医療ニュース

2014年1月27日 月曜日

2014年1月28日 やはりビタミン・ミネラルのサプリメントは利益なく有害

 過剰な宣伝効果のせいか、マルチビタミンやミネラルはいまだによく売れているそうですが、USPSTF(U.S. Preventive Services Task Force、米国予防医療研究チーム)は、すでに2003年に、「ビタミンA、C、E、葉酸入りマルチビタミン、抗酸化物質は推奨する根拠がない(だから推奨しない)」と公表しており、さらにβカロテン(カロチン)については、「喫煙者などの肺ガンのリスクを高める」ことを指摘しています。

 新たに系統的な分析をおこなった結果、やはりサプリメントには心血管疾患予防やガンの予防、死亡リスクを低減する効果はなかった。また、やはりβカロテンは喫煙者などの肺ガンのリスクを高める可能性があることがわかった・・・

 これは、医学誌『Annals of Internal Medicine』2013年12月17日号(オンライン版)に掲載された論文の結論です(注1)。

 研究者は、2003年の上記USPSTFの発表後に報告されたサプリメントの利益と害に関するいくつかの文献を系統的に解析することによってこの結論を導いています。

 一部の研究では、長期間マルチビタミンを摂取していた男性は発ガンリスクが低下するというものもあったようですが(下記医療ニュース2012年11月3日参照)、他の良質な研究も交えて総合的に解析すると、ビタミンやミネラルのサプリメントが心血管疾患やガンのリスクを下げる効果はない、という結論が出たそうです。

 有害性については、一部の研究で、ビタミンAが肺ガンと股関節骨折のリスクを上昇させる可能性が指摘されています。別の研究では、葉酸が前立腺ガンのリスクを上昇させるというものもあったようです。また、カルシウム摂取が大腸ガンのリスク上昇を示唆したものもあり、ビタミンDとカルシウムの併用で腎結石リスクが上昇することを示した研究もあります(これは以前から何度も指摘されていました)。βカロテンは、喫煙者などの肺ガンのリスクを上昇させることが確認されたようです。

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 私は権威に対して盲目的に従うタイプの人間ではありませんが、2003年のUSPSTFの「ビタミン・ミネラルのサプリメントは効果なくむしろ有害性がある」という発表を受けて、個人的にこういったサプリメントの摂取を一切やめました。科学系の雑誌やネットなどでも少しはこのようなことが報じられましたが、もうひとつ世間には伝わっていないように思えます。

 なぜか大手のマスコミはサプリメントが有益でないことや有害性があることについての報道をあまりおこないません。薬やワクチンの副作用を大きく取り上げるのとは対照的です。これはなぜなのでしょう。サプリメントのメーカーがスポンサーになっているからではないのか、と疑われても仕方がないのではないでしょうか。

 ただ「サプリメントを飲み出してから身体の調子がいい」と言う人がいるのも事実です。私自身はやみくもにサプリメントを否定するつもりはありませんが、長期摂取で有害性が出れば問題です。サプリメントを摂取している人は一度主治医に相談した方がいいでしょう。

(谷口恭)

注1:この論文のタイトルは、「Vitamin and Mineral Supplements in the Primary Prevention of Cardiovascular Disease and Cancer: An Updated Systematic Evidence Review for the U.S. Preventive Services Task Force」で、下記のURLで全文を読むことができます。
http://annals.org/article.aspx?articleid=1767855#Abstract

参考:
メディカルエッセイ第123回(2013年4月)「カルシウムのサプリメントは危険か」
医療ニュース
2011年11月14日「ビタミンEの発ガンリスク」
2012年3月13日「ビタミンE過剰摂取で骨粗しょう症に」
2011年8月26日「ビタミン剤で発ガンのリスク上昇」
2012年11月3日「マルチビタミン摂取でわずかながらもガン減少」
2012年6月30日「カルシウムのサプリで心筋梗塞のリスクが2倍」

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2014年1月27日 月曜日

2014年1月27日 デング熱は本当に日本で感染したのか

  2014年1月10日、厚生労働省は「日本国内でデング熱ウイルスに感染した可能性のある症例」について発表をおこないました(注1)。

 同省によりますと、この症例はドイツ人で、2013年8月下旬に日本を周遊したときにデング熱ウイルスに感染しドイツ帰国後に発熱や発疹などの症状を発症したと考えられているそうです。調査はドイツのロベルト・コッホ研究所でおこなわれたとのことです。同研究所からの情報提供を受けて、厚生労働省が検討したところ、日本での感染が否定できないという結論となったそうです。

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 日本にいた時期がはっきりしているわけですから、このドイツ人が日本のどこを訪問して、ということはある程度細部にわたるまで把握できるはずです。私は、厚労省のこの1月10日の発表に次いで、例えば、どこの県のどの地域での感染の可能性があるのか、といった情報が出てくるとみていたのですが、1月27日の時点でまだ情報提供がありません。

 今は冬で蚊がいませんから余裕がありますが、蚊が登場する季節までにはもっと正確な情報提供をしてもらわなければなりません。場合によってはその地域では外出するときに必ず虫除けスプレーを露出部に使用する、といった対策が必要になるかもしれません。

 デング熱はネッタイシマカもしくはヒトスジシマカが人を刺したときに蚊の体内にいたデング熱ウイルスが侵入してくることで感染が起こります。日本では太平洋戦争中に現地から人と一緒に船に乗ってやってきた蚊による流行が起こったとされていますが、それ以降国内での感染はないはずです。しかし、海外で感染して日本帰国後に発症というケースが年間100-200例あります。

 今後の厚労省の発表に注目したいと思います。

(谷口恭)

注1:厚労省のこの発表については下記URLを参照ください。
 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/dl/20140110-01.pdf

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2014年1月14日 火曜日

2014年1月14日 ピル(OC)の長期使用は緑内障のリスク

 ピル(OC、経口避妊薬)を3年間以上服用している女性は緑内障のリスクが2倍に増大する・・・

 2013年11月18日、米国眼科学会(American Academy of Ophthalmology)はこのような発表をおこないました(注1)。

 この発表に基づく研究は、米国のカリフォルニア大学、デューク大学、及び中国江西省南昌市の南昌大学(Third Affiliated Hospital of Nanchang University)の研究者らによっておこなわれています。

 この研究の対象となったのは、2005~2008年に実施された国民健康栄養調査(NHANES)に登録された参加者のなかでピルに関する問診と眼科検診を受けている40歳以上のアメリカ人女性3,406人です。

 調査の結果、ピルの種類にかかわらず3年以上服用していると緑内障と診断される可能性が2.05倍高かったそうです。

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 ピルの副作用で最も注意しなければならないのは血栓症(血が固まって血管がつまる状態)であり、眼科的な副作用でいえば網膜の血管が詰まることによっておこりうるものは指摘されたことがありますし、実際そういったことはピルの添付文書にも書かれています。

 緑内障とピルの関係についてはこれまではあまり指摘されていませんし、薬の添付文書にも記載がありません。しかし、3年以上の服用でリスクが2.05倍というのは決して小さな数字ではありません。

 以前から「40歳を超えれば眼科検診を」ということが言われることがありましたが、ピルを飲んでいる人はより積極的に考えるべきでしょう。

(谷口恭)

注1:この発表は米国眼科学会のウェブサイトで公表されています。タイトルは「Long-Term Oral Contraceptive Users are Twice as Likely to Have Serious Eye Disease」で、下記のURLで閲覧することができます。
https://www.aao.org/newsroom/news-releases/detail/longterm-oral-contraceptive-users-are-twice-as-lik

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2014年1月6日 月曜日

2014年1月6日 ナッツを毎日食べると健康で長生き

 ナッツを食べるべきか食べないべきか、については意見が分かれるところだと思います。ナッツはビタミンやミネラルが豊富に含まれており、地中海ダイエットのメイン食品のひとつですから、健康に、あるいはダイエットに積極的に摂取する、という人がいます。

 一方、ナッツはカロリー過多で太る、あるいはナッツは肌荒れやニキビの原因になると考えて、健康とダイエットのためにあえて避けている、という人もいます。私の知る限り、ナッツで肌荒れやニキビを起こすと書かれた論文などは見たことがなく、これは単なる「噂」だと思うのですが、実際にナッツを食べる(食べ過ぎる)とニキビができやすくなると言う患者さんがいるのも事実です。

 最近、ナッツ摂取量と死亡率、さらにいくつかの疾患の罹患率との関係について大規模調査がおこなわれましたので報告します。医学誌『New England Journal of Medicine』2013年11月13日号(オンライン版)によりますと、ナッツ摂取の頻度が多ければ多いほど(つまり毎日食べるほど)総死亡率やガンなどの疾患による死亡リスクが低下することが判ったそうです(注1)。

 この調査は、米国の女性看護師121,700人を対象とした健康調査(The Nurses’ Health Study (NHS)と命名されています)と、 男性の医療従事者51,529人を対象とした調査( The Health Professionals Follow-up Study (HPFS) と命名されています)の2つを分析することによっておこなわれています。対象者から、ナッツの摂取量が不明な人、心疾患や脳卒中などを起こしたことがある人などが除かれ、最終的には女性76,464人と男性42,498人の分析がおこなわれています。追跡期間中に死亡したのは女性16,200人、男性11,229人だったそうです。

 総死亡率については、ナッツをまったく摂取しない人と比較すると、週に1回未満の摂取で7%の低下、週に1回の摂取で11%、週2~4回で13%、週5~6回で15%、週7回以上の摂取で20%と、摂取する頻度が高ければ高いほど総死亡リスクが低下していることがわかります。

 ガンによる死亡については、ナッツをまったく摂取していない人と比べて、週7回以上の摂取で11%低下しており、心臓病による死亡については25%の低下、呼吸器疾患による死亡では24%低下しています。

 さらに、体重増加との関係についても、ナッツの摂取量が多い人ほど体重は減少していたそうです。論文の著者が「ナッツの食べ過ぎは体重増加の心配があるだろうが」と書いていますから、アメリカでも多くの人がナッツは太ると考えているのでしょう。

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 ナッツを食べると肥満を防げて、病気にもならずに長生きできるとなるといいことばかりです。しかも、この研究は対象者が少なくありませんから説得力があります。

 ナッツと聞いて気になるのは塩分との兼ね合いです。塩辛い味が好みの我々日本人は塩分摂取量には注意すべきでしょう。気になる人は塩分無添加のナッツを考えてみてもいいかもしれません。(ただし、完全な食塩無添加ナッツを美味しく食べられるか、というところが気になりますが)

 ちなみに、何を食べるとどれだけ太るかという研究が同じ医学誌『New England Journal of Medicine』2011年6月23日号(オンライン版)に掲載されており(注2)、ここでもナッツは4年間で0.57ポンド(258グラム)の体重減少とされています。最も体重が増えたとされているのがポテトチップスの1.69ポンド(766.57グラム)です。

 ということは、ソファーに座りながら、あるいは新幹線の座席でビールのつまみにポテトチップスを食べているという人はナッツに変更すべき、となるのかもしれません。

(谷口恭)

注1:この論文のタイトルは「Association of Nut Consumption with Total and Cause-Specific Mortality」で、下記のURLで全文を読むことができます。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1307352#t=articleTop

注2:この論文のタイトルは「Changes in Diet and Lifestyle and Long-Term Weight Gain in Women and Men」で、下記のURLで全文を読むことができます。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1014296#t=articleTop

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