医療ニュース

2013年7月23日 火曜日

2009年8月17日(月) 人口は増加し自然減は過去最大

 日本の総人口は2年連続で増加、しかし出生者から死亡者を引いた「自然増加数」は過去最大の減少・・・?

 この一見矛盾するような統計が8月11日、総務省から発表されました。

 日本の総人口(外国人を除く)は、2009年3月31日時点で、127,076,183人です。これは前年比約1万5千人の増加で、2年連続で増加したことになります。

 同省によりますと、人口が増えたのは主に海外からの転入や帰化などに伴う「社会増加数」が55,919人と増加したため(前年は41,826人)です。この理由として、同省は「景気悪化に伴う企業の海外撤退などが考えられる」と分析しています。帰化は1万数千人としています。

 一方、出生者数は、1,088,488人(前年度比7,977人減)で、3年ぶりに減少に転じています。死亡者数は過去最高の1,134,402人と報告されています。

 また、東京、名古屋、関西の3大都市圏の人口は64,012,618人(全国人口の50.37%)で過去最高を記録しています。関西圏(京都・大阪両府、兵庫・奈良両県)は18,233,496人で5年ぶりの増加となります。東京都は12,548,258人で、増加数は対前年比86,062人、増加率は0.69%と、ともに最大で、東京一極集中の傾向が続いていることになります。

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 出生数や死亡数が厚生労働省の発表と異なるのは、統計をとっている期間が異なるからです。厚生労働省は「年」を基準としているのに対し、今回発表をおこなった総務省は「年度」を基準にしています。

(谷口恭)

参考:医療ニュース2009年6月5日「人口自然減は過去最大に」

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2013年7月23日 火曜日

2009年8月17日(月) 依然低調のはしかワクチン接種率

 はしか(麻疹)の罹患率がこんなに高い先進国は他にはない・・・
 なぜか日本人ははしかワクチンを打たない人が多い・・・

 これらは、このウェブサイトで何度も指摘してきたことです。はしかのワクチンがようやく2回接種となり、昨年度から5年間に限り、中1生と高3生が2回目接種の対象となっています。

 その2回目ワクチン接種率が厚生労働省のまとめで明らかとなりました。(報道は8月13日のキャリアブレイン)

 発表によりますと、中1生、高3生の昨年度(2008年度)の接種率はそれぞれ85.1%、77.3%で、国が目標としている「接種率95%以上」には届いていません。

 都道府県別にみると、中1で低いのは、福岡(75.7%)、東京(75.8%)、大阪(77.2%)、高3で低いのは、東京(60.7%)、神奈川(63.6%)、大阪(68.1%)、と大都市での接種率の低さが目立っています。

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 接種率がこれだけ低いことに対して厚生労働省は、「従来の定期接種の対象だった1歳児と小学校入学1年前の幼児と比較すると、親の干渉が効きにくく、本人の行動を縛りづらい」、と説明しています。

 であるならば、親に頼るのではなく子供自身に訴えかけるようにすればどうでしょう。中1よりも高3で接種率が低く、それが大都市圏で顕著なのですから、まずは都会に住む高校3年生にワクチンの重要性を訴えかけるような対策を試みるべきではないでしょうか。

(谷口恭)

参考:はやりの病気 第46回 はしかの予防接種率はなぜ低いのか
医療ニュース 2009年2月8日「大学入学前にはしか(麻疹)のワクチンを」

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2013年7月23日 火曜日

2009年8月17日(月) 長期喫煙者の6割がCOPDの疑い

 喫煙歴がある40歳以上の男女の6割に、気道や肺に障害が生じて息切れがする「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」の疑いがある・・・

 これは、ファイザー製薬が2009年6月にインターネットを使った調査で明らかとなった結果です。調査対象は10年以上の喫煙歴がある40~90歳の男女合計600人です。

 「朝起きてすぐに、たんがからむことがよくあるか」「天候により、せきがひどくなることがあるか」など、COPDの疑いがあるかどうかを判定する複数の質問をした結果、全体の62%が「疑いあり」に該当しています。年齢が高いほどその割合は高く、40代では20%ですが、50代では69%、60歳以上になると97%という高い数字がでています。

 一方、COPDの疑いのある人に、長期間の喫煙が原因であることを知っているかどうか尋ねた質問では、「知っている」と答えた人は33%にとどまっています。

 また、喫煙者全体の65%がニコチン依存症であり、このうち17%がうつ病やうつ状態の疑いがあることもわかりました。

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 COPD(慢性閉塞性肺疾患)という言葉はあまり馴染みがない病名かもしれませんが、タバコを吸う高齢者では非常に多い病気です。以前は「肺気腫」という病名の方がよく使われていましたが、最近では「肺気腫」と「慢性気管支炎」を合わせてCOPDと呼ぶのが一般的です。

 この病気を防ぐにはどうすればいいのか。それはもちろん「禁煙」です。ファイザー製薬は禁煙補助薬を販売していることもあって、おそらくこのような調査をおこなったのでしょう。この調査結果がファーザー製薬の売り上げを伸ばすかどうかは別にして、この調査結果をみて禁煙の重要性を認識する人が少しでも増えればこの調査の意味はあったと言えるでしょう。

(谷口恭)

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2013年7月23日 火曜日

2009年8月17日(月) 喫煙率、14年連続で過去最低更新

 JT(日本たばこ産業)が8月14日に同社の喫煙率調査の結果を発表しました。成人の喫煙率は24.9%と、前年に比べ0.8ポイント減少しており、これで14年連続で過去最低を更新したことになります。

 この調査は5月に実施され、20,807人から回答を得ています。

 男性の喫煙率は38.9%で前年から0.6ポイントの減少、これは18年連続の低下ということになります。女性は11.9%で前年から1.0ポイントの減少となっています。喫煙人口は79万人減少の2,601万人と推計されています。

 地域別にみると、最も喫煙率が高いのは男性、女性ともに北海道で、それぞれ45.7%、20.0%となっています。

 年代別では男女とも30代が最高で、それぞれ46.9%、16.8%という結果がでています。

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 昨年のJTの発表では、女性に関しては「2年連続で喫煙率上昇」でしたから、今回は男女とも減少しており望ましいことだと思われます。

 しかしながら、世界的にみれば日本はまだまだ喫煙率が高いと言えます。(正確に言えば男性は世界平均よりもかなり高く、女性は先進国のなかでは低い方です)

 最近は、サンパウロや香港といった喫煙者が多い地域でも、一部の喫煙所を除きバーやクラブも含めてすべて禁煙となる動きになっています。

 今がまさに禁煙を始めるチャンスだと思うのですがいかがでしょうか・・・

(谷口恭)

参考:医療ニュース 2008年10月27日「喫煙率が13年連続で過去最低更新」

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2013年7月23日 火曜日

2009年8月24日(月) またもやステロイド入り化粧品

 アトピー性皮膚炎が劇的に治る天然系の化粧品、実は高濃度のステロイドが入っていた・・・。

 数年に一度はこのような事件が報道されますが、最近も発覚したようです。

 警視庁生活環境課が8月19日、薬事法違反の疑いで東京都新宿区の化粧品販売会社「ラバンナ」(現イエス・オーケー)の元社長ら5人を逮捕しました。この会社が販売していた化粧品「NOATOクリーム」には高濃度のステロイドが入っていたそうです。(報道は8月19日の共同通信)

 この会社は、米国からこの化粧品約4万個を輸入し、およそ2万個を販売しています。自社ホームページのほか、情報交換サイトに第三者を装って「アトピーが完治した」などと書き込み宣伝していたそうです。

 国民生活センターには「生後6カ月の娘に使ったが、やめた後はガサガサで色素が抜けたようになった」「使うのをやめると、使用前より悪化した」といった相談が寄せられていたようです。

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 逮捕に際して、容疑者は「ステロイドが入っているとは知らなかった」と述べているそうです。「知らなかった」というのが本当とは思えませんが、このようなものの輸入を許可している税関には問題がないのでしょうか。

 今回の事件はアメリカで製造されたクリームですが、中国製の化粧品にステロイドが含まれていた、という事件もときどき起こっています。不正な表示をする海外のメーカーがなくなることはないでしょうし、逮捕された東京の会社のような会社(あるいは個人)がこれから出てくることもあるでしょうから、まずは税関での対策をしっかりしてほしいと思います。

(谷口恭)

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2013年7月23日 火曜日

2009年8月24日(月) よく遊んでよく寝る子供に自尊感

 外でよく遊んで、早く就寝する子供は、自分に価値があると感じる「自尊感情」が高い傾向にある・・・。

 これは福岡県が小中学生およそ13,000人を対象とした調査で分かったことです。(報道は8月19日の共同通信)

 福岡県は、昨年(2008年)12月から3ヶ月間にわたり、県内の小学4年と6年、中学2年と3年を対象に、「何をやっても失敗するのではないかと思う」、「友達と同じくらいいろいろなことができる」、など10項目の設問で自尊感情を評価し、併せて普段の生活を調べました。

 その結果、小学生では外で1時間以上遊ぶ児童の42%が「自尊感情が高い」とされたのに対し、1時間未満しか遊ばない子では29%にとどまっています。同様に、午後10時までに就寝する児童では45%が自尊感情が高く、夜更かしをする児童では34%となっています。

 中学生も同じ傾向だったようです。

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 「自尊感情」が高いのは生きていく上でとても大切なことです。勉強ができる、などより遥かに重要なことです。今回の調査結果が正しいとすれば、塾になど通わず、屋外で遊んで、帰宅してからもゲームやテレビに熱中するのではなく早く寝ることが大切、ということになります。

 これは、我々大人が一般的に「健全な子供」としてイメージする像に一致するのではないでしょうか。

 個人的には、この調査の有効性が社会に広く認識されるようになり、「健全な子供」が増えてほしいと願います。

(谷口恭)

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2013年7月23日 火曜日

2009年8月24日(月) 中国黒龍江省のペスト騒ぎ

 先日、中国青海省海南チベット族自治州興海県で、12人が肺ペストに罹患し死者も相次いでいる、というニュースを紹介しましたが、今度は黒龍江省でペストの騒ぎがありました。

 8月19日の共同通信によりますと、黒竜江省の伊春市保健当局は8月17日、同市内で7人の出血熱発症例が報告されたと発表しました。出血熱の原因となる病原体については発表がありませんが、7人は森林地帯の住民で、7月28日から8月3日の間に発症していたことが判っています。すでに治療を受けており全員の容態が安定しているそうです。

 当局の発表では、全員がネズミにより汚染された食べ物を食べたり、水を飲んだりしたことが原因である、とされています。

 この騒ぎに対して、インターネット上では肺ペストの噂が出回っていましたが、保健当局はこれを否定しています。

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 肺ペストは致死的な病気ですから、流行すればその地域や国が壊滅する恐れもあります。実際、ヨーロッパの歴史は、ペスト菌により何度も作り変えられているといっても過言ではありません。

 それだけに、もしもペスト菌が内陸に位置する青海省から東北部にある黒龍江省まで波及すれば、世界史に残る大惨事になるに違いありません。

 今回の噂は、黒龍江省の患者がネズミから感染したことから出たのかもしれません。

 しかし、このニュースは「ペストじゃなくてよかったね」で終わらせるのはちょっとまずいように思えます。なぜなら出血熱は一般的に感染力が強く重症化することも珍しくないからです。

 当局には、この出血熱の原因となった病原体が何なのか、そして今後感染が蔓延する可能性がないのかどうか、といったあたりについても発表をしてもらいたいと思います。

(谷口恭)

参考:医療ニュース 2009年8月5日「中国で肺ペスト、一帯を封鎖」

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2013年7月23日 火曜日

2009年9月9日(水) この夏の食中毒は過去10年で最少

 今夏(6~8月)の食中毒患者数が前年より激減し、過去10年間で最少であったことが厚生労働省の速報で明らかとなりました。(報道は9月8日の日経新聞など)

 今夏の食中毒患者数は826人にとどまり、これは前年(2008年)の約6分の1に相当します。1,000人を割ったのは過去10年間で初めてだそうです。発生件数も52件で、これは前年の約8分の1にあたります。

 厚生労働省は、「8月の気温が平年より低かったことに加え、食品の衛生管理が向上している」と分析しています。

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 「食品の衛生管理が向上している」という厚生労働省のコメントは、企業の不祥事が今年はなかった、ということを示唆しているようです。実際、過去10年間で、夏場で最も食中毒が多かったのは、雪印乳業の集団食中毒事件が起こった2000年です。そして、この事件以降、メーカーやスーパーなどでは食品の品質管理が徹底されるようになってきています。

 私がこのニュースをみたとき、「たしかに言われてみれば今夏はインフルエンザを含めて上気道炎の感染症が多く、胃腸炎は少ないかな・・・」とも感じましたが、それでも、おなかをこわして受診という患者さんが少ないわけではありません。

 食中毒という診断がつかなくても、感染性胃腸炎は少なくないというわけです。もっと言えば、感染症でない下痢や嘔吐の患者さんも少なくありません。

(谷口恭)

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2013年7月23日 火曜日

2009年9月10日(木) 自殺者の4人に1人がアルコール問題

 自殺に至った背景を調べた43人のうち、10人がアルコールをめぐる問題を抱えていた・・・。

 これは自殺予防総合対策センター(下記参照)が9月8日に発表した調査結果です。この調査に際して、同センターは、自殺した人の遺族に対し、自殺に至った経緯や心理状態について昨年(2008年)聞き取りをおこなっています。(報道は9月9日の共同通信)

 調査結果によりますと、調査対象者43人のうち、アルコール依存症や不眠のための寝酒の習慣があった人が10人に上っています。10人全員が40~50代の仕事を持つ働き盛りの中高年で、10人のうち4人は自殺時にも多量のアルコールを飲んでいたそうです。

 1日当たりの平均飲酒量は日本酒換算で3.5合と算出されています。

 また、43人のうち20人が精神科に通院しており、離婚や借金などの問題を抱えている人もいたようです。

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 自殺予防総合対策センターは、2005年に参議院厚生労働委員会「自殺に関する総合的対策の緊急かつ効果的な推進を求める決議」において設置することが決議された機関で、2006年10月から正式に活動を開始しています。

 今回の調査結果を考察すると、「うつ病などの精神疾患やアルコールが自殺に密接に結びついており、地域社会や社内、家族で、まずこういった問題に関わっていくことが自殺減少につながる可能性がある」、ということになると思います。

 参考までに9月10日は「世界自殺予防デー」、9月10日から16日は「自殺予防週間」です。

(谷口恭)

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2013年7月23日 火曜日

2009年9月15日(火) 救急車現場到着も医療機関搬送も過去最悪

 救急車が通報を受けてから現場に到着するまでの時間も、患者を医療機関に収容するまでの時間も過去最悪・・・

 このようなことが総務省消防庁の調査で明らかとなりました。(報道は9月9日の共同通信など)

 調査によりますと、救急車が通報を受けてから現場に到着するまでにかかった時間の2008年の全国平均は7.7分で、これは前年(2007年)より0.7分遅いことになります。7.7分というのは、データがある1984年以降最悪(最長)の数字となっています。

 また、通報から患者を医療機関に収容するまでの時間は過去最悪の35.1分で、これは前年より1.7分遅くなっています。1998年には26.7分でしたから、過去10年間で8.4分も延びていることになります。

 救急車の出動件数自体は5,095,615件で、これは前年より3.7%減少しています。搬送人数も4,677,225人で、こちらは4.6%の減少です。これらの減少は2年ぶりということになります。

 救急車を要請した人を年代別でみると、65歳以上の高齢者が48.2%で最多となっています。

 また、救急車が到着するまでに、その場に居合わせた人が心臓マッサージなどの応急処置をしたケースは、心肺停止状態の患者の40.7%に相当する46,149人で、これは前年より1.2ポイント増加しています。

 心肺停止に対しては、2004年からAED(自動体外式除細動器)の一般の使用が認められるようになっており、心臓疾患にAEDを使用した428人の1ヶ月の社会復帰率は38.8%と高い数字を示しています。これは前年から3.3ポイント増えていることになります。

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 これらのデータをまとめていきましょう。

 まず、救急車が現場に到着する時間も患者を医療機関に収容するまでの時間も過去最悪となったことの理由として、消防庁は、「搬送先が決まらないと、救急隊が待機場所である消防署へ戻るのが遅くなり、結果的に次の出動や現場到着が遅れる悪循環が起きている」、と指摘しています。これは、救急患者を医療機関が迅速に受け入れることができていないことを示唆しています。

 この問題に対して、10月に施行される改正消防法では、「救急と医療の関係者が事前に搬送のルールを取り決める」ことなどを定めており、この取り決めが上手くいけば搬送時間の短縮が少しは実現するかもしれません。

 しかし、医療機関側としては人員や施設の問題から救急患者の受け入れはすでに限界にきているのが現状です。したがって、単に「救急と医療機関の搬送のルール」を定めただけでは抜本的な解決にはならないのではないかと思われます。

 次に、救急車の出動件数が減ったことの理由については、軽症の場合は救急車を使わないといった適正利用の呼びかけが浸透している、ことが考えられます。これまでは、軽症の人でも救急車を(気軽に)要請していることが問題となっていましたから、適正利用が浸透しているとすれば評価されるべきと思われます。しかしながら、このような呼びかけがいきすぎると、本当に救急車が必要な人まで要請を躊躇する可能性もあり、このあたりについては充分注意する必要があると思われます。
 
 AEDの普及については、成功していると言えるでしょう。AEDがもしもその場所になければ命を失っていたかもしれない人が大勢いるということです。

 太融寺町谷口医院の院内に置いてあるAEDはまだ一度も使用する機会がありませんが、いずれ活躍する日が来るかもしれません・・・。

(谷口恭)

参考:医療ニュース 2009年1月27日「一般市民によるAED救命率が42.5%!」

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