医療ニュース

2010年6月10日(木) HIVの「検査数」が大幅減

 厚生労働省は5月28日、HIV/エイズ関連のデータを公表しました。

 まず、2009年1年間で、新たにHIV感染が判った人(まだエイズを発症していない感染者)は1,021人で前年より105人減少しています。一方、エイズ発症者は431人で、この数字は前年(2008年)とまったく同じです。

 しかしながら、全国の保健所などでおこなっている検査件数はおよそ15万件で、これは前年から15%の減少ということになります。検査件数は2002年以降増加の一途でしたが、2009年に一転して大幅減少に転じたことになります。

 さらに、それだけではありません。実は昨年(2009年)にHIVの検査件数が減少したのは新型インフルエンザのパニックがあったからと予想されていました。行政のHIV担当者は、新型インフルエンザの騒ぎのない今年(2010年)は再び検査件数は増えるだろうと予想していたそうなのですが、今年の1~3月の検査件数は全国で29,455件、これは前年同期の64%という少なさです。

 さらに、さらにです。この3ヶ月間で検査件数が減り、その結果新たにHIV感染がわかった人(まだエイズを発症していない感染者)は227人と前年同期から244人減少しているのですが(これは検査件数が減っているので当然です)、エイズを発症した人は94人とこれは前年同期の84人から10%以上も増加しているのです。

 これが何を意味するかというと、「自らのHIV感染に気付いておらずエイズを発症して初めて知る感染者が急増している」、ということです。

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 上記の検査件数は保健所など公的機関によるもののみです。医療機関で検査を受けた人は含まれていません。

 しかし、検査件数が減っているのは医療機関でも同様です。太融寺町谷口医院でも、「症状はないけれどもHIVが気になって・・・」と言って受診する人は、2008年がピークで2009年は減少し、今年はさらに減少しています。

 その一方で、「別の訴えで受診してそこからHIV感染が判った。患者さんはまさか自分がHIVに感染しているとは思っていなかった」、というケースが昨年後半あたりから増えてきています。

 検査に対する関心が薄れることが問題となる理由は主に2つあります。1つは、他人に感染させる機会が増えること、もう1つは、HIV感染の発見が遅れエイズを発症してしまえば薬が効きにくくなる可能性が生じ寿命を縮ませかねない、ということです。

 気になる人は早めに検査を受けましょう。

(谷口恭)

参考:医療ニュース2009年6月20日 「日本のHIV、増加傾向は変わらず」

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