医療ニュース
2011年5月6日(金) カルシウムサプリメントが女性に危険かも・・・
カルシウムのサプリメントを積極的に摂取している人は少なくないのではないかと思われます。なにしろ、骨粗しょう症が増えているということが頻繁に指摘されていますし、現代人の骨が脆くなってきていることは大勢の人が感じているのではないでしょうか。実際、日本人が摂取基準を取れていないミネラルやビタミンと言えばカルシウムが筆頭に上がります。
厚生労働省が定めている1日あたりのカルシウム摂取基準は、成人であれば男性700mg、女性650mg程度ですが、平成18年の国民健康・栄養調査によりますと、実際には、男性平均546mg、女性平均524mgしかとれておらず基準に届いていません。つまり、「現代人はカルシウム不足」というのは公的なデータからも証明されているというわけです。(摂取基準については正確には年齢ごとに基準が異なります。下記注1を参照ください)
食事で充分なカルシウムが摂れないなら、サプリメントで摂ればいいじゃないか・・・。
誰もがそう思うでしょうし、実際カルシウムのサプリメントはかなり普及しているといっていいでしょう。ところが、です。「カルシウムサプリメントは女性の心疾患リスクを高める」という研究結果が発表され物議をかもしています。詳細は医学誌『British Medical Journal』2011年4月19日号に掲載されています。(下記注2参照)
この研究では、WHI(Women’s Health Initiative study)と命名されたアメリカの大規模研究のデータが用いられ、さらに約3万人の女性を対象とした未発表の13研究のデータが追加されて分析が加えられています。その結果、「カルシウムサプリメント摂取によって心臓発作リスクが25~30%、脳卒中が15~20%増大した」ことが判ったそうです。
研究者らは、「カルシウムは動脈硬化に関連しているのだから、今回の結果は生物学的に理にかなっている」とコメントしています。
***************
女性のカルシウムサプリメント摂取に否定的なこの研究はすべての学者から肯定されているわけではありません。実際、日本にも海外にもカルシウム製剤を処方する医師は大勢いますし、カルシウムサプリメントを摂らないように患者さんに注意している医師はほとんどいないのではないかと思われます。(過剰摂取に注意を促すことはありますが)
今後さらなる追跡調査が行われることを期待したいと思います。また、ビタミンDとカルシウムサプリメントを併用すれば心血管系のリスクがどうなるのか、男性のカルシウムサプリメント摂取はどのように考えればいいのか、といったあたりの研究も待ちたいところです。
現時点で確かなことが2つあります。ひとつは、現代人の多くがカルシウム不足であること、もうひとつは、カルシウムは食事から摂れば何の問題もない、ということです。
(谷口恭)
注1:カルシウムの摂取基準量については、独立行政法人国立健康・栄養研究所の下記のサイトが参考になるかと思います。
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail660.html
注2:この論文のタイトルは、「Calcium supplements with or without vitamin D and risk of
cardiovascular events: reanalysis of the Womens Health Initiative limited access dataset
and meta-analysis」で、下記のURLで全文を読むことができます。
http://www.bmj.com/content/342/bmj.d2040.full.pdf?sid=f404aad1-c0ac-4fa4-90d3-118347e1d97f
最近のブログ記事
- 2024年11月17日 「座りっぱなし」をやめて立ってもメリットはわずか
- 2024年10月24日 ピロリ菌は酒さだけでなくざ瘡(ニキビ)の原因かも
- 2024年10月11日 幼少期に「貧しい地域に住む」か「引っ越し」がうつ病のリスク
- 2024年9月19日 忍耐力が強い人は長生きする
- 2024年9月8日 糖質摂取で認知症のリスクが増加
- 2024年8月29日 エムポックスよりも東部ウマ脳炎に警戒を
- 2024年8月4日 いびきをかけば認知症のリスクが低下?
- 2024年7月15日 感謝の気持ちで死亡リスク低下
- 2024年6月30日 マルチビタミンで死亡率上昇?
- 2024年6月5日 15歳老けてみえる人は大腸がんかも
月別アーカイブ
- 2024年11月 (1)
- 2024年10月 (2)
- 2024年9月 (4)
- 2024年8月 (1)
- 2024年6月 (2)
- 2024年5月 (2)
- 2024年4月 (2)
- 2024年3月 (2)
- 2024年2月 (3)
- 2024年1月 (1)
- 2023年12月 (2)
- 2023年11月 (2)
- 2023年10月 (2)
- 2023年9月 (2)
- 2023年8月 (1)
- 2023年7月 (3)
- 2023年6月 (2)
- 2023年5月 (2)
- 2023年4月 (2)
- 2023年3月 (2)
- 2023年2月 (2)
- 2023年1月 (2)
- 2022年12月 (2)
- 2022年11月 (2)
- 2022年10月 (2)
- 2022年9月 (2)
- 2022年8月 (2)
- 2022年7月 (2)
- 2022年6月 (2)
- 2022年5月 (2)
- 2022年4月 (2)
- 2022年3月 (2)
- 2022年2月 (2)
- 2022年1月 (2)
- 2021年12月 (2)
- 2021年11月 (2)
- 2021年10月 (2)
- 2021年9月 (2)
- 2021年8月 (2)
- 2021年7月 (2)
- 2021年6月 (2)
- 2021年5月 (2)
- 2021年4月 (4)
- 2021年3月 (2)
- 2021年1月 (2)
- 2020年12月 (3)
- 2020年11月 (3)
- 2020年9月 (2)
- 2020年8月 (2)
- 2020年7月 (1)
- 2020年1月 (2)
- 2019年12月 (2)
- 2019年11月 (2)
- 2019年10月 (2)
- 2019年9月 (2)
- 2019年8月 (2)
- 2019年7月 (2)
- 2019年6月 (2)
- 2019年5月 (2)
- 2019年4月 (2)
- 2019年3月 (2)
- 2019年2月 (2)
- 2019年1月 (2)
- 2018年12月 (2)
- 2018年11月 (2)
- 2018年10月 (1)
- 2018年9月 (2)
- 2018年8月 (1)
- 2018年7月 (2)
- 2018年6月 (2)
- 2018年5月 (4)
- 2018年4月 (3)
- 2018年3月 (4)
- 2018年2月 (5)
- 2018年1月 (3)
- 2017年12月 (2)
- 2017年11月 (2)
- 2017年10月 (4)
- 2017年9月 (4)
- 2017年8月 (4)
- 2017年7月 (4)
- 2017年6月 (4)
- 2017年5月 (4)
- 2017年4月 (4)
- 2017年3月 (4)
- 2017年2月 (1)
- 2017年1月 (4)
- 2016年12月 (4)
- 2016年11月 (5)
- 2016年10月 (3)
- 2016年9月 (5)
- 2016年8月 (3)
- 2016年7月 (4)
- 2016年6月 (4)
- 2016年5月 (4)
- 2016年4月 (4)
- 2016年3月 (5)
- 2016年2月 (3)
- 2016年1月 (4)
- 2015年12月 (4)
- 2015年11月 (4)
- 2015年10月 (4)
- 2015年9月 (4)
- 2015年8月 (4)
- 2015年7月 (4)
- 2015年6月 (4)
- 2015年5月 (4)
- 2015年4月 (4)
- 2015年3月 (4)
- 2015年2月 (4)
- 2015年1月 (4)
- 2014年12月 (4)
- 2014年11月 (4)
- 2014年10月 (4)
- 2014年9月 (4)
- 2014年8月 (4)
- 2014年7月 (4)
- 2014年6月 (4)
- 2014年5月 (4)
- 2014年4月 (4)
- 2014年3月 (4)
- 2014年2月 (4)
- 2014年1月 (4)
- 2013年12月 (3)
- 2013年11月 (4)
- 2013年10月 (4)
- 2013年9月 (4)
- 2013年8月 (172)
- 2013年7月 (408)
- 2013年6月 (84)