医療ニュース
2020年7月29日 パートナーとベッドを共にすればぐっすり眠れて長生きできる
不眠で悩んでいるという人はかなり多いような印象があります。受診理由が「不眠」でない人に対して「最近眠れていますか」と尋ねたときも、自信をもって「ぐっすり眠れています」と答える人はわずかしかいません。睡眠に悩みがない人の方が少ないのではないか、と思わずにはいられません。
「睡眠薬を処方してください」という人は大勢いますが、太融寺町谷口医院では、「睡眠薬は安易に処方しない」という方針を開院以来続けています。不眠を訴えるほとんどの人に「健康づくりのための睡眠指針 2014 ~ 睡眠12箇条 ~に基づいた保健指導ハンドブック」を紹介しています。これは医療者用のテキストなのですが、一般の方が読んでも分かりやすくよく書けています。
不眠を訴える人のほとんどに、私は「パートナーと一緒ですか」と聞くようにしています。この私の意図は、「パートナーのいびき(や寝言)が睡眠の妨げになっていないか」ということであり、特にいびきで眠れないという人には寝室を別々にすることを提唱していました。
ところが、どうも私のこのアイデアは間違っていたようです。「良質な睡眠を得るためにはパートナーとベッドを共にすべき」という論文が発表されました。医学誌『Frontiers in Psychiatry』2020年6月25日(オンライン版)に掲載された「カップルでベッドに入るとレム睡眠が増加しリズムが安定する(Bed-Sharing in Couples Is Associated With Increased and Stabilized REM Sleep and Sleep-Stage Synchronization)」です。
論文によると、カップルでベッドに入るとレム睡眠が約10%増加し、安定することが分かりました。研究の対象となったのは18~29歳の12組のカップルです。カップルには研究のため4泊してもらっています。2泊を別々で、残りの2泊をパートナーと共に睡眠をとってもらいその差が調べられたのです。
ところで、いわゆる「浅い睡眠」であるレム睡眠が増えるのは本当にいいことなのか、という疑問があります。深い睡眠をしっかりとっていればそれでいいではないか、という考えが根強くあるからです。しかし、「レム睡眠を充分にとらないと死亡率が上昇する」という研究があり注目されています。
医学誌『JAMA neurology』2020年7月6日号(オンライン版)に「中高年における死亡率とレム睡眠との関係(Association of Rapid Eye Movement Sleep With Mortality in Middle-aged and Older Adults)」という論文が掲載されました。
この研究の対象グループは2つあり、1つは平均年齢76.3歳の男性2,675人で、12.1年間(中央値)追跡されています。もうひとつは、成人男女1,386人(男性54.3%、平均年齢51.5歳)で、20.8年間(中央値)追跡されています。レム睡眠の長さと死亡リスクとの関連が調べられ、総睡眠時間に占めるレム睡眠の割合が5%減少するごとに、心血管疾患による死亡率および全死亡率がいずれも13%上昇することが分かったのです。さらに、この傾向は年齢が若くても認められています。
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人間はレム睡眠の間に夢を見ると言われています。今回紹介した2つの研究を合わせて考えると、パートナーとベッドを過ごすことで、素敵な(とまでは言えないかもしれませんが)夢を見ることができて、それが健康で長生きすることにもつながる、というわけです。
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