医療ニュース
2013年7月17日 水曜日
2010年4月14日(水) 歩くのが速い女性は脳卒中を起こしにくい
1分間に80メートル以上で歩く女性は、普段歩かない女性と比べ脳卒中を発症する危険性が約4割低い・・・
これは米国ハーバード大学の研究者による大規模調査の結果です。医学誌『Journal of the American Heart Association』2010年4月6日号に論文が掲載されています。(詳細は下記参照)
研究は、米国在住の健康な女性39,315人(平均年齢54歳)を対象に、およそ12年間、歩行距離や歩行速度などを2~3年おきに申告してもらうことによりおこなわれています。調査期間中に脳卒中を発症した対象者は579人です。
分析の結果、歩く頻度を問わず、分速80メートル以上の人が脳卒中になる危険性は、普段歩かない人と比べて37%低いことが分かりました。分速53メートル以下のゆっくりと歩く場合では、危険性は18%の減少にとどまっていました。
しかし、週に2時間以上歩く人は、速度に関係なく、歩かない人に比べ30%低いという結果もでています。
さらに細かく見てみましょう。一般に「脳卒中」というのは「脳出血」と「脳梗塞」に分けることができます。(文脈によっては「くも膜下出血」を入れることもあります) 概して言えば「脳出血」の方が「脳梗塞」よりも死亡率が高いと言えます。その「脳出血」だけでみてみると、分速80メートルの人は、歩かない人に比べ危険性が68%も低く、週2時間以上歩く人は(速度に関係なく)歩かない人に比べて57%低いという結果がでています。
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これらをまとめてみましょう。まず、頻繁にそして速く歩くことで脳卒中を予防できる可能性が高く、速く歩けない人でもこまめに歩く習慣をもてばリスクを減らすことができる、ということになります。
分速80メートルは、時速で言えば4.8キロになります。フルマラソンを4時間で走る人でだいたい時速10キロです。意識して早歩きをするとすれば、男性なら時速6~7キロ、女性は時速5~6キロくらいだと思います。年齢やどのような病気をもっているかにもよりますが、時速4.8キロ(分速80メートル)はそれほどむつかしいことではないと思われます。ならば、日頃から少しだけ意識して、「できるだけこまめに、そして速めに歩く」、というのを心がければどうでしょうか。
尚、別の研究で男性について調べられたことがあるそうですが、男性では、歩行の頻度・速度と脳卒中の間に関連性は認められなかったそうです。
この論文のタイトルは、「Physical Activity and Risk of Stroke in
Women」で、下記URLで概略を読むことができます。
(谷口恭)
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|2013年7月17日 水曜日
2010年4月28日(水) 東京都、子供の食物アレルギーが10年で倍増
食物アレルギーの経験がある3歳児は5人に1人で、この10年で2倍以上に増加・・・。
これは、東京都が3歳児を対象に実施しているアレルギー疾患に関する調査の結果です。厚生労働省によりますと、未就学児の大規模な定点調査で食物アレルギーの増加傾向が裏付けられたのは初めてだそうです。(報道は4月23日の毎日新聞、24日の日経新聞など)
この調査は1999年から5年ごとに行われ、10月の3歳児健診で保護者に調査票を配布しているそうです。2009年は7,247人を対象に、ぜんそくや食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などの症状について尋ね、2,912人(40.2%)から回答を得ています。
調査の結果、食物アレルギーの症状が出たことがある子供は22%で、10年前(1999年)の調査の9%から2倍以上になっています。原因とみられる食べ物で最も多かったのは卵の71%で、以下、牛乳(27%)、小麦(10%)、いくら(9%)と続きます。症状は皮膚症状が9割を占めています。
食べ物以外のアレルギー症状もこの10年で増加傾向にあり、アレルギー性鼻炎は8%から20%、ぜんそくが10%から18%と増加しています。
一方、東京都は、都内の認可保育所、認証保育所、幼稚園の合計3,206ヶ所についても調査を実施しています(回答率65.2%)。食物アレルギーの乳幼児がいたのは回答した施設の68%に上りますが、食物アレルギー症状を起こした子供の対応マニュアルを持つ保育所や幼稚園は半数にとどまっているそうです。東京都は原因調査を続けるとともに「原因物質とどうつきあったらいいか、保護者にガイドブックなどを使って指導したい」としています。
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未就学児の大規模調査は他にはないとのことですが、おそらく東京都以外の地域でも同様の結果がでるのではないでしょうか。
日頃患者さんを診ている私の感想としては(といっても太融寺町谷口医院の患者さんのなかで未就学児は少ないですが)、食物アレルギーよりもアレルギー性鼻炎が増えているように感じます。以前は小学校に入学する前の鼻炎というのは大変珍しいという印象があったのですが、最近はそうでもなくなってきています。
食物アレルギーがむつかしいのは、血液検査は参考程度にしかならないということ(例えば、コムギに陽性とでても必ずしもパンなどの小麦製品を食べてはいけないわけではありません)と、いつ制限をやめるかそのタイミングの見極めが困難、ということです。食物アレルギーをお持ちの親御さんは主治医としっかり相談するようにしましょう。
(谷口恭)
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|2013年7月17日 水曜日
2010年4月30日(金) ビタミンB6、葉酸などで心血管疾患のリスク低下
最近、ビタミンB6の有用性の報告が相次いでいるように思えます。過去にも何度かお伝えしてきましたが(下記医療ニュース参照)、今回のニュースも心不全や心筋梗塞といった心血管のリスクが低下するという情報です。
この調査は大阪大学公衆衛生学教室が中心となってすすめられ、研究結果は医学誌『Stroke』の2010年4月15日号(オンライン版)で発表されています。(下記参照)
研究は、Japan Collaborative Cohort Study Groupと呼ばれる調査(1988~90年に実施)に参加し、食事調査票に答えた40~79歳の男性23,119例と女性35,611例が対象とされています。調査開始時点で心筋梗塞など冠動脈疾患やガンにかかったことがある人は除外されています。平均14年間の追跡期間中に、2,087例が心血管疾患により死亡しています。
その結果、男性では,ビタミンB6と葉酸の摂取量増加が心不全による死亡リスクの低下に関連していることが確認されました。一方、女性では脳卒中や心筋梗塞など冠動脈疾患といった心血管疾患による死亡リスク低下との関連が示されました。年齢やBMI、高血圧、糖尿病、さらに喫煙、飲酒などの因子を補正した後も同様の関連が認められたようです。
ビタミンB6や葉酸の摂取量が多いほど冠動脈疾患や脳卒中のリスクが低下することは欧米では以前から報告されているのですが、アジア人における有用性に関するデータはあまりないようなので、今回の調査結果は今後注目されることになるでしょう。
尚、ビタミンB12では、心血管疾患に対しての死亡リスクの明らかな低下は認められなかったそうです。
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今回の研究にもサプリメントの有用性については指摘がありません。以前、食事からビタミンB6の効果的な摂取をおこなうには、結局のところバランスのいい食事を心がけるのが最適というお話をしましたが、葉酸も同様です。野菜やフルーツに豊富に含まれているのが葉酸の特徴ですが、動物性の食品にも含まれています。詳しくは下記URLを参照してみてください。特に妊婦さんは葉酸摂取について積極的に検討されるべきでしょう。
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail652.html
ビタミンB6については、興味深いニュースがあります。広島大学大学院生物圏科学研究科が、広島県三原市名産のタコを使って、健康食品としてのタコの可能性を探る研究に取り組むことを発表しました。タコにはビタミンB6が豊富に含まれており、タコをマウスやラットに与える動物実験で効果を検証するそうです。将来的にタコ由来の健康食品が誕生するかもしれません。
上記の論文のタイトルは、「Dietary Folate and Vitamin B6 and
B12 Intake in Relation to Mortality From Cardiovascular Diseases.
Japan Collaborative Cohort Study」で、概要を下記のURLで読むことができます。
(谷口恭)
参考:医療ニュース
2010年4月3日「やはりビタミンB6は大腸ガン予防に有効か」
2008年6月1日「心疾患の予防にはビタミンB6」
2007年8月4日「大腸がんの予防、男性ビタミンB6、女性はコーヒー」
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|2013年7月15日 月曜日
2010年4月30日(金) 「人口減少社会」が本格的に
4月16日、総務省は、2009年10月1日現在の日本の推計人口を発表しました。推計人口は国が5年ごとに実施する国勢調査を基に、出生や死亡、出入国などその後の増減を加味して算出されます。
定住外国人を含む総人口は1億2,751万人で、前年に比べて18万3,000人(0.14%)減ったことになります。減少は2年連続で、減少幅は過去最大となります。女性については、初めて死亡者数が出生者数を上回る自然減少になっています。男性は5年連続での自然減となり、総務省は「本格的な人口減少時代に入った」と分析しています。
国外への流出が国内への流入を上回る人口の「社会減」は12万4,000人となっています。外国人は出国者が入国者を47,000人上回り、1994年以来、15年ぶりの社会減となるそうです。ブラジル人など自動車関連企業などで勤務していた多くの外国人が帰国したことが最たる要因と分析されています。
全国47都道府県のうち、人口が増加したのは沖縄、神奈川、千葉、埼玉、東京、滋賀、愛知の7都県です。沖縄県は、前年比で大幅に人口が増加した唯一の県ですが、これは沖縄移住ブームが続いているからと考えられます。それ以外は都市部への人口流入であり、過疎化と過密化の進行が依然として進行していることを示しています。
推計人口では、65歳以上の老年人口が総人口に占める割合が22.7%に達し、過去最高を更新しました。老年人口の伸びを前年比でみると、埼玉県(4.9%)が最も高く、千葉県(4.7%)、神奈川県(4.3%)と続きます。一方、秋田県や鳥取県などの地方は低い伸びにとどまっています。埼玉、千葉、神奈川では、75歳以上の人口の伸びも5%を超えており、全国平均の3.7%を大幅に上回っています。
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都市部ではもともと、総人口に占める高齢者の割合が地方より低いのが特徴でした。都会は若者の街だったのです。しかし、ここにきて1960年代前後に仕事を求めて都市部に集まった世代(当時の若者)が高齢化し、高齢者の割合が上昇しているのです。
都市部の高齢者は一人暮らしの割合が多いのが特徴です。今後、「孤独死」の問題がさらにクローズアップされることになるでしょう。
(谷口恭)
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|2013年7月15日 月曜日
2010年4月30日(金) リポ酸で低血糖症、重症例も
α(アルファ)リポ酸という物質をご存知でしょうか。体脂肪を減らしダイエットに効果があり、さらに老化防止に効果があるなどと謳われ、数年前より健康食品として市場に出回っています。
このαリポ酸が原因で、動悸や震えなどを引き起こす「自発性低血糖」が相次いで報告されています。
「自発性低血糖」とは、血糖値を下げる薬を使っているわけではないのに低血糖になる病態のことを言い、症状としては動悸や手の震えなどが出現します。重症化すると、意識を失い昏睡状態となります。
厚生労働省の調査によりますと、全国の主要病院207施設で、2007年から3年間に自発性低血糖と診断された患者187人のうち、サプリメントとの関連が報告されたのは19人で、そのうち17人がαリポ酸だったそうです。摂取した量や期間は不明ですが、服用を始めてから1~2ヶ月で震えや動悸などの症状が出現し、受診するケースが多いとのことです。
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なぜαリポ酸で自発性低血糖が発症するのかについては少しむつかしいのですが、かみくだいて説明したいと思います。
まず、物質を分子レベルでみたときに「SH基」と呼ばれる構造をもったものが薬やサプリメントには存在し、αリポ酸にもSH基があります。そして、ある特定の白血球を持っている人が(これはおそらく遺伝的に決まっています)、このSH基を含む物質を服用すると血糖値が大きく下がるのです。この特定の白血球を持っている日本人は全体のおよそ8%程度であることが分かっています。
そんな危険性のあるSH基を持っている物質をサプリメントにしてもいいのか、と感じる方もいるでしょう。実際、αリポ酸は、以前は医薬品の扱いでしたが、2004年の基準改正でサプリメントとして販売されることになったのです。
αリポ酸について及び自発性低血糖について詳しいことを知りたい方は下記URLを参照ください。「α-リポ酸の安全性・有効性情報」として国立健康・栄養研究所が情報提供をしています。
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail471.html
(谷口恭)
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|2013年7月15日 月曜日
2010年5月1日(土) 両親のDV目撃が子供の脳に悪影響
最近、児童虐待のニュースがマスコミを賑わせていますが、児童を虐待するだけではなく、両親のDV(家庭内暴力)を見るだけで、子供の脳の発達に悪影響がでるという研究が発表されました。
熊本大学医学の友田明美准教授らが研究をおこない、4月23~25日に盛岡でおこなわれた日本小児科学会で発表されたようです。(報道は4月23日の読売新聞)
この研究は米国ハーバード大学と共同でアメリカ人を対象に実施されています。3~17歳時に、「自身は虐待を受けなかったけれども日常的に父親が母親に殴る蹴るなどの激しい暴力をふるう姿を目撃した」18~25歳の男女15人と、虐待のない家庭で育った33人を選び、MRI(磁気共鳴画像装置)で脳の様子を比較しています。
その結果、虐待を目撃していたグループでは、視覚の情報を処理する右脳の「視覚野」の容積が、目撃していないグループに比べて、20.5%も小さかったそうです。
また、視覚野の血流量を調べると、目撃経験者の方が8.1%多く、これは神経活動が過敏になっていることを示しています。学力や記憶力についても、目撃を経験していたグループの方が低い傾向となったそうです。
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これはショッキングな報告だと思います。今回の研究を、言葉を変えて端的に言えば、「両親の仲が良いと子供は優秀になり、仲が悪いと落ちこぼれるかもしれない」ということになります。
ただ、この研究では対象者数が少ないようにも思えます。今後の研究報告を待ちたいところです。しかし、待つまでもなくDV防止対策については本腰を入れて取り組まなければなりません。行政に頼るのではなく、身近にDVの被害者がいないかどうか、ひとりひとりが注意を払うべきでしょう。
(谷口恭)
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|2013年7月15日 月曜日
2010年5月10日(月) A型肝炎と手足口病が流行中
A型肝炎と手足口病(てあしくちびょう)、どちらも一度は聞かれたことのある病気だと思いますが、この2つの病気の共通点が分かりますでしょうか。
それは、これら2つの感染症が、どちらもエンテロウイルスというウイルス属に属する病原体が原因となっているということです。
A型肝炎は、今年(2010年)の3月以降急増しており、すでに昨年(2009年)1年間の患者数を超えています。国立感染症研究所が4月29日に公表しています。
同研究所によりますと、3月29日から4月4日までの1週間に18人の報告があり、これは2007年以降では最多となります。その後も増加傾向が続き、4月18日までの合計(速報値)は121人で、昨年(2009年)一年間の115人を超えたことになります。
A型肝炎ウイルスは、一部には性交渉による感染もありますが、大半は不衛生な水や食べ物から感染します。子供の場合は感染しても不顕性感染といって、感染したことに気づかずそのうちに治っているというケースも多いのですが、成人してからの感染は発症することの方が多いと言えます。通常は、1~2ヶ月間の入院を要しますが、それ以上慢性化することはありません。しかし、A型肝炎はときに劇症化することがあります。今シーズンの報告では、2例が劇症化し、そのうち1例は死亡にいたっています。
一方、手足口病は過去11年間で最多となっていることを同研究所が5月2日に発表しました。同研究所によりますと、全国約3千の小児科定点医療機関から報告された患者数は、4月18日までの1週間の平均が0.55人と3週連続で増加しています。これは昨年同時期の7倍に相当します。通常、手足口病は夏に流行しますから、今後さらに急増する可能性もあります。
手足口病は、名前が示すとおり、乳幼児の口の粘膜や手、足に水疱ができる病気です。放置しておいても治ることが多いのですが、ときに髄膜炎やさらに脳炎を起こすこともあり、こうなると命に関わることもあります。幸にも今のところ重症患者の報告はありません。
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エンテロウイルスには多数の種類(サブタイプ)があり、A型肝炎の原因ウイルスはエンテロウイルス72型です。手足口病の原因ウイルスはエンテロウイルス71型が最も有名ですが、コクサッキーウイルスA10型、A16型も原因となります。(話が複雑ですが、コクサッキーウイルスもエンテロウイルスの仲間です)
「エンテロ(entero)」というのは「腸内の」という意味の接頭語です。つまり、A型肝炎の72型も手足口病の71型も、共に腸内に生息するのです。ということは、手洗いの励行や排せつ物の適切な処理が人から人への蔓延化を予防するのに重要ということになります。
それからもうひとつ。A型肝炎は成人の場合、ときに命を奪う重篤な感染症となりますが、ワクチンを接種していれば防ぐことができます。今回の流行は国内によるものとみられていますが、最近は中国やインド、その他アジア諸国での感染が急増しています。海外渡航される方は早めにワクチン接種をしましょう。(もちろん私も接種済みです)
(谷口恭)
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|2013年7月15日 月曜日
2010年5月13日(木) 米国西部、致死的な真菌が蔓延する可能性
クリプトコッカス症という病気をご存知でしょうか。
クリプトコッカスという真菌による感染症で、この真菌は通常、土壌や鳥(ハトが多い)の糞中に生息しています。土や糞が乾燥すると、空気中に真菌が飛散して、ヒトが口から吸い込んで肺炎などを起こします。
しかし、一部には健常人にも発症することがあるものの、大半は免疫不全にある人に起こる感染症で、エイズの合併症としても有名です。
そのクリプトコッカス症が、米国オレゴン州で流行し死亡例もでています。医学誌『PLoS Pathogens』4月22日号(オンライン版)によりますと、死亡率は25%にも上るそうです。研究者によりますと、従来のクリプトコッカス症が免疫不全者に起こりやすいのに対して、現在流行しているタイプは、特に病気をもっていない健康な人にもかかりやすいようです。
そして、この真菌は空中に浮遊し、まもなくカリフォルニア州に拡大する可能性があることを研究者らは警告しています。
症状が出現するのは、真菌が感染してから数カ月後に現れることもあり、数週間続く咳や胸の痛み、息切れ、頭痛、体重低下などが起こりえます。治療薬はありますが、現在ワクチンはありません。
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まだ分かっていることが少なく、今後の研究結果を待ちたいところです。
クリプトコッカスには様々なタイプがあり、従来ヒトに感染しやすいとされているのは、Cryptococcus neoformansというものですが、今回流行しているのは、Cryptococcus gattiiというタイプだそうです。現在のところ、適切な治療をおこなえば治癒しうるようですので、渡米する人で風邪症状が出た人は疑ってみるべきかもしれません。
この論文のタイトルは、「Emergence and Pathogenicity of Highly
Virulent Cryptococcus gattii Genotypes in the Northwest United
States」で、下記のURLで概要を読むことができます。
http://www.plospathogens.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.ppat.1000850
(谷口恭)
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|2013年7月15日 月曜日
2010年5月18日(火) うつ病と喫煙の深い関係
うつ病を持っている人には喫煙者が多くて、うつ病でない人に比べると禁煙が難しい・・・。
これはほとんどの医療者が持っているうつ病と喫煙の関係のイメージですが、これを科学的に実証した研究結果が報告されました。
CDC(米国疾病管理予防センター)管轄のオンライン版医学誌『National Center for Health Statistics(NCHS)Data Brief 』2010年4月号にその論文が掲載されています。
この研究では、2005~2008年に実施された全米健康栄養調査(NHANES)の情報を分析することによって、うつ病と喫煙の関連性が検討されています。
その結果、2005~2008年では20歳以上の米国成人の約7%にうつ病が認められ、調査時にうつ病を認めた55歳未満の成人の43%が喫煙者でした。一方、同年齢のうつ病のない人では喫煙者は22%にとどまっています。20~39歳の女性でみてみると、うつ病の女性の50%が喫煙するのに対し、うつ病でない女性は21%のみでした。
臨床的にうつ病と診断されない軽度の抑うつ症状が認められる成人においても、症状のない人に比べて喫煙する可能性が高いという結果もでています。また、うつ病が悪化するにつれて、喫煙者の割合が増大する傾向も認めました。さらに、喫煙量は、うつ病の人の方がうつ病でない喫煙者よりも多く、うつ病で喫煙する成人はうつ病でない喫煙者に比べて禁煙する可能性が低いという結果も出ています。
*********
今回の研究結果は、我々医療者が日頃抱いているイメージとほぼ完全に一致します。すなわち、うつ病(もしくはうつ状態)があれば、うつがない人に比べて喫煙者であることが多く、1日のタバコの本数も多く、禁煙に成功しにくい、というものです。
私が知りたいのはこの先です。つまり、タバコを吸うからうつ状態になりやすいのか、あるいはうつ状態になると人はタバコに手を出しやすくなるのか、そして、うつ+喫煙がある人の治療は、うつの治療が先なのか、禁煙治療が先なのか、あるいは双方同時に始めるべきなのか・・・、などです。もちろん、実際には個々の症例によって変わってくるでしょうが、こういった点に関する大規模調査の結果を待ちたいと思います。
(谷口恭)
注:この論文のタイトルは、「Depression and Smoking in the U.S. Household Population Aged 20 and Over, 2005?2008」で、下記URLで全文を読むことができます。
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|2013年7月15日 月曜日
2010年5月21日(金) 飲酒によりリンパ系腫瘍のリスクが低減
酒は百薬の長。そう言われる割には、アルコールに関する報告は有害とするものが圧倒的に多いように感じます。しかし、アルコールによって病気のリスクが、それも悪性腫瘍のリスクが低下するという研究結果が発表されました。
厚生労働省の研究班は、5月10日、「飲酒によってリンパ系腫瘍のリスクが低くなる可能性が示された」と発表しました。
この研究は、1990年と1993年に岩手県二戸、秋田県横手、茨城県水戸、新潟県柏崎、長野県佐久、大阪府吹田、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県中部・宮古の10保健所管内に住んでいた40~69歳の男女約96,000人を、2006年まで追跡調査し、飲酒と悪性リンパ腫(以下ML)及び形質細胞性骨髄腫(以下PCM)の発生率との関係を調べています。平均追跡期間13.6年の間に、 MLが257人、PCMが89人確認されています。
調査開始時のアンケートをもとに、お酒を「飲まない(月に1回未満)」、「時々飲む(月に1~3回)」、「毎週飲む(週あたりのエタノール換算量1~149グラム)」「毎週飲む(同150~299グラム)」、「毎週飲む(同300グラム以上)」に分け、その後のMLとPCMの発生率を比較しています。(エタノール換算量については下記参照ください)
MLとPCMを合わせたリンパ系腫瘍発生のリスクは「時々飲む」に比べると、「毎週飲む」のアルコール摂取量が多いグループで低くなっています。MLとPCMに分けた場合は、統計学的に有意ではないものの、どちらもリスクは、「時々飲む」と比べ、アルコール摂取量が多いグループで低下する傾向が認められています。
お酒を飲むと、どうしてこれら悪性腫瘍のリスクが低下するのでしょうか。研究班は、飲酒によるリンパ腫抑制作用のメカニズムとして、「適度なアルコール摂取により免疫反応やインスリン感受性が改善されることなどが知られている」と説明しています。さらに、今回の研究では、「かなり摂取量が多いグループでリスクの低下が見られたので、それらとは別のメカニズムが働いているとも考えられる」としています。
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エタノール換算量とは、例えば「週に300グラム」というのは、ビールなら大ビン14本(1日2本)、日本酒なら14合(1日2合)、ワインならグラスで28杯(1日4杯)となります。
この調査結果が注目に値するのは、「飲酒の量が多いほど疾病のリスクが低下する」となっている点です。「適度な量」ではなく「飲酒の量が多いほど」なのです。大酒飲みには一見嬉しい結果にみえますが、他の多くの悪性腫瘍では、大量飲酒はリスクを高めると考えられていることは忘れないようにしましょう。
(谷口恭)
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