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2018年2月1日 妊娠中のアセトアミノフェンで言語発達の遅れ?

「妊娠中には市販のものも含めて風邪薬や解熱鎮痛剤はほとんど飲めない。どうしても必要なときにはアセトアミノフェンを使用しなければならない」ということは過去にもお伝えしてきました。また、そのアセトアミノフェンも妊娠中の危険性を指摘する意見がなくはなく、新生児のADHD(注意欠陥多動性障害)のリスクとなるという研究も紹介しました(いずれも下記参考文献を参照)。

 今回、新たに妊娠中のアセトアミノフェンの危険性についての研究が発表されましたので報告します。医学誌『European Psychiatry』2018年1月10日号(オンライン版)に論文が掲載されました(注1)。

 研究の対象者はスウェーデンの妊娠8~13週に登録された妊婦754人です。妊娠中のアセトアミノフェンの使用と生後30カ月(2歳6カ月)での子供の言語発達との関係が解析されています。

 結果は、まず妊娠8~13週の間にアセトアミノフェンを内服していた妊婦は全体の59.2%。言語発達の遅滞は女児(4.1%)より男児(12.6%)に多いものの、アセトアミノフェンとの関連があったのは女児のみでした。妊娠中にアセトアミノフェンを1日6錠(注2)以上内服すると、まったく飲まない妊婦に比べて女児の言語遅滞がみられるリスクが5.92倍増加しています。また、リスクは内服量にも影響するようで、尿中アセトアミノフェン濃度が最も高かった母親から生まれた女児は、最も低かった母親に比べてリスクが10.34倍にもなっています。

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 妊娠中に頭痛や発熱が起こったときに何もせずに放っておくと、胎児に影響を与える可能性があります。一方、バファリンやロキソニンといったNSAIDsと呼ばれる鎮痛薬は内服すべきでありません。もちろん麻薬(オピオイド系)は論外です。痛みや発熱が生じたときにはアセトアミノフェンに頼らざるを得ません。

 月並みなコメントになりますが、まずは健康に注意し、規則正しい生活をこころがけ(頭痛は生活の乱れがリスクとなります)、可能な限り鎮痛薬に頼らぬよう予防することが最重要となります。

注1:この論文のタイトルは「Prenatal exposure to acetaminophen and children’s language development at 30 months」で、下記URLで概要を読むことができます。

http://www.europsy-journal.com/article/S0924-9338(17)32989-9/abstract

注2:論文にはミリグラム数が記載されていません。日本ではアセトアミノフェンの製剤は1錠200mgが多いのですが、海外では300mgが一般的です。海外での6錠(1,800mg)は日本の9錠に相当するのではないかと思われます。(ただし、スウェーデンに渡航したことのない私には確証はもてません)

参考:
毎日新聞「医療プレミア」2016年1月10日「解熱鎮痛剤 安易に使うべからず」
医療ニュース2015年1月30日「妊娠中のアセトアミノフェンの是非は?」
医療ニュース2014年4月4日「妊娠中のアセトアミノフェンがADHDを招く?」

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