医療ニュース
2011年8月9日(火) 身長が高いとガンになりやすい
先日は「身長が低いと脳卒中になりやすい」という研究を紹介しましたが、今度は身長の高い人が気になる研究です。「身長が高いとガンになりやすい」というもので、イギリスの研究者によるものです。医学誌『Lancet Oncology』の2011年7月21日号(オンライン版)に掲載されています(下記注参照)。
この研究では、1996~2001年に英国で実施された「Million Women Study」というデータが分析されています。約130万人の対象となった中年女性は、一部の皮膚ガンを除く他のガンにかかったことがないということが条件になっており、さらに研究開始時に乳癌スクリーニング検査が実施されています。対象者の追跡は平均9年間おこなわれています。対象者は身長によって、低いグループから高いグループまで合計6つのグループに分けられています。
その結果、身長の高い女性は、多くのガンのリスクが有意に高く、身長が増えるにつれてそのリスクが増加していたそうです。さらに、過去の身長に関する10件の研究について再検討した結果、ヨーロッパ、北米、アジア、オーストラリアなどの集団でも同様の関連性が認められたそうです。
なぜ身長が高いとガンのリスクが上昇するのかの説明として、研究者は、身長の高い人は成長関連ホルモンのレベルが高く、それがガンのリスクの増大につながっている可能性を指摘しています。
しかし、研究者らは、同時に、「背が伸びないように努力したり、長身の人が追加のガン検診を受けたりする必要はない」と述べています。さらに、「身長に関わらず、禁煙し、適正体重を維持し、推奨されるガン検診を受けることによってガンのリスクを軽減できることに変わりはない」と付記しています。
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私が今回の研究で気になるのは、(上には述べませんでしたが)身長が高い女性ほどアルコール摂取量が多く、子どもの数が少なく、肥満・喫煙の比率が低く、裕福で活動的である傾向があったとされていることです。
先日紹介しました「身長が低いと脳卒中になりやすい」という研究では、低身長のグループは、身体活動量が少なく、肥満や高脂血症、喫煙、飲酒量が多いなどの特徴があったと報告されています。さらに、低身長と教育レベルや職業との関連性も指摘されています。
これらを合わせて考えると、身長の低い人には肥満と喫煙が多く、身長の高い人が社会的に裕福ということになってしまいます。果たしてそんなことがあるのでしょうか。
今回のイギリスの調査は女性を対象としたものです。今後男性も含めたさらなる研究を待ちたいと思います。
(谷口恭)
注:この論文のタイトルは、「Height and cancer incidence in the Million Women Study:
prospective cohort, and meta-analysis of prospective studies of height and total cancer risk」で、下記のURLで概要を読むことができます。
http://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS1470-2045%2811%2970154-1/abstract
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