医療ニュース
2010年5月24日(月) 捻挫は重症でなければ早期からの運動が有効
脳梗塞で倒れたり、手術を受けたりした後には、いつまでも安静にしているのではなく、できるだけ早期にベッドから起き上がりリハビリをすべき、ということが近年盛んに言われるようになってきています。
そして、早期の運動療法は捻挫の場合にも有効なようです。
受傷直後から運動療法を行ったグループでは、「冷却・湿布・安静」を中心とする従来の治療に比べて機能回復が優れていた・・・
これは英国Ulster大学のChris M. Bleakley氏らがおこなった研究結果です。詳細は、医学誌『British Medical Journal』2010年5月10日号に掲載されています。(下記参照)
研究者は、救急外来もしくはスポーツ外傷クリニックを受診した16~65歳の比較的軽度の、足首に捻挫を負った患者101例を対象として、運動療法と従来の治療法(冷却・湿布・安静)の効果を比較検討しています。運動療法をおこなったグループは受傷1週目から運動を開始しています。
その結果、治療開始から4週時点で足首の機能を評価すると、運動療法のグループで有意に優れていることが分かりました。また、運動療法のグループは、歩行時間、歩数、軽度活動時間のいずれにおいても、従来の治療法のグループよりも優れていたようです。
一方、追跡期間中のどの時点においても、両グループ間で、安静時の痛みや腫れの程度に差は認められていません。
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研究者によりますと、英国内では1日に5,000例の捻挫の新規患者が発生し、捻挫による救急外来の受診件数は30万2,000 件(年間)にのぼるそうです。捻挫で、会社や学校を休むことにより、経済損失が生じる可能性がありますし、また医療資源も使われます。もしも、従来は安静にしなければならなかった捻挫でも、会社や学校を休まなくてもよくなったとすれば、捻挫を負った患者さん自身も早く回復し、経済損失も防げるというわけです。
しかし、実際には捻挫の重症度を的確に診断するのは必ずしも容易ではありませんし、患者さんによっては早期の回復を望む気持ちが強すぎて、ついつい無理な運動をしてしまう、というケースもあります。(特に、昔、激しい運動をしていたという人にこの傾向がみられます)
ですから、従来どおり安静を中心とする治療にするか、早期から運動をおこなう治療にするかというのは、主治医と相談してじっくりと検討すべきではないかと私は考えています。
(谷口恭)
注:この論文のタイトルは、「Effect of accelerated rehabilitation on function after ankle sprain: randomised controlled trial」で、下記のURLで概要を読むことができます。
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