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2019年7月29日 筋肉増強やダイエット目的のサプリメントはこんなにも危険

 太融寺町谷口医院(以下「谷口医院」)の患者さんは比較的若いということもあり、サプリメントの相談のなかでは動脈硬化予防やがんの予防よりもむしろ、筋肉増強やダイエットに関したものの方が多いという特徴があります。「〇〇を飲もうと思っているんですけど…」という相談をされる方もいますが、多くはすでに飲みだしてから不安になった人たちです。あるいは、これは相談ではありませんが、健診で肝臓や腎臓の数値が悪いことで受診され、問診からその原因がサプリメントであることが判ったということもよくあります。

 では、どの程度の割合で健康被害がでるのでしょう。これについては我々は漠然と”多い”という感覚がありますが、具体的な数字はよく分かっていませんでした。薬の場合は発売前から「〇%の使用者に△という副作用がある」ということが分かっていますが、サプリメントの場合はほとんど情報がありません。過去に東京都福祉保健局が実施した「サプリメントの副作用は全体の4.2%」という調査結果がありますが、これは自覚症状に限ってのことであり、無自覚の肝機能障害、腎機能障害などを加えるともっと高くなるはずです。

 これを検証した研究が発表されました。医学誌『Journal of Adolescent Health』2019年6月5日(オンライン版)に「小児から若い世代でのサプリメントの弊害(Taking Stock of Dietary Supplements’ Harmful Effects on Children, Adolescents, and Young Adults)」というタイトルの論文が掲載されました。さらに、一般向けの医療情報サイト「Health Day」では「10代にとっての多くのサプリメントは危険(Many Dietary Supplements Dangerous for Teens)」というタイトルで紹介されています。

 この研究では、FDA(米国食品医薬品局)の有害事象報告システムが用いられています。2004年1月~2015年4月に報告された米国の0~25歳の小児から若年成人が内服したサプリメントによる有害事象が解析されています。その結果、調査期間中に合計977件の有害事象が認められ、そのうち(なんと)40%もが「重篤な健康被害」だったというのです。重症例には入院例、救急受診例、さらに死亡例も含まれています。

 この研究では若者が好むサプリメントがビタミン剤に比べてどれくらいリスクが大きいのかが検討されています。結果、筋肉増強を目的としたサプリメントでは2.7倍、性機能増強などのエネルギーアップを目的としたものでは2.6倍、体重減少(ダイエット)を目的としたものでは2.6倍リスクが上昇していることが分かりました。

 上記「Health Day」の記事では、ハーバード大学公衆衛生学部教授のオースティン(Austin)氏の言葉を紹介しています。氏によれば、サプリメントが野放しのこの現状は「アメリカの若者にロシアンルーレットをさせているようなもの」だそうです。

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 たしかに、死亡例も出ているわけですから「ロシアンルーレット」という表現も大げさではないかもしれません。

 参考までに谷口医院で診断がついた最も多いサプリメントの被害は、男性の場合、プロテインによる腎機能障害、次いでクレアチンによる腎機能障害です。女性は、ダイエットのサプリメントでの動悸、嘔気、肝機能障害です。これらについては過去のコラム(マンスリーレポート2018年11月「サプリメントや健康食品はなぜ跋扈するのか」も参照してください。

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