医療ニュース

2010年11月4日(木) 妊娠中のDHA摂取で早産リスクは低減するが・・・

 DHA(ドコサヘキサエン酸)が健康にいいと言われて随分長い年月が過ぎたように思われます。DHAは魚油に含まれる不飽和脂肪酸で、サプリメントとしても広く摂取されています。

 DHAは中性脂肪(TG)を減少させることが分かっており、結果として心筋梗塞など心血管系疾患の予防となります。日本や南欧で心疾患が少ないのは、青身の魚をよく食べることでDHAがたくさん摂取できているからではないかとしばしば言われます。

 妊娠中にDHAを多く摂取すると早産が少なくなる・・・

 これは、医学誌『JAMA』2010年10月20日号に掲載されたオーストラリアの研究です(注)。

 もちろん、これはDHAの有用性を示した”嬉しい”研究ではありますが、この研究のメインは他のところにあり、こちらは”残念な”結果に終わっています。それは、

 妊娠中にDHAをたくさん摂取しても産後うつ病や子供の認知力向上には関係しない・・・

 というものです。今回の研究では、妊娠21週未満の女性2,399人を対象とし、DHA800mgを含有する魚油サプリメントを毎日摂取するグループと、DHAを含有しない植物油カプセルを摂取するグループに分け、出産まで摂取を継続してもらっています。そして出産後、客観的な指標を用いて、母親のうつのレベルと出生時の認知力を調べています。

 その結果、母親のうつ、子供の認知力ともに有意な差は認められなかったそうです。

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 この研究をみて、まず私が感じたのは、魚油をたくさん摂る地域(日本や南欧など)では、産後うつが少ないとか、生まれてくる子供の頭がいいとか、そういった疫学的調査があるのか、という疑問です。

 一方、DHAが中性脂肪を下げて心血管系疾患を予防することは分かっているのですから、妊婦さんがDHAを摂取すると心血管系のバランスが良くなり、早産のリスクが低下するというのは理にかなっています。

 これまでもDHAがうつを改善したり頭をよくしたり、といった”説”はありましたが、私には、どうも世間がDHAに過剰に期待しすぎているように思えてなりません。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Effect of DHA Supplementation During Pregnancy on Maternal
Depression and Neurodevelopment of Young Children」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/304/15/1675?maxtoshow=&hits=10&RESULTFORMAT=&fulltext=Maria+Makrides&searchid=1&FIRSTINDEX=0&resourcetype=HWCIT

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