医療ニュース

2025年3月24日 魚の油のサプリメントは無効

 魚の油が心血管疾患の予防になることが確立されたのは2002年に医学誌「Circulation」で論文「Fish Consumption, Fish Oil, Omega-3 Fatty Acids, and Cardiovascular Disease」が公開されたときだとされています。そして、この論文が発表されてからも、魚の油が心血管系疾患の予防に、あるいは炎症性疾患や神経疾患など他の疾患にも良いとされる研究が相次いでいます。

 今回はその魚の油は「サプリメントで摂っても意味がない」ことを示した研究を紹介したいと思います。しかし、その前に言葉の整理をしておきましょう。ω3(脂肪酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)などの区分がよく混乱されるからです。しかし、この理解は実は簡単で「魚の油≒ω3脂肪酸≒DHA≒EPA」と考えて差支えありません。

 では2つの研究を紹介しましょう。

 糖尿病患者15,000人以上を対象とした無作為化試験で、ω3サプリメントを摂取した人と摂取しなかった人の間で、重篤な心血管イベントのリスクに有意な差はありませんでした。

 25,000人以上が参加した別の無作為化試験では、ω3サプリメントを摂取しても、重大な心血管イベントやがんを発症するリスクは低下しないことが示されました。

 ちょっと古い記事ですが、米紙Washington Postもω3サプリメントが無効であり、健康食品業者が過剰な宣伝をしていることを指摘しています。

 では、医薬品であれば効果はあるのでしょうか。日本には次の2つの製品があります。

・エパデール:EPA

・ロトリガ:DHA+EPA

 効果を添付文書からみてみましょう。エパデールは中性脂肪の数値を1割程度下げます。ロトリガは4グラム(2グラムを1日2回)飲めば、エパデール服用時に比べて中性脂肪がさらに1割低くなる(何も飲まないときに比べると2割低くなる)とされています。両者とも適応は「高脂血症」とされていますが、これらでLDLコレステロールが下がったとする研究は添付文書に記載されていません。

 費用も加味して今回述べたことをまとめると、次のようになります。

・食事からω3系脂肪酸を摂取すれば心血管系疾患のリスクが低下する

・ω3系サプリメントでは効果がない

・効果が期待できる医薬品は2種類あり、添付文書を読む限りロトリガの方がエパデールよりも有効

・ロトリガの薬価は1日2回なら322円(3割負担で1日97円)。安い後発品を使えば157円(3割負担で1日47円)

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 サプリメントの費用を調べてみました。

・Nature Made: EPA+DHA:1日あたり約20円
・FANCL: EPA+DHA:1日あたり約60円
・小林製薬: EPA+DHA(+αリノレン酸):1日あたり約60円
・サントリー: EPA+DHA(+セサミン):1日あたり約220円

 こうしてみてみると、Nature Made製だけは医薬品より安いことが分かりますが、上述した2つの研究が示しているようにサプリメントの効果が否定された以上は意味がありません。FANCL、小林製薬、サントリーは医薬品よりも高額な上に効かないなら購入する理由がありません。

 ところで中性脂肪は運動(特に心拍数を上げる有酸素運動)で大きく下げることができます。その逆に、運動をおざなりにしてω3脂肪酸をいくら摂取しても中性脂肪は(もちろんコレステロールも)下がらないことは覚えておいた方がいいでしょう。

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