医療ニュース

2013年7月23日 火曜日

2009年7月28日(火) 大阪市民はうつになりやすい?!

 大阪市民のうつ的傾向は、全国平均と比べ著しく高い・・・

 これは大阪市の調査で明らかになったことで7月27日の毎日新聞が報道しています。

 報道によりますと、大阪市は市内在住者10万人あたりの自殺者数が統計を取り始めた1997年以降、2004年を除いて2007年まで政令市でワースト1を記録しています。

 最新の調査は2008年9月に実施されています。20歳以上の市政モニター600人に調査票を送付し、同月末までに558人から回答を得ています。(回答率93%) この調査では、「何をするのも面倒」「憂うつだ」「集中できない」「眠れない」など心身に関する11項目について、「ほとんどない」「少しあった」「時々」「たいてい」の各選択肢に点数を付けるようになっています。合計点が高いほどストレスが強く、うつ傾向が高いことになります。

 その結果、大阪市の点数は、日本家族社会学会が全国約7千人を対象にした1999年の全国調査の平均4.54を1.61ポイント上回る6.15という数字になっています。うつ的傾向が非常に高く、全11項目で全国平均値を上回っています。男性より女性、高年齢層より低年齢層で高い傾向が出ています。

 このような結果に対し、関係者の一部は、「大阪市は中小零細企業が多く、金融危機や不況の影響を顕著に受けているのではないか」と分析しているそうです。

***************

 うつの原因が「中小零細企業が多く不況の影響を受けているから」であり、「男性より女性、高年齢層より低年齢層で高い」ということは、不況の影響を強く受けているのは”若い女性”ということなのでしょうか。

 7月27日に警察庁が発表した2009年の都道府県別の自殺者数は大阪が2位(1位は東京)です。うつ対策と同時に自殺防止の対策も、もっと積極的にすべきということでしょう。

(谷口恭)

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

2013年7月23日 火曜日

2009年7月30日(木) 日焼けマシンに発癌リスク

 人工的に紫外線をあてて肌を小麦色にする「日焼けマシン」の利用が、癌の発生リスクを著しく高めることは疑いない・・・

 WHO(世界保健機関)の国際癌研究機関(IARC)が7月29日にこのような発表をおこないました。(報道は7月30日の日経新聞)

 同機関は、日焼けマシンの発癌リスクを、タバコやアスベストに並ぶ最高度のリスクグループに分類しています。日焼けマシンの使用を30歳未満で開始した場合、皮膚癌(メラノーマ)のリスクが75%増加するとしています。

 この発表を受け、英国皮膚科学会は「発癌性を認定したことを歓迎する。子供にマシンを使わせないよう、日焼けサロン産業を規制する措置を取るべき時期だ」とコメントしているそうです。

 また、仏皮膚科学会は、「長年、政府に危険性を訴えてきた。法律で禁止するよりも人々に周知することが先決」と述べています。

 日焼けマシンは、仏、独、スウェーデンなど欧州各国で成人の25%近くに使用経験があるとの調査結果があり、特にドイツでは18~45歳の1,400万人(ドイツの人口は約8,200万人)が利用し、そのうち4分の1が17歳未満で使用を開始しているそうです。

********

 現時点(7月29日)では、日本皮膚科学会など日本の学会はコメントを発表していないようですが、白人と(日本人を含む)黄色人種では発癌性に違いがないのか、といったあたりの研究を待ちたいと思います。

(谷口恭)

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

2013年7月23日 火曜日

2009年7月30日(木) スリランカ、デング熱が止まらない勢い

 世界的にデング熱が急増しているなかで、スリランカも今年になり急激に感染者・死者が増えているというニュースを最近お伝えしましたが(下記ニュース参照)、事態は相当深刻なようです。

 スリランカ保健省は7月27日、国内のデング熱による死亡者が223人、感染者が19,713に上ることを公表しました。(報道は7月29日の共同通信)

 2008年全体では、死亡者が85人、感染者が4,156人ですから、今年に入り急激に増えていることになります。保健省によりますと、感染は学生などの若者を中心に広がっているようです。

*******
 
 WHO(世界保健機関)は、世界の人口のおよそ5分の2に当たる約25億人がデング熱に感染する危険にさらされており、世界の感染者は毎年5千万人に達する可能性があると推定しています。

 日本のマスコミはほとんど報道しませんが、東南アジアにはチクングニヤと呼ばれる、やはり蚊が媒介する感染症があり、例えばタイでは今年14年ぶりの流行をみせており、すでに2万人以上の感染者が報告されています。チクングニヤは死に至る病ではありませんが、重症化すれば1年以上も発熱や倦怠感に悩まされることもあります。

 また、タイでは新型インフルエンザによる死亡者が65人となり(7月29日現在)、国民の意識がかなり高くなってきています。

 一方、一時はマスクなしで外出している人を見かけないほど盛り上がっていたこの国のインフルエンザに対する意識はどうなってしまったのでしょうか・・・。

参考:医療ニュース 2009年7月12日「スリランカのデング熱対策」

(谷口恭)

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

2013年7月23日 火曜日

2009年7月31日(金) 「電子タバコ」はやはり危険!

 煙が出ないため他人に迷惑をかけないし、禁煙ツールとしても有効です!

 これは電子タバコ(別名「e-シガレット」)のメーカーなどがPRに使っているフレーズで、なかには「WHOお墨付」のような文言を用いて過剰な宣伝をしているものもあり問題になっていました。このウェブサイトでも以前電子タバコの危険性をお伝えしましたが(下記ニュース参照)、FDA(米国食品医薬品局)が電子タバコの危険性を正式に発表しました。(報道は7月22日のHealthDayNews)

 FDAが米国で販売されている2種類の電子タバコを分析したところ、1点から不凍剤の成分であるジエチレングリコールが検出されたほか、複数の標本からニトロサミンなどの発癌性物質が検出されたようです。電子タバコは主に中国で製造されており、「今回の結果から品質管理のずさんさが示された」と同局は指摘しています。

 さらに、WHO(世界保健機関)、CDC(米国疾病管理予防センター)、ACS(米国癌協会)などの専門機関が、電子タバコには安全性に問題があるだけでなく、若年者のニコチン依存を増大し、最終的には喫煙促進につながるリスクがあることを示しているそうです。

 電子タバコの販売元である米国のNJOY社は、FDAの報告を受けて声明を発表しています。同社は、2007年4月の発売以降健康被害の報告はされていないこと、未成年に販売しないよう十分な対策を講じていることなどを主張し、「今回のFDAの試験結果には驚いている」、とコメントしています。

**********

 日本でも、インターネットなどを通して電子タバコを購入する人は少なくないようです。年齢確認が徹底されていないことから未成年者が購入していることも問題となっています。有害物質が含まれていて、依存性があることはほぼ間違いないでしょうから、販売の基準をもう少し厳しくすべきではないかと個人的には思います。

参考:医療ニュース 2008年9月26日「「電子タバコ」に要注意!」

(谷口恭)

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

2013年7月23日 火曜日

2009年8月5日(水) 中国で肺ペスト、一帯を封鎖

 ペストという病気をご存知でしょうか。現代の日本にはない病気ですが(明治時代には報告があります)、致死率がおよそ5割、世界史の様々な場面で登場する恐ろしい感染症です。

 そのペストが、中国青海省海南チベット族自治州興海県で流行しつつあるようです。(現地新聞が伝えこれを8月4日の共同通信が報道しています)

 報道によりますと、この地区でペストが流行し、12人の感染が確認され、そのうち3人がすでに死亡しています。残りの感染者は隔離され、地元当局は一帯を封鎖して感染拡大防止に努めているようです。

************

 肺ペストというのはペストのなかでも最重症型で、治療が遅れると致死率はほぼ100%です。

 私がペストという病気を大変不思議に感じているのは、世界史を変えるほどの大流行をみせたかと思うと、突然ぴたっとなくなることです。そして、時期をみて(?)再び流行するのです。

 例えば6世紀に東ローマで流行したかと思うと、いったんおとなしくし、およそ900年後の14世紀に突然猛威をふるいます。このときの死亡者は当時のヨーロッパの人口の3分の1から3分の2以上にもなると言われています。しかし、その後はぴたっと流行がやんで、17世紀になると再びイギリスで流行がみられました。

 ペスト菌はネズミの体内で生息し、ネズミを吸血したノミがヒトを刺すことによりヒトに感染します。ネズミの体内に潜んでいるペスト菌は、「そろそろヒトに流行させてやろうか・・・」、そんなたくらみを企てているのではないかと私は時々感じています。

(谷口恭)

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

2013年7月23日 火曜日

2009年8月9日(日) HIV陽性者、離職経験者は23%

 HIV陽性者(エイズ発症者を含む)のおよそ4人に1人が仕事を辞めた経験があり、離職経験者の約1割は、不当な理由で解雇されたことがある・・・

 これは、厚生労働省の障害者保健福祉推進事業のアンケート調査で分かった結果です。全国の15のエイズ拠点病院に通院するHIV陽性者2,000人に対し、今年の1月までに就労状況をアンケート調査し、およそ6割から回答を得ています。(報道は8月6日の読売新聞)

 HIV陽性を理由に仕事を辞めた経験があった人が全体の23%で、理由については「不当な理由での解雇」と回答している人が9%います。

 就労者に感染の事実を会社に伝えているか、については、全体の47%が「伝えていない」と答えています。

**********

 私がこの記事を読んだときの感想は、「あれっ、そんな程度なの?」というものです。私が関わっている(関わっていた)HIV陽性の人だけをみてみると、離職の経験者はとても4人に1人程度ではありませんし、それ以上に、会社に伝えていない人が47%、という数字は意外です。

 私は患者さんから、「HIV陽性であることを会社に伝えるべきですか?」と尋ねられることがよくあります。HIVは(性交渉以外の)日常生活では感染しませんから、本来は他人に隠さなければならない感染症などではありません。しかし差別や偏見がこの国で根強く残っているのは事実ですから、「会社に堂々と言えばいいんですよ」とは医師として言えるものではありません。

 このニュースを裏からみると、「全体の53%の人が会社にHIV陽性である旨を伝えている」ということになります。これは、日本でHIVに対する差別や偏見が減少しつつある、と考えていいということなのでしょうか・・・。

(谷口恭)

参考:NPO法人GINA「GINAと共に」第37回(2009年7月) 「HIVを特別視することによる弊害 その2」   

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

2013年7月23日 火曜日

2009年8月9日(日) 日本と韓国は”法則”の例外

 社会・経済が発展すると、晩婚・出産の高齢化が進み出生率はいったん減少するが、発展がある段階を超えると出生率は再び増加に転じる。しかし、日本と韓国はこの法則の例外である・・・

 これは、米国ペンシルバニア大学などの研究チームが科学誌「ネイチャー」に発表した研究です。(報道は8月6日の日経新聞、共同通信、読売新聞など)

 この調査は世界で豊かとされる24か国が対象となっています。「人間開発指数」と、1人の女性が生涯に産む子供の人数(合計特殊出生率)との関係が調べられています。

 すべての国において、人間開発指数の上昇に伴い、出生率がいったんは減少して少子化が顕著になります。しかしほとんどの国では、人間開発指数がある程度上昇したところで出生率は底を打ち、以後は上昇に転じています。

 この”法則”の例外となっているのが日本と韓国であり、人間開発指数が一定以上に上昇しても出生率は上がっていないというわけです。

***********

 「人間開発指数」について補足しておきます。「人間開発指数」とは、経済的な尺度だけでは測れない国民生活の豊かさを示す値として、UNDP(国連開発計画)が「人間開発報告書」の中で国ごとに発表している数値です。平均寿命や就学率、成人識字率、1人当たりのGDP(国内総生産)などから割り出します。2007年の発表では1位はアイスランドで、最下位はシェラレオネです。日本は8位、米国は12位となっています。

 上記の研究では、その人間開発指数が、平均寿命75歳、1人あたりのGDP25,000USドル、などの目安となる0.9あたりを越えたあたりから、ほとんどの国で出生率が上昇に転じているるけれども、日韓は例外である、ということになります。

(谷口恭)

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

2013年7月23日 火曜日

2009年8月17日(月) 低タールのタバコにしても効果なし

 軽いタバコに変えたんだけどかえって本数が増えちゃって・・・

 これは喫煙者からよく聞くセリフですし、私自身も喫煙していた頃に経験したことがあります。

 この経験則を裏付けるような研究結果が厚生労働省の研究班により発表されました。その研究によりますと、低タール、低ニコチンのたばこを吸っている人ほど吸煙量が多く、タールやニコチンが多いタバコを吸っている人と同程度の有害な化学物質にさらされている、そうなのです。

 この研究の対象者は20~65歳の喫煙者約100人で、1日あたりの平均タバコ本数は19本です。いつも吸っているタバコの種類にあわせて、①タール1mg、②3-6mg、③8-10mg、④14mgの4つのグループに分類し、ニコチン摂取量、呼気に含まれる一酸化炭素量などを調べています。

 その結果、タール6mg以下のグループは、1回で吸い込む平均吸煙量が58.4mLで、それより高いタールのたばこを吸っている人(50mL)よりも多い傾向がありました。1日当たりの平均吸煙量では、高タールグループより、約4,500mLも多くなっています。

 ニコチン量については、表示されたニコチン量が多いほど増える傾向にはありましたが、タール1mgのグループの唾液1mLに含まれるニコチン量は、タール14mgのグループの約3分の1に過ぎなかったようです。

 また、たばこの煙に含まれ、動脈硬化などの要因とされる一酸化炭素(CO)はタールやニコチン量による差はなく、ほぼ同量を吸引していたことが分かりました。

********

 太融寺町谷口医院に禁煙外来で受診されている患者さんには、毎回呼気中の一酸化炭素濃度を測定してもらっています。

 これが不思議なことに、吸っているタバコの種類に関係なく、だいたい1日に吸っているタバコの本数に一致した数字となります(単位はppm)。今回の研究結果は、私が以前から感じていた「なぜどんなタバコを吸っていても同じような数字になるのだろう」という疑問に答えてくれたことになります。

 タバコはやめてないけど軽いのにしたんです・・・。

 禁煙をすすめている患者さんにこのように言われることがしばしばありますが、あまり効果がないということが科学的に実証されたというわけです。

(谷口恭)

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

2013年7月23日 火曜日

2009年8月17日(月) 人口は増加し自然減は過去最大

 日本の総人口は2年連続で増加、しかし出生者から死亡者を引いた「自然増加数」は過去最大の減少・・・?

 この一見矛盾するような統計が8月11日、総務省から発表されました。

 日本の総人口(外国人を除く)は、2009年3月31日時点で、127,076,183人です。これは前年比約1万5千人の増加で、2年連続で増加したことになります。

 同省によりますと、人口が増えたのは主に海外からの転入や帰化などに伴う「社会増加数」が55,919人と増加したため(前年は41,826人)です。この理由として、同省は「景気悪化に伴う企業の海外撤退などが考えられる」と分析しています。帰化は1万数千人としています。

 一方、出生者数は、1,088,488人(前年度比7,977人減)で、3年ぶりに減少に転じています。死亡者数は過去最高の1,134,402人と報告されています。

 また、東京、名古屋、関西の3大都市圏の人口は64,012,618人(全国人口の50.37%)で過去最高を記録しています。関西圏(京都・大阪両府、兵庫・奈良両県)は18,233,496人で5年ぶりの増加となります。東京都は12,548,258人で、増加数は対前年比86,062人、増加率は0.69%と、ともに最大で、東京一極集中の傾向が続いていることになります。

***********

 出生数や死亡数が厚生労働省の発表と異なるのは、統計をとっている期間が異なるからです。厚生労働省は「年」を基準としているのに対し、今回発表をおこなった総務省は「年度」を基準にしています。

(谷口恭)

参考:医療ニュース2009年6月5日「人口自然減は過去最大に」

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

2013年7月23日 火曜日

2009年8月17日(月) 依然低調のはしかワクチン接種率

 はしか(麻疹)の罹患率がこんなに高い先進国は他にはない・・・
 なぜか日本人ははしかワクチンを打たない人が多い・・・

 これらは、このウェブサイトで何度も指摘してきたことです。はしかのワクチンがようやく2回接種となり、昨年度から5年間に限り、中1生と高3生が2回目接種の対象となっています。

 その2回目ワクチン接種率が厚生労働省のまとめで明らかとなりました。(報道は8月13日のキャリアブレイン)

 発表によりますと、中1生、高3生の昨年度(2008年度)の接種率はそれぞれ85.1%、77.3%で、国が目標としている「接種率95%以上」には届いていません。

 都道府県別にみると、中1で低いのは、福岡(75.7%)、東京(75.8%)、大阪(77.2%)、高3で低いのは、東京(60.7%)、神奈川(63.6%)、大阪(68.1%)、と大都市での接種率の低さが目立っています。

************

 接種率がこれだけ低いことに対して厚生労働省は、「従来の定期接種の対象だった1歳児と小学校入学1年前の幼児と比較すると、親の干渉が効きにくく、本人の行動を縛りづらい」、と説明しています。

 であるならば、親に頼るのではなく子供自身に訴えかけるようにすればどうでしょう。中1よりも高3で接種率が低く、それが大都市圏で顕著なのですから、まずは都会に住む高校3年生にワクチンの重要性を訴えかけるような対策を試みるべきではないでしょうか。

(谷口恭)

参考:はやりの病気 第46回 はしかの予防接種率はなぜ低いのか
医療ニュース 2009年2月8日「大学入学前にはしか(麻疹)のワクチンを」

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

月別アーカイブ