医療ニュース

2013年7月2日 火曜日

2012年4月13日(金) 東京では「いきなりエイズ」が大きく減少

 エイズを発症して初めてHIV感染に気付く、いわゆる「いきなりエイズ」が2011年に過去最高水準であったということを先月お伝えしましたが(下記医療ニュース参照)、東京では過去10年間で最少だったようです。
 
 東京都によりますと、2011年1年間で都内で新たに報告された「いきなりエイズ」は前年より23人少ない84人で、これは過去10年で最少となるそうです。東京都では、(エイズを発症していない段階で)新たにHIV感染が判った人は325人で、これは前年から77人減少しているそうです。
 
 感染者(合計409人)の内訳をみてみると、日本人男性353人、外国人男性30人、日本人女性19人、外国人女性7人となっています。年齢別でみてみると、いきなりエイズでは30~40代に多く、エイズを発症していない感染者は20~30代に多い傾向にあります。
 
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 東京都では、検査件数は前年より3%増加しているそうです。また、いきなりエイズも含めた新たにHIV感染が判った総数に対するいきなりエイズの割合は全国平均では31%なのに対し、東京都では21%とかなり低くなっています。
 
 これは、東京都では他道府県に比べて、HIVに対する啓発運動が功を奏して早い段階で検査を受ける人が増えているということを意味します。ということは、予防に関心をもつ人も増えていることが予想されますから、将来的には大きくHIV感染が減少することも期待できます。
 
 東京でHIVが新たに判る総数が大きく減少しているのにもかかわらず全国総数で減少していないということは、他道府県では東京都とは逆に増加傾向にあるということです。他道府県の医療者、教育者、行政に携わる者は東京都を見習わなければなりません。
 
(谷口恭)

参考:医療ニュース2012年3月2日 「減らない「いきなりエイズ」」

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2013年7月2日 火曜日

2012年4月14日(土) 携帯電話の脳腫瘍に関する米国の研究結果

 携帯電話の長時間の使用が神経膠腫(しんけいこうしゅ)と呼ばれる脳腫瘍のリスクになることが指摘される一方で、何ら関連性はない、とする意見もあり、現時点では決着がついていません。
 
 2011年5月31日、WHOは携帯電話の長時間の使用は発ガン性があるかもしれない(possibly carcinogenic)との見解を公表しました。しかし、その後発表されたデンマークの大規模研究の結果では「携帯電話は脳腫瘍のリスクに関係がない」とされています。
 
 そんななか、米国国立癌研究所が携帯電話と脳腫瘍との関連性を改めて調査し、その結果が医学誌『British Medical Journal』2012年3月8日号(オンライン版)に掲載されました(注1)。
 
 この研究では、1992年~2008年の間に神経膠腫の診断がついた18歳以上の非ヒスパニック系の白人24,813例が解析の対象とされています。1992~2008年の間に、アメリカの携帯電話の使用状況はほぼ0%から100%へと大きく変化していますが、この間に神経膠腫の発生率は全般的に変化していなかったそうです。
 
 この研究では、過去の2つの疫学研究と実際の発生率との比較検討がおこなわれています。2つの研究とは、1つが「スウェーデン研究(Sweden Study)」と呼ばれるもので、もう1つが「インターフォン研究(Interphone Study)」というものです。これらの研究はいずれも携帯電話の長期使用が神経膠腫のリスクを上昇させる可能性を示唆しています。
 
 スウェーデン研究の結果に基づいて米国での神経膠腫罹患者を推定した数字は実際の罹患者数と大きく乖離しており(最低でも40%は実際の罹患者は少なかったそうです)、同研究が指摘するようなリスク上昇はみられなかったそうです。
 
 一方、インターフォン研究との比較では、インターフォン研究で指摘されている一部の少数のヘヴィーユーザー(a small number of heavy users)での罹患率は米国での罹患者と統計学的に矛盾しないそうです。
 
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 この論文を読んだときに、スウェーデン研究が指摘するような神経膠腫のリスク上昇はないんですよ、ということはよく分かったのですが、インターフォン研究との比較が何を言いたいのか私にはよく分かりませんでした。
 
 インターフォン研究は発ガン性を示唆しているわけで、米国での実際のデータがこれに矛盾しないなら、米国のヘヴィーユーザーの間では発ガン性を認める、ということになるのではないか、と感じたのです。
 
 しかし、米国国立癌研究所(National Cancer Institute)のウェブサイトをみてみると、このニュースのタイトルを「携帯電話の使用で脳腫瘍のリスクは上がらない」と断定していますから(注2)、「発癌性なし」という結論を出しているのは間違いないようです。
 
 では、この米国の発表を受けてWHOがどのような見解をとるのか、今後の発表に期待したいと思います。

注1:この論文のタイトルは、「Mobile phone use and glioma risk: comparison of epidemiological
study results with incidence trends in the United States」で、下記のURLで原文(全文)を読むことができます。
 
http://www.bmj.com/content/344/bmj.e1147

注2:このニュースのタイトルは、「U.S. population data show no increase in brain cancer
rates during period of expanding cell phone use」で、下記のURLで本文を読むことができます。

http://www.cancer.gov/newscenter/pressreleases/2012/GliomaCellPhoneUse

参考:医療ニュース
2011年10月31日 「過去最大規模の研究で携帯電話と脳腫瘍に関連なし?」
2011年6月3日 「WHOが携帯電話の危険性を公表」

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2013年7月2日 火曜日

2012年4月27日(金) 白米は糖尿病のリスク

 白いご飯が好き、という人には悲しい研究結果です。(以前にも似た研究を紹介したことがあります。詳しくは下記「医療ニュース」を参照ください)

 白米を食べれば食べるほど2型糖尿病(注1)のリスクが上昇する・・・。これは医学誌『British Medical Journal』2012年3月15日号に掲載された論文(注2)で発表された、我々日本人にとってはショッキングな報告です。
 
 この研究は米国ハーバード大学公衆衛生学教室によっておこなわれています。これまでに発表された、白米と糖尿病の関連性について調べられた論文4つを総合的に分析(メタ解析)しています。4つの研究は、日本、中国、米国、オーストラリアのもので、対象者は合計352,384人になり、追跡年数は4~22年とされています。この間に、合計13,284人が2型糖尿病を発症しています。
 
 白米摂取と2型糖尿病のリスクについてまとめると、東洋人では、白米をよく食べる人はあまり食べない人に比べて相対リスクは1.55倍、西洋人ではよく食べる人はあまり食べない人の1.12倍となり、全体ではよく食べる人は食べない人の1.27倍とされています。
 
 尚、全体的に、男性より女性の方が、白米摂取で糖尿病のリスクが上昇する、という結論が導かれています。

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 よく食べる人、あまり食べない人、というのはどれくらいの量を指すのか気になりますが、4つの研究ではそれぞれ数字が異なっています。日本で行われた研究では、男性では315g/日以下を最低摂取群(あまり食べないグループ)、560g/日超を最高摂取群(よく食べるグループ)とし、女性では278g/日以下を最低摂取群、437g/日以上を最高摂取群と設定されています。(ご飯中盛りいっぱいでだいたい150gです)
 
 これに対し、中国では750mg/日以上を最高摂取群、500g/日未満を最低摂取群としています。一方、米国では112.9g/日以上を最高摂取群、5.3g/日未満を最低摂取群とし、オーストラリアでは(わずか)56g/日以上を最高摂取群、23g/日未満を最低摂取群としています。
 
 これらを考えると、この論文では、東洋人は西洋人に比べて白米の糖尿病のリスクが高いと言っていますが、基準となる量がまったく異なっているわけですから、東洋人がハイリスクとは言い切れないのではないでしょうか。
 
 しかし、他の穀物と白米を比べると、グリセミック指数(Glycemic Index)は、白米は64と高くなっています。他の穀物をみてみると、玄米は55、全粒小麦は41、大麦は25です。グリセミック指数は0~100で表され、高ければ高いほど食後の血糖値を上昇させやすくインスリンがたくさん分泌される指標です。(ブドウ糖は100です) ですから、白米が玄米や全粒小麦に比べると糖尿病を発症させやすいのは事実です。
 
 では白米が好きな人が糖尿病にならないようにするにはどうすればいいのでしょうか。当たり前の話となってしまいますが、カロリー過多に注意して、禁煙して、適度な運動をおこない、定期的な健診を受ける、ということになります。
 
(谷口恭)

注1 2型糖尿病というのは生活習慣からくる糖尿病と考えて差し支えありません。遺伝的な要素も多分にありますが、生活習慣の改善で大部分は予防することができます。2型に対し、1型糖尿病というのは比較的若年者に発症し、自己免疫疾患であることが多く、生活習慣とは直接関係ありません。
 
注2 この論文のタイトルは「White rice consumption and risk of type 2 diabetes: meta-analysis and systematic review」で、下記URLで全文を読むことができます。
 
http://www.bmj.com/content/344/bmj.e1454

参考:医療ニュース
2010年11月15日 「白いご飯で糖尿病のリスク上昇」
2010年6月20日 「白米→玄米で糖尿病のリスクが低下」
2012年3月9日 「禁煙後も5年間は糖尿病のリスク」
2011年2月4日 「1日1万歩で糖尿病のリスクが低下」

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2013年7月2日 火曜日

2012年5月1日(火) ついにポリオ不活化ワクチン導入へ

 ようやくポリオウイルスの不活化ワクチンが全国どこでも接種できることになりそうです。4月23日に開かれた厚労省の検討会議で決定されました。実施は、2012年9月1日からとなる見込みです。

 生ワクチンは2回接種が基本ですが、不活化ワクチンの場合は4回接種となります。すでに生ワクチンを1回接種している場合は、不活化ワクチンを3回接種することになると思われます。費用については、予防接種法に基づくことになりますから、不活化ワクチンも生ワクチンと同様、乳児は公費負担で無料となります。

 厚労省は、ワクチンの製造者であるサノフィパスツール社のポリオ単独の不活化ワクチンを近日中に正式に承認するそうです。

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 これまで厚労省は(なぜか)単独の不活化ワクチンに消極的で、(なぜか)4種混合ワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風の3種混合ワクチンに不活化ポリオを加えたもの)の開発にこだわっていたのですが、ここにきて方向転換したようで、これは評価されるべきだと思われます。(遅すぎる、という声もありますが・・)

 ポリオウイルスは、日本国内には存在しないとされており、海外でもほとんど絶滅寸前ではあります。しかしながら、(2010年の時点では)インド、パキスタン、アフガニスタン、ナイジェリアの4ヶ国で報告があり、2011年7月には中国で4例の発症がありました。こういったことを考えると、やはりすべての乳児がワクチン接種しておくべきですし、成人の場合もこういった地域に渡航する人は接種すべきでしょう。成人の場合は、生ワクチンでも問題ないとされていますが、海外では不活化ワクチンが標準的ですから、今後成人への接種も不活化ワクチンが主となることが予想されます。

(谷口恭)

参考:はやりの病気第100回(2011年12月)「不活化ポリオワクチンの行方」

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2013年7月2日 火曜日

2012年5月11日(金) 20代女性の3人に1人は「自殺」を・・・

 2012年5月1日、内閣府は自殺対策に関する意識調査の結果を公表しました。この調査は、2012年1月、全国の20歳以上の男女3,000人を対象として実施されたものです。(有効回収率は67.2%)
 
 結果は、過去に自殺を考えた経験がある人は全体の23.4%で、これは前回調査(2008年2月)より4.3ポイント増えています。

 年代別でみてみると、20代が最多で28.4%となっています。さらに20代の女性だけでは33.6%に上り、20代女性の3人に1人以上が自殺を考えたことがある、ということになります。前回の調査では自殺を考えたことのある20代女性は21.8%でしたから、実に11.8ポイントの大幅な増加です。さらに、自殺を考えたことがあると答えた20代女性の44.1%が「最近1年以内に考えたことがある」と回答しています。
 
 他の年代をみてみると、30代で25.0%、40代で27.3%、50代で25.7%となっています。

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 自殺を考えたことのある人が全体の23.4%というのも驚くべき数字ですが、20代女性で急激に上昇していることに注目すべきでしょう。この2年の間に自殺を考える20代女性が11.8ポイントも増えている原因は何なのでしょうか。たしかに、太融寺町谷口医院を受診している20代の女性の患者さんのなかにも、うつ状態から自殺を考えている・・・、と話される人がときどきいますが、その原因はそれぞれであり、全体でこんなにも急増している理由が私には見当がつきません。
 
 このニュースが報道されたとき、私は東南アジアのある国に滞在していたのですが、現地の新聞にもこの記事が掲載されていました。私は海外にいくと現地の英字新聞を読むのを楽しみにしているのですが、その理由のひとつが「日本の記事がどのように報道されていて日本がどのように見られているか」が分かるからです。この日の新聞で日本に関する記事はこの話題だけでした。海外、特に東南アジアからみれば、まだまだ日本というのは大変豊かで夢のような国であり、一般のアジア人からすれば、なぜ日本のような国で若者が自殺をするのかが分からない、とよく言われます。
 
 自殺対策というのは本当にむつかしいものではあるのですが、なんとかしなければなりません・・・。

(谷口恭)

参考: 医療ニュース2012年3月21日 「日本の自殺者、14年連続で3万人超」

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2013年7月2日 火曜日

2012年5月18日(金) 「アクトス」は膀胱癌のリスクを上げない

 2011年6月9日、フランス当局(Afssaps)は、糖尿病治療薬のアクトス(一般名はピオグリタゾン)が膀胱癌のリスクを上昇させるために新規処方をしないよう通達をおこないました。さらに、フランスの決定を受けてドイツも同様の通達をおこないました。その後、欧州医薬品庁(EMA)は、膀胱癌のリスクに注意しながらであれば処方を認める、つまり使用継続は可能、との決定をおこないました。
 
 これは、膀胱癌のリスクを勘案したとしても、アクトスの治療効果に期待すべき症例が多く、ベネフィト(治療により得る利益)がリスクを上回る、と判断されたことを意味します。
 
 そして、この度イギリスでおこなわれた約21万例の2型糖尿病患者を対象とした大規模研究の結果が医学誌『British Journal of Clinical Pharmacology』2012年5月11日号(オンライン版)に掲載されました(注)。
 
 その結果は、アクトス投与患者と他の糖尿病治療薬投与患者の間に膀胱癌増加の有意な差はなかった、つまり、アクトスと膀胱癌には何の関係もない、というものです。

 少し数字を詳しくみてみると、アクトスを内服している患者100,000人あたり膀胱癌を発症したのは80.2人で、他の糖尿病治療薬投与患者では81.8人だったそうです。
 
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 では、なぜフランス当局の研究では、アクトスが膀胱癌のリスクになる、という結果がでたのでしょうか。はっきりしたことは分かりませんが、アクトス内服者に喫煙、肥満などの膀胱癌のリスクとなる要因を抱えた人が(フランスでは)多かったのかもしれません。
 
 太融寺町谷口医院ではフランス当局の発表を受けて、アクトスを処方している患者さんに個別に話をさせていただきました。また、アクトスの新規処方はこの約1年間控えてきましたが、なかなか血糖値の下がらない患者さんにはこれからは検討すべきかと思われます。いずれにしても、個別に話をさせていただきます。
 
(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Pioglitazone and bladder cancer: A propensity score matched cohort study」で、下記のURLで概要を読むことができます。
 
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1365-2125.2012.04325.x/abstract

参考:
医療ニュース
2011年6月12日 「糖尿病治療薬「アクトス」が膀胱ガンのリスク」
2011年6月15日 「糖尿病薬、アクトスに続きビクトーザも注意喚起」

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2013年7月2日 火曜日

2012年5月28日(月) コチニールのアレルギーに注意!

 コチニールという赤色の着色料をご存知でしょうか。

 コチニールとは、コチニールカイガラムシ(別名エンジムシ)という赤い色の虫(カメムシの仲間です)を乾燥させて抽出した色素のことで、染色用色素や食品着色料、化粧品などに用いられています。コチニールは「カルミン酸」と呼ばれることもありますし、「カルミン」と表示されていることもあるそうです。
 
 そのコチニールが重症のアレルギー(アナフィラキシー)をおこしうることが分かり、厚生労働省は2012年5月11日、各都道府県衛生主管部(局)長宛に通達をおこなっています(注1)。
 
 通達によりますと、コチニール(カルミン酸)及びカルミンについて、不純物として含有するタンパク質に起因すると推定されるアナフィラキシー反応を起こすことが判明しているそうです。したがって、これらを含む医薬品、医薬部外品、化粧品、食品などの摂取の際には充分注意し、少しでも異変を感じれば直ちに医療機関を受診しなければなりません。
 
 医薬品のなかでコチニールが使われているのは下記のものです。

・エバステルOD錠(抗ヒスタミン薬、花粉症、じんましん、湿疹などに用います)
・LL配合シロップ小児用 (小児用の風邪薬です)
・ワイドシリン細粒 200 (抗生物質です)
 
 尚、この件に関しては、厚労省だけでなく、消費者庁も注意喚起をしています(注2)。同庁が食品添加物のアレルギー発症で注意を喚起するのは初めてだそうです。

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 化粧品(特に口紅)を使うときは、成分表示をみてコチニールの有無を確認すべきでしょう。

 食べ物では、赤マカロンやカンパリ(ソーダ)、ハム、かまぼこなどに含まれているそうです。アナフィラキシーの報告もあるようですし、そこまでいかなくてもじんましんや、口腔内アレルギー症候群(OAS)といって口の中がこそばくなるような症状が出るアレルギー疾患がおこることもあるようです。これらを口にしてもまったく症状のない人は、直ちにやめなければならない、ということはありませんが、気になる症状が出現したときは医療機関を受診するようにしましょう。
 
(谷口恭)

注1:この通達の宛名は「各都道府県衛生主管部(局)長殿」とされていますが、下記のURLで誰でも閲覧することができます。
(2014年11月19日現在閲覧不可)
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T120514I0020.pdf

注2:消費者庁の注意勧告は下記のURLで閲覧することができます。
http://www.caa.go.jp/safety/pdf/120511kouhyou_9.pdf

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2013年7月2日 火曜日

2012年5月28日(月) 2011年の「いきなりエイズ」は過去最多

 2012年2月24日に厚生労働省のエイズ動向委員会が公表した「いきなりエイズ」(HIV感染がエイズを発症して初めて発覚した症例)の速報値が467人と過去最高レベル、というニュースを過去にお伝えしましたが(下記「医療ニュース」参照)、最終の数値が2012年5月24日に発表されました。
 
 2011年の1年間に報告のあった「いきなりエイズ」は473人にのぼり、これは1984年の調査開始以来最多となります。これで2年連続記録を更新ということになります。(2010年は469人で過去最多でした) まだエイズを発症していない段階でHIV感染が発覚した症例は1,056人で、これは過去4位となります。(1位は2008年の1,126人、2位が2007年の1,082人、3位が2010年の1,075人です。検査数が大幅減少した2009年は1,021人でした)
 
 先日お伝えしましたように(下記「医療ニュース」参照)、東京都では「いきなりエイズ」が大きく減少しています。にもかかわらず、全国では「いきなりエイズ」が過去最多ということは、それ以外の地域での増加が東京での減少を打ち消している、ことに他なりません。
 
 実際、東京都周辺の関東甲信越地方では横ばいもしくは増加傾向にあり、東海地方、九州地方での増加が目立っています。

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 これからは地方都市での検査の充実が課題となるでしょう。しかし、減少傾向にある東京でも依然感染者数は少ないとは言えませんし、横ばいにある大阪でも減っているわけではありません。実際、太融寺町谷口医院でもピーク時の2008年に比べると新たにHIV感染が判るケースは減少傾向にはありますが、決して大幅に減っているわけではありません。
 
 また、以前にも指摘しましたが、最近は、何らかの症状で当院を受診したがまさかその原因がHIVとは思ってもみなかったという「いきなりHIV」が増加しています(下記コラムも参照ください)。
 
(谷口恭)

参考:
医療ニュース2012年4月13日 「東京では「いきなりエイズ」が大きく減少」
医療ニュース2012年3月2日 「減らない「いきなりエイズ」」  

NPO法人GINA GINAと共に第64回(2011年10月) 「増加する「いきなりHIV」」

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2013年7月2日 火曜日

2012年6月1日(金) 風疹が過去最多の勢い

 風疹(ふうしん)が流行っています。

 国立感染症研究所感染症情報センターの報告によりますと、2012年1月から5月20日までに感染が届けられた患者数は205人(速報値)で、これは全数報告が始まった2008年以降の同時期で過去最多となります。昨年(2011年)の同時期は126人でしたから、昨年からみると1.6倍の増加となります。
 
 2011年を1年間でみると患者数は369人で、これは2008年以降で最多となりますが、2010年の89人からみると約4倍となっています。そして、今年(2012年)は2011年を上回る勢いで推移しているということになります。
 
患者数を都道府県別でみてみると、最多は兵庫県の62人で、大阪府46人、東京都28人、京都府12人、と続きます。

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 風疹は、飛沫感染(他人のくしゃみなどで感染します)で、2~3週間の潜伏期間を経て、発疹、発熱、リンパ節の腫れなどの症状が出現します。子どもに感染した場合は比較的軽症ですみますが、それでも脳炎など重篤な合併症を起こすこともあります。
 
 また、風疹で最も問題になるのが、妊娠初期の女性がかかった場合で、こうなると先天性風疹症候群といって、胎児が難聴、心疾患、白内障などの障害を持って生まれることがあります。このため中絶せざるを得ない妊婦さんもいます。
 
 太融寺町谷口医院でも、昨年は2~3ヶ月にひとりくらいの割合で風疹の患者さんがこられました。成人の場合、高熱が続きリンパ節の腫れがなかなか引かないこともあります。
 
 風疹は予防接種(ワクチン)をしていればほぼ完全に防ぐことができるのですが、していない人があまりにも多い、というのが我々医療者の印象です。実際、2004年に国立感染症研究所が発表したデータによりますと、20~30歳代の風疹に対する免疫をもたない人(ワクチンをうっていなくて過去にかかったこともない人)は530万人にも上るそうで、また、私の印象を述べれば(患者さんには失礼ですが)、過去にかかったことがあると思いこんでいて実際にはかかっていなくて成人してから感染した、という人も少なくありません。
 
 風疹ワクチンも他のワクチンと同様、誤解の多いワクチンで、副作用を極端に恐れている人が少なくありません。たしかにワクチンに伴う副作用はゼロではありませんが、副作用のリスクと接種せずに罹患してしまったときのリスクをしっかりと比較検討すべきです。
 
 風疹ワクチンは麻疹(はしか)ワクチンとセットになったMRワクチンというものが定期接種に分類されています。つまり無料で接種できるということです。現在は1歳代で1回(1期)、小学校入学の前年に1回(2期)の合計2回の接種が基本です。また、特例措置として、2008年から5年間(2012年まで)は、中1と高3に相当する年齢でうつことができます。(注)
 
 定期接種の年齢に該当しない人は自費となりますが、これだけ流行してきましたからよほどの理由がない限りは全員が接種すべきと思われます。(特にこれから妊娠を考えている人) まずはかかりつけ医に相談するようにしましょう。
 
(谷口恭)

注:MRワクチンの「定期接種」は現在太融寺町谷口医院では実施していません。お近くの小児科クリニックにお問い合わせください。成人の風疹ワクチン接種はおこなっていますが、通常はまず抗体の有無を調べますから初診時に接種とはなりません。詳しくは受診時にあるいはお電話にてお問い合わせください。また下記「予防接種」もご参照ください。
 
参考:
トップページ「予防接種」
医療ニュース2007年3月6日「はしか・風しん混合ワクチンの2回目接種率わずか30%」

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2013年7月2日 火曜日

2012年6月11日(月) やっぱり「アクトス」は膀胱癌のリスクか

 いったい、アクトスで膀胱癌のリスクは上がるのか、そうでないのか・・・。

 2012年5月11日号(オンライン版)の『British Journal of Clinical Pharmacology』に掲載された論文では、「アクトスは膀胱癌のリスクにならない」という結論が導かれていました(詳しくは下記「医療ニュース」を参照ください)。これで安心か、と多くの医療者が感じていたところ、『British Medical Journal』の2012年5月31日号(オンライン版)では、再びこれをくつがえす論文が掲載されました(注1)。
 
 カナダ、モントリオールのJewish General Hospital臨床疫学センターのLaurent Azoulay氏らが、UKのデータベースGeneral Practice Research Database(GPRD)を用いて分析した結果、「アクトスを2年以上服用し、累積服用量が28,000mgを超えると、膀胱癌の発症リスクが2倍に上昇していた」、と結論づけています。
 
 この研究では、1988~2009年に新規に経口糖尿病治療薬を処方された患者115,727例(平均64.1歳)が対象とされています。平均4.6年の追跡調査期間中に膀胱癌と診断されたのは470例(10万人・年当たり89.4)に上ります。
 
 このなかでアクトスが処方されていたのは19例(5.1%)で、対照群では191例(2.9%)だったそうです。これらを統計学的に解析すると、アクトス投与による膀胱癌発症の相対リスク(RR)は1.83となるそうです。さらに、アクトス投与量が多ければ多いほど膀胱癌のリスクが上昇するという結果となり、2年以上かつ累積服用量28,000mg以上では相対リスクは2.54にもなるとのことです。
 
 アクトス(一般名はピオグリタゾン)はチアゾリジン系というグループに分類されるのですが、興味深いことに、同じチアゾリジン系のAvandia(日本では未承認です。一般名はロシグリタゾンといいます)では、膀胱癌のリスク上昇は認められなかったそうです。
 
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 太融寺町谷口医院では、2011年6月からフランス当局の発表を受けて、アクトスの新規処方を見合わせてきました。2012年5月12日の『British Journal of Clinical Pharmacology』の論文が公表されたことで、再び新規処方を検討していたのですが、今回の『British Medical Journal』の発表で、新規処方の見合わせは当分続けざるをえない、と考えています。
 
 それにしても『British Journal of Clinical Pharmacology』でアクトスの安全性が主張されて1ヶ月もたたないうちにまったく逆の結論の論文が公表されたことは興味深いといえます。しかも、どちらの研究も対象としているのはGPRDという同じデータベースなのです。ではどちらの研究に信憑性があるか、という点については、より権威のある『British Medical Journal』かと考えられますが(より厳しい審査を受けているはずですから)、今後の展開にも注目したいと思います。
 
 現在糖尿病の薬にはすぐれたものがたくさんありますから、アクトスが使えなくなったからといって困窮する患者さんはほとんどいないと思われます。アクトスに限らず薬の副作用にはこれからも注意していきたいと思います。
 

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「The use of pioglitazone and the risk of bladder cancer in people with type 2 diabetes: nested case-control study」で、下記のURLで全文を読むことができます。
 
http://www.bmj.com/content/344/bmj.e3645

参考:医療ニュース
2012年5月18日 「「アクトス」は膀胱癌のリスクを上げない」
2011年6月12日 「糖尿病治療薬「アクトス」が膀胱ガンのリスク」
2011年6月15日 「糖尿病薬、アクトスに続きビクトーザも注意喚起」

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