医療ニュース
2012年7月13日(金) カンボジアの難病は手足口病の可能性
カンボジアで原因不明の病気が流行り大半が死亡している、という情報を先日お伝えしましたが、その後の調査で、この原因は「手足口病」かもしれない、との発表がありました。
東南アジアで高熱と呼吸症状で死亡、と聞くと、まず考えたいのが高病原性鳥インフルエンザ(A/H5N1)とSARS(重症急性呼吸器症候群)ですが、これらはすでに否定されています。また、高病原性鳥インフルエンザ以外のインフルエンザウイルも否定されています。
一方、罹患者の一部からエンテロウイルス71(EV71)が検出されたことが判り、手足口病によるものではないか、との見方がでてきました。
しかし、どうも全例から検出されたわけではないようで、また、一部の罹患者からはデング熱、さらにチクングニヤが検出されたという情報もあり、現時点では原因となる病原体の特定はできていません。
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手足口病と言えば、昨年(2011年)は日本でも大流行し、子供だけでなく大人も発症し、重症例も相次ぎました。手足口病をきたすウイルスは複数ありますが、昨年日本で猛威をふるったのはコクサッキーA6です。現在、カンボジアで流行している(可能性のある)手足口病の病原体はエンテロウイルス71で、これは日本でも以前から多いタイプのものです。
しかし、日本ではこれほどの重症化はおこりませんから、エンテロウイルス71が何らかの変異を起こした可能性は否定できないでしょう。ただし、これだけ死亡者が多いのは、カンボジアの劣悪な医療環境が関係していることもありえます。
はっきり言うと、カンボジアの医療機関は、ごく一部を除き、衛生状態に問題があります。私はNPO法人GINAの関係でタイの医療機関をある程度見てきましたが、公立の病院では何度も驚かされてきました。病室は、体育館のような広さがあり、そこに100人以上の患者さんが所狭しと寝かされているのです。なかには息が絶え絶えの患者さんもいて、これでは院内感染が容易に起こってもおかしくありません。
しかし、そこで働いている医療者やボランティアに聞くと、カンボジアではこの比ではないそうです。タイで知り合ったあるヨーロッパ人のボランティアによると、タイでは医師は英語ができるが、カンボジアの医師はフランス語はできても英語ができないことが多く、外国人はまともに診てもらえないそうです。
感染症は急速に広まる可能性があります。そろそろ夏休みですが、子供をつれてのカンボジア旅行は可能な限り避けるべきでしょう。またベトナムやカンボジアと国境を接するタイの東北地方なども充分な注意が必要です。仕事などでどうしても行かなければならない人は海外旅行傷害保険の見直しをすべきでしょう。
尚、エンテロウイルス71にはワクチンがありません。デング熱にもチクングニヤにもワクチンはありません。ただし、デング熱とチクングニヤは蚊に刺されて発症しますから、虫除けスプレーやクリーム(これらは現地で買った方がいいです)を忘れないようにしましょう。
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