医療ニュース

2010年11月4日(木) 週に10km程度の歩行が認知障害を予防

 1週間に10km程度歩けば記憶障害など認知機能低下が抑制できる・・・

 これは、医学誌『Neurology』2010年10月19日号に掲載された論文(注)で発表された知見です。

 米国ピッツバーグ大学の研究者らは、299人の成人の身体活動と認知力の調査をおこないました。299人の平均年齢は78歳で3分の2は女性です。

 脳の大きさと認知能力を測定した結果、9年後の調査では全員が「正常」でしたが、その4年後の調査では、およそ3分の1が軽度の認知障害や認知症が認められたそうです。さらに、週当たりの歩行距離との関係を調べると、およそ10km程度歩行している人は認知障害が起こりにくいことがわかったそうです。

 しかし、これを超えて歩いても特に差は認められなかったそうです。

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 ひとつお断りしておきますと、私は便宜上「10km」としましたが、原文では72blocksとなっています。普通は、このような論文ではマイルかメートル法で記載されますから、「block」で書かれると、アメリカ人以外には分かりにくいのではないかと思われます。(私の計算では、だいたい1ブロックは150メートルくらいだろうと、”勝手に”決めて計算したことを告白しておきます。ですから実際には10kmより大きかったり小さかったりするかもしれません)

 歩くことで認知症を防げるかもしれない、と言われると、そりゃそうだろう、と言いたくなります。しかし、現在のところ認知症に対しては、有効な予防法も治療法もほとんどありませんから、このような研究がもっとおこなわれて歩くことの有効性を示すデータが増えることを望みたいと思います。歩くことには認知症の予防以外にも多くの利点があるはずだからです。(そのときにはメートルかマイルで論文が書かれることを希望します・・・)

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Physical activity predicts gray matter volume in late adulthood The Cardiovascular Health Study」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://www.neurology.org/content/75/16/1415.abstract?sid=cdc7fc11-46d4-4020-8919-009ed42ef07b

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