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2013年7月1日 月曜日

2011年12月28日(水) 体重が減らなくても有酸素運動で長寿に

 ジョギングや水泳を定期的にしているのに体重が落ちない・・・、と悩んでいる人には朗報です。

 運動により体重が変化したかどうかにかかわらず有酸素運動(注1)を定期的におこなうことが長生きにつながる、という調査結果が、医学誌『Circulation』2011年12月5日号(オンライン版)に掲載されました(注2)。
 
 この研究は、NIH(米国国立衛生研究所)が中心となり実施されています。対象者は中年男性(平均44歳)14,345人で、調査期間は11.4年になります。大まかな結論を言えば、「有酸素運動を続けてエネルギー消費を維持できていれば死亡リスクが約30%低減する」ということになります。そしてこれは、体重が落ちなかった場合でも、です。
 
 つまり、死亡率に関係するのは体重やBMI(体重÷身長の2乗)ではなく、有酸素運動をどれだけおこなっているかであったというわけです。

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 運動をがんばっている患者さんに話を聞くと、「やってるんですけどね~。なかなか成果がでないんですよ・・・」と答える人がいますが、今回の研究結果はこのような人たちには嬉しいお知らせとなります。
 
 この研究結果が普遍的なものであるならば、たとえ減量ができていないとしても運動を続けることが長生きにつながるわけですから、我々は有酸素運動を「日々おこなう生活習慣のひとつ」として考えるべきなのかもしれません。
 
(谷口恭)

注1 ここでは「有酸素運動」としましたが、原文は「cardiorespiratory fitness」です。そのまま訳すと、「心肺機能のためのフィットネス」、くらいになると思いますので、「有酸素運動」として差し支えないと考えました。
 
注2 この論文のタイトルは、「Long-Term Effects of Changes in Cardiorespiratory Fitness
and Body Mass Index on All-Cause and Cardiovascular Disease Mortality in Men」
で、下記のURLで概要を読むことができます。
 
http://circ.ahajournals.org/content/124/23/2483.abstract?sid=343c4f14-5bbf-
46ee-b7dd-a8e432570622

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2013年6月29日 土曜日

2013年1月7日(月) やはり減量には脂肪を減らすのが有効

 ここ数年ブームになっている「糖質制限食」は、端的に言えば「糖や炭水化物の摂取を制限すれば減量できる」というものであり、もっと極端に「糖や炭水化物を抑えていれば脂肪は食べ放題」などと言われることもあります。
 
 しかし、糖質制限が実際にできるかどうかという問題がありますし(炭水化物の制限は容易ではないと感じている人が多い)、危険性を指摘する研究もあります(詳しくは下記コラムを参照ください)。
 
 スリムになるには脂肪摂取量を減らすだけでよい・・・

 このような研究結果が、医学誌『British Medical Journal』2012年12月6日号(オンライン版)に掲載されました(注1)。

 この研究は英国イースト・アングリア大学(University of East Anglia)ノリッジ医学部(Norwich Medical School)のLee Hooper氏らによりおこなわれました。

 研究では、これまでに先進国で実施された合計33の調査が総合的に解析されています(メタ分析)。調査の全対象者は73,589人に上り、33の調査の内訳は、北アメリカが20、ヨーロッパが12、ニュージーランドが1つです。(日本の調査はありません)
 
 これら33の研究を総合的に解析した結果、脂肪を減らすことにより、約1.6kgの体重減少が得られ、腹囲も減少したとの結果がでたそうです。さらに血圧低下が認められ、血中コレステロール値も有意に下がっていたそうです。
 
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 今回の研究では詳しく言及されていませんが、一言で「脂肪」といってもいろんなものがあります。基本的なことを確認しておくと、健康上好ましくない脂肪(つまり、体重やウエストを増やし、血圧や血中の脂質レベルを上げる脂肪)は「飽和脂肪酸」と呼ばれるもので代表的なのは肉の脂です。逆に、不飽和脂肪酸、そのなかでも青い魚に含まれる脂肪は高脂血症の治療に使われるくらいですから減量を目指す人も積極的に摂取すべき脂肪です。
 
 この研究結果は、あらためて言われなくてもわかっているようなことであり、驚くべきようなものではなく、なぜ『British Medical Journal』ほどの一流医学誌(注2)で取り上げられたのか、と私は感じました。(きちんと検証したわけではなく私の印象に過ぎませんが)どうも『British Medical Journal』はアンチ糖質制限の論文が多く掲載されるような気がします・・・。
 
(谷口恭)

参考:メディカルエッセイ第114回(2012年7月) 「糖質制限食の行方」

注1:この論文のタイトルは、「Effect of reducing total fat intake on body weight:systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials and cohort studies」で、下記のURLで全文を読むことができます。
 http://www.bmj.com/content/345/bmj.e7666

注2:ちなみに「5大医学誌」に数えられているのは、『British Medical Journal』の他、『JAMA (Journal of American Medical Association)』、『Annals of Internal Medicine』、『Lancet』、『New England Journal of Medicine』です。私は「JALの便(JALBN)」と覚えています。

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2013年6月29日 土曜日

2013年1月8日(火)コーヒーで口腔ガン・咽頭ガンの死亡リスク低下

 1日4杯以上のコーヒー摂取で、口腔ガン及び咽頭ガンでの死亡リスクが半減する・・・

 これは、医学誌『American Journal of Epidemiology』2012年12月9日号(オンライン版)に掲載された研究結果です(注1)。

 この研究は、米国ガン協会(American Cancer Society)のJanet S. Hildebrand氏らによっておこなわれました。同協会が全米の45歳以上の成人男女を対象として1982年に開始した「Cancer Prevention Study II」と命名された調査に参加した1,184,418人のうち、コーヒーおよび紅茶の摂取に関する情報が得られ、1982年の調査開始当時にガンを発症していなかった968,432人が対象とされています。26年間の調査期間中に合計868人が口腔ガン、または咽頭ガンで死亡しています。

 これらのガンによる死亡とコーヒー・紅茶摂取の関係を分析したところ、1日4杯以上のカフェイン入りコーヒーを飲む人は、これらのガンで死亡するリスクが49%減少することが判明したそうです。また、必ず4杯飲まなければならないわけではなく、コーヒー摂取が1杯増えるごとに死亡リスクの低下が認められるそうです。カフェイン抜きのコーヒーでも多少の低下は認められたそうですがその程度はわずかなようです。また、紅茶との間には関連性がなかったそうです。
 
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 口腔ガンも咽頭ガンも、最近ではHPV(ヒトパピローマウイルス)の関連がよく指摘されます。この研究からは、コーヒー摂取によりHPVの増殖を抑制できるのかとか、HPVが感染した細胞がガン化するのを防ぐ作用がコーヒーにあるのか、といったことは分かりません。また、この研究では、コーヒーでこれらのガンによる「死亡のリスクが減る」ということを言っているのであり、これらのガンに「かかりにくい」と言っているわけではありません。
 
 これらのガンの死亡リスクを減らすためにコーヒーをたくさん(1日4杯以上!)飲もうとするのは賢明ではないでしょう。まずはHPV感染を防ぐことを考えるべきかもしれません。といってもHPVの口腔内感染を防ぐにはどうすればいいのかというのがはっきりと分かっているわけではありません。(一部には危険な性交渉、特にオーラルセックスによるものが多いのではないか、と指摘されています)
 
注1:この論文のタイトルは、「Coffee, Tea, and Fatal Oral/Pharyngeal Cancer in
a Large Prospective US Cohort」で、下記のURLで全文を読むことができます。
 
http://aje.oxfordjournals.org/content/177/1/50.full?sid=2fc8e969-5e2f-4a41-87aa-c0980c76648f

参考:医療ニュース
2012年12月3日 「コーヒーも紅茶も生活習慣病に有効」
はやりの病気第22回(2005年12月) 「癌・糖尿病・高血圧の予防にコーヒーを!」    
はやりの病気第30回(2006年4月) 「コーヒー摂取で心筋梗塞!」

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2013年6月29日 土曜日

2013年1月30日(水) 腰痛の大半はストレスが原因

 腰痛の発症や慢性化には心理的なストレスが関与しており、画像検査などでも原因が特定できない腰痛が大半を占める…。

 これは昨年(2012年)、日本整形外科学会と日本腰痛学会が発表した診療ガイドラインの内容で、年末に一部のマスコミで報道されたことが原因なのか、患者さんから「私の腰痛もストレスなんですかね~」と言われることが増えてきました。
 
 腰痛の正式なガイドラインはこれまでなかったのですが、先に述べたふたつの学会が、2001年以降に発表された国内外の論文約4千件から厳選したおよそ200件を基にして策定したようです。
 
 ガイドラインでは腰痛を3つに分類しています。1つは、外傷や感染症、ガンなどが原因となっている腰痛、2つめは、麻痺やしびれ、筋力低下などを伴うタイプの腰痛、そして3つめが、原因をが特定できない腰痛で、これを「非特異的腰痛」と呼びます。
 
 そして3つめの非特異的腰痛は、職場での人間関係や仕事量、仕事上の不満、うつ状態など心理社会的要因が関与している、とされ、ストレスを軽減するためにものの考え方を変える認知行動療法などの精神医学療法が有効である、とまで述べられています。
 
 ガイドラインでは腰痛の検査についても触れられています。腰痛にはレントゲンやCT、MRIなどの画像検査をおこなうことがありますが、ガイドラインでは、すべての症例に画像検査をする必要はない、と述べられています。
 
 治療については、非特異的腰痛の場合、安静は必ずしも有効でなく、可能であれば普段の動きを維持し、慢性の腰痛であれば運動療法を積極的にすべき、といったことが言及されています。
 
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 たしかに、腰痛の患者さんにレントゲン撮影をしても異常が出ないことの方が圧倒的に多く、太融寺町谷口医院で言えば、腰痛を訴える患者さん10人がいたとすれば、すぐにレントゲン撮影をするのはそのうち1人くらいです。どのような場合に撮影をするかというと、上に述べられている2つのケース、すなわち感染症やガンの可能性を考えたときと、麻痺やしびれが伴っているときです。
 
 軽症から重症までひっくるめて統計をとれば、年齢にもよりますが、おそらく腰痛の大半は非特異的腰痛で、そのほとんどは画像撮影で異常が出ないでしょう。

 しかし、この原因を「ストレス」と言い切ったガイドラインに私は少し驚きました。私自身の印象でいえば、ストレスは腰痛の増悪因子になることはあっても、きっかけになるとはあまり考えていなかったからです。
 
 「背中や腰の筋肉や靭帯にかけられた負荷が積み重なって腰痛は起こります。だから腹筋と背筋を鍛えましょう」、非特異的腰痛の患者さんに、私はまずこのように話すことが多いのですが、これからは心理状態や労働環境の観点から話をすべきなのかもしれません。
 
(谷口恭)

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2013年6月29日 土曜日

2013年1月31日(木) 自殺者が3万人を切ったものの・・・

 すでに多くのマスコミで報道されていますが、2013年1月17日、警察庁は2012年の自殺者数を発表しました。1年間の自殺者数は合計27,766人で1997年以来15年ぶりに3万人を割ったことになります。12月分については「速報値」となっていますが、大きく変動することはないでしょうから、「15年ぶりに3万人を切る」は確定となります。
 
 月別、都道府県別の自殺者数が細かく報告されていますので詳しくはそちらを閲覧いただきたいのですが(注1)、ここでいくつかポイントをまとめておきたいと思います。

 まず、男女別の数字は、男性が19,216人で2011年より1,739人の減少、女性は8,550人で1,146人の減少となっています。

 都道府県別では、第1位が東京都で2,760人、大阪府1,720人、神奈川県1,624人と続きます。最も自殺者が少なかったのは、鳥取県の130人で、徳島県164人、島根県168人と続きます。
 
 月別では、前年比で3月が4.9%、2月0.4%、10月0.1%の増加ですが、それ以外の月ではすべて減少しています。特に、5月は25.5%、6月は24.1%と大幅減となっています。自殺者が最も多い月は3月で2,584人、5月2,516人、4月2,434人と続いています。
 
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 自殺者が15年ぶりに3万人を割ったという歓迎すべきニュースが報じられた一方で、12月に大阪府の桜宮高校で教師の体罰が原因で高校生が自殺していた、という大変ショッキングな事件が報道されました。
 
 これまでの15年間は、山一證券の倒産(1997年末)あたりではずみがついた中高年男性の自殺が最も注目されていましたが、今後は若い世代の自殺に注目すべきでしょう。(下記医療ニュースも参照ください)
 
 警察庁のグラフをみれば、東日本大震災のあった2011年を除けば、過去5年間の日本の自殺者数は2月に下がって、3月に急上昇していることがわかります。(震災のあった2011年は3月から5月にかけて自殺者が急激に増えました) 
 
 なぜ3月に自殺者が増えるのか\\。今のところこれを合理的に説明する理論はないと思われますが、過去がそうである以上今年も同様になることが予想されます。あなたの周りにSOSを出している人がいないかどうか、改めて考えてみるべきかもしれません。もちろん、あなた自身が自殺を考えているとすれば、誰かに相談すべきです。誰に相談していいかわからない…、もしそうなら厚生労働省の専用サイト(注2)にまずはアクセスしてみてはどうでしょう。
 

注1 警察庁が発表した詳細については、下記のURLを参照してください。
 
http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/toukei/pdf/saishin.pdf

注2 厚生労働省の「みんなのメンタルヘルス」のURLは下記の通りです。充実したメンタルヘルスの総合サイトで、相談先も紹介されています。

http://www.mhlw.go.jp/kokoro/index.html

参考:医療ニュース
2012年7月29日 「若者の自殺が原因で平均寿命短く?」
2012年5月11日 「20代女性の3人に1人は「自殺」を…」
2012年3月21日 「日本の自殺者、14年連続で3万人超」

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2013年6月29日 土曜日

2013年2月1日(金) 謎に包まれた新しいダニ媒介の感染症

 2013年1月30日、厚生労働省は、マダニを媒介してヒトに感染するウイルスが原因で、山口県の成人女性が2012年秋に死亡していたことを発表しました(注1)。

 この病気は「SFTS(重症熱性血小板減少症候群, Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome)」という名称で、原因ウイルスは「SFTSウイルス」と命名されています。このウイルスは、ウイルス学的には「ブニヤウイルス科」に属します。ブニヤウイルス科といえば、クリミア・コンゴ出血熱ウイルスやリフトバレー熱ウイルスなど、致死的な疾患の原因ウイルスが有名です。
 
 SFTSは歴史が新しく、2011年に中国で初めて発見されました。中国ではこれまで数百例の報告があり、致死率は約12%だそうです。

 山口県の女性は発熱や嘔吐で医療機関を受診しすぐに入院となったそうです。血小板と白血球が大きく減少し、血尿・血便が止まらず、入院後1週間で死亡したと報じられています。ダニに刺されたような痕跡はなく海外渡航歴もなかったそうです。
 
SFTSウイルスが検出されたために診断確定となったわけですが、遺伝子の検査をおこなうと、中国で確認されているものとは配列が異なり、中国から入ってきたものではなく、もともと国内にあった可能性が高いとされています。
 
 SFTSには特効薬もなくワクチンもありません。

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 山口県のこの事例でひっかかるのは、ダニが刺した痕跡がない、ということです。歴史が浅くまだ解明されていないことがあるはずで、おそらく血液や体液を介してヒトからヒトに感染することもあるでしょう。だとすると、何らかのかたちで他人(例えば中国から渡航してきた人)の体液に触れて感染、という可能性もあるのではないでしょうか。
 
 遺伝子の塩基配列が中国のものとは違う、とされていますが、ブニヤウイルスは遺伝子をDNAではなくRNAで持っています。2本鎖のDNAに比べると、1本鎖のRNAは不安定ですから、DNAに比べると容易に変異がおこります。まだ解明されていないけれども、実はSFTSは感染しても発症せずにヒトの体内に棲息することがあり、そのうちに変異がおこり、血液や体液を介して他人に感染させることがある。そして感染させられた者は急性発症する、ということも起こりうるのではないかと私はみています。
 
 しかし、マダニが感染源と分かっていている以上、野山に行く人はマダニ対策をすべきです。マダニが媒介する感染症は、SFTS以外に日本紅斑熱やライム病もありますし、最近アメリカで新しい感染症も報告されています。(下記医療ニュースも参照ください)
 
注1:厚生労働省の発表は下記URLを参照ください。

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002u1pm.html

参考:医療ニュース
2012年9月15日 「ダニに刺されて発症する新しい感染症」

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2013年6月29日 土曜日

2013年2月8日(金) 風疹の抗体、本当にありますか?

 現在世間ではインフルエンザが猛威をふるっていますが、感染力の強い感染症で忘れてはいけないのが風疹です。風疹についてはこのサイトで何度かお伝えしていますが、現在も増え続けています。それも成人の間で確実に増えています。
 
 国立感染症研究所感染症情報センターの報告によりますと、2012年の風疹報告数は、2,353例(暫定値)で、これは過去5年間で最も多い報告数となります。さらに特筆すべきなのは、先天性風疹症候群の報告数が5例あることです。
 
 現在厚生労働省が予防接種を呼びかけているのは次の3つのいずれかに該当する人です。

① 妊婦(抗体陰性又は低抗体価の者に限る)の夫、子ども及びその他の同居家族
② 10代後半から40代の女性(特に、妊娠希望者又は妊娠する可能性の高い者)
③ 産褥早期の女性

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 風疹は飛沫感染で簡単に他人に感染します。ですから、あなたが風疹にかかっていることを知らずに、人ごみでくしゃみをすると横に妊婦さんがいた、ということもありうるわけです。
 
 風疹がむつかしいのは、特に成人の場合、典型例をとらない場合が少なくないからです。太融寺町谷口医院でも、高熱と強い倦怠感、全身の皮疹などがでて、「風疹にしては症状が強すぎる」という場合もあれば、その逆に、熱はほとんどなくリンパ節もほとんど腫脹しておらず皮疹が少し気になるという程度で一見単なる湿疹かと見間違える「風疹にしては症状が弱すぎる」ものもあり、私自身も直ちには診断がつけられなかったケースもありました。
 
 風疹に絶対にかかってはいけないのは妊婦さんです。生まれてくる赤ちゃんが先天性風疹症候群に罹患することを避けなければならないからです。苦労の末に念願の妊娠が実現したのにその直後に風疹にかかって泣く泣く堕胎せざるを得なくなった…、という女性も実際にいます。
 
 風疹はワクチンを接種しているか一度かかっていて抗体が形成されていれば心配する必要はないのですが、患者さんの「風疹の抗体はあるはずです」というのは誤解であることが少なくありません。(詳しくは下記コラムを参照ください) 上記の厚労省が呼びかけている3つに該当しない人でもワクチン接種(もしくは抗体検査)を検討すべきでしょう。
 
(谷口恭)

参考:
はやりの病気第109回(2012年9月) 「これからの風疹対策」
医療ニュース2012年6月1日 「風疹が過去最多の勢い」

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2013年6月29日 土曜日

2013年2月15日(金) 新種のコロナウイルス、世界10例目と11例目

 2012年9月に重症化する新型コロナウイルスについて紹介しましたが(下記医療ニュース参照)、その後少しずつ報告数が増え、HPA(英国健康保護局)は2013年2月11日、世界10例目となるイギリス人の感染者について発表しました。
 
 これまで確認されている第1例から第9例は、全員が中東での感染と考えられています。5人がサウジアラビア、2人がカタール、2人がヨルダンです。そして10例目となったイギリス人もサウジアラビアとパキスタンに滞在していたことが明らかとなっています。
 
 そして2日後の2月13日、世界11例目となるイギリス人の症例がHPAより発表されました(注1)。この11例目の症例はこれまでの10例と異なり中東への渡航歴がないそうです。これまでの10例はヒトからの感染よりもむしろ動物からの感染が考えられており、コウモリの可能性が指摘されていました。
 
 BBCの報道では、11例目のこの症例は父親からの感染が考えられるとのことです。報道でははっきりと述べられていませんが、どうも10例目が11例目の父親であるようなニュアンスです。しかし、同時に「ヒトからヒトへの感染のリスクは極めて低い」と述べられています。
 
 中東への渡航・滞在には充分な注意が必要ですが、WHO(世界保健機関)は現在のところ、入国時の特別なスクリーニング検査や、渡航・貿易の制限は推奨していません。

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 現時点では、外務省海外安全ホームページには、この感染症に対する情報が掲載されていないようです。
 
 厚生労働省検疫所のサイトには、「2013年02月12日更新 新種のコロナウイルス感染症について」というタイトルで情報が載せられていますので、下記を参照してみてください。
 
http://www.forth.go.jp/topics/2013/02121053.html

 ただし、厚労省も渡航を制限しているわけではありませんし、どのような対策をとるべきなのかについての言及はありません。現時点では感染者はまだ少数ですが、重症化しやすいのは間違いなく、世界11例のうち5例はすでに死亡しており、10例目のイギリス人も現在集中治療室に入院しています。
 
 中東方面へ渡航する人は注意深く情報収集することが必要でしょう。

(谷口恭)

注1:BBCは「Health official- new coronavirus risk remains very low」というタイトルで報じています。下記のURLを参照ください。
http://www.bbc.co.uk/news/health-21447216

HPAは下記のURLで11例目について言及しています。
http://www.hpa.org.uk/NewsCentre/NationalPressReleases/2013PressReleases
/130213statementonlatestcoronaviruspatient/

参考:医療ニュース
2012年9月28日 「重症化する新型コロナウイルス」

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2013年6月29日 土曜日

2013年2月15日(金) SFTSで新たに2人の死亡が確認

 ダニで媒介する新しい感染症のSFTSで山口県の女性が2012年の秋に死亡していた、というニュースを先日お伝えしましたが(下記医療ニュース参照)、同じ時期に2人の男性が同じ感染症で死亡していたことが、2013年2月13日、厚生労働省から発表されました。
 
 2人の男性は愛媛県と宮崎県に在住で、2人とも最近の海外渡航歴はなかったそうです。そして、奇妙なことに2人ともダニの刺し傷が見当たらなかったそうです。報道によりますと、宮崎県の男性は山に出かけることがあったそうです。愛媛県の例については報道からはダニに刺される状況にあったのかどうかは分かりません。
 
 厚労省によりますと、全国の都道府県から同様の症状の事例報告がこれまでに9件あり、検査した4件のうち2件からこのウイルス(SFTSウイルス)が検出されています。同省では現在残り5件の検査を急いでいるそうです。
 
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 宮崎県と愛媛県の症例から検出されたSFTSウイルスの遺伝子の塩基配列は山口県の女性のものと似ていたそうです。そして、これらは中国で報告されているSFTSウイルスのものとは異なっているそうです。
 
 ということは、中国から輸入されたものではなく、日本に以前からあったものである可能性が強いと言えます。私は前回の医療ニュースで、中国から入ってきたウイルスが変異した可能性について言及しましたが、日本で発覚した3例がすべて酷似しており、かつ中国のものとは似ていない、となると、日本に以前からあったものと考えるべきでしょう。
 
 しかし、これだけ重症化するウイルス感染が、なぜ今まで注目されなかったのでしょうか。それから、本当にダニが媒介しているのでしょうか。たしかにダニに刺されても気づかない人はいますが、それでも刺し傷は比較的簡単に見つかることが多いという印象が私にはあります。しかし、実はそうでなくて、刺されても痛くもなくて跡も残らない、というケースが実際にはよくあるのでしょうか。
 
 依然謎につつまれたままの感染症です…。

(谷口恭)

参考:医療ニュース
2013年2月1日 「謎に包まれた新しいダニ媒介の感染症」

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2013年6月29日 土曜日

2013年2月22日(金) 首からぶらさげる「ウイルス除去剤」でやけどの被害

 すでにマスコミでも報道されていますが、首からぶらさげるタイプの「ウイルス除去剤」でやけど被害が相次いでいます。重症例も出ているようで、消費者庁が注意を促しています(注1)。
 
 この製品は、消毒効果のある次亜塩素酸ナトリウムを含む錠剤の入ったパックを首からぶら下げて使うことで、ウイルスが除去できる、とされています。

 皮膚科関連の学会に寄せられた報告によりますと、今月中旬までに17例の症例報告があり、そのうち、製品が確認できている11例の全てが、ダイトクコーポレーション社製の「ウイルスプロテクター」という製品だったそうです。
 
 この製品はすでに国内で70万個が流通しており、厚生労働省が同社に自主回収を指導する予定だそうです。

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 今年に入り、首からネームプレートのような奇妙なものをぶらさげている患者さんが増えたな、と思っていたらこれが「ウイルスプロテクター」でした。

 このやけどは「化学熱傷」と呼ばれるもので、次亜塩素酸ナトリウムの錠剤が汗に触れたことで発症したのだと思われます。衣服の上から装着するだけであれば問題ないと思いますが、熱傷を負った人たちはおそらくこの製品をつけたまま寝てしまったのではないでしょうか。
 
 化学熱傷の場合、気づいたときにはそれほどひどくなくても、時間がたってから皮膚の障害が進行することがあります。思い当たることがある人は、軽症であったとしても一度医療機関を受診すべきだと思います。
 
 それから、問題になっている「ウイルスプロテクター」以外にも似たような製品が多数出回っているそうですので注意が必要です。

(谷口恭)

注1:消費者庁の注意勧告は下記のURLで閲覧することができます。

http://www.caa.go.jp/safety/pdf/130218kouhyou_1.pdf

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