医療ニュース
2013年7月10日 水曜日
2011年3月11日(金) 日本の女子中学生の1.9%が摂食障害
女子中学生の100人に2人は治療が必要な深刻な摂食障害である・・・
これは厚生労働省の研究班が2011年3月1日に公表した内容です。(報道は3月2日の共同通信など)
研究班は、2009年~2010年、関東地方と中国地方の36の中学の男女生徒約8千人を対象として調査をおこなっています。体形や食事への意識など合計28項目を尋ね、5,161人から有効回答を得ています。(女子2,604人、男子2,557人)
その結果、女子の1.9%、男子の0.2%が、治療が必要な深刻な「摂食障害」と判断されたそうです。
やせることを目的とした行為を具体的にみていくと、「下剤の使用」が女子1.1%、男子0.7%、「口に手をつっこんで吐いた」が女子1.4%、男子0.9%、「食事を抜いた」が女子3.6%、男子2.6%、「過度の運動をした」が女子6.8%、男子3.8%となっています。(いずれも過去4週以内に2回以上という条件での回答です)
また、「むちゃな大食いを直近の4週間に8回以上した」女子は3.5%、男子は1.3%だったそうです。
研究者によりますと、「摂食障害」と判断された女子の特徴として、①夜遅くまで起きている、②家族との食事は楽しくない、③家族から「もう少し痩せたら」と言われる、④気持ちを本当に分かってくれる人は誰もいない、などに当てはまる傾向があるそうです。
*************
日本の摂食障害者の割合はときどき発表されていますが、1.9%というのは過去最高ではないでしょうか。この研究では中学生が対象とされていますが、私の印象で言えば、増えているのは中学生だけでなく、小学生や30代以降にも目立ちます。つまり、全体の総数が増えると同時に、低年齢化と高年齢化が同時に進行しているのです。
それにしても摂食障害は本当にむつかしい病だと思います。まず「治さなければならない」と認識してもらうのに時間がかかり、やっと治そうという意識ができて精神科クリニックを紹介しても、「やっぱりダメでした・・・」と言って戻ってくる患者さんがいかに多いか・・・。
摂食障害が怖いのは「死に至る病」だからです。最善の方法ではないかもしれませんが、小学校低学年のときに、「拒食症や過食症というのはとっても怖い病気なんですよ」ということを教育の現場で教えることが必要ではないかと私は考えています。
(谷口恭)
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|2013年7月10日 水曜日
2011年3月15日(火) 肥満男性の3割は減量を試みていない
厚生労働省が健康増進法に基づいて毎年おこなっている調査に「国民健康・栄養調査」というものがあります。2011年3月8日、同省は平成20年版の報告(完全版)を公表しました。概要版については、すでに2009年11月に公表されており、肥満と喫煙に関するデータをこの「医療ニュース」でも紹介しました。(下記参照)
詳しい報告書は下記URLで誰でも閲覧することができますので、興味のある方は参照いただきたいのですが、注目すべき点を少しあげていきたいと思います。
・肥満者(BMIが25以上)の割合は、男性28.6%、女性20.6%。
・男性の20-60歳代は、過去5年間で肥満者割合の増加傾向にあるが、それ以前の5年間に比べると増加率は鈍化している。
・女性の40-60歳代では、肥満者の割合が減少している。
・やせの者(BMIが18.5未満)の割合は、男性4.3%、女性10.8%であり、女性では20代(22.5%)および30歳(16.8%)で高い。
・体重を減らそうと考えている者の割合は、男性で40.5%、女性で51.6%。
・肥満者の男性の29.8%は体重を減らそうと考えていいない。
・やせている女性の12.6%がさらに体重を減らそうとしている。
・運動習慣のある者は、男性33.3%、女性27.5%であり、平成15年に比べ男女とも増加している。
・現在習慣的に喫煙している者は、男性36.8%、女性9.1%で、平成15年以降男女とも減少している。
・たばこをやめたいと思う者は、男性28.5%、女性37.4%であり、平成15年に比べ男性では増加している。
**********
全体的な傾向として、男性は肥満が増えているのにもかかわらず減量に無関心、女性は特に若い世代でやせているのにもかかわらずさらにやせようとしている、といった感じでしょうか。
(谷口恭)
注:この報告書の詳細は下記URLで読むことができます。
http://www.m3.com/tools/Document/WIC/pdf/201103_2/1494_7_1.pdf
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|2013年7月10日 水曜日
2011年3月28日(月) カリウム摂取で心血管疾患を予防
カリウムの豊富な食事を摂ることにより、脳卒中リスクや心疾患リスクが低減する・・・
これは、イタリアのフェデリコ(Federico)Ⅱ世大学、Pasquale Strazzullo博士の研究結果で、医学誌『American College of Cardiology』3月8日号(オンライン版)に論文が掲載されています(注1)。
研究では、これまでに発表されている11件の研究(合計247,510人が対象)を、メタ解析という方法で総合的に分析しています。その結果、カリウムを1日に1.64g以上摂取する人は脳卒中リスクが21%低く、その他の心血管疾患リスクも低い傾向にあることが判明したそうです。
***************
カリウムを1.64gと言われても、何をどれくらい食べればいいのか分かりにくいと思いますが、まず、カリウムが豊富な食品の代表は野菜と果物であることを確認しましょう。具体的には、例えば、カリウムが豊富な果物の代表であるバナナであれば1本で0.36グラム、カリウムが豊富な野菜の代表のトマトでは中くらいの大きさのもの1個で0.21グラムです。カリウムは肉やいも、炭水化物にも含まれていますが、1日1.64グラムというのは、野菜・果物を積極的に摂らないとちょっとむつかしいのではないかと思われます。
この研究の研究者は、「果物または野菜を5サービング以上食べれば、予防効果を得るために必要なカリウムを摂取できる」とコメントしています。では、「サービング」とは何なのか、ですが、生野菜なら1カップ(240mL)で1サービング、果物なら、例えばバナナ1本で1サービングが目安になります。(あまり分かりやすくないですね)
また、研究者らは、果物・野菜・ナッツ類が豊富で、低脂肪の乳製品が適度に含まれるDASHダイエット(注2)をおこなえば、カリウムが積極的に摂取できる可能性を指摘しています。
尚、ひとつ補足しておくと、多くの人にとってカリウム摂取量が増えても危険はありませんが、腎機能低下を患っている人や、カリウムを低下させる薬剤を服用している人は医師に相談すべきです。
(谷口恭)
注1:この論文のタイトルは、「Potassium Intake, Stroke, and Cardiovascular Disease」で、下記のURLで概要を読むことができます。
注2:DASHとは「Dietary Approaches to Stop Hypertension」の略で、ダイエットにより高血圧を予防することを目的としています。1日2000kcalが基本で、脂肪やコレステロールの摂取量を減らし、特に果物と野菜を積極的に摂るのが特徴です。
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|2013年7月10日 水曜日
2011年4月18日(月) ビール中ジョッキ1杯で発ガンリスクが上昇・・・
飲酒は絶対的に悪いものではなく、少量のアルコールはむしろ身体にいい・・・。このように言われることがしばしばありますが、では「少量」とはどれくらいなのでしょう。
女性の場合、1日1杯の生ビールで発ガンのリスクが上昇する・・・
このような結果がヨーロッパの大規模研究で明らかになり、医学誌『British Medical Journal』2011年4月7日(オンライン版)で発表されました。(下記注参照)
この研究は、欧州10カ国の約52万人が対象となった過去の大規模研究から、イギリス、フランス(女性のみ)、ドイツ、イタリア、オランダ(女性のみ)、スペイン、ギリシャ、デンマークの37~70歳の363,988人(男性109,118人,女性254,870人)のデータを用いて解析しています。対象者の過去1年間のアルコールの消費量と発ガンの有無との関係を調べています。
その結果、飲酒グループと非飲酒グループを比較すると、飲酒グループのガンリスクは男性で10%、女性で3%上昇しています。特に、上気道および消化器ガン(肺ガン、胃ガン、喉頭ガンなど)は男性44%、女性25%と高い上昇率を示しています。その他のガンでは、大腸ガンは男性17%、女性4%の上昇、肝臓ガンは、男性33%、女性18%の上昇、女性の乳ガンは5%の上昇となっています。
世界がん研究基金(WCRF)および米国がん研究所(AICR)は、1日当たりのアルコール摂取量を男性で24g以下,女性で12g以下にするよう推奨しています。アルコール12gとは、ワインで言えばグラス1杯(120mL)、ビールなら中ジョッキの約半分、日本酒では約0.5合に相当します。今回の研究でこれらの基準を超えた割合は、男性で39.0%、女性で33.2%、1日当たりアルコール摂取量の平均はそれぞれ 33.2g、15.9gとなっています。
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最近、WHO(世界保健機関)は、100ヶ国以上の加盟国におけるアルコール摂取と健康被害に関する報告書「Global status report on alcohol and health」を発表しました。
その報告書によりますと、アルコールの有害摂取により世界で年間250万人が死亡し、これは世界の全死亡件数の4%に相当するそうです。少し詳しくみると、全世界の男性の死亡の6.2%,女性の死亡の1.1%がアルコールに関連しています。また、毎年32万人の若年者(15~29歳)がアルコール関連の原因で死亡しており、これは同年齢層の全死亡件数の9%に相当するそうです。アルコールによる死亡の大半は、アルコールの有害摂取に起因した外傷やガン、心血管疾患、肝硬変による死亡である、とされています。
現在、世界的なレベルでアルコール摂取に対する注意勧告がされており、上記研究結果はその流れを加速させるかもしれません。
タバコはダメで、あぶらものはNG、塩分制限もしつこく言われるようになってきて、ついにアルコールもごく少量しか許されない・・・。住みにくい世の中になったなぁ、とぼやきたくなります。
(谷口恭)
注:この論文のタイトルは、「Alcohol attributable burden of incidence of cancer
in eight European countries based on results from prospective cohort study.」で、下記URLで全文を読むことができます。
http://www.bmj.com/content/342/bmj.d1584.full.pdf?sid=d1190dc0-4284-43a6-b23f-b903b44947bb
参考:医療ニュース
2010年8月23日「飲酒が関節リウマチに有効?」
2010年5月21日「飲酒によりリンパ系腫瘍のリスクが低減」
2010年4月8日「適度な飲酒は女性の体重増加を抑制」
2009年5月15日「お酒弱いのに飲酒・喫煙で食道ガンのリスク190倍」
2008年6月1日「タバコと酒のコンビネーションが肺がんのリスク」
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|2013年7月10日 水曜日
2011年4月19日(火) 「買い物」は高齢者の寿命をのばす
毎日買い物に行く高齢者は、買い物に行かない人に比べ寿命が長い・・・
これは台湾の学者による研究結果で医学誌『Journal of Epidemiology and Community Health』2011年4月6日号(オンライン版)に掲載されています。(下記注参照)
研究では、1999年および2000年に実施された「高齢者の栄養と健康に関する調査」のデータを解析しています。対象者は、自宅で自立した生活を送る65歳以上の台湾人1,850人で、買い物の頻度と個人の健康、経済状態、死因などが分析されています。
対象者の約半数は、買い物には全く行かないかほとんど行かないと回答しており、22%が週2~4回買い物に行く、17%は毎日買い物に行くと回答しています。頻繁に買い物に行く人は、比較的若く、男性に多い傾向にあるようです。全体的な健康状態は良好で、運動や友人との食事で外出することが多いという結果がでています。また、意外なことに喫煙やアルコール摂取量が多い傾向も認められたそうです。
毎日買い物をする人は、買い物に行かない人に比べ、死亡率が全体で27%低い(男性28%、女性23%)という結果がでています。
対象者のほとんどは経済的に自立しており、買い物に行かないのは貧困が理由ではありません。
研究グループは「正式な運動に比べると、買い物は簡単に楽しく体を動かすことができるために魅力的な健康法である」と結論しています。
**********
買い物で長生きできる!、と聞いて嬉しく感じる人も多いのではないでしょうか。最近の研究は、例えば「○○以上のアルコールはNG」とか「運動は週○回以上、1回○○分以上でないとダメ」とか、聞いていてしんどくなってくるようなものが多いですから、「買い物で長生き」というのは、(もちろんその言葉に踊らされてはいけませんが)夢のある研究成果と言えるかもしれません。
ちなみに私は買い物が苦手で、「時間がもったいないからインターネット上で購入・決済を済ませてしまおう」と考えてしまいます。しかし、この論文を読んで、老後は買い物を趣味のひとつにしようかと考えています。今回の研究が実施された台湾は庶民的な市場や屋台が有名ですが、あのような環境なら買い物が楽しくなるのかもしれません。日本にもワクワクするような市場が増えることを望みたいと思います。
注:この論文のタイトルは、「Frequent shopping by men and women increases survival
in the older Taiwanese population」で、下記のURLで概要を読むことができます。
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|2013年7月10日 水曜日
2011年4月28日(木) 児童虐待を受けた経験5%
18歳頃までに両親や同居者から虐待を受けた経験がある人は男性2.2%、女性は7.1%にもなる・・・
これは、厚生労働省の研究班が2年に一度おこなっている「男女の生活と意識に関する調査」で明らかになったデータです。尚、この調査で虐待経験を尋ねたのは今回が初めてだそうです。
この調査は2010年9月に16~49歳の男女約3千人を対象に実施されています。
虐待の内容については、「心を傷つけるようなことを繰り返し言うなど<心理的虐待>」が66.2%で最多となっています。
その他の虐待をみてみると、「殴る、蹴る、熱湯をかける、たばこの火を押しつけるなどの<身体的虐待>」が54.5%、「無視したり、食事を与えなかったりするなどの<養育放棄>」が15.6%、<性的虐待>は男性はゼロですが、女性は14.5%となっています。
この調査では<虐待>と両親の離婚の関係が調べられています。<虐待>を経験した人のうち、両親の離婚の経験がある人の割合は36.4%で、虐待経験がない人は10.6%ですから3倍以上の開きがあることになります。また、<虐待>経験者は、中学生の頃に親との会話が少ないという傾向が認められたそうです。
また、<虐待>を経験した人のなかで、自分で自分の体に傷を付ける<自傷行為>の経験者の割合は32.5%となっています。虐待経験がなく自傷行為を行ったことがある人が5.7%ですから5倍以上の差があることになります。
*************
今回の調査ではおこなわれていませんが、このような<虐待>は世代伝播することが指摘されることもあります。また、「望まない妊娠」で産まれた子供が<虐待>を受ける傾向にあると言われることもあります。
その他にも親がアルコール依存症や薬物中毒であったり、あるいは摂食障害、ギャンブル依存、セックス依存などがあったりすることとの関連も指摘されることがあります。
ところで、虐待を加える親は虐待をしたくてしているのでしょうか。そんなはずはありません。虐待などしたくないのだけれど気づいたときには虐待してしまっている・・・、それが虐待の姿です。ですから、虐待を防ぐには「子供を親から守る」と同時に「親のケアをする」という視点が重要なのではないかと私は考えています。
(谷口恭)
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|2013年7月10日 水曜日
2011年5月6日(金) カルシウムサプリメントが女性に危険かも・・・
カルシウムのサプリメントを積極的に摂取している人は少なくないのではないかと思われます。なにしろ、骨粗しょう症が増えているということが頻繁に指摘されていますし、現代人の骨が脆くなってきていることは大勢の人が感じているのではないでしょうか。実際、日本人が摂取基準を取れていないミネラルやビタミンと言えばカルシウムが筆頭に上がります。
厚生労働省が定めている1日あたりのカルシウム摂取基準は、成人であれば男性700mg、女性650mg程度ですが、平成18年の国民健康・栄養調査によりますと、実際には、男性平均546mg、女性平均524mgしかとれておらず基準に届いていません。つまり、「現代人はカルシウム不足」というのは公的なデータからも証明されているというわけです。(摂取基準については正確には年齢ごとに基準が異なります。下記注1を参照ください)
食事で充分なカルシウムが摂れないなら、サプリメントで摂ればいいじゃないか・・・。
誰もがそう思うでしょうし、実際カルシウムのサプリメントはかなり普及しているといっていいでしょう。ところが、です。「カルシウムサプリメントは女性の心疾患リスクを高める」という研究結果が発表され物議をかもしています。詳細は医学誌『British Medical Journal』2011年4月19日号に掲載されています。(下記注2参照)
この研究では、WHI(Women’s Health Initiative study)と命名されたアメリカの大規模研究のデータが用いられ、さらに約3万人の女性を対象とした未発表の13研究のデータが追加されて分析が加えられています。その結果、「カルシウムサプリメント摂取によって心臓発作リスクが25~30%、脳卒中が15~20%増大した」ことが判ったそうです。
研究者らは、「カルシウムは動脈硬化に関連しているのだから、今回の結果は生物学的に理にかなっている」とコメントしています。
***************
女性のカルシウムサプリメント摂取に否定的なこの研究はすべての学者から肯定されているわけではありません。実際、日本にも海外にもカルシウム製剤を処方する医師は大勢いますし、カルシウムサプリメントを摂らないように患者さんに注意している医師はほとんどいないのではないかと思われます。(過剰摂取に注意を促すことはありますが)
今後さらなる追跡調査が行われることを期待したいと思います。また、ビタミンDとカルシウムサプリメントを併用すれば心血管系のリスクがどうなるのか、男性のカルシウムサプリメント摂取はどのように考えればいいのか、といったあたりの研究も待ちたいところです。
現時点で確かなことが2つあります。ひとつは、現代人の多くがカルシウム不足であること、もうひとつは、カルシウムは食事から摂れば何の問題もない、ということです。
(谷口恭)
注1:カルシウムの摂取基準量については、独立行政法人国立健康・栄養研究所の下記のサイトが参考になるかと思います。
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail660.html
注2:この論文のタイトルは、「Calcium supplements with or without vitamin D and risk of
cardiovascular events: reanalysis of the Womens Health Initiative limited access dataset
and meta-analysis」で、下記のURLで全文を読むことができます。
http://www.bmj.com/content/342/bmj.d2040.full.pdf?sid=f404aad1-c0ac-4fa4-90d3-118347e1d97f
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|2013年7月10日 水曜日
2011年5月21日(土) 「茶のしずく石鹸」が自主回収
過去にも「お茶石鹸」に含まれている小麦によるアレルギー、それも重篤なアレルギー反応が起こりうることをこのサイトで紹介してきましたが、ようやくメーカーがその石鹸を「自主回収」することを決定しました。
メーカー((株)悠香)のこの決定を受けて、2011年5月20日、厚生労働省は報道関係者に向けてのプレスリリースをおこないました。(下記注参照)
(株)悠香が製造する「茶のしずく石鹸」の使用者のなかに、運動誘発性アレルギーを発症する人が続出し、ときに重篤となったケースの報告もありました。この原因はこの石鹸に含まれている小麦が原因であることが分かっています。
尚、2010年12月8日以降に発売されている「茶のしずく石鹸」には、すでに小麦が含まれていないそうです。
************
この話題はここ1~2年、皮膚科やアレルギー関連の学会では必ず取り上げられていました。2010年10月の時点で、すでに重症化した被害者の報告が相次いでおり、厚生労働省が注意喚起の発表をしていたわけですから、なぜそのときに自主回収がされなかったのか、という疑問はぬぐえません。
小麦アレルギーをいったん起こしてしまうと、今後小麦製品(パンやうどん)が一切食べられないことになりかねません。ですから、まだ(2010年12月7日以前に発売された)この石鹸をお持ちの方がおられれば直ちにメーカーに連絡をとられることを勧めます。
(谷口恭)
注:自主回収の詳細、及びメーカーからの詳しい案内は、下記URLを参照ください。
http://www.info.pmda.go.jp/happyou/file/PMDSI_110520.pdf
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|2013年7月10日 水曜日
2011年5月27日(金) エイズ発症者が過去最多に
厚生労働省は毎年5月末に前年のHIV/エイズ関連のデータを発表します。昨年(2010年)1年間のエイズ発症者(エイズを発症して初めてHIV感染がわかったケース、いわゆる「いきなりエイズ」)が469人でこれは、昨年の431人から38人の増加となり、そして過去最多です。
2010年に新たにHIV感染が判った人(まだエイズを発症していない感染者)は、1,075人で、これは2009年の1,021人より54人の増加となります。「新たにHIV感染が判った人」は2002年から増加の一途をたどっていて、2009年に初めて減少に転じましたが、これは感染者が減ったのではなく、検査を受ける人が減ったことが原因だと考えられています。そして、2010年には再び増加に転じています。
全国の保健所などでおこなっている無料のHIV抗体検査は、2009年は新型インフルエンザの影響で減少したことが指摘されましたが、2010年は2009年をさらに13%下回っているそうです。同時に、保健所などへの相談件数も減少しているそうです。
****************
HIVへの関心が低下し、検査件数が減少しているのにもかかわらず新規で発見される人は増えている。そして「いきなりエイズ」も増加している・・・。
これは、言うまでもなく、「HIVに感染しているのに気づいていない人が増加している」ことを示しています。
太融寺町谷口医院でも、(エイズを発症して受診という人はほとんどいませんが)何らかの症状からHIV感染が発覚するケースは2009年、2010年と比べて今年(2011年)は大きく増えています。2007~2008年は、発熱や倦怠感といった症状から、あるいは無症状でもキケンな行為があったことから自分自身でHIV感染を心配して受診、という患者さんが多かったのですが、2009年以降は、患者さん自身はHIVなどとは夢にも思っていない、というケースが増えています。
参考:医療ニュース
2010年6月10日「HIVの「検査数」が大幅減」
2009年6月20日「日本のHIV、増加傾向は変わらず」
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|2013年7月9日 火曜日
2011年5月30日(月) 不活化ポリオワクチンがついに導入か
ポリオのワクチンは、世界的には「不活化」を使うのが一般的になってきているのに日本ではいまだに「生」を使っていることが問題である、ということはこのサイトで何度かお伝えしてきましたが(下記医療ニュース参照)、ついに日本でも不活化ワクチンが導入される見込みがでてきました。
2011年5月26日に開催された厚生科学審議会感染症分科会の予防接種部会で、早ければ2012年度にも不活化ポリオワクチンが導入される見通しが示されました。
厚生労働省によりますと、国内ワクチンメーカー4社が不活化ポリオワクチンとDPTワクチン(ジフテリア・百日咳・破傷風の3種混合ワクチン)を混合した、言わば「4種混合ワクチン」を開発中で、2011年中に承認申請がおこなわれる見込みだそうです。
ただし、DPTワクチンをすでに接種している人が、この新しい4種混合ワクチンを接種することに問題はないのかという懸念があります。そこで、厚生労働省では、不活化ポリオワクチン単独のワクチンを国内で開発すべきだと提案しています。同省の担当者は、「今後、不活化ポリオワクチン単独のワクチン開発に協力していただける企業を探していく」とコメントしているそうです。(報道は5月26日の読売新聞など)
************
まず基本的なことをおさらいしておくと、生ワクチンの問題は、①非常に稀ではあるがポリオに感染したときと同じような麻痺症状がおこりうること、②成人には接種できないこと、です。このため、一部の小児科クリニックや旅行医学を積極的に実践しているクリニックでは不活化ポリオワクチンを輸入して接種しています。(尚、2001年度からの10年間で、生ワクチンでポリオウイルスに感染したときと同じような症状がでた例は15例、生ワクチンを接種した児童の便などから感染したと思われる二次感染が6例報告されています)
しかし、単独ワクチンよりも4種混合ワクチンが先に開発されたのはなぜなのでしょうか。混合ワクチンというのは、単純にそれぞれのワクチンを足してつくられるわけではありませんから、単独ワクチンよりも4種混合ワクチンの開発が先におこなわれたことに合理的な理由があるのでしょう。しかしながら、なぜ厚生労働省は国内メーカーにこだわり、海外で実績のある不活化ポリオワクチンを輸入しないのか、という疑問が私にはぬぐえません。
国内メーカーがこれから開発するよりも、すでに海外で実績のあるワクチンを輸入して使う方がずっと現実的だと思うのですが、政治的な問題(例えばワクチンメーカーが官僚の天下り先になっているとか・・・)を疑いたくなります。
(谷口恭)
参考:医療ニュース
2010年12月17日「ポリオ不活化ワクチンを求め患者団体が署名提出」
2010年2月22日「神戸の9ヶ月男児がポリオを発症」
メディカルエッセイ第90回(2010年7月)「理想のワクチン政策とは・・・」
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