医療ニュース
2023年6月4日 治る糖尿病は1%だけ?
糖尿病の治療を受けている患者の約1%だけが薬が不要になる……。
これは医学誌「Diabetes Obesity and Metabolism」2023年5月8日号に掲載された論文「日本における2型糖尿病の寛解と再発の発生率と予測因子: 全国患者登録の分析 (JDDM73)(Incidence and predictors of remission and relapse of type 2 diabetes mellitus in Japan: Analysis of a nationwide patient registry (JDDM73))」の結論です。
この研究の対象者はタイトルから分かるとおり日本人です。「糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)」という研究会が保有するデータベースが分析されています。研究の対象者は18歳以上の日本人48,320人で、この研究での糖尿病の定義は「HbA1cが6.5%以上、および(または)糖尿病の薬が処方されている」です。
「寛解」というのはおおまかには「治ること」と考えていいのですが、この研究での定義は「糖尿病の薬を中止して3カ月以上HbA1cが6.5%未満を維持している状態」とされています。
解析の結果、中央値5.3年の追跡期間中に3,677例が寛解に至り、年間1000人あたりの寛解率は10.5(およそ100人に1人)でした。
寛解に至りやすい特徴としては「治療期間が短い」「調査開始時のHbA1cが低い」「調査開始時のBMIが高い」「1年でBMIが大きく低下している」「調査開始時に糖尿病の薬を飲んでいない」でした。
ただし、寛解した3,677人のうち2,490人(67.7%)が1年以内に再発(HbA1c値の再上昇)していました。
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この研究は、日本の糖尿病関連サイトでも報告されています。
この日本語の報告では、「糖尿病は意外にも治る人がいる」というような紹介をされています。
しかし谷口医院の経験でいえば、糖尿病が「治る」のは1%程度ではありません。1割までは届かないと思いますが、少なく見積もっても5%程度(20人に1人程度)の患者さんは薬を中止できます。残念ながら再発する人がいるのは事実ですが、この研究のように7割近くなどということはありません。せいぜい2~3割程度です(さらに長期間観察すれば上昇するかもしれませんが)。
そもそも他院から谷口医院に移ってきた時点では、「これまで食事にも運動にも気を使っていなかった」という人が大半です。そういう人には、まず薬を止めたい意思があることを確認し、生活習慣を改善させればそれが可能であることを説明します。
糖尿病で重要なことのひとつは「薬を使うかどうか別にして、治療開始を遅らせない」ことです。糖尿病はいったん発症して長期化すると、血管がボロボロになり、物理的に傷んだ血管はもはや修復不能になります。
そうなる前に生活習慣を改め必要最低限の薬を使えばいいのです。
「糖尿病は治らない」なんて考え、もはや古すぎます。
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