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2013年4月26日(金) ドライバーのカフェイン摂取で事故減少

 車を運転する人、とりわけ長距離ドライバーにとって最もやっかいなものは突然襲ってくる眠気でしょう。眠気にはカフェインを摂ると効果的、とは昔から言われることですが、本当に眠気対策になるのでしょうか。そして事故は減るのでしょうか。

 お茶やコーヒー、カフェイン錠剤など、合法的なカフェイン添加物は、交通事故のリスクを6割以上減少させる…

 これは、オーストラリアのジョージ国際保健研究所(George Institute for Global Health)のLisa N Sharwood氏らによる研究結果で、医学誌『British Medical Journal』2013年3月18日号(オンライン版)に論文が掲載されています(注1)。

 2008年12月から2011年5月の間、オーストラリアのニューサウスウェールズ州(人口730万人)とウェスタンオーストラリア州(230万人)の長距離ドライバー(走行距離200km以上)で、過去12ヶ月以内に事故を起こした530人と、事故を起こしていない517人が研究の対象とされています。

 対象者から、年齢、健康状態、睡眠障害の有無、走行距離などを聞き取り、これらが影響を与えないように調節した上で、カフェイン摂取と事故との関係を解析した結果、カフェイン摂取により事故が63%減少するという結果が導かれています。

 もう少しデータをみてみると、事故をおこしたグループの方が平均年齢が若く(44.2歳vs46.1歳)、事故を起こしていないグループの方が運転経験の年数が長いという結果がでていて、これらは頷けます。興味深いのは、事故を起こしていないグループに肥満者が多いということです。この理由については論文では言及されていません。

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 太融寺町谷口医院の患者さんのなかにも長距離ドライバーが何人かおられ、過去に何度か眠気対策について聞かれたことがあります。カフェイン飲料について最も重要なことは、滋養強壮・栄養補給と謳われてカフェインが入っているドリンク剤にはけっこうな割合でアルコールが加えられている、ということです。加えられているアルコールはごく微量だとは思いますが、お酒に弱い人が飲むと、カフェインで眠気覚ましを期待したのに、結果としてアルコールで眠くなった、ということが起こるかもしれません。

 ですから、ドライバーがカフェイン含有のドリンク剤を選ぶときは、カフェインの濃度よりもまずはアルコールの有無を確認すべきです。

 ところで、長距離ドライバーの眠気覚ましと言えば、カフェインよりも覚醒剤を思い浮かべる人もいるのではないでしょうか。今はもちろん違法ですが、以前は「ヒロポン」という名前で正式に薬局で販売されていました。長距離ドライバーを含む夜間に働く人たちから大変重宝されていたそうです。(この話題はこのサイトで何度も触れているので省略しますが、日本には覚醒剤が合法であった時代があったのです。ちなみにサザエさんにはヒロポンを飲んでハイテンションになるタラちゃんが登場するものもあります。興味のある方は下記エッセイも参照してみてください)

 今回取り上げた論文にも違法薬物についての言及があります。事故を起こさなかったグループで覚醒剤などの違法薬物を使用していたのはわずか3%だったとされています。しかし、回答者がどこまで真実を伝えているかは疑問です。論文のなかでは、オーストラリアの長距離ドライバーの違法薬物摂取率は19~32%と調査によってばらつきがあることにも触れられています。

 この研究結果を「眠気覚ましにカフェインを摂ろう」と解釈すべきではありません。規則正しい生活や疲労を蓄積させない努力の方がはるかに重要なのは自明です。安易にカフェインに(まして覚醒剤などに)頼るべきではありません。

(谷口恭)

注1:この論文のタイトルは、「Use of caffeinated substances and risk of crashes in long distance drivers of
commercial vehicles: case-control study」で、下記のURLで全文を読むことができます。

http://www.bmj.com/content/346/bmj.f1140

参考:
マンスリーレポート2012年6月号 「酒とハーブと覚醒剤」

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