医療ニュース

2013年7月2日 火曜日

2012年8月1日(水) 喫煙者率、2011年も過去最低だが・・・

 JT(日本たばこ産業)は毎年「全国たばこ喫煙者率調査」をおこなっています。今年は全国の成人男女約32,000人を対象に5月に実施されました。回答を得たのは19,897人からで回収率は62%ということになります。以下の結果が7月30日に発表されました(注1)。

 男女合計21.1%(前年から0.6ポイント低下)
 男性のみ32.7%(前年から1.0ポイント低下)
 女性のみ10.4%(前年から0.2ポイント低下)

 JTは、高齢化の進行、健康意識の高まり、2010年10月に実施されたタバコ税増税などが喫煙者率減少の要因とみているようです(注1)。

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 JTはいくつかの理由で喫煙者率が減少したことを強調したいようですが、今回の低下率は0.6ポイントですから、2010年から2011年の低下率が2.2ポイント(下記医療ニュース参照)だったことを考えると低下率は鈍くなっていることがわかります。

 結果の解釈については「過去最低になって良かった」ではなく、「禁煙を試みる人が減り喫煙者の減少率が鈍くなり好ましくない状態」とみるべきではないか、と私は考えています。

注1:JTのウェブサイトで詳しく紹介されています。下記URLを参照ください。

http://www.jti.co.jp/investors/press_releases/2012/0730_01.html

参考:医療ニュース
2011年10月15日 「喫煙者率が男女とも過去最低に」
2010年8月16日 「喫煙率、男性は過去最低、女性は再び増加」

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2013年7月2日 火曜日

2012年1月6日(金) いろんな「風邪」が大流行

 昨年(2011年)からマイコプラズマ、RSウイルスなどによる「風邪」が大流行していますが(下記医療ニュース参照)、インフルエンザも加わり、その勢いはまったくおとろえていないようです。

 12月12日から18日までの都道府県別の統計をみてみると、インフルエンザは宮城が最多で、愛知、三重、岡山、愛媛と続いています。マイコプラズマは、埼玉が最多で、沖縄、宮城、愛知、青森と続き、RSウイルスは、北海道、愛知、大阪、兵庫、静岡の順です。いずれの感染症も全国的に高い数字にあるといえます。

 このなかで、昨年末あたりからじわじわと増えだしていたインフルエンザが目立った増加をしています。2011年12月16日には、厚生労働省が正式にインフルエンザが「流行入り」したことを発表し、12月19~25日には、その前週の1.7倍にも報告数が増えています(注)。

 また、今年はいわゆる「おなかの風邪」も流行しており、なかでもノロウイルスによる胃腸炎が目立っています。12月30日の毎日新聞によりますと、今年は生でよく食べられている岩ガキが原因とみられる食中毒が多く、厚生労働省は「異例の事態」とみているそうです。

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 咳や咽頭痛が主症状の風邪(いわゆる上気道炎)であっても、おなかの風邪であっても手洗いとうがいが予防の基本です。おなかの風邪は、カキが問題となっているケースが多いようですから、少なくとも流行中は、生食はできるだけ避けた方がいいかと思われます。

(谷口恭)

注:インフルエンザについては厚労省の下記のサイトが参考になります。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/dl/houdou20111216-01.pdf

参考:
トップページ: インフルエンザ
医療ニュース2011年10月28日 「マイコプラズマ肺炎も過去最多、しかも・・・」

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2013年7月2日 火曜日

2012年1月20日(金) プロペシアで男性不妊症の可能性

 男性型脱毛症(AGA)の治療薬としてすっかり定着しているプロペシアに、副作用として男性不妊症が起こりうることを製造及び販売元(MSD)が2012年1月16日付で発表しました。

 改訂された添付文書には、副作用として、「男性不妊症・精液の質低下(精子濃度減少、無精子症、精子運動性低下、精子形態異常等)」と記載されています。頻度は「不明」とされています。

 これに対する注釈として、「本剤の投与中止後に、精液の質が正常化又は改善されたとの報告がある」と記載されています。

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 プロペシアは男性ホルモンの生成に関与する5αリダクターゼという酵素の働きを抑制することから、以前からこのような副作用の可能性があるのではないかと言われていましたが、メーカーはこれまで否定していました。今回の添付文書の改訂で、一転してその可能性を認めたということになります。

 当院にもプロペシアを処方している患者さんは大勢おられます。緊急性がないために電話連絡などはいたしませんが、次回処方時にあらためてこの副作用について相談したいと考えています。

 尚、プロペシアの他の副作用としては、「リビドーの低下(性欲の低下)」が1~5%におこるとされています。また、1%未満で「勃起機能不全」もあるとされています。

(谷口恭)

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2013年7月2日 火曜日

2012年1月30日(月) アメリカ製の育毛剤で健康被害の可能性

 AGA(男性型脱毛症)の治療として、現在のガイドラインで推奨されているのは「プロペシア」と「リアップx5」だけですが、それら以外のものを使用している人も少なくありません。
 
 AGAの治療に対する需要は多く、そのため危険性の伴うものも出回ることがあります。FDA(米食品医薬品局)は2012年1月20日の「安全性情報」で、Perfect Image Solutions社が販売する育毛剤などの回収および破棄を発表しました。
 
 回収及び破棄に指定されているのは下記の5つです。

Men’s Minoxidil 15% Azelaic 5% Hair regrowth topical, 60mL
Men’s Minoxidil 10% Azelaic 5% Hair regrowth topical, 60mL
Men’s Minoxidil 5% Azelaic 5% Hair regrowth topical, 60mL
Women’s Minoxidil 3% Azelaic 5% Hair regrowth topical, 60mL
Hair regrowth shampoo enhanced with Ketoconazole and salicylic acid, 180mL

 FDAの承認を受けていないこれらの製品は、米国内だけでなく、インターネットを通じて全世界で流通しているそうです。

 FDAによりますと、「15%,10%のミノキシジルに関する安全性は確認されていない」として、内服でなく外用の場合であっても、低血圧や動悸、皮膚障害といった全身性の副作用が生じる可能性があるそうです。
 
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 上記5つの製品をみると、4つはAzelaic(アゼライン酸)が使用されていますから、これが問題なのかもしれないと感じられますが、FDAは高濃度のミノキシジルの方を問題視しているようです。たしかに日本製の「リアップx5」も皮膚障害の副作用はときどき聞くことがあります。
 
 ケトコナゾールは、海外ではAGAの治療として使われることがあるようですが、毛髪の色素脱失や髪質の変化、皮膚障害の可能性がFDAに指摘されています。

 今月はプロペシアの副作用も発表されました。AGAの治療については慎重に考えるべきでしょう。

(谷口恭)

参考:医療ニュース 2012年1月20日 「プロペシアで男性不妊症の可能性」

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2013年7月2日 火曜日

2012年1月31日(火) ワインで長生きは正しくない?

 飲酒が健康にいいか悪いかというのは昔からよく議論されることで研究結果も様々なものがあります。お酒の中ではワインがいいとされるものが多いのですが、最近はワインのみを特別視することが減ってきているような印象があります。
 
 医学誌『Journal of Studies on Alcohol and Drug』2012年1月号(オンライン版)に掲載された米国テキサス大学のCharles Holahan氏の研究(注)もそのようなもののひとつです。
 
 この研究の対象者は55~65歳の男女802人で、飲酒習慣によって3つのグループに分けられています。全く飲酒をしないグループの345人、主にワインを飲むグループの176人(飲酒量の3分の2以上がワインで1日1~2杯程度)、ワインはあまり飲まないが他のアルコールは適度に飲むグループの281人(飲酒量の3分の1以下がワイン)の3つのグループです。その後の寿命が20年にわたり追跡調査されています。
 
 その結果、お酒を飲むグループは飲まないグループより有意に長生きしたことが分かったのですが、主にワインを飲むグループとワインはあまり飲まないグループでは、寿命に有意な差が認められなかったそうなのです。
 
 単純に、ワインを飲むか飲まないかを比較すると、飲まないグループは飲むグループよりも死亡率が1.85倍も高いという結果が出たそうなのですが、対象者の特徴を詳しく分析してみると、ワインを飲まないグループは、より高齢で、男性の比率が高く、健康に問題のある人が多く、喫煙率が高く、社会経済的な地位が低く、積極的な運動もしていないという傾向が認められたそうです。そして、こういった要素を補正して分析しなおすと、ワインを飲む・飲まないでは差がなくなってしまったというわけです。
 
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 この研究は対象者がさほど多くないためにどれほどの信憑性があるかは疑問なのですが、結果の見方をかえると、ワインをよく飲む人は、女性に多く、タバコを吸わず、健康上の問題がなく運動をしていて、社会経済的地位が高い、となってしまいますが、このようなことが本当に言えるのでしょうか。
 
 フランス人はあぶらっこいものをよく食べるのに虚血性心疾患になりにくいことが「フレンチパラドックス」と呼ばれ、その原因が赤ワイン(によるポリフェノール)とされていましたが、最近はこれを疑問視する声も増えてきています。
 
 もしかすると、フレンチパラドックスの本当の原因は、赤ワインにあるのではなく、フランス人が社会経済的な地位が高く、運動をよくおこない、タバコを吸わないからなのでしょうか。地位や運動はともかく、フランス人には私の知る限り喫煙者が多いような印象があるのですが・・・。
 
(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Wine Consumption and 20-Year Mortality Among Late-Life Moderate Drinkers」で、下記URLで概要が読めます。
http://www.jsad.com/jsad/article/Wine_Consumption_and_20Year_Mortality_Among_LateLife_Moderate_Drinkers/4657.html

参考:医療ニュース2011年12月4日 「ビールもワインと同じように心血管リスクが低下」

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2013年7月2日 火曜日

2012年2月3日(金) 年収低いほど喫煙率が高値

 日本人の喫煙率が年々下がっているのは間違いなく、JT(日本たばこ産業)や国立がんセンターの調査でもそのような傾向がでています。JTが2011年10月13日に発表したデータでは日本人の喫煙率は21.7%でしたが、2012年1月31日に厚生労働省が発表した2010年の喫煙率は19.5%と、このような調査では初めて2割を切りました。
 
 この結果を受けて、同省は、「平成22年度までに喫煙率を12.2%以下にする」との目標値を明記する方針を固めました。12.2%とは随分中途半端な数字に感じられますが、喫煙者で「たばこをやめたいと思う」と答えた人(男性35.9%、女性43.6%)が全員禁煙に成功したと仮定して算出した数字だそうです。
 
 尚、同省がおこなった調査は「国民健康・栄養調査」と呼ばれるもので、健康増進法に基づいて毎年おこなわれているものです。2010年は全国から無作為抽出した3,684世帯が対象とされています。調査項目は、身長、体重、血圧、腹囲などの身体的データに加え、食事の摂取状況や飲酒、喫煙、睡眠、運動なども含まれています。
 
 また、この調査では年収も加味されて検討されています。年収と喫煙の関係の結論は、「年収が低いほど喫煙者が多い」となります。年収を3つのグループ(200万円未満、200万円~600万円未満、600万円以上)に分けて喫煙率を算出すると、年収の低い順から、男性は37.3%、33.6%、27.0%、女性は11.7%、8.8%、6.4%となっています。
 
 また、喫煙率(男性)を都道府県別でみてみると、トップが青森(44.8%)で、以下、和歌山(44.7%)、鳥取(43.7%)、北海道(42.6%)、山梨(42.5%)と続きます。逆に最も低いのは三重(28.6%)で、静岡(29.5%)、香川(30.1%)、沖縄(30.8%)、群馬(31.7%)と続きます(注)。なぜかこの都道府県別データでは女性のものが公表されていません。
 
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 最近は、所得と健康の関係がよく議論されるようになってきていますが、今回の厚労省の調査でも所得と喫煙率の関係が示されていることは注目に値します。また、今回の調査では肥満や運動、朝食を抜く割合などと年収との関係も調べられています。(これらは近いうちにこの「医療ニュース」で報告します)
 
 収入が低いほど不健康で寿命も短い・・・。こんなことは避けなければならないわけですが、すでに現実になっているのかもしれません。ということは、我々医療者がいくら熱心に生活指導をおこなったとしても、患者さんたちの収入を上げなければ効果がないのかもしれません。
 
(谷口恭)

注:このデータは厚生労働省のウェブサイトで詳細が掲載されています。下記URLを参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000020qbb-att/2r98520000021c39.pdf

参考:医療ニュース
2011年10月15日「喫煙者率が男女とも過去最低に」
2011年8月29日「タバコの危険性は男性より女性」

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2013年7月2日 火曜日

2012年2月6日(月) 年収低いほど肥満、野菜不足、運動不足

 厚生労働省から発表された「国民健康・栄養調査」で、年収が低いほど喫煙率が高い、という結果がでたということを先日お伝えしましたが、他の健康に関する項目についても年収との相関関係が示されています(注)。
 
 この調査では、年収に応じて対象者が3つのグループに分けられています。年収200万円未満、200万円から600万円未満、600万円以上の3つです。ここでは便宜上それぞれのグループを「低」「中」「高」と呼ぶことにします。
 
 肥満については、「低」の女性で肥満の割合が25.6%、「中」21.0%、「高」13.2%と、年収が高くなるにつれて肥満の割合が減少しています。年収「低」の4人に1人以上が肥満ということになります。
 
 一方、男性では、「低」「中」「高」でそれぞれ31.5%、30.2%、30.7%と、どの年収でもだいたい3人に1人が肥満ということになります。

 朝食を抜いているのは、男性では「低」「中」「高」でそれぞれ20.7%、18.6%、15.1%、女性では順に17.6%、11.7%、10.5%と、男女とも年収が低いほど朝食を食べない比率が高くなっています。
 
 野菜の摂取量は、男性では「低」「中」「高」でそれぞれ256グラム、276グラム、293グラム、女性では順に270グラム、278グラム、305グラムと、男女とも年収が低いほど野菜を食べていないということになります。
 
 運動する習慣のないのは、男性では「低」「中」「高」でそれぞれ70.6%、63.7%、62.5%、女性では72.9%、72.1%、67.7%と、男女とも年収が低いほど運動をしていないということになります。
 
 喫煙者は、男性では「低」「中」「高」でそれぞれ37.3%、33.6%、27.0%、女性では11.7%、8.8%、6.4%と、男女とも年収が低いほど喫煙者が多いということになります。
 
 ここまでは、(肥満と男性の年収の関係を除けば)年収が低いほど身体によくない習慣がある、と一応は言うことができるかと思います。

 今回の調査では、年収と飲酒、年収と睡眠の質との関係も調べられています。

 飲酒する習慣のあるのは、男性では「低」「中」「高」でそれぞれ32.6%、36.6%、40.0%と、年収が高いほど飲酒習慣がある、ということになります。(これは、年収が低いとお酒を飲むお金がない、ということなのでしょうか・・・) 女性では7.2%、6.4%、8.0%と特に年収と飲酒との関係はありません。
 
 睡眠の質が悪い者の割合は、男性では「低」「中」「高」でそれぞれ11.1%、11.8%、10.8%と一定の傾向はありませんが、女性では15.9%、15.4%、11.4%と、年収が低いほど睡眠の質が悪い、ということになります。
 
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 これらの結果をみると、年収と健康の間には相関関係があり、「年収が低い人は特に健康に気をつけてくださいね」ということになるでしょう。

 しかし、そんなことを言ってみたところで何の解決にもならないのではないでしょうか。私はこのデータをみたときに最も驚いたのが、最も低いグループが「年収200万未満」とされていることです。厚労省のデータからは、年収「低」「中」「高」がそれぞれ何人かは分からないのですが、「年収200万未満」が3つのうちの1つのグループになっているくらいですから、対象者のおよそ3分の1は年収200万円未満であることが予想されます。
 
 年収が200万未満しかないときに健康に注意することがどれだけできるでしょうか。年収200万円未満の人たちに「健康に気をつけてね~」と言ったところで、おそらく聞く耳を持ってくれないでしょう。彼(女)らは、将来の健康どころではなく貧困という差し迫った現実で精一杯なのではないでしょうか。
 
 年収によって健康状態が決定され、さらに寿命も予想される・・・。そのような時代がすでに到来してしまっているのかもしれません。

(谷口恭)

注:詳しくは厚生労働省の下記のURLを参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000020qbb-att/2r98520000021c30.pdf

参考:医療ニュース
2012年2月3日 「年収低いほど喫煙率が高値」

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2013年7月2日 火曜日

2012年2月18日(土) インフルエンザなどの出席基準が見直し

 2012年2月16日、文部科学省は、インフルエンザに罹患した小中高生及び大学生の出席停止期間を「発症後5日を経過し、かつ解熱した後2日間」とすることを決定しました。3月中に省令(注1)を改正し、2012年4月1日から施行する予定です。
 
 インフルエンザの出席基準はこれまでは「熱が下がって2日たってから」とされていましたから、省令改正により欠席を強いる期間が長くなることになります。

 尚、幼稚園児については、低年齢ほど感染させる可能性がある期間が長いという理由から、「発症後5日を経過し、かつ解熱した後3日間」とされるようです。

 また、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)の出席停止期間が、現行の「耳下腺の腫れが消えるまで」から「腫れが出た後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで」に見直されます。
 
 百日咳については、現行では「特有のせきが消えるまで」とされていますが、これに加え、「5日間の抗菌性物質製剤による治療終了まで」との条件が新たに追加され、これらのいずれかを満たせば出席が認められることになります。
 
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 インフルエンザの出席条件が、現行で「熱が下がって2日たってから」とされているのは、CDC(米国疾病管理局)が2009年10月に「解熱後最低24時間は自宅にいるように(remain at home until at least 24 hours after they are free of fever)」と発表(注2)したことに基づいていると思われます。それが、抗インフルエンザ薬が普及することにより、熱はすぐにさがったけれど少量のウイルスが咳などで排出されている期間があり、その期間の感染を防ぐのが今回の省令見直しの目的だと思われます。
 
 生徒や学生の場合は、省令が見直されても大きな問題は起こらないと思われますが、問題は会社員などの社会人です。社会人の場合は一定の基準がなく、これまでは「解熱後24時間」、「熱が下がって2日たってから」などの基準に従っている企業が多く、それほど問題はなかったと思われますが、今後「発症後5日経過」という学校保健法上の新しい基準に従うことにするとなれば、会社を長く休まなければならないことになります。連続で5日も休めないという社会人も少なくないでしょう。
 
 今後、それぞれの企業がインフルエンザに対する基準を決めることが必要になるでしょう。

(谷口恭)

注1:「省令」について補足しておきます。感染症の出席については「学校保健法」という法律に基づきますが、この法律そのものに出席停止期間が明記されると、今回のように期間変更をしたいときに国会での審議をおこない法改正の手続きを経なければなりません。そこで、具体的な出席停止期間はこの法律の下のレベルの「省令」で審議・決定できることにされているのです。省令であれば、学校保健法の場合、文部科学省内で審議・決定ができるというわけです。
 
注2:CDCのこのガイダンスは下記のURLで読むことができます。
http://www.cdc.gov/h1n1flu/guidance/exclusion.htm

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2013年7月2日 火曜日

2012年2月27日(月) 短時間の睡眠で糖尿病リスクが5倍以上に

 睡眠時間が5時間以下の人は、7時間以上の人と比べて糖尿病発症の危険性が5.4倍に・・・。

 これは医学誌『Diabetes Care』2012年2月号に掲載された研究発表で、研究は日本でおこなわれたものです(注)。

 この研究では、糖尿病に罹患していない35~55歳の男女3,570人が対象とされています。2003年から2007年まで追跡調査がおこなわれ、この4年間で121人が糖尿病を発症したそうです。睡眠時間との相関関係を調べると、睡眠時間5時間以下の人は、7時間以上の人と比べると、約5.4倍糖尿病を発症しやすいという結果になったそうです。
 
 この研究では、実際の睡眠時間以外にも、個々の睡眠に対する印象と糖尿病発症の関係が検討されています。「睡眠不足を感じている」とした人は、感じていない人より約6.8倍もリスクが高く、「夜中に目が覚めることが深刻な問題」とした人は、そうでない人より約5.0倍高かったようです。
 
 今回の研究の対象者で睡眠が5時間以下の人は、長時間労働者や、(看護師など)シフト勤務をしている人が多かったそうです。研究者は、「糖尿病の予防には食生活の改善や運動などだけでなく、質のいい適切な時間の睡眠を確保できるような職場の環境も重要」と述べています。
 
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 糖尿病には1型と2型がありますが、大半は2型であり、この研究も2型を対象としています。そして、2型糖尿病のリスクは、食事や運動などですが、遺伝的な要因もあります。また、子供の頃に肥満傾向にあった人は糖尿病のリスクが増えるという研究もあります。
 
 ということは、親族に糖尿病の人がいたり、子供の頃に肥満があったり、といった糖尿病のリスクがあると考えられる人は、職業を選ぶときに長時間労働や夜勤のある仕事はできれば避けるべき、ということになるかもしれません。(ただしこの研究では親や兄弟に糖尿病罹患者がいる人は対象とされていません)
 
 研究者も述べていますが、労働者がしっかりと睡眠がとれるように社会全体で職場の環境について考えるべきでしょう。

注1:この研究をおこなったのは、北海道大学と旭川大学に所属のKita Toshiko氏で、論文の
タイトルは「Short Sleep Duration and Poor Sleep Quality Increase the Risk of Diabetes in
Japanese Workers With No Family History of Diabetes」です。下記URLで論文の概要を読めます。
 
http://care.diabetesjournals.org/content/35/2/313.abstract?sid=6fb480db-0624-487e-b72c-5ca5f9c50b32

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2013年7月2日 火曜日

2012年3月2日(金) 減らない「いきなりエイズ」

 エイズを発症して初めてHIV感染に気付く、いわゆる「いきなりエイズ」が増えているということは過去に何度かお伝えしていますが、2月24日の厚労省の発表によりますと、2011年の1年間(正確に言えば2010年12月27日から2011年12月25日の約1年間)のいきなりエイズの報告は467件であり、過去最高を記録した2010年の469件と同水準となります。(尚、この467件というのは「速報値」であり、最終的にはさらに増えて過去最多を更新する可能性もあります)
 
 いきなりエイズではない新規にHIV感染が発覚した症例については、1,019件とされており、これは前年の2010年から56件の減少となります。新規HIV感染発覚が最も多かったのは2008年で、このときは1,126件を記録しています。
 
 2011年の1年間に保健所などで行ったHIV抗体検査の件数は131,243件で、前年の2010年から313件増えてはいますが、最多であった2008年からは45,913件減っていることになります。相談件数は163,006件で、前年から1,258件の減少となります。
 
 いきなりエイズの感染経路をみてみると、同性間の性的接触が54%(250件)、異性間の性的接触が28%(131件)となっています。一方、(エイズを発症していない)HIV感染が発覚した例では、同性間の性的接触が67%(685件)、異性間の性的接触が20%(208件)とされています。母子感染も1例報告されています。
 
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 いきなりエイズが過去最高水準で、新規のHIV感染は減っているということは、感染者全体が減っているということを意味するのではなく、つまるところ、HIVへの関心が薄れ、検査をせずに、エイズを発症するまで、まさか自分がHIVに感染するなんて考えてもみなかった・・・、というケースが増えているということです。
 
 太融寺町谷口医院でもHIV感染が発覚した症例は2008年をピークにやや減少傾向にはありますが、発熱、下痢、倦怠感、皮疹などから、エイズはまだ発症していないものの、そういった症状からHIV感染が発覚したという症例(私はこれを「いきなりHIV」と呼んでいます)が2009年あたりから増えています。(詳しくは下記コラムを参照ください)
 
 いきなりエイズとエイズを発症していないHIVの感染ルートを比較すると、いきなりエイズの方が異性間での感染が高い傾向にあります。これは、HIVに無関心で検査に行っていないのは異性愛者に多い、ということを意味します。
 
 特に異性愛者の方で、危険な性交渉や血液感染の可能性のある行為(特に海外でのタトゥーやボディピアス)のある人は、無症状であったとしても検査をしておくべきでしょう。
 
(谷口恭)

参考:
NPO法人GINA GINAと共に第64回(2011年10月) 「増加する「いきなりHIV」

医療ニュース
2011年9月29日 「四半期で新規エイズ発症者が過去最多」
2011年5月27日 「エイズ発症者が過去最多に」

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