医療ニュース
2017年9月29日 金曜日
2017年9月30日 バストアップのサプリメントに対する「誤解」
太融寺町谷口医院(以下「谷口医院」)がオープンした2007年頃、タイ製のバストアップ(豊胸)を目的としたサプリメントの被害者がよく受診されていました。インターネットを通して個人輸入をおこない内服して副作用が生じたのです。最も多い副作用は吐き気と不正出血です。
一時、このような被害が減ったなと感じていたのですが、数年前から再び増えてきています。その理由はタイ製のサプリメントと同じ成分のものが日本で製造され、広く流通するようになったからです。
そして、ついに国民生活センターが注意喚起を発表しました。
問題のサプリメントに含まれる成分は「プエラリア・ミリフィカ」と呼ばれる植物エキスです。なぜ、バストアップの効果が謳われるか。この成分には女性ホルモンに似た働きをするイソフラボンが豊富に含まれているからです。
イソフラボンと言えば、大豆に含まれていることがよく知られており、実際、大豆から抽出したイソフラボンは日本製のサプリメントでもあります。プエラリア・ミリフィカは大豆よりも大量にイソフラボンが含まれているために効果が期待できるというわけです。ですが、当然のことながら量が増えればそれだけ副作用のリスクが上昇します。
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さて、私の懸念はまだ続きます。谷口医院の患者さんでプエラリア・ミリフィカの被害を訴えた患者さんのなかで低用量ピルを飲んでいる人がいました。これは絶対にやってはいけないことです。
そもそもピル(超低用量から高用量まですべて)の成分は女性ホルモンです。ピルを飲んでいるときに女性ホルモンに似たイソフラボンを飲めば、不正出血をはじめホルモンバランスの乱れで生じうる様々な問題が起こり得ます。
ところで、プエラリア・ミリフィカの販売会社は、販売するときに「ピルを飲んでいる人は飲めません」という案内をしていないのでしょうか。あるいは、「サプリメントだから安心」というようなイメージを消費者に植え付けていないでしょうか。
尚、イソフラボンもピル服用者は原則として飲めません。サプリメントの被害は、世間で思われているよりもずっと深刻です。新たにサプリメントや健康食品を開始したいときはかかりつけ医に相談するか、信頼できるウェブサイト(注1)を参照することが必要です。
注1:最も推薦できるサイトは、国立健康・影響研究所が作成している「「健康食品」の安全性・有効性情報」です。プエラリア・ミリフィカについても詳しく記載されています。
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|2017年9月29日 金曜日
2017年9月29日 ビタミンBのサプリメントもがんのリスク
ついにビタミンBのサプリメントにも発がんリスクの報告がおこなわれました。
医学誌『Journal of Clinical Oncology』2017年8月22日号(オンライン版)に掲載された論文(注1)に興味深い研究が掲載されています。
研究の対象者は米国在住の男女77,118人(50~76歳)です。どのようなサプリメントをどれだけ摂取しているかと発がんの関係が解析されました。
その結果、過去10年間で1日20mgを超えてビタミンB6のサプリメントを摂取していた男性は、摂取していない人に比べると肺がんの発症リスクが1.82倍に上昇していました。同様に、ビタミンB12については1日55ugを超えて摂取していると1.98倍にも上昇していたのです。
尚、このように発がんリスクが上昇したのは男性だけであり、女性には認められなかったようです。
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ビタミン剤の発がんリスクといえば、ビタミンEとベータカロテン(以前は「ベータカロチン」と呼ばれていました)が有名ですが、これらは脂溶性のビタミンですからサプリメントの過剰摂取で蓄積された結果ががんにつながるというのはなんとなく想像しやすいように感じられます。
一方、ビタミンBは水溶性で過剰に摂取しても吸収されず安全と長い間言われてきました。ですが、結果は発がんリスクが2倍にもなるというのです…。
今のところ、ビタミンのサプリメントでエビデンス(科学的確証)をもって「有用」とされているのは妊娠中または妊娠前の女性が摂取する葉酸だけです。ビタミンDはいくつかの疾患に有用とするものもありますが、逆に有害とするものも多く、現時点では積極的な摂取は推薦できません。
ビタミンのサプリメントが注目された時代はすでに過去のものになりきった感じがします。
注1:この論文のタイトルは「Long-Term, Supplemental, One-Carbon Metabolism-Related Vitamin B Use in Relation to Lung Cancer Risk in the Vitamins and Lifestyle (VITAL) Cohort 」。下記URLで概要を読むことができます。
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|2017年9月7日 木曜日
2017年9月7日 地中海料理が健康にいいのは高学歴か高収入のみ!?
日本料理は健康にいいとされていますが、より多くの論文が発表され有効性が世界的に認められているのは日本料理よりも地中海料理です。特に動脈硬化を予防し、心筋梗塞や脳梗塞を防ぐことができると言われています。ですが、気になる研究が最近発表されました。
なんと、地中海料理で心疾患予防の恩恵を受けられるのは、高学歴者か高収入者のみというのです!!
医学誌『Epidemiology』2017年8月1日号(オンライン版)で研究が報告されています(注1)。研究の対象者は、35歳以上のイタリア人の男女合計18,991人です。調査期間の4.3年間の間に合計252人が心筋梗塞などの心血管疾患を発症しています。全体で評価すると「地中海料理スコア(Mediterranean diet score)」が2ポイント増加(ポイントが高いほど健康的な地中海料理をたくさん食べている)すると、心血管疾患発症リスクが15%減少していました。
興味深いことに、このような関連性は高学歴者に顕著であり、高学歴者の場合は地中海料理により57%も心疾患のリスクが減少するのに対し、高学歴でない人はわずか6%しか低下していません。収入でみてみると、高収入の人は61%も低下するのに対し、高収入でない人にはリスク低下は認められません。
なぜこのような差が出るのか。高学歴・高収入の人は、有機野菜、全粒パン、ポリフェノールを含む食品など、多くの種類の抗酸化物質が豊富に含まれる食品を摂取していることが判明し、研究者らはこれが原因であろうとみています。
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どうやら本当の理由は「抗酸化物質を豊富に含む多種類の食品」にありそうです。おそらく、上等のワインやオリーブオイル、新鮮な魚などは安くないのでしょう。高収入者はそういった食品を抵抗なく購入することができ、高学歴者はさほど収入が高くなかったとしても食事にお金をかけるべきだということを知っている、ということでしょうか。
注1:この論文のタイトルは「High adherence to the Mediterranean diet is associated with cardiovascular protection in higher but not in lower socioeconomic groups: prospective findings from the Moli-sani study」で、下記URLで概要を読むことができます。
参考:
はやりの病気第131回(2014年7月)「認知症について最近わかってきたこと」
医療ニュース:
2014年6月2日「オリーブオイルで心房細動が予防できる可能性」
2014年1月6日「ナッツを毎日食べると健康で長生き」
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|2017年9月3日 日曜日
2017年9月4日 危険な陰毛処理
過去のコラムでも述べたように、総合診療を実践している太融寺町谷口医院(以下「谷口医院」)には「外陰部の悩み」を訴える女性の患者さんがしばしば訪れます。婦人科に行くと「皮膚科に行け」と言われ、皮膚科を受診すると「婦人科に行け」と言われたという気の毒な患者さんも少なくありません。
そのコラムでは「精液アレルギー」という稀な疾患について解説しましたが、今回紹介したいのは非常によくある皮膚のトラブルについてです。そしてその原因は「剃毛」もしくは「脱毛」にあります。
皮膚のトラブルの話に入る前に、私が数年前から感じている素朴な疑問について触れておきます。それは「陰毛処理をする女性が急増している」ということです。これはあまり医学的に意味がないことですからそれほど気に留めていたわけではないのですが、ある論文を読んで「そうか!」と腑に落ちました。
医学誌『JAMA Dermatology』2016年10月号(オンライン版)に掲載された論文(注1)によれば、米国女性の8割以上が陰毛処理をおこなっています。調査対象は米国の3,372人の女性で、期間は2015年11月と12月、インターネットを用いた質問票での調査です。結果、全体の83.8%に相当する2,778人が陰毛処理をおこなっていました。
処理をする理由は、衛生的だから(59.0%)、日々のルーチンとして実施している(45.5%)、外性器の魅力向上のため(31.5%)、パートナーの好み(21.1%)となっています。また、理由は明らかにされていませんが、若い女性と高学歴女性に陰毛処理をする傾向が高いという結果がでています。
多くの”文化”は米国から入ってくると言われますから、日本女性の「処理率」の上昇も米国由来なのかな、と私は思っています。
今回の本題はここからです。同じ医学誌『JAMA Dermatology』2017年8月16日号(オンライン版)に掲載された論文(注2)によると、陰毛処理する女性の27.1%が処理により皮膚に障害を負った経験があります。研究対象は米国人の女性3,372人で、期間は2014年の1月、やはりインターネットでの調査です。
どのような障害かについて、最も多いのが「傷」で61.2%、その次が熱傷(23.0%)、発疹(12.2%)、感染症(9.3%)と続きます。また、処理をする人全体の1.4%に医学的な治療が必要とされていたことが判りました(この調査は男性にもおこなわれており、これらの数字は男女合わせてのものです)。
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後半の論文では男女ともにトラブルが多いとされていますが、谷口医院に「陰毛処理後のトラブル」で受診するのは女性が圧倒的に多いといえます。この理由は、米国に比べて日本では男性は陰毛処理をしないということかと思いますが、もしかすると男性は皮膚科を受診して治療を受けており、女性のように、「皮膚科に行けば婦人科に、婦人科に行けば皮膚科に」ということがないからかもしれません。
谷口医院の女性患者さんの陰毛処理で最も多いトラブルは「毛嚢炎」または「毛包炎」で、毛穴に起こった細菌感染、分かりやすく言えば「ニキビ」です。軽症であれば抗菌薬の外用剤だけで治りますが、最近は内服を使わざるをえないケースが増えてきています。
また、エステティックサロンでのレーザー脱毛による熱傷(やけど)や、脱毛クリームやワックスによる「かぶれ」も増えています。
注1:この論文のタイトルは「Pubic Hair Grooming Prevalence and Motivation Among Women in the United States」で、下記URLで概要を読むことがでいます。
http://jamanetwork.com/journals/jamadermatology/fullarticle/2529574
注2:この論文のタイトルは「Prevalence of Pubic Hair Grooming-Related Injuries and Identification of High-Risk Individuals in the United States」で、下記URLで概要を読むことができます。
http://jamanetwork.com/journals/jamadermatology/article-abstract/2648859
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