医療ニュース
2011年8月5日(金) 黄砂で脳梗塞のリスクが上昇
黄砂の被害というと喘息やアレルギー性鼻炎、結膜炎、皮膚炎などが多いことはよく知られていますが、脳梗塞のリスク上昇にもなるという見解が、7月31日に京都で開催された日本脳卒中学会で報告されたようです。(報道は7月31日の日経新聞)
この調査は九州大学と国立環境研究所の研究グループによっておこなわれています。1999年6月~2009年3月に、福岡県の7つの病院に脳梗塞で運ばれた救急患者6,352人について調べられています。気象庁のデータから、黄砂の飛来した日と救急患者の関係を調べたところ、脳梗塞の急患は、黄砂が飛んでいない時期に比べ、前3日間に黄砂が観測されていると7.5%増えていたそうです。
脳の太い血管が詰まって言語障害や手足のマヒを招く重症型に限ってみれば、発症リスクが1.5倍にもなるそうです。さらに、飲酒があれば2.5倍、喫煙があれば2倍にもなるそうです。
なぜ黄砂で脳梗塞が起こるのでしょうか。研究チームは次のように考えています。
黄砂には直径4マイクロメートル(4/1000ミリメートル)ほどの微粒子が多く含まれ、肺の奥にまで入り込みます。黄砂に含まれる汚染物質や微生物によって過剰な免疫反応が起こり、肺の奥の血管の内側についた脂肪の塊(かたまり)がはがれ、この塊が脳の血管に飛んでいって詰まらせて脳梗塞となるというストーリーです。
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黄砂は中国大陸からとんできます。今年のゴールデンウィーク前後には西日本全域で大量の黄砂に見舞われ、太融寺町谷口医院にも連休明けには黄砂が原因と思われる、咳・鼻炎・結膜炎・皮膚炎の患者さんが急増しました。6月に入り黄砂の飛散が落ち着くと、自然にこのような症例は減っていきました。
私の印象で言えば、花粉による咳や鼻炎症状に比べると、黄砂が原因のものは症状が強く、薬もあまり効きません。最も有効な対処法は、強い薬を使うのではなく、物理的に黄砂を遮断することです。つまり、窓を開けない、ゴーグルやマスクをできる限り利用する、できるだけ外出は控える、などです。
太融寺町谷口医院の患者さんのなかには九州出身の人が(なぜか)多いのですが、彼(女)らに話を聞くと、大阪の黄砂は九州(特に福岡市と北九州市)に比べると「はるかにまし」と言います。
ということは、九州北部に居住するということが、アレルギー疾患だけでなく脳卒中のリスクになる、ということになるかもしれません。ちなみに、海外には「黄砂は心筋梗塞のリスクになる」という報告もあります。
心筋梗塞や脳梗塞は命に直結する疾患ですし、脳梗塞は助かったとしてもその後長年にわたり寝たきりの生活を強いられたり、話せない・食べられないなどの後遺症を残したりすることがあります。
中国大陸からの黄砂対策について、今後しっかりとした議論を重ねていくべきでしょう。
(谷口恭)
参考:黄砂情報は気象庁のウェブサイトで見ることができます。下記URLを参照ください。
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