医療ニュース
2015年8月28日 コーヒーが悪性黒色腫を予防
2~3年に一度程度でしょうか。「このホクロがガンではないかと思って受診しました」という患者さんが、短い期間に集中して受診されることがあり、この夏がそうでした。医師になりこの現象を何度か経験しましたが、これはまず間違いなく何かのテレビ番組で「ホクロと思っていたが実はガンだった。あなたは大丈夫ですか?」というようなものが放送されたからです。
大半はガンではなく「ただのホクロ」なのですが、たしかに一部はガンが疑わしい症例があります。当院でいえば年間1人くらいはホクロに見えるガン、つまり「悪性黒色腫(マリグナント・メラノーマ)」が見つかります。
カフェインおよびカフェイン入りコーヒーが悪性黒色腫のリスクを下げる・・・
このような嬉しい研究結果が米国ハーバード大学の研究チームによって導かれました。医学誌『Epidemiology』2015年7月10日(オンライン版)に掲載されています(注1)。
研究は過去に実施された3つの大規模研究を調べ直すかたちをとっています。3つの研究とは、①女性89,220人を対象とし1991~2009年に実施された「Nurses’ Health Study II」、②女性74,666人を対象とし1980~2009年に実施された「Nurses’ Health Study」、③男性39,424人を対象とし1986~2008年に実施された「Health Professionals Follow-up Study」です。
調査機関中に合計2,254人に悪性黒色腫が発生しています。カフェイン摂取量と悪性黒色腫の発生リスクについて検討すると、カフェイン摂取が多いグループでは悪性黒色腫の発症率が有意に低い(0.78倍)という結果が出たようです。ただし性差があり、女性では0.70倍とよりリスクが低いのに対し、男性は0.94倍とそれほど差はでていません。
悪性黒色腫は全身の皮膚のどこにでも発症します。今回の研究では部位ごとの検討もおこなわれています。コーヒーでリスクが下がったのは、頭部、首、四肢など露光部の悪性黒色腫であり、日光があたらない背中や腹部などではあまり差がなかったようです。
また、この研究はカフェイン抜きのコーヒーとの関連性も調べられています。カフェイン抜きのコーヒーでは悪性黒色腫のリスクが下がらなかったようです。
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コーヒーがメラニンの合成を抑制し「シミ」を抑制するということはしばしば指摘されることであり、このサイトでは日本の研究結果を紹介したことがあります(下記医療ニュース参照)。今回の研究で露光部の悪性黒色腫のリスクが特に低下するという結果がでたということは、「コーヒーが紫外線から肌を守る」ということを裏付けています。
また、コーヒーが「基底細胞ガン」という皮膚ガンのリスクを下げるという研究もあります(下記医療ニュース参照)。基底細胞ガンのリスクもまた「長期間の日光暴露」です。
紹介・報告が偏らないよう、コーヒーが健康に悪いという研究も紹介してきましたが(下記医療ニュース参照)、トータルでみればコーヒーがガンのリスクを下げ、生活習慣病の予防をおこない、皮膚にも好影響を与えるということはどうやら間違いなさそうです。
注1:この論文のタイトルは「Caffeine Intake, Coffee Consumption, and Risk of Cutaneous Malignant Melanoma.」で、下記のURLで概要を読むことができます。
参考:
はやりの病気
第22回(2005年12月)「癌・糖尿病・高血圧の予防にコーヒーを!」
第30回(2006年4月)「コーヒー摂取で心筋梗塞!? 」
メディカルエッセイ
第105回(2011年10月)「お茶とコーヒーとチョコレート」
医療ニュース
2014年8月22日「コーヒーで顔のシミも減少」
2014年6月30日「コーヒーで基底細胞癌のリスクが43%も減少」
2013年9月2日「コーヒーの飲み過ぎで死亡リスク増加?」
2013年4月18日「コーヒーでも緑茶でも脳卒中のリスク低減」
2013年1月8日「コーヒーで口腔ガン・咽頭ガンの死亡リスク低下」
2012年10月1日「コーヒーは消化管疾患と無関係」
2008年9月13日「子宮体癌の予防にコーヒーを」
2007年9月3日「コーヒーは肝臓癌のリスクを下げる」
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