医療ニュース

2021年8月15日 不眠に対する運動は有効か

 当院で不眠の相談をしたことがある人には「またかよ」と言われるでしょうが、私は不眠を訴える患者さんほぼ全員に繰り返し「運動をしましょう」と言い続けています。実際、運動だけで不眠症が治った人は決して少なくありません。また、定期的な運動をしている人で不眠で悩む人はほとんどいません(過剰な運動で不眠になる人はいますが)。

 しかし、運動が不眠に有効なのはば確実ですが、どの程度有効なのかを評価した質の高い大規模研究はあまりみたことがありません。今回、そういった研究が報告されたのでお伝えします。

 研究は医学誌「The Journal of sports medicine and physical fitness」2021年6月号に「原発性不眠症に対する運動介入の効果:メタ分析(Effect of exercise intervention on primary insomnia: a meta-analysis.)」というタイトルで掲載されています。

 この研究では、これまでに発表されている運動と睡眠の関係を検討した23の研究をメタ解析しています。運動をした人1,269例と対照グループ(運動をしなかった人)1,203例が比較検討されています。

 その結果、運動をすれば不眠を改善する効果が認められることが分かりました。尚、この研究ではSMDという指標が使われています。運動が不眠に有効であることを示すSMDは-(マイナス)1.64、有酸素運動であれば-2.21です。-(マイナス)がついていて、なおかつ絶対値が大きければ大きいほどその関係が強いことを示します。よって、この研究から言えることは、運動が不眠を改善するのは確実であり、なかでも有酸素運動が有効だ、ということになります。

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 ところで、睡眠の質が高いか低いかはどのように判断すればいいのでしょうか。専門的には睡眠中の脳波や心拍数を測定するのですが、自宅で医療者の介入なしに簡単にできる方法があります。

 それはFitbitを使うことです。AppleWatchではなくFitbitの方が有効です(私見ですが)。Fitbitなら、睡眠の深さがどの程度かを知ることができ、何時に深い睡眠(あるいはレム睡眠)をとっていたかが分かります。同時に心拍数も測定できますから、健康管理にとても役立ちます。念のために付記しておくと、私はFitbitの会社と関係があるわけではなく利益供与はありません。

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