医療ニュース
2024年3月31日 帯状疱疹ワクチン、安い方でOK?
2年ほど前から帯状疱疹のワクチンに関する問い合わせが増えています。患者さんが「うちたい」というのはたいてい高い方のワクチンなので、これはおそらく製薬会社(やこのワクチンで儲かる他の人たち)のマーケティング戦略の結果でしょう。
ですが、谷口医院では結果としてほとんどの患者さんが安い方のワクチンを接種しています。もちろんその理由は「費用」です。高い方のワクチン(グラクソ・スミスクラインの「シングリックス」)は2回接種しなければならず合わせて4~5万円もします。一方、安い方のワクチン(阪大微生物病研究会「ビケン」)は7~8千円程度ですから価格はおよそ6分の1です。
シングリックスを推薦する人は「シングリックスの方が効果が高い」と言うわけですが、どの程度の差があるのでしょう。最近、安い方のワクチンでもそれなりに高い効果があることを示した研究が発表されたのでここに報告します。
医学誌「BMJ」2023年11月号に掲載されたその論文のタイトルは「帯状疱疹生ワクチンの接種後10年間の有効性: 電子健康記録を使用したコホート研究(Effectiveness of the live zoster vaccine during the 10 years following vaccination: real world cohort study using electronic health records )」です。
研究では米国の「Kaiser Permanente Northern California」と呼ばれるデータベースが使われています。対象は50歳以上の1,505,647人で507,444人(34%)が帯状疱疹の生ワクチン(安い方のワクチン)を接種していました。
調査によると、ワクチンの有効性は接種後1年目が67%と最も高く、その後は経時的に減っていき、10年後には15%まで低下していました。
帯状疱疹に罹患して最も困るのが「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれる長引く痛みです。これを抑える効果について、1年目は83%で、10年後には41%へ低下していました。
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高い方のワクチンとの比較がありませんが、1年目の有効性67%、1年目の帯状疱疹後神経痛抑制効果83%を「その程度しかないのか」と感じる人もいるのではないでしょうか。それならば高い方にしようと考える人もいるでしょう。もちろんそれでもいいのですが、帯状疱疹の最重要事項は「治療薬がある」です。
もしも治療薬がなくてワクチンしかない感染症であれば、ワクチンのプレゼンスが非常に高くなります。代表は麻疹(はしか)で、(1歳未満と30歳以上は)感染すると死に至ることもある重大な疾患で、治療薬はありません。ですがワクチンはあります。ワクチン2回接種で100%近い効果があります。
一方、帯状疱疹には薬があります。では、薬があるのにもかからず不幸なことに帯状疱疹後神経痛を発症する人がいるのはなぜでしょうか。それは「薬を飲まなかった」か「薬を飲み始めるのが遅かった」かのどちらかです。
つまり帯状疱疹で最も大切なのは「疑えば直ちに受診」です。日頃から「どのような症状が出れば帯状疱疹を疑うべきか」をかかりつけ医から学んでおき、少しでも可能性があればすぐに受診することが大切です。
帯状疱疹に関して言えば治療の主役は薬であってワクチンではないのです。このことを踏まえて高い方か安い方を検討すればいいでしょう。
参考:医療プレミア「帯状疱疹 50歳未満でもワクチン接種がお勧めの人たち」
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