグループで低下する傾向が認められています。

 お酒を飲むと、どうしてこれら悪性腫瘍のリスクが低下するのでしょうか。研究班は、飲酒によるリンパ腫抑制作用のメカニズムとして、「適度なアルコール摂取により免疫反応やインスリン感受性が改善されることなどが知られている」と説明しています。さらに、今回の研究では、「かなり摂取量が多いグループでリスクの低下が見られたので、それらとは別のメカニズムが働いているとも考えられる」としています。

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 エタノール換算量とは、例えば「週に300グラム」というのは、ビールなら大ビン14本(1日2本)、日本酒なら14合(1日2合)、ワインならグラスで28杯(1日4杯)となります。

 この調査結果が注目に値するのは、「飲酒の量が多いほど疾病のリスクが低下する」となっている点です。「適度な量」ではなく「飲酒の量が多いほど」なのです。大酒飲みには一見嬉しい結果にみえますが、他の多くの悪性腫瘍では、大量飲酒はリスクを高めると考えられていることは忘れないようにしましょう。

(谷口恭)

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2013年7月15日 月曜日

2010年5月24日(月) 捻挫は重症でなければ早期からの運動が有効

 脳梗塞で倒れたり、手術を受けたりした後には、いつまでも安静にしているのではなく、できるだけ早期にベッドから起き上がりリハビリをすべき、ということが近年盛んに言われるようになってきています。

 そして、早期の運動療法は捻挫の場合にも有効なようです。

 受傷直後から運動療法を行ったグループでは、「冷却・湿布・安静」を中心とする従来の治療に比べて機能回復が優れていた・・・

 これは英国Ulster大学のChris M. Bleakley氏らがおこなった研究結果です。詳細は、医学誌『British Medical Journal』2010年5月10日号に掲載されています。(下記参照)

 研究者は、救急外来もしくはスポーツ外傷クリニックを受診した16~65歳の比較的軽度の、足首に捻挫を負った患者101例を対象として、運動療法と従来の治療法(冷却・湿布・安静)の効果を比較検討しています。運動療法をおこなったグループは受傷1週目から運動を開始しています。

 その結果、治療開始から4週時点で足首の機能を評価すると、運動療法のグループで有意に優れていることが分かりました。また、運動療法のグループは、歩行時間、歩数、軽度活動時間のいずれにおいても、従来の治療法のグループよりも優れていたようです。

 一方、追跡期間中のどの時点においても、両グループ間で、安静時の痛みや腫れの程度に差は認められていません。

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 研究者によりますと、英国内では1日に5,000例の捻挫の新規患者が発生し、捻挫による救急外来の受診件数は30万2,000 件(年間)にのぼるそうです。捻挫で、会社や学校を休むことにより、経済損失が生じる可能性がありますし、また医療資源も使われます。もしも、従来は安静にしなければならなかった捻挫でも、会社や学校を休まなくてもよくなったとすれば、捻挫を負った患者さん自身も早く回復し、経済損失も防げるというわけです。

 しかし、実際には捻挫の重症度を的確に診断するのは必ずしも容易ではありませんし、患者さんによっては早期の回復を望む気持ちが強すぎて、ついつい無理な運動をしてしまう、というケースもあります。(特に、昔、激しい運動をしていたという人にこの傾向がみられます) 

 ですから、従来どおり安静を中心とする治療にするか、早期から運動をおこなう治療にするかというのは、主治医と相談してじっくりと検討すべきではないかと私は考えています。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Effect of accelerated rehabilitation on function after ankle sprain: randomised controlled trial」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://www.bmj.com/cgi/content/full/340/may10_1/c1964?maxtoshow=&hits=10&RESULTFORMAT=&fulltext=Effect+of+accelerated+rehabilitation&searchid=1&FIRSTINDEX=0&resourcetype=HWCIT
2010

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2013年7月14日 日曜日

2010年5月24日(月) 妊娠中の飲酒、子供の白血病のリスク上昇

 最近、飲酒が(それも大量の飲酒が!)血液系の悪性腫瘍のリスクを低減させる、という(意外な!)研究結果をお伝えしましたが(下記参照)、今度はまったく正反対の研究結果が発表されました。

 妊娠中の飲酒で、産まれてくる子供の白血病のリスクが上昇する・・・

 これは、仏パリ大学栄養疫学研究部のPaule Latino-Martel博士らが調査をおこない、医学誌『Cancer Epidemiology, Markers & Prevention』2010年5月号(オンライン版)に掲載された研究結果(下記参照)です。

 研究者らは、「妊娠中の女性のアルコール摂取と2種類の白血病(急性骨髄性白血病と急性リンパ芽球性白血病)との関連」を検討したこれまでに報告されている21件のデータを分析することによって調査をおこないました。

 8,000人以上の飲酒をするグループと、10,000人以上の飲酒をしないグループで比較した結果、子供が急性骨髄性白血病に罹患するリスクが56%も高まっていたことが判りました。妊娠してどれくらいの期間がたってからの飲酒でリスクが上昇するかについては一定の傾向はなかったそうですが、アルコールの摂取量が多ければ多いほどリスクは高くなるのは明らかなようです。一方、急性リンパ芽球性白血病では飲酒による差は認められなかったとのことです。

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 妊娠中の飲酒の危険性は以前から指摘されていたことです。

 胎児アルコール症候群という病名を聞いたことがあるでしょうか。これは妊娠中に母親が飲酒することにより、生まれてくる子供に成長障害、知的障害などみられることを言います。有効な治療はなく、「妊娠中の飲酒を控える」以外に予防方法はありません。

 今回の白血病のリスクが上昇するという研究結果も、広い意味では胎児アルコール症候群の1つの症状と言えなくもないでしょう。

 参考までに、どれくらいの妊婦が飲酒をしているかについて、この論文では、米国12%、フランス52%、ロシア60%、としています。日本のデータについては、厚生労働省の平成12年の報告書に18.1%とあります。(アメリカより日本の妊婦さんの方がよくお酒を飲むのですね・・・)

(谷口恭)

参考:医療ニュース2010年5月21日 「飲酒によりリンパ系腫瘍のリスクが低減」

注:上記論文のタイトルは、「Maternal Alcohol Consumption during Pregnancy and Risk of Childhood Leukemia: Systematic Review and Meta-analysis」で、下記のURLで概要を読むことができます。
 
http://cebp.aacrjournals.org/content/19/5/1238.abstract

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2013年7月14日 日曜日

2010年5月24日(月) 紅茶で大腸ガンのリスクが上昇?

 1日に4杯以上紅茶を飲めば、飲まない場合に比べて大腸ガン(結腸ガン)のリスクが1.28倍に上昇する・・・

 これは米国ハーバード大学公衆衛生学教室の研究者Xuehong Zhang氏らがまとめた研究結果で、医学誌『Journal of the National Cancer Institute』2010年5月7日号に掲載されています。(下記参照)

 研究では、北米と欧州で行われた13件の調査をもとに分析をおこなっています。対象者は合計731,441人(男性239,193人、女性492,248人)で、コーヒー、紅茶,加糖炭酸飲料の摂取と大腸ガン(結腸ガン)のリスクとの関係を検討しています。6~20年の追跡調査の結果、全体の大腸ガン発症数は5,604例です。

 分析の結果、コーヒーと加糖炭酸飲料では摂取とガンの間に関連性が認められなかったのに対し、紅茶4杯以上摂取したときにはガンのリスクが1.28倍になるという有意な結果がでています。

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 この論文では「tea」となっており、言葉だけみると紅茶か日本茶か分かりませんが、研究の対象者が欧米人のみですから、ここで言う「tea」は「紅茶」で間違いないと思います。

 一般に、紅茶には健康にいいとされているポリフェノールが多量に含まれていますから、この研究結果は大変意外です。実際、動物実験ではポリフェノールや紅茶によるガンの抑制効果が認められているものもあります。

 以前紹介しました別の研究では、コーヒーをたくさん飲むことによって大腸ガンのリスクが低下するというものがありましたが、今回紹介した研究ではそういう効果は認められなかったようです。

 このように、この手の研究は大規模であったとしても結果がいつも同じとは限りませんから、あまり信じすぎないようにすべきかもしれません。

(谷口恭)

注:上記論文のタイトルは、「Risk of Colon Cancer and Coffee, Tea,
and Sugar-Sweetened Soft Drink Intake: Pooled Analysis of Prospective
Cohort Studies」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://jnci.oxfordjournals.org/cgi/content/abstract/djq107v1?maxtoshow=&hits=10&RESULTFORMAT=&fulltext=Xuehong+Zhang&searchid=1&FIRSTINDEX=0&resourcetype=HWCIT

参考:
はやりの病気第30回「コーヒー摂取で心筋梗塞!」
はやりの病気第22回「癌・糖尿病・高血圧の予防にコーヒーを!」
医療ニュース 2008年9月13日「子宮体癌の予防にコーヒーを」
医療ニュース 2008年6月30日「コーヒーはいいことばかり」

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2013年7月14日 日曜日

2010年5月31日(月) 携帯電話で発ガン性は一応認められず・・・

 携帯電話で長時間話をすると脳腫瘍になりやすいかもしれない・・・。これは以前から指摘されていたことですが、きちんと検証した調査はこれまでありませんでした。この問題に対する完全な答えになるかどうかは断定できませんが、過去最大規模の国際調査が発表されました。その結果は、

 5~10年程度の通常の使用ではリスクは上昇しない

 というものです。この研究は、国際共同研究グループ(INTERPHONE Study Group)が約10年の年月をかけて、日米欧など世界13ヶ国で脳腫瘍の患者(5,117例)と健康な人合わせて約13,000人を対象として調査をおこないました。

 その結果、日常的に携帯電話を使用している人の割合は、患者のグループよりも健康な人のグループの方でむしろ多く、携帯電話使用と脳腫瘍の間に相関関係は認められなかった、とされています。
              
 しかし、研究をよくみると、通話の累積時間が最も長い「1,640時間以上」使用した人でみると、神経膠腫(グリオーマとも呼ばれます)という脳腫瘍の発症率が1.4倍になっています。

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 この研究結果を受けて、WHO(世界保健機関)やFDA(米食品医薬品局)は一斉に「通常の携帯電話の使用では脳腫瘍のリスクは上昇しない」とコメントしています。

 しかし、本当にそうでしょうか。研究者らは、「累積1,640時間以上など現実的でない」というようなことを述べていますが、仮に、1日30分通話したとすると、1年間で182.5時間、約9年で1,640時間を越えてしまいます。

 実際、FDAは、「引き続き長時間の使用を避けるべきで、通話時のスピーカーモード、ヘッドセット使用などにより頭部と携帯電話の距離を保つべきである」、と勧告しています。

 携帯電話の歴史はそう古くないわけですから、引き続き今後の研究結果に注目したいところです。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Brain tumour risk in relation to mobile telephone use: results of the INTERPHONE international case?control
study」で、下記のURLで全文を読むことができます。

http://www.oxfordjournals.org/our_journals/ije/press_releases/freepdf/dyq079.pdf

参考:医療ニュース2010年1月23日「携帯電話がアルツハイマーを予防?」

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2013年7月14日 日曜日

2010年6月2日(水) 年の離れた相手と結婚すると・・・

 7~9歳若い男性と結婚した女性は早死にする・・・
 年上の女性と結婚した男性も早死にする・・・ 
 一方、7~9歳若い女性と結婚した男性は長生きする・・・
 同年代の男性と結婚した女性は最も健康的・・・
 
 これらは、医学誌『Demography』2010年5月号に掲載された論文のなかで紹介されている調査結果です。

 この研究は、ドイツのMax Planck人口統計研究所が、デンマークの夫婦約200万組を対象としおこなったものです。

 女性からみたときには、冒頭で述べたように、大きく年齢が離れた若い男性と結婚すれば死亡リスクが上がり、また、大幅に年上の男性と結婚しても寿命が短くなるという結果がでています。つまり、女性からすれば、最も長生きする選択肢は、「年の近い男性と結婚する」ということになります。

 一方、男性からみた場合は、冒頭で述べたように、年上の女性と結婚した場合は死亡リスクが増大していましたが、7~9歳若い女性と結婚した場合は、逆にリスクが減り、長生きできるという結果になっています。

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 この結果を短い言葉でまとめてみると、女性は年の近い男性と結婚するのが最も健康で、男性は若い女性と結婚するのが最善、ということになります。

 さらに、若い男性と若くない女性の結婚は共に早死にし、その逆(若い女性と若くない男性)の場合は、男性は長生きするけど女性は短命となります。とすると、このカップル(若い女性と若くない男性)は、年は離れているけど死ぬのは同じ時期(で共に幸せ?)、となるかもしれません。

 この研究は、200万組という膨大なデータを解析していますから、それなりに信憑性がありますが、デンマークと日本では社会や文化が異なるでしょうから、日本でも同じ結果がでるとは限らないと思います。

 まちがっても、この論文に影響を受けて、パートナーを変えようなどとは思わないように・・・。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、
「How Does the Age Gap Between Partners Affect Their Survival?」
で、下記URLで概要を読むことができます。

http://muse.jhu.edu/login?uri=/journals/demography/v047/47.2.drefahl.html

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2013年7月14日 日曜日

2010年6月7日(月) 2009年の合計特殊出生率は横ばい

 厚生労働省が6月2日に人口動態計月報の年計(概数)を発表しました。

 2006年から2008年までの3年間、日本では合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むと推定される子供の数)が上昇していましたが、2009年は2008年に比べて「横ばい」となりました。

 少し詳しくみてみると、2004年1.29、2005年1.26、2006年1.32、2007年1.34、2008年1.37と3年連続で増加していましたが、 2009年は前年と同じ1.37です。

 出生数でみてみると、2009年は、1,070,025人で、前年(2008年)から21,131人減少したことになります。出生数を母親の年代別にみると、30~34歳が389,788人で最も多く、25~29歳が307,764人、 35~39歳が209,703人、20~24歳が116,807人と続いています。15~34歳ではいずれの年代も前年より減少していますが、35~49歳では増加しています。

 尚、統計からみると女性の平均初婚年齢は28.6歳(男性は30.4歳)、第1子出生時の母親の平均年齢は29.7歳となっています。

 死亡数は1,141,920人で、前年(2008年)より487人減少しています。出生数と死亡数の差を表す自然増減数はマイナス71,895人で、前年より20,644人減り、前年に引き続き過去最大の減少ということになります。

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 合計特殊出生率を都道府県でみると、沖縄(1.79)、宮崎(1.61)、熊本(1.58)など九州・沖縄地方で高く、東京(1.12)、北海道(1.19)、京都(1.20)など大都市圏で低くなっています。

 ということは、九州・沖縄では子供を育てやすい環境が整備されていて、逆に大都市圏では育てにくくなっているということなのでしょうか。数字だけでみる限り、大都市圏の若い世代が子供を産みにくくなっているといえそうです。

 しかし、九州・沖縄では数字が高いといっても、合計特殊出生率は2.08以上にならなければ人口は減少していきます。人口減少に歯止めがかからないのは自明です・・・。

(谷口恭)

参考:医療ニュース
2009年6月1日 「日本の出生率は3年連続上昇」
2008年6月6日 「出生率が2年連続上昇」
2007年2月24日 「出生率が大幅回復へ!」

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2013年7月14日 日曜日

2010年6月7日(月) 4時間以上の残業が心臓発作のリスク

 1日3時間以上の時間外労働をする人は、心臓疾患による死亡や心臓発作などのリスクが60%高い・・・

 これは、フィンランド労働衛生研究所のMarianna Virtanen氏らによる研究結果で、医学誌『European Heart Journal』オンライン版5月12日号に掲載されています。(下記参照)

 研究は、6千人以上の英国公務員を対象とし11年間にわたり追跡調査されています。この間、369人に心疾患での死亡、心臓発作などが確認されています。年齢、性別、配偶者の有無、職種などの因子を考慮した結果、1日に(1~2時間ではなく)3~4時間の時間外労働をしている人では心疾患のリスクが60%増加していることが判ったそうです。また、「時間外労働」以外の危険因子(リスクファクター)を検討したところ、心疾患のリスクは見つからなかったそうです。

 では、なぜ長時間の時間外労働をおこなうと心疾患のリスクが高くなるのでしょうか。

 この点について、研究者らは、「長時間働くことを選択する人は、攻撃的な性格であり、競争心が旺盛ないわゆるタイプAである」ということを述べています。また、「長時間労働が高血圧、睡眠不足、運動不足、抑うつ状態などと関連している可能性がある」とも述べています。

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 長時間労働→心筋梗塞などの心疾患、というのはイメージとしてつかみやすいと思います。おそらく日本人なら身の回りに1人や2人、このような人がいるのではないでしょうか。

 この研究では長時間の労働を3~4時間としており、「それ以上働いている人は?」と気になりますが、おそらくこれ以上働くのは日本人(韓国人も?)くらいであり、英国では充分なデータがないのでしょう。

 タイプAというのは、上に述べたように「攻撃的で競争心が旺盛」と表現できますが、少し言葉を変えると「真面目で責任感が強く努力家」とも言えるわけで、日本人には多い性格ではないかと考えられています。そして、タイプAは以前から心疾患のリスクの1つであることが指摘されていました。(念のために補足しておきますが、タイプAは血液型のA型とは何の関係もありません)

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Overtime work and incident coronary heart
disease: the Whitehall II prospective cohort study」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://eurheartj.oxfordjournals.org/content/early/2010/05/04/eurheartj.ehq124.abstract?sid=260e2c9a-9c42-4b90-9e8d-5ebb21432b41

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2013年7月14日 日曜日

2010年6月7日(月) 外で遊んでいた子供は大学進学率が高い?

 子供時代に外で活発に遊んだ人ほど、本を読む割合や大学進学率が高い・・・

 これは、国立青少年教育振興機構が5月24日に公表した調査結果です。(報道は5月26日の読売新聞)

 この調査は、2009年末、全国の20~60歳代の男女5,000人と、小中高生11,000人を対象に実施されています。「川や海で泳いだ」「友達と相撲をした」など30項目をもとに、外遊びの体験豊かなグループとそうでないグループとに分けています。

 その結果、「体験豊か」という大人のグループは、1か月に本を1冊以上読む人の割合が71%にのぼり、「体験少ない」グループ(47%)より24ポイント上回っていました。最終学歴が大学以上は、「体験豊か」が50%で、「体験少ない」グループより5ポイント多かったそうです。

 同機構は、「学校や家庭は、子供が外で遊ぶ機会をもっと増やす努力をすべきだ」と指摘しています。

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 この報道をみて、「もっともだ・・・」と感じられる一方で、「子供が外で遊ぶ機会を・・・などと言われても、昔と今では時代が違うんだからそこを考えるべきでしょう」と言いたくなります。

 昔をなつかしむ大人たちは、「昔は川で泳いで相撲をしたもんだ」などと自慢っぽくいいますが、今の時代に都会で生まれていたら「放課後に運動場で相撲をとって、週末に電車やバスに乗って川で泳ぐ」、といったことをするでしょうか。おそらく、外では遊ばずに今の子供と同じようにゲームやインターネットに夢中になるのではないでしょうか。

 肝腎なのは、昔をなつかしむことではなく今この時代には何をすべきか、です。私が医師として若い世代から高齢者まで診ていて感じるのは、社会で成功するためには(外で遊んでいたかどうかには関係なく)コミュニケーション能力が必要、ということです。

 外でも中でも、あるいはインターネットを通してでもいいから、できるだけいろんな人と交わってコミュニケーションをとり、子供の頃から多様な価値を学ぶ。私はこのことが(外で遊ぶことよりも)大切だと思っています。

(谷口恭)

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2013年7月14日 日曜日

2010年6月10日(木) HIVの「検査数」が大幅減

 厚生労働省は5月28日、HIV/エイズ関連のデータを公表しました。

 まず、2009年1年間で、新たにHIV感染が判った人(まだエイズを発症していない感染者)は1,021人で前年より105人減少しています。一方、エイズ発症者は431人で、この数字は前年(2008年)とまったく同じです。

 しかしながら、全国の保健所などでおこなっている検査件数はおよそ15万件で、これは前年から15%の減少ということになります。検査件数は2002年以降増加の一途でしたが、2009年に一転して大幅減少に転じたことになります。

 さらに、それだけではありません。実は昨年(2009年)にHIVの検査件数が減少したのは新型インフルエンザのパニックがあったからと予想されていました。行政のHIV担当者は、新型インフルエンザの騒ぎのない今年(2010年)は再び検査件数は増えるだろうと予想していたそうなのですが、今年の1~3月の検査件数は全国で29,455件、これは前年同期の64%という少なさです。

 さらに、さらにです。この3ヶ月間で検査件数が減り、その結果新たにHIV感染がわかった人(まだエイズを発症していない感染者)は227人と前年同期から244人減少しているのですが(これは検査件数が減っているので当然です)、エイズを発症した人は94人とこれは前年同期の84人から10%以上も増加しているのです。

 これが何を意味するかというと、「自らのHIV感染に気付いておらずエイズを発症して初めて知る感染者が急増している」、ということです。

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 上記の検査件数は保健所など公的機関によるもののみです。医療機関で検査を受けた人は含まれていません。

 しかし、検査件数が減っているのは医療機関でも同様です。太融寺町谷口医院でも、「症状はないけれどもHIVが気になって・・・」と言って受診する人は、2008年がピークで2009年は減少し、今年はさらに減少しています。

 その一方で、「別の訴えで受診してそこからHIV感染が判った。患者さんはまさか自分がHIVに感染しているとは思っていなかった」、というケースが昨年後半あたりから増えてきています。

 検査に対する関心が薄れることが問題となる理由は主に2つあります。1つは、他人に感染させる機会が増えること、もう1つは、HIV感染の発見が遅れエイズを発症してしまえば薬が効きにくくなる可能性が生じ寿命を縮ませかねない、ということです。

 気になる人は早めに検査を受けましょう。

(谷口恭)

参考:医療ニュース2009年6月20日 「日本のHIV、増加傾向は変わらず」

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