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2024年3月11日 「座りっぱなし」で仕事をする人にとっての効果的な運動は

 本サイトで「座りっぱなし」のリスクについて初めて紹介したのは、おそらく2010年の医療ニュース「座っている時間が長い人は短命?」です。その後、繰り返し、「座りっぱなし」は寿命を縮めるだけでなく、生活習慣病、心血管系疾患、ED、さらには認知症のリスクを上昇させることを示した研究などを紹介してきました。

 今や「座りっぱなし」は「第二の喫煙」とも呼ばれ、2020年にはWHOが正式に危険性を表明しました。WHOの主張を簡単にまとめれば、「小児から高齢者、妊娠中の女性、さらには障害を抱えた人も含めて、「座りっぱなし」は健康上のリスクになるので適切な対策をとらねばならない」となります。

 今回は「座りっぱなし」がいかに有害化を示した台湾の大規模研究を紹介したいと思います。医学誌「JAMA」2024年1月19日号に掲載された論文「仕事で座る時間、余暇の身体活動、全死因および心血管疾患による死亡率(Occupational Sitting Time, Leisure Physical Activity, and All-Cause and Cardiovascular Disease Mortality)」にまとめられています。

 研究の対象は1996~2017年の台湾の健康プログラムにの参加した合計481,688人の男女(平均年齢は39.3歳、女性53.2%)。平均追跡期間は12.85年、追跡期間中に26,257人が死亡しました。

 「仕事中にほとんど座っている人(ones who mostly sat at work)」は「仕事中にほとんど座らない人(ones who were mostly nonsitting at work)」に比べ、全死因の死亡率が16%高く、心血管疾患による死亡率が34%高かったことが分かりました。「仕事中に座る・座らないを交互に繰り返す人(ones alternating sitting and nonsitting at work)」は、ほとんど座っていない人に比べ、死亡率の増加はみられませんでした。

 この研究では「運動」で「座りっぱなし」による死亡リスクが解消できることを示しています。「ほとんど座っている人」が、1日15~30分の「余暇での運動(leisure-time physical activity, LTPA)」か、あるいはPAIスコア100以上の運動をおこなえば、LTPAをほとんどしない「ほとんど座らない人」に比べて死亡リスクが上昇しないことが分かりました。

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 この論文が簡単そうでややこしいのは、LTPA、PAIといった聞きなれない言葉がでてくることです。論文を読んでもLTPAとは具体的にどのようなものを差すのかがよく分かりません。もしかすると、台湾の公園などでよく見る大音量の音楽をかけてみんなで踊っているダンスのようなものでしょうか。

 PAIは「Personal Activity Intelligence」のことでノルウェーの研究者Ulrik Wisløff氏が考案した指標です。PAIは運動中の心拍数の変化を週ごとのスコアに変換する指標で、有用度を検討した論文によると、10年前と現在の双方でPAIスコアが100以上であれば(PAI100以上の運動を続けていれば)、100未満の人に比べて、心血管疾患による死亡リスクが32%、全死因の死亡リスクが20%低くなります。

 PAIが興味深いところは、スコアを各自の心拍数から算出している点で、この方式なら元々運動能力の高い人も低い人も指標として用いることができます。またスコアを算出する期間を1日ではなく1週間にしている点も注目に値します。この方法であれば「週末のみハードな運動をする人」も高得点になるからです。ただ、現時点ではすべてのウェアラブルデバイス(スマートウォッチ)に対応できているわけではなく、PAIスコアが計測できるデバイスはXiaomi(シャオミ)、Amazfit(アマズフィット)、MIO(ミオ)だけのようです。以前は、AppleWatchやFitbitなどでも連動させてPAIスコアが表示されるアプリがあったそうなのですが現在はサービスを終了しているそうです。

 この台湾の研究で分かることは、座りっぱなしは死亡リスクとなるが、それなりに負荷のかかる運動をすればそのリスクが解消できそうだ、ということです。しかし、過去の医療ニュース「座りっぱなしの時間が長ければ運動しても認知症のリスク上昇」で紹介したように認知症のリスクは運動で解消されないという研究もありますから、「座りっぱなし」の仕事自体はやはり見直した方がいいかもしれません。

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