医療ニュース
2010年2月8日(月) 個人輸入の薬、死亡例も
インターネットなどを通して個人輸入で薬を入手すると、ニセモノをつかまされるだけでなく、有害物質により苦しめられることもある、ということは以前お伝えしましたが、医学誌『International Journal of Clinical Practice』に、こういった被害を検証した論文が掲載されましたので紹介します。(論文の詳細は下記注参照)
論文によりますと、インターネットを通して販売されているニセ薬(counterfeit drug)が急増しており、ヨーロッパでは2005年から2007年までの間にニセ薬の押収量が4倍になっており、FDA(米国食品医薬品局)の捜査件数は2000年から2006年までの間に8倍にもなっています。
ニセ薬の売上は5年間でおよそ2倍にもなっており、2010年には750億USドル(約6,750億円)にもなると試算されています。ヨーロッパでは、250万人(!)もの男性がバイアグラのニセ薬を購入したことがあるとのデータもあります。
最悪の場合、死亡することもあるようです。
2008年には、シンガポールでED治療薬のニセ薬を飲んだ男性4人が死亡しています。このニセ薬には血糖降下剤が混入していたそうです。
また、貧血の治療のためにニセモノの鉄剤の注射を受けた妊婦2人が死亡した例や、バングラデシュでジエチレングリコールが混入されたアセトアミノフェン(海外の薬局では「パラセタモール」として処方せんなしで買える解熱鎮痛剤です)のシロップを服用した小児51人が死亡した例もあります。
論文によりますと、研究者の1人は、「問題を避ける唯一の方法は、インターネットで購入しないこと」と述べています。
***********
ニセ薬が最も流通していると言われているバイアグラは、海外では100mgが主流です。一方、日本の医療機関で処方されるバイアグラは25mgか50mgです。もしも日本人が100mgのバイアグラを飲めば副作用のリスクが一気に上昇します。つまり、ニセ薬でなく、本物であったとしても、インターネットなどで購入した100mgのバイアグラは大変危険なのです。それに、内容物がニセモノであることも多いのですから、容量が記載されているとおりという保証はどこにもないわけです。
インターネットでの購入は、ニセモノをつまされることが多く、最悪の場合は死亡する可能性もあり、たとえ本物だったとしても容量が信用できないかもしれない・・・、今のところ個人輸入は合法ですが、リスクはかなり大きいと言えるでしょう。
(谷口恭)
注:この論文のタイトルは、「Counterfeit phosphodiesterase type 5 inhibitors pose significant safety risks」で原文は下記のURLで読めます。
http://www3.interscience.wiley.com/cgi-bin/fulltext/123243854/HTMLSTART
最近のブログ記事
- 2024年11月17日 「座りっぱなし」をやめて立ってもメリットはわずか
- 2024年10月24日 ピロリ菌は酒さだけでなくざ瘡(ニキビ)の原因かも
- 2024年10月11日 幼少期に「貧しい地域に住む」か「引っ越し」がうつ病のリスク
- 2024年9月19日 忍耐力が強い人は長生きする
- 2024年9月8日 糖質摂取で認知症のリスクが増加
- 2024年8月29日 エムポックスよりも東部ウマ脳炎に警戒を
- 2024年8月4日 いびきをかけば認知症のリスクが低下?
- 2024年7月15日 感謝の気持ちで死亡リスク低下
- 2024年6月30日 マルチビタミンで死亡率上昇?
- 2024年6月5日 15歳老けてみえる人は大腸がんかも
月別アーカイブ
- 2024年11月 (1)
- 2024年10月 (2)
- 2024年9月 (4)
- 2024年8月 (1)
- 2024年6月 (2)
- 2024年5月 (2)
- 2024年4月 (2)
- 2024年3月 (2)
- 2024年2月 (3)
- 2024年1月 (1)
- 2023年12月 (2)
- 2023年11月 (2)
- 2023年10月 (2)
- 2023年9月 (2)
- 2023年8月 (1)
- 2023年7月 (3)
- 2023年6月 (2)
- 2023年5月 (2)
- 2023年4月 (2)
- 2023年3月 (2)
- 2023年2月 (2)
- 2023年1月 (2)
- 2022年12月 (2)
- 2022年11月 (2)
- 2022年10月 (2)
- 2022年9月 (2)
- 2022年8月 (2)
- 2022年7月 (2)
- 2022年6月 (2)
- 2022年5月 (2)
- 2022年4月 (2)
- 2022年3月 (2)
- 2022年2月 (2)
- 2022年1月 (2)
- 2021年12月 (2)
- 2021年11月 (2)
- 2021年10月 (2)
- 2021年9月 (2)
- 2021年8月 (2)
- 2021年7月 (2)
- 2021年6月 (2)
- 2021年5月 (2)
- 2021年4月 (4)
- 2021年3月 (2)
- 2021年1月 (2)
- 2020年12月 (3)
- 2020年11月 (3)
- 2020年9月 (2)
- 2020年8月 (2)
- 2020年7月 (1)
- 2020年1月 (2)
- 2019年12月 (2)
- 2019年11月 (2)
- 2019年10月 (2)
- 2019年9月 (2)
- 2019年8月 (2)
- 2019年7月 (2)
- 2019年6月 (2)
- 2019年5月 (2)
- 2019年4月 (2)
- 2019年3月 (2)
- 2019年2月 (2)
- 2019年1月 (2)
- 2018年12月 (2)
- 2018年11月 (2)
- 2018年10月 (1)
- 2018年9月 (2)
- 2018年8月 (1)
- 2018年7月 (2)
- 2018年6月 (2)
- 2018年5月 (4)
- 2018年4月 (3)
- 2018年3月 (4)
- 2018年2月 (5)
- 2018年1月 (3)
- 2017年12月 (2)
- 2017年11月 (2)
- 2017年10月 (4)
- 2017年9月 (4)
- 2017年8月 (4)
- 2017年7月 (4)
- 2017年6月 (4)
- 2017年5月 (4)
- 2017年4月 (4)
- 2017年3月 (4)
- 2017年2月 (1)
- 2017年1月 (4)
- 2016年12月 (4)
- 2016年11月 (5)
- 2016年10月 (3)
- 2016年9月 (5)
- 2016年8月 (3)
- 2016年7月 (4)
- 2016年6月 (4)
- 2016年5月 (4)
- 2016年4月 (4)
- 2016年3月 (5)
- 2016年2月 (3)
- 2016年1月 (4)
- 2015年12月 (4)
- 2015年11月 (4)
- 2015年10月 (4)
- 2015年9月 (4)
- 2015年8月 (4)
- 2015年7月 (4)
- 2015年6月 (4)
- 2015年5月 (4)
- 2015年4月 (4)
- 2015年3月 (4)
- 2015年2月 (4)
- 2015年1月 (4)
- 2014年12月 (4)
- 2014年11月 (4)
- 2014年10月 (4)
- 2014年9月 (4)
- 2014年8月 (4)
- 2014年7月 (4)
- 2014年6月 (4)
- 2014年5月 (4)
- 2014年4月 (4)
- 2014年3月 (4)
- 2014年2月 (4)
- 2014年1月 (4)
- 2013年12月 (3)
- 2013年11月 (4)
- 2013年10月 (4)
- 2013年9月 (4)
- 2013年8月 (172)
- 2013年7月 (408)
- 2013年6月 (84)