医療ニュース
2019年9月26日 ビタミンDの補給でがんによる死亡リスクが低下
サプリメントに関する質問のなかでここ数年で最も多いのがビタミンDだという話を何度かしています。ビタミンDで心疾患の予防ができる、がんが防げる、感染症にかかりにくくなる、若返る……、いろんなことを言う人がいます。また、ビタミンDは食事だけでは十分量が摂れないことを指摘する人もいます。これらについて、つまりビタミンDの「総論」について「はやりの病気」2019年4月号「ビタミンDが混乱を招く2つの理由」でまとめました。
そこで私が述べた結論は、ビタミンDは大切な栄養素であることは間違いないが、日本人であれば食事から十分量が摂れるので心配はない。サプリメントではなく食事に気を付けようというものでした。
ですが、世界では今も「ビタミンDを積極的にサプリメントで摂るべき」とする研究もあります。今回紹介するのもそのようなひとつです。
ビタミンDのサプリメントを摂取すればがんによる死亡率が16%低下する……。
医学誌『British Medical Journal』2019年8月12日号(オンライン版)に掲載された論文「ビタミンD補給と死亡率の関連:系統的レビューとメタ分析(Association between vitamin D supplementation and mortality: systematic review and meta-analysis)」でそのような結論が導かれています。
この研究は「メタ分析」でおこなわれています。つまりこれまで世界中で発表されているビタミンDについての研究をまとめ、それを解析することにより結論を出そうすると研究です。対象となった研究は52で、被験者は合計75,454例となります。
そのメタ分析の結果、全死亡例は8,033例。そのなかで心血管疾患での死亡が1,331例、がんによる死亡は877例でした。ビタミンDサプリメントの摂取とすべての死因を含む死亡との間には関連性が認められませんでした。また心血管疾患による死亡との関連もありませんでした。
しかしながら、ビタミンDのサプリメントはがんによる死亡のリスクを16%低下させているという結果が算出されています。
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論文の原文は「vitamin D supplementation」とされており、内容からこれは食事による補完ではなくサプリメントや薬剤としてのビタミンDによる補給と考え、ここでは「ビタミンDのサプリメント」と表現しています。
さて、ビタミンDのサプリメントを積極的に摂るべきかどうかについて、私個人の考えとしては以前から述べているように基本的には「不要」です。例外となるのは、ヴィーガンの人だけです。よく「紫外線に一切あたらないようにしているんですがそれでもビタミンDのサプリは不要ですか」と聞かれます。私の答えは「サーモンとキノコ類をしっかり摂っていれば不要」です。
はやりの病気
第188回(2019年4月)「ビタミンDが混乱を招く2つの理由」
医療ニュース
2019年1月31日「ビタミンDで心血管疾患のリスクは低下しない」
2017年10月23日「骨折予防にビタミンDやカルシウムは無効」
2014年2月28日「ビタミンDのサプリメントに有益性なし」
2010年2月11日「ビタミンDが不足すると喘息が悪化」
2010年2月1日「ビタミンDの不足は大腸ガンのリスク」
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