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2021年3月15日 月曜日
第211回(2021年3月) 太融寺町谷口医院ではHPVワクチン接種が減らない理由
去る2021年2月18日、3回目となる毎日新聞主催のミニ講演会をおこないました。例によって時間配分がうまくいかず、最後は慌ただしく終わらざるを得なくなり、質問の時間はほとんど取れませんでした。しかし、その後メールで複数の方からご質問や相談をいただきました。講演の内容は新型コロナを中心としたワクチンの話がメインでしたが、多く寄せられた質問はHPVワクチンに関するものでした。その後も、講演会とは関係なく、大勢の患者さんから、診察室で、あるいはメールでHPVワクチンについての相談が寄せられています。
2021年2月末、ついに他国に追いつくかたちでMSD社がHPVの9価ワクチン(シルガード9)を発売しました。今回は、新しいワクチンと従来の4価ワクチン(ガーダシル)との違いについての話となりますが、まずはこれまでの流れを簡単にまとめてみましょう。
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2007年4月 世界に先駆けて豪州が12-27歳の女性希望者全員に無料でワクチン接種
2009年12月 日本で2価ワクチン「サーバリックス」が発売
2009年12月 新潟県魚沼市が10代の女性希望者全員に無料接種を発表
2010年1月 兵庫県明石市、東京都杉並区などがワクチン接種無料化を発表
2011年8月 日本で4価ワクチン「ガーダシル」が発売
2011~12年頃 副反応の報告が相次ぎ「被害者の会」が設立され始める
2013年4月 HPVワクチン接種が厚生労働省により「定期予防接種」に加えられる(小学校6年生-高校1年生相当の女子)
2013年6月 厚労省が「子宮頸がん予防ワクチンの接種を積極的にはお勧めしていません」と発表(「積極的勧奨の差し控え」) 。同時期に信州大学医学部の池田修一医師を研究代表者とする研究班(池田班)が設置される。
2014年1月 厚労省の「予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会」と「薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全調査会」が、HPVワクチンの副作用は、「心身の反応により惹起された症状が慢性化したものと考えられる」と発表。
2015年8月 日本産科婦人科学会が「子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)接種の勧奨再開を求める声明」を発表
2015年12月 WHOが「予防できるのにもかかわらず、日本政府は若い女性をHPV関連のがんの危険にさらしている」と批判の表明
2016年3月 池田班が「HPVワクチンを接種したマウスのみに自己抗体の沈着を示す陽性反応があった」(HPVワクチンは危険)と報告
2016年6月 村中璃子医師が月刊誌「Wedge」に池田班の研究が「捏造」と主張
2016年8月 池田医師が村中医師の記事が名誉毀損に当たるとして、村中医師と「Wedge」編集長及び雑誌社に対し、約1100万円の損害賠償や謝罪広告の掲載などを求めて東京地裁に提訴
2017年11月 村中璃子医師が「HPVワクチンの誤情報を指摘し安全性を説いた」という理由でジョン・マドックス賞を受賞
2019年3月 東京地裁の判決は村中医師らの事実上の完全敗訴。原告(池田医師)の訴えを認め、村中医師ら三者に対し「330万円の支払い」「謝罪広告の掲載」「ウェブ記事の問題部分についての削除」などを求めた。
2019年10月 東京高等裁判所が村中医師の名誉毀損を認める判決
2020年3月 最高裁判所が村中医師の上告を却下。これにて村中医師の敗訴確定。
2021年2月 9価ワクチン「シルガード」発売
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”簡単に”重要なことをピックアップしたつもりですが、それでもまだ随分と複雑ですので、私の視点から一気にまとめてしまいましょう。HPVワクチンの「問題」は次の2つに集約されると私は考えています。
・HPVワクチンが発売され、世界では高い評価を受けているのに、日本では厚労省が「積極的勧奨の差し控え」というよく分からないことを言っていて接種率が上がらない。
・HPVワクチンが危険と主張した池田医師をジャーナリストでもある村中医師が「池田医師の研究は捏造だ」と批判した。そこで、池田医師が村中医師を名誉棄損で訴えて勝利した。つまり「捏造」ではないと法が認めた。
ややこしいのは、池田医師の研究が「捏造」でなかったのは事実だとしても、池田医師の出した「結論」が正しいとは言えないことです。つまり、法は「HPVワクチンが危険」とは認めたわけではないのです。
次にHPVワクチンについて客観的にみて正確なことをまとめていきます。
・重篤な副反応が(因果関係が不明だとしても)起こっているのは事実。厚労省のサイトによると、重篤な副作用の出現率は0.0097%。つまり1万人に1人。
・ワクチンで子宮頸がんが100%防げるわけではない。だが、尖圭コンジローマは(100%とは言えないにしても)かなりの確率で防げる。実際、男性も定期接種となっているオーストラリアでは尖圭コンジローマは「根絶(elimination)」すると予測されている。
・100%ではないが、中咽頭がん、肛門がん、陰茎がんなどにも効果がある。
・ワクチンは3種類。サーバリックスは2価で尖圭コンジローマにはまったく無効。ガーダシルは4価。シルガードは9価。尖圭コンジローマに対する効果は4価も9価もほぼ同じ。9価ワクチンは男性には接種できない。
太融寺町谷口医院(以下「谷口医院」)でHPVワクチンを導入したのは2011年8月、つまりガーダシルが発売になったときです。ガーダシルは最近まで男性には認可がおりていませんでしたが、男性への接種が禁じられていたわけではありません。そこで、谷口医院では、発売開始と同時に男性への接種も開始しました。これは、特別な宣伝をしたからではありません。患者さんから相談されることが多く、相談をされた人はたいていは男女とも接種されていましたし、今もされています。
全国的には厚労省の「積極的勧奨の差し控え」が出されてから接種率が激減したとされていますが、谷口医院では「積極的勧奨の……」にはまったく影響を受けていません。
ただし、「積極的勧奨の……」が出される前から定期接種対象の小6から高1の女性にはあまり勧めていませんでした。なぜなら、HPVは性行為でしか感染しないからです。「すでに性交渉をしていますよ」、という女子生徒が来れば積極的に勧めるつもりでしたが(今もそのつもりですが)、実際にはそういう生徒はほとんど受診しません。高1までに接種しなければ無料でなくなってしまうわけですが、無料だからという理由で1万人に1人の割合で(因果関係が不明だとしても)結果として重篤な副作用が起こっているワクチンを接種する人はそう多くないわけです。
尖圭コンジローマという病は本当にイヤな病です。性感染症のなかには感染してもすぐに治せるものもありますが、尖圭コンジローマはいったん感染すると、なかなか治らないことがあり、治っても再発のリスクがしばらくは続き、コンドームでも防ぎきれません。なかには繰り返す再発に精神がまいってしまい心の病を併発する人もいます。これだけやっかいな感染症がワクチンで(ほぼ)完全に防げるわけですから、性交渉を開始する年齢になれば接種したいという人が多いのは当然です。また、20代、30代はもちろん、50代で性行為をもつ機会があるという人も希望されます。
4価より9価の方がいいかというと、9価の方がより幅広いHPVのタイプに効果があるわけですが、値段がすごく高くなります。谷口医院では卸業者に9価(シルガード)を安くしてほしいと交渉しましたが28,000円が限界でした。4価(ガーダシル)は15,000円ですから2倍近くもします。
男性の場合は9価ワクチンが禁じられていますからこれから接種する人は4価にするしか選択肢がありません(2価は意味がありません)。女性の場合も、これだけ価格差がありますから9価が余程値下げされない限り依然4価を選択する人の方が多いのではないかとみています。
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|2021年3月10日 水曜日
2021年3月 「社会主義か、野蛮か」、あるいは良心か
新型コロナウイルスが流行する前から、米国では社会主義を求める声が大きくなっていたと言われています。おそらく増大する格差社会に嫌気がさした人が増えていたのでしょう。米国では大学を卒業しても奨学金の返済が懐を圧迫し、医療保険にも入れず、最近は物価高から家賃を払うこともできず車で寝泊まりする人も少なくないと聞きます。そこに新型コロナが追い打ちをかけました。一部の州では自殺者も増えているようです。そんななか、「平等」を原理原則とした社会主義にますます人気が出てくるのは当然かもしれません。
翻って日本では、社会主義を支持する人も一定数はいますが、米国ほど顕著ではありません。社会主義を訴える勢力のある野党は現在存在しないと言ってもいいでしょう。しかし、日本も米国ほどではないにせよ、格差社会が次第に顕著になってきています。今回は私見をふんだんに交えながらあるべき政治体制について考えてみたいと思います。まずは80年代後半からの世界の体制の流れをまとめてみたいと思います。
1989年6月4日、北京の天安門広場で民主化を求めて集結していたデモ隊に対し、軍隊が武力行使し多数の死傷者を出した事件、いわゆる「天安門事件」が起こりました。この頃の中国は中国共産党の独裁に反対し民主化を求める声が大学生を中心とした若い世代の間で広がっていました。天安門事件での死亡者は一説では1万人を超えるとも言われています。
1989年11月9日、東ドイツ政府が、国外への旅行自由化を発表したことで(実際には完全自由化を宣言したわけではないが市民にはそのように理解されたと言われています)、その日の夜にベルリンの壁にベルリン市民が殺到し、翌日にはベルリンの壁の撤去作業が始まりました。いわゆる「ベルリンの壁崩壊」です。
1985年にソビエト連邦の書記長に就任したゴルバチョフはペレストロイカ(再建)、グラスノスチ(情報公開)といった改革に乗り出し西側の文化に近づく方針をとりました。80年代後半にはソ連崩壊が現実的なものになっていました。
日本では昭和が終わり平成に入る頃に、こういった社会・共産主義の終焉を物語るような事象が世界中で次々に起こっていました。東側社会(旧共産圏のソ連、東欧など。文脈によっては中国や北朝鮮、ベトナム、ラオスなども含む)は西側に大きく遅れをとり、民主主義が社会・共産主義に勝利したのは誰の目にも明らかでした。もちろん、民主主義・自由主義が絶対的に正しくて人類を幸せに導いてくれるわけではありません。チャーチルの名言「民主主義は最悪の政治形態といわれてきた。他に試みられたあらゆる形態を除けば」がいろんな場面で繰り返し引用されることからもそれは明らかでしょう。
当時の私自身もソ連、中国、東ドイツで起こった出来事に影響を受けました。大学生になりたての頃は(他の多くの学生と同様)「権力が悪い」と決めつけた、言わば左よりの思想に傾きかけたことがありましたが、世界の出来事で完全に社会・共産主義は終わったと思いました。そして、今度は、右に傾いたというわけではありませんが「保守」というものを理想と考えるようになりました。90年代前半のこの頃、西部邁氏の思想に夢中になっていたことは過去のコラム「無意味な「保守」vs「リベラル」」で述べました。
社会・共産主義がうまくいかなかった理由について私が出した結論は「人間の多くは善人ではない。善人でない者が行政を担ったときには腐敗が起こり、不平等が生まれる。だから政府は小さい方がいい」というものです。また、福祉を充実させた社会主義国では、不正をして働かずに福祉の恩恵に預かろうとする輩がでてきます。つまり、役人の側だけでなく、市民側にも善人でない者が少なからずいて、これは不平等なわけです。そこで「政府は小さい方がいい」、つまりいわゆる「夜警国家」が現実的には一番いいのではないかと考えるようになりました。
しかし、夜警国家というのは、安全保障、治安維持といった最低限のことしかせず、福祉や医療には最小限でしか関わらない政治形態です。そのような社会ではハンディキャップを背負った人たちや不運から苦しい生活をしている人たちを見捨てることになってしまいます。
ではどうすればいいのか。私が期待したいと考えたのは、役人ではなく一般市民の中にいる「善人」です。個人や小さなNGOがそういった人たちを助けていくのが理想の社会ではないのか、と考えたのです。
まとめると、私が考えた理想の社会は「夜警国家+善良な市民が自主的に困っている人を助ける社会」です。そして、この考えをかなり長い間持ち続けていました。2009年9月号のマンスリーレポート「選挙よりも政策よりも大切なこと」でもそのようなことを述べています。
では今の私はどうかというと、やはり基本的な考えは変わっていません。「行政には頼らない。なぜなら頼ってもたいていは裏切られるから」というものです。だから新型コロナが流行りだした昨年(2020年2月)、厚労省や大阪府が「37.5度の発熱が4日以上続いたときには保健所に連絡を」と言っていた頃から、行政には裏切られるケースが続出するのが目に見えていましたから「太融寺町谷口医院をかかりつけ医にしている人は体温や日数に関わりなく症状があれば連絡してください」と案内したのです。予想通り、保健所に交渉してもたいていはPCR検査を受け入れてくれませんでした。そこで、谷口医院では5月に保健所に谷口医院独自で検査をすることを交渉し、そして6月初旬から院内での検査を開始しだしました。
もちろん私のこの考えは不充分なものであり、すべての困窮している人を平等に支援できないことは百も承知しています。私自身が手を差し伸べることができる人数はたかがしれていますし、手を差し伸べようとした人に対しても結果として上手くいかないことが多々あると理解しています。ただ、「政府がやるべき。政府の責任だ」などとは言いたくないのです。これからも私自身は、「利他的な精神を持った人を見つけて共に困窮している人を支援する」、という立場であり続けます。
しかしながら、新型コロナが今後も猛威を振るい続けるとすればどうでしょうか。利他的精神を持つ個人や組織だけでコロナ克服は困難です。なぜなら、コロナ克服のためには社会全体をまとめる必要があり、それにはある程度の強制力が必要だからです。そして、現在新型コロナ対策で最も成功しているのは(世間で言われている台湾やニュージーランドではなく)中国ではないかと私は考えています。
日本が第3波に襲われ世界中で感染者が減らずパニックが起こっていた昨年(2020年)末、武漢ではマスク無しで大勢の若者がクラブで騒いでいました。2020年12月20日の朝日新聞は「武漢、強権下の市中感染ゼロ コロナ拡大1年 クラブ客「世界一安全な街」」というタイトルでこの状況を報道しました。
天安門事件で1万人以上の市民が犠牲になった中国では今、多くの人々は自国を誇りに思っていると聞きます。私の知る限り、中国本土の人たちは自国の悪口を言いません。むしろ香港や台湾が劣っているといった言い方をします。彼(女)らはすでに自分たちが世界の覇者と考えているようなきらいもあります。
ただし、中国のその成功の裏にはプライバシーなき独裁政治があります。「The Economist」2021年1月16日に掲載された記事「ほとんどの中国人は厳しいコロナウイルス対策を驚くほど受け入れている (Many in China are strikingly accepting of harsh virus controls)」に新型コロナウイルス陽性が発覚したある女性会社員について報じられています。この女性が過去10日間に訪れた場所、それはラーメン屋から乗車した路線まですべてが公開され、この女性と接した可能性のあるおよそ100人、さらに女性の職場の近くで働く数千人にPCR検査が行われました。女性の自宅付近の道路が封鎖され、その地域の住民約50万人が1週間隔離されています。
このようなプライバシーのない社会が理想だとは到底思えませんが、上述した私が考えるような「小さな政府」であれば、無責任で他人のことを考えない人たちのせいで秩序が維持できなくなるでしょう。日本にはよくも悪くも「同調圧力」が働くせいで新型コロナに対して無責任な人が大勢現れることはないでしょうが(「同調圧力」が日本で社会主義が求められない原因かもしれません)、もしも良心を持たない人たちが勝手な行動をとりだせば社会が維持できなくなります。
国民のほとんどが国家を支持する現在の中国をみていると、天安門事件がまるで実在しなかったかのようです。ちなみに、中国の検索エンジンで「天安門事件」を検索しようとするとすぐにエラーとなるそうです。
「社会主義か、野蛮か」という言葉はマルクス派の女性哲学者ローザ・ルクセンブルグが言ったとされる言葉です。今の世界をみているとこの言葉が真実のような気もします。けれども、私があえて主張したいのは次の言葉です。
「社会主義か、野蛮か」、あるいは良心か
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|2021年3月1日 月曜日
2021年2月28日 頻繁に旅行をすれば幸せが7%アップ!
今月(2021年2月)のマンスリーレポート「コロナ禍でも旅に出よう」で、「旅は人生を豊かにする」ということを述べました。それを書いたこともあり「旅/travel」をキーワードにネット検索していると興味深い記事が見つかりました。
医学誌「Tourism Analysis」2020年12月5日号に論文「頻繁に旅行に行けば人は幸せになれるだろうか(Would You Be More Satisfied with Your Life If You Travel More Frequently?)」が掲載されました。それを医療系のメディア「News Medical Life Science」と「HealthDay News」が分かりやすく解説しています。
この研究の最大のポイントは単に「旅行」の効用を調べたのではなく「頻繁に旅行にいくこと」に着眼している点です。
研究の対象は500人。「旅行の重要性」「旅行計画にかける時間」「年間の旅行回数」「人生の満足度」なども調べられています。
結果、自宅から75マイル(120km)以上離れた場所に定期的に旅行する人は、あまり旅行をしない人や全く旅行をしない人と比べて、約7%幸せを多く感じているという結果が出ました。
この調査ではもうひとつ興味深いことが分かりました。日ごろから休暇について話したり計画したりする人ほど実際に休暇を取り旅行に行く可能性が高くなるというのです。
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日ごろから旅行のことを考えていれば実際に旅行に行く回数が増えるのは当然といえば当然ですが、それでもこの「事実」は重要だと思います。「人生を幸福にしたければ旅に出よ。旅に出ていないときは旅のことを考えよ」、と言えそうです。
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|2021年3月1日 月曜日
2021年2月28日 睡眠環境の見直しで人生が変わる
医学誌「Sleep」2021年1月28日号に興味深い論文が2本掲載されています。それらを合わせた結論は「緑の多い地域に住んで、睡眠をたっぷりと」となります。
1つめの論文のタイトルは「住居環境と青年期の睡眠との関連 (Associations of the residential built environment with adolescent sleep outcomes )」です。
住居周辺の騒音が大きいほど睡眠時間が短くなるだけでなく(これは常識的に理解できます)、周囲に「緑」が多いほど早寝早起きできることが分かりました。住宅の周囲に樹木が増えれば入眠時刻が早くなり、覚醒時刻も早くなるというのです。
もうひとつの論文のタイトルは「青年期の睡眠時の脳波への睡眠制限の影響 (Effects of sleep restriction on the sleep electroencephalogram of adolescents )」です。
結論からいえば、「就床時間(ベッドに入っている時間)を減らせば、睡眠時間(実際に眠っている時間)が減る以上に、認知機能に重要な脳波の活動が低下する」ことが分かりました。就床時間を10時間から7時間に減らすことによって、睡眠時間の減少率は23%だった一方で、脳波の活動は40%も低下していたそうです。尚、この研究の対象者は9.9~16.2歳の77人です。
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少年から青年期の睡眠時間が大切と今さら言われても、取り返しのしようがありません。よって、成人になってできることは「騒音が少なくて緑の多い地区に住むこと」となります。小さなお子さんのいる家庭なら、さらに就床時間を確保することが大切になります。
ちなみに私は小学校6年生頃からラジオの深夜放送にはまり、その後最近までショートスリーパーであることを”誇り”に思っていました。高校卒業以降、住んでいたアパートはほとんどが幹線道路沿い。医学部在学中に住んでいたワンルームマンションは高速道路の横でした。最近までいつも騒音と共に生活していました。
これらの論文が小学校高学年くらいに出ていて、それを周りの大人が教えてくれていたら、私の人生はきっと違うものになったでしょう……。
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