医療ニュース
2018年12月30日 多血小板血漿療法は「効果なし」の結論
太融寺町谷口医院(以下「谷口医院」)では美容医療をおこなっていませんが、「健康のことは何でも相談ください」と言い続けていることもあって、2007年のオープン当時から美容医療の相談、つまり「〇〇法は有効でしょうか」といった相談をよく受けています。
そういうもののなかで、過去12年間コンスタントに相談されているのが「多血小板血漿療法」(Platelet Rich Plasma Injection、以下「PRP療法」)です。自分自身の血小板の成長因子が持つ「組織修復能力」を利用して、皮膚を”若返り”させようとする治療法で、例えば床ずれ(褥瘡)や糖尿病の皮膚壊疽や潰瘍を治療する目的で研究が進められてきたものです。
なにしろ、自分自身の血液を使うために感染症の心配がなく、元々持っている”自然の”再生能力を利用しようというものですから、非常に聞こえがいいわけです。はやりすたりのある美容医療のなかで人気が持続しているのはこのあたりに理由がありそうです。
では実際に効果があるのでしょうか。医学誌『JAMA Dermatology』に興味深い論文が掲載されました。論文のタイトルは「紫外線で老化した顔面の皮膚の若がえりに対するPRP療法の効果(Effect of Platelet-Rich Plasma Injection for Rejuvenation of Photoaged Facial Skin)」です。
研究の対象となったのは18~70歳の男女27人(平均年齢46歳、女性が17人)です。片側の頬にPRPを、もう一方の頬には生理食塩水をそれぞれ3mLずつ皮内注射しました。結果は興味深いものです。
被験者の自己評価は、PRPで治療した頬は生理食塩水と比べて有意に改善しています。fine and coarse texture(訳しにくい!直訳すると「細かい繊維と荒い繊維」、要するに肌の「キメ」のことだと思います)が改善したと答えています。
一方、皮膚科医が客観的に評価したところ、fine lines(小じわ)、mottled pigmentation(斑状の色素沈着)、skin roughness(あれ)、skin sallowness(黄染)のいずれの点でもPRPと生理食塩水に差はありませんでした。
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客観的には効果がなくても施術を受けた本人が満足しているのだからそれでいいではないか、という考えもあるかもしれませんが、高額を支払う価値が本当にあるのかどうか、再考した方がよさそうです。
ちなみに、谷口医院でPRP療法の相談をされたとき、これまでは「自己血を使うから危険性は低い。ただし有効とするエビデンスはない」と伝えてきました。今度相談されたときはこの論文の話をしてみようと思います。
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