医療ニュース
2011年6月3日(金) WHOが携帯電話の危険性を公表
携帯電話は脳腫瘍のリスクかもしれない・・・。これは随分前から指摘されていたことで、本格的に大規模調査がおこなわれたことは以前このサイトでお伝えしました。(下記医療ニュース参照)
その調査結果を簡単に振り返っておくと、約13,000人を対象とした10年間にわたる国際調査がおこなわれ、結論は「携帯電話使用と脳腫瘍の間に相関関係は認められなかった」というものです。しかし、その調査をよく読むと、累積で1,640時間以上携帯電話を使用すると、神経膠腫(グリオーマとも呼ばれます)という脳腫瘍の発症率が1.4倍になると記されており、これは1日30分の通話を9年間続ければ達成してしまう時間である、ということを「医療ニュース」のコメントで述べておきました。
この調査でWHO(世界保健機関)やFDA(米食品医薬品局)は、「通常の携帯電話の使用では脳腫瘍のリスクは上昇しない」と発表したわけですが、2011年5月31日、WHOはこの調査結果の解釈を変えて、発ガン性があるかもしれない(possibly carcinogenic)との見解を公表しました。
日本の総務省は、6月1日、このWHOの見解を受けて、2003年に同省の専門委員会が発表した研究結果を基に、「現時点では問題がないと考えている」とコメントしたそうです。(報道は6月2日の読売新聞)
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possibly carcinogenicというのは発ガンリスクとしては上から3番目にカテゴライズされており(一番高いのはcarcinogenic、次がprobably carcinogenicです)、他のpossibly carcinogenicに相当するものの例としてタルクパウダーに対する卵巣ガンがあります。
私の知る限り国内外のマスコミはコメントしませんでしたが、上記に述べた通り、1日30分の通話を9年間続ければ、脳腫瘍のリスクとなる1,640時間を越えることになりますから、実際は長期間でみたときにはリスクがあると考えるのが妥当ではないでしょうか。
総務省は「現時点では問題がない」としていますが、我々が知りたいのは「現時点」ではなく「将来のこと」です。
最近も、別のことで「現時点では問題がない」という表現を政治家や官僚の見解でよく聞くような気がするのですが、その場しのぎの言い訳に聞こえてしまうのは私だけでしょうか・・・。
(谷口恭)
注:WHOの発表のニュースは日本のマスコミでも報道されていますが、Washington Postの記事が分かりやすいです。(下記URLで読めます)
http://www.washingtonpost.com/national/cell-phones-possibly-carcinogenic-who-says/2011/05/31/AGRktZFH_story.html
参考:医療ニュース
2010年5月31日「携帯電話で発ガン性は一応認められず・・・」
2010年1月23日「携帯電話がアルツハイマーを予防?」
2010年7月12日「寝る前の携帯電話はNG」
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